有効求人倍率が上昇、応募前にやる4つの準備とは?
画像出典: 写真: Shixart1985(CC BY 2.0 / Wikimedia Commons)
求人増加のニュースを見ても、すぐ応募する必要はありません。厚生労働省の有効求人倍率は令和8年4月時点で1.18倍、正社員に限ると0.99倍と、分野によって状況が違います。応募前の1週間でキャリアの棚卸し・数値化した実績のメモ・職務経歴書の下書き・市場価値の確認を済ませておくと、本当に良い求人が出たときに数日で動けます。
求人が増えている局面で本当に差がつくのは、応募の早さではなく「声がかかったときに出せる材料が手元にあるか」です。求人が増えるということは、募集期間が長くなり、同じような求人が繰り返し出てくるということでもあります。今週の1件を逃しても、来月また似た求人は出ます。
逆に、準備なしで飛びついたときに起きることのほうが痛いです。職務経歴書を週末に慌てて書き、面接で「なぜ転職したいのですか」に詰まり、内定が出ても年収の相場がわからないまま返事をする。焦りが判断を雑にします。
ここでは、応募ボタンを押す前の1週間でやっておく準備を7つ、手順の形で並べます。どれも今の会社に在籍したまま、転職しない選択をしても無駄にならないものだけです。
そもそも求人はどれくらい増えているのか?
まず数字を見て、焦りの正体を確かめます。厚生労働省は毎月、有効求人倍率(ハローワークに登録された求職者1人あたり何件の求人があるかを示す指標)を公表しています。直近で公表されている令和8年4月分の数字が次のとおりです。
| 有効求人倍率(季節調整値) | 1.18倍(令和8年4月、前月と同水準) |
|---|---|
| 新規求人倍率(季節調整値) | 2.11倍(同上、前月比 -0.04ポイント) |
| 正社員有効求人倍率(季節調整値) | 0.99倍(同上、前月と同水準) |
| 令和7年度平均の有効求人倍率 | 1.20倍(前年度比 -0.05ポイント) |
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年4月分)」の公表データをもとに作成
全体の有効求人倍率は1.18倍で前月と同じ水準、新規求人倍率は2.11倍で前月からわずかに下がっています。数字だけを見れば、急激に増えているというより高い水準で横ばいという動きです。
そして目に留めておきたいのが正社員に限った有効求人倍率は0.99倍で、求職者1人に1件を切っているという点です。全体では1件を超えていても、正社員求人だけを見れば、まだ椅子取りゲームの様相があります。「求人が増えている」という見出しと、自分が狙う枠の実感がずれるのは、この差のせいであることが多いです。
地域差も大きく、令和8年4月の就業地別では福井県の1.73倍が最高、大阪府の0.95倍が最低でした。全国平均の数字は、自分の住む場所の状況をそのまま表してはいません。
分野によって温度差がある
民間の予測も見ておきます。転職サービスのdodaは2026年1月8日、「転職市場予測2026上半期」として、調査対象の15分野(7業種・8職種)のうち9分野で求人数が増加し、4分野で好調が維持されると予測しました。増加が予測されたのは、営業、人事、経理、法務、企画・マーケティング、化学・素材、販売・サービス、金融、事務・アシスタントの9分野です。好調維持はIT・通信、電気・機械、不動産・建設、メディカルの4分野でした。
背景として挙げられているのは、慢性的な労働力不足に加えて、2040年問題(生産年齢人口がさらに減っていく見通し)を見据えた企業の採用強化と、デジタル人材需要の拡大です。つまり一時的なブームではなく、数年単位で続く構造的な動きとして説明されています。
構造的な人手不足が理由なら、求人は一晩で消えません。急に閉じるのは、特定企業の1ポジションだけです。それを取り逃したくないなら、必要なのは今日応募することではなく、次に良い求人が出たときに3日で応募できる状態を作っておくことです。以下の7つが、その状態を作る作業になります。
応募前にやっておく7つの準備とは?
- 職務経歴を時系列で全部書き出すまず整形は考えず、入社年月・所属・担当業務を箇条書きで並べます。転職ガイドで「キャリアの棚卸し」と呼ばれる作業です。過去の評価シートや日報、社内システムの担当履歴を見返すと、忘れていた案件が必ず出てきます。所要は1〜2時間。
- 数値化できる実績を拾い出す棚卸ししたリストから、数字が付けられるものにだけ印を付けます。売上や達成率、担当した件数、後輩やメンバーを何名見たか、期間をどれだけ短縮したか。数値化できる実績は、書類でも面接でも最も強い材料になりますので、思い出せるうちにメモに残します。
- 転職したい理由を、不満も含めて正直に書くここが自己分析にあたります。給与や待遇、働く時間、人間関係、仕事内容への物足りなさ。きれいごとに整える前の、本音のままで構いません。この段階でネガティブを避けると、後で「なぜ転職するのですか」に答えられなくなります。1週間ほどかけて、思いついたときに書き足していくやり方が向いています。
- 譲れない条件と、譲ってもいい条件を分ける3で書いた不満の裏返しが希望条件です。年収、勤務地、リモートの可否、残業、仕事内容を並べ、上から順位を付けます。順位を付けておかないと、求人票を見るたびに基準が動きます。
- 市場価値を調べる自分の経歴・スキル・経験年数で、今の市場ではどのくらいの年収やポジションが期待できるのかを、応募前に把握しておきます。求人サイトで自分と近い経歴の募集要項を10件ほど眺め、提示年収のレンジをメモするだけでも目安になります。内定後に相場を知らないまま返事をする事態を避けるための作業です。
- 職務経歴書を下書きまで作るゼロから書式を考える必要はありません。主要な転職サービスが無料のテンプレートや自動作成ツールを公式に配布しています。dodaは133職種のサンプル付きテンプレートと自動作成ツール「レジュメビルダー」を、マイナビ転職は職種別サンプル付きのフォーマットを、リクナビNEXTはプロフィールと職歴を入力するとPDFで書類が作れるツールを提供しています。1と2のメモがあれば、埋めるだけで形になります。
- 公開できる範囲でプロフィールを整える下書きした内容を、転職サービスのプロフィール欄にも反映しておきます。求人が増えている局面ではスカウトが届きやすく、自分から探さなくても選択肢が入ってくる状態になります。応募はせず、届いた求人を眺めるだけでも相場感が育ちます。
- 職務経歴の一覧(整形前でよい)
- 数字の付いた実績が3つ以上
- 転職したい理由のメモ(本音のまま)
- 譲れない条件トップ3
- 近い経歴の求人10件の年収レンジ
- 職務経歴書の下書き1枚
なぜ「応募してから準備」ではだめなのか?
順番を逆にすると、締切に追われながら一番大事な作業をすることになります。応募先が決まってから職務経歴書を書くと、その企業に寄せた書き方になるのは良いのですが、土台になる実績の棚卸しを同時にやる羽目になります。締切が近い状態で思い出せる実績は、直近1〜2年分に偏りがちです。
自己分析も同じで、転職ガイド各種が「焦らず一週間程度かけて」と勧めているのは、本音が出てくるまでに時間がかかるからです。書き出した当日には「年収が不満」としか出てこなかったものが、数日後に「評価の基準が見えないことが不満だった」と言い直せることがあります。後者のほうが、面接でも求人選びでもずっと役に立ちます。
今の職場で心身が削られていて、離れること自体が目的になっている場合は、この順番にこだわらないでください。準備を整えてから、は健康が保たれている前提の話です。休職や退職を先に検討したほうがよい状況もあります。
また、応募締切が明示された求人や、知人から直接誘われているポジションのように、期限がはっきりしている話は例外です。その場合は6の職務経歴書を最優先で片付け、残りは並行で進めます。
準備だけして転職しなかったら無駄になる?
7つの準備は、今の会社に残る場合にもそのまま使えます。数値化した実績のメモは、そのまま評価面談や目標設定の材料になります。上期の実績を数字で説明できる人は、社内でも交渉しやすくなります。
譲れない条件の順位付けも同じです。何が不満で何は許容できるかがはっきりすると、今の職場で変えられる部分(担当業務の調整、異動の希望、働き方の相談)が見えてきます。転職以外の打ち手が思いつくのは、たいてい条件を言語化したあとです。
そして市場価値を一度調べておくと、次に求人増加のニュースを見たときに、以前ほど揺さぶられなくなります。自分の相場を知らないから、外の数字がすべて自分事に見えてしまうわけです。
1月・4月入社を狙うなら、いつ動き始めればいい?
入社時期から逆算しておくと、焦りの代わりに予定が入ります。一般的な転職活動では、書類選考から内定まで1〜2か月、内定から退職・引き継ぎに1〜2か月をみておくと無理がありません。
| 希望入社時期 | 応募を始める目安 |
|---|---|
| 1月入社 | 9〜10月に応募開始(年内に内定、年末年始で引き継ぎ) |
| 4月入社 | 12〜1月に応募開始(年度末の区切りに合わせやすい) |
上の表からわかるのは、今この瞬間に準備を始めても、1月入社なら十分間に合うということです。9月中に7つの準備を終えれば、9〜10月という応募開始の目安にそのまま乗れます。「今すぐ応募」ではなく「9月は準備の月」と決めてしまったほうが、結果として動きは速くなります。
- スマホのメモに、数字の付く実績を3つ書く(例:「担当エリアの売上を前年比◯%」「新人2名の教育担当」)
これだけで、スカウトへの返信も職務経歴書の下書きも、次の週末に一気に進みます。求人が増えている局面でやるべきなのは、急ぐことではなく、いつでも出せる材料を持っておくことです。
よくある質問
有効求人倍率が1倍を超えていれば、転職しやすいということですか?
全体の有効求人倍率は令和8年4月時点で1.18倍ですが、正社員に限った有効求人倍率は0.99倍で、求職者1人に対して1件を下回っています。また同月の就業地別では福井県1.73倍、大阪府0.95倍と地域差も大きく、全国平均の数字がそのまま自分の状況を表すわけではありません。狙う雇用形態と地域で見ることが大切です。
求人が増えている分野はどこですか?
転職サービスdodaが2026年1月8日に発表した「転職市場予測2026上半期」では、15分野のうち9分野で求人数の増加が予測されました。営業、人事、経理、法務、企画・マーケティング、化学・素材、販売・サービス、金融、事務・アシスタントの9分野です。IT・通信、電気・機械、不動産・建設、メディカルの4分野は好調維持と予測されています。
職務経歴書はゼロから書く必要がありますか?
必要ありません。主要な転職サービスが無料のテンプレートやツールを公式に提供しています。dodaは133職種のサンプル付きテンプレートと自動作成ツール「レジュメビルダー」、マイナビ転職は職種別サンプル付きのフォーマット、リクナビNEXTはプロフィールと職歴を入力するとPDFで書類を作成できるツールを配布しています。
転職の準備を始めると、今の会社に知られてしまいませんか?
キャリアの棚卸し、自己分析、職務経歴書の下書き、求人票を見て年収相場を調べることは、いずれも自分の手元で完結する作業で、応募しない限り企業側に情報は渡りません。転職サービスのプロフィールを公開する場合は、多くのサービスに特定企業へ自分の情報を見せない設定(ブロック機能)があるので、登録時に現職の会社名を指定しておくと安心です。
※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。