備蓄チェックは30分、水と食料の期限見直し術
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家庭備蓄の目安は、飲料水が1人1日3リットルで3日分、食料も3日分とされています(首相官邸「災害が起きる前にできること」)。大規模災害では1週間分が望ましいとされています。押し入れから全部出して期限順に並べ、古いものを普段の食事に回して同じだけ買い足す——この「ローリングストック」で、期限切れの箱を捨てる習慣は終わります。
買った安心感でそのまま、というのはよくあることです。非常食は5年保存のものが多く、買った当時は「まだ先」だった期限が、気づけば静かに過ぎている。そして次に箱を開けるのは、たいてい必要になった日です。
正直なところ、備蓄の点検は「やろう」と思って先送りされがちです。何をどこまで見ればいいのか決まっていないから、始めるのが重い。そこで、押し入れの中身を全部出して並べるところから、30分で終わる形に区切ってみます。
9月1日は防災の日で、8月30日から9月5日までが防災週間です。1年に一度、この時期を点検日と決めてしまえば、次からは「去年やった続き」になります。
防災の日と防災週間は、そもそも何の日?
防災の日は、1923年9月1日の関東大震災を教訓に、1960年6月17日の閣議了解で制定された日です。9月1日を含む8月30日〜9月5日は「防災週間」とされ、全国で防災訓練や啓発行事が行われます。
この時期が選ばれた理由はもう一つあります。8月31日〜9月1日頃は、暦のうえで台風の襲来が多いとされる「二百十日」にあたり、備えを怠るなという戒めが重ねられています。地震だけの日ではない、というわけです。
点検日としては悪くない位置づけです。夏物の片付けや衣替えの前後で押し入れを開ける機会もあり、ついでに済ませられます。
備蓄はどれくらい必要?水と食料の目安
首相官邸の「災害が起きる前にできること」では、飲料水は1人1日3リットルを目安に3日分、食料も3日分(アルファ米・缶詰・干物・乾パンなど)を備えるよう案内されています。大規模災害の場合は1週間分の備蓄が望ましいとされています。
この「3リットル」は飲み水と調理用の合計です。トイレを流したり手を洗ったりする生活用水は、これとは別に必要になります。ここを一緒に数えていると、いざというとき足りません。
| 家族の人数 | 飲料水 3日分 | 飲料水 1週間分 |
|---|---|---|
| 1人 | 9リットル | 21リットル |
| 2人 | 18リットル | 42リットル |
| 3人 | 27リットル | 63リットル |
| 4人 | 36リットル | 84リットル |
首相官邸「災害が起きる前にできること」の公表データ(1人1日3リットル)をもとに作成
2リットルのペットボトルは6本入りで12リットル。上の表に当てはめると、4人家族の3日分は36リットルなので3箱、1週間分なら7箱という計算になります。箱数に置き換えると、押し入れのどこに何箱あるかを数えるだけで足りているか判断できます。
費用の見当もつけておきます。2リットル×6本の箱は、店頭やネット通販でおおむね600〜1,000円前後が目安です。4人家族の3日分(3箱)ならおよそ2,000〜3,000円、1週間分(7箱)でもおよそ4,000〜7,000円の範囲に収まります。食料はレトルトごはんや缶詰が1食あたり100〜250円ほどなので、4人家族の3日分=36食なら、おおよそ4,000〜9,000円が目安です。すでに何箱かあるなら、不足分だけの負担で足ります。
すべてを1か所にまとめる必要はありません。押し入れに3箱、キッチンの床下収納に2箱、玄関のシューズボックス下に1箱、というように分散させたほうが、家具の転倒で取り出せなくなるリスクも減ります。日常的に飲む分をキッチン側に置けば、後で説明するローリングストックとも相性がいいはずです。
30分でできる備蓄チェックの手順
点検は「全部出す」から始めます。中身を思い出そうとせず、床に並べてしまうのが一番早い方法です。
- 5分:全部出して床に並べる備蓄している場所からすべて取り出し、水・主食・おかず・その他に分けて床に置きます。しまったまま数えようとすると、必ず見落としが出ます。
- 10分:期限を見て3つの山に分ける「今年中に切れる」「来年切れる」「まだ先」の3つに分けます。年ごとにざっくり分ければ十分で、日付まで揃える必要はありません。
- 5分:人数×日数で足りない分を出す水は1人1日3リットル×3日分(できれば1週間分)で再計算します。食料も同じ日数分あるか、家族の人数で数え直します。
- 5分:水以外の残量を確認する非常用トイレの枚数、生活用水の備え、モバイルバッテリーの充電、乾電池の使用期限を見ます。電池は本体に使用推奨期限が印字されています。
- 5分:買い足しリストを書いて戻す足りない分をメモに書き、「今年中に切れる」山だけキッチンへ移してから、残りを収納に戻します。
ポイントは最後の一手です。期限が近いものを押し入れに戻さず、普段使う場所へ出しておく。これだけで、次の1か月で自然に消費されます。
買い足す量の見当も、食数で持っておくと迷いません。1人1日3食で3日分、4人家族なら36食。これを主食(レトルトごはん・乾麺)とおかず(缶詰・レトルトカレー)の組み合わせで埋めていきます。食数で数えておけば、店頭で値段を見ながら「あと何食分」と調整できます。ゼロから一式そろえると出費はまとまりますが、次に説明する回し方に切り替えれば、支出は普段の食費に溶けていきます。
- 非常用トイレ(携帯トイレ)の枚数——断水すると水洗が使えません
- トイレや手洗い用の生活用水(飲料水とは別に確保)
- モバイルバッテリーの充電残量
- 懐中電灯・ラジオ用の乾電池の使用期限
- 常備薬・処方薬の残り
- 乳児のミルクやおむつ、ペットのフードのサイズ・量が今も合っているか
子どもがいる家庭では、備蓄品のサイズが合わなくなっている問題が起きます。おむつのサイズ、離乳食の段階、子ども用の靴。数年前に入れたまま点検していないと、量はあるのに使えない状態になりがちです。
ローリングストックとは?期限切れを出さない回し方
ローリングストックは、普段から食品を少し多めに買い置きし、賞味期限の古いものから消費して、消費した分を買い足す方法です。農林水産省が家庭備蓄ポータルで推進しています。
非常食を「非常のための特別な箱」にしておくと、開ける機会は期限切れの日しか来ません。そうではなく、普段食べるものの在庫を少し厚くして、その厚みを備蓄と呼ぶのがこの考え方です。特別なものを買い足すのではなく、いつものレトルトカレーを2箱多く持つ。それで成立します。
この回し方なら、追加でかかるのは「在庫を厚くした分」だけです。月に1回、缶詰やレトルトを数点入れ替えるペースなら、増えるのはその数点分——数百円程度の買い物にとどまります。食べたものを買い直しているだけなので、実質的な持ち出しは在庫を厚くした最初の一度分です。
今日から回し始める3つの動作
- 買った日に、古いものを手前へ新しく買ったものは奥へ入れ、前からあるものを手前に出します。スーパーの陳列と同じ並べ方です。
- 月に1回、手前のものを食事に使う「毎月1日は備蓄の日」のように日を決めると、思い出す手間がなくなります。缶詰やレトルトなら、いつもの献立に足すだけで消費できます。
- 食べたらその日の買い物リストに書くここを飛ばすと在庫が減っていくだけになります。食べた瞬間にリストへ書くのが、続けるうえで一番大事な部分です。
農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド」には、備蓄に向く食品の選び方やローリングストックの実践方法、災害時に役立つ簡単なレシピがまとめられています。何を買い足せばいいか迷ったときの参考になります。
ローリングストックに向く食品・向かない食品
| 分類 | 食品の例 |
|---|---|
| 向いている食品 | レトルトごはん、缶詰、レトルトカレー、乾麺、インスタント味噌汁、飲料水、栄養補助食品 |
| やや不向きな食品 | 家族が普段まったく食べない味の非常食(乾パン、好みに合わないアルファ米など)、誰も好まない缶詰、消費期限が数日しかない生鮮食品や冷蔵の惣菜 |
上の表で「やや不向き」に挙げたものは、保存できないから外れているのではありません。乾パンもアルファ米も長期保存はできますが、家族が普段食べないため消費が進まず、結局そのまま期限を迎えます。逆に、生鮮食品や冷蔵の惣菜は普段よく食べても、数日で悪くなるため買い置きの厚みにはできません。
つまり選ぶ基準は保存性より「普段食べるかどうか」です。5年保存でも家族が食べないものは回りません。逆に賞味期限1年のレトルトでも、月に1回食べて買い足すなら常に新しい在庫が保たれます。
連絡手段は備蓄と一緒に確認しておく
備蓄を点検するときに、あわせて確認しておきたいのが連絡手段です。首相官邸は、携帯電話の回線が不通になった場合の連絡手段として、災害用伝言ダイヤル「171」と災害用伝言板を事前に確認しておくよう案内しています。
171は、災害時に自分の音声メッセージを録音し、家族がそれを再生できる仕組みです。使い方を知らないまま当日を迎えると、混乱の中で操作を覚えることになります。家族で一度、番号と手順を口に出して確認しておくだけでも違います。
あわせて、家族が別々の場所にいるときの集合場所と安否確認の方法を話し合っておくことも推奨されています。備蓄品を床に並べた状態は、家族が同じ場所に集まっている数少ない機会でもあります。そのタイミングで決めてしまうのが効率的です。
ローリングストックは、日常的に自炊や買い置きをする家庭で回りやすい方法です。外食が中心で家に食品の在庫をほとんど持たない場合、月1回の消費のリズムが作りにくく、結局期限切れになることがあります。その場合は、長期保存型の非常食をまとめて買い、スマートフォンのカレンダーに期限の3か月前で通知を設定しておくほうが確実です。
また、備蓄を1週間分に増やすと保管場所と初期費用の負担が出ます。水だけでも1週間分は4人家族で7箱、押し入れの一段が埋まる量です。まず3日分を確実に揃え、余裕が出たら水だけ1週間分に増やす——という順番でも十分に前進です。
備蓄の点検でいちばん大変なのは、内容ではなく着手です。押し入れから箱を出して床に並べた時点で、半分は終わっています。あとは期限を見て、古いものをキッチンへ移すだけです。
今年の防災週間にひととおり並べておけば、来年は「去年と比べて何が減ったか」を見るだけになります。1回目だけ30分、2回目からは10分。そういう作業に変わっていきます。
よくある質問
防災の備蓄は何日分が必要ですか?
首相官邸の案内では、飲料水は1人1日3リットルを目安に3日分、食料も3日分が家庭備蓄の目安とされています。大規模災害の場合は1週間分の備蓄が望ましいとされています。4人家族なら飲料水は3日分で36リットル、1週間分で84リットルの計算になります。
防災備蓄はどれくらいの量を買えばいいですか?
飲料水は1人1日3リットル×日数で計算し、2リットル×6本(12リットル)の箱数に置き換えると分かりやすくなります。4人家族の3日分なら36リットルで3箱、1週間分なら84リットルで7箱です。食料は1人1日3食で数え、4人家族の3日分なら36食を主食とおかずの組み合わせで揃えます。
ローリングストックとは何ですか?
普段から食品を少し多めに買い置きし、賞味期限の古いものから消費して、消費した分を買い足していく備蓄方法です。農林水産省が家庭備蓄ポータルで推進しており、非常食を特別に保管するのではなく日常の在庫を厚くすることで、期限切れによる廃棄を防げます。
飲料水のほかに水は必要ですか?
必要です。首相官邸の案内では、1人1日3リットルの飲料水とは別に、トイレなどに使う生活用水を確保するよう示されています。断水すると水洗トイレが使えなくなるため、非常用トイレ(携帯トイレ)の備えもあわせて確認しておくと安心です。
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