OJTの教え方、新人が実際に動けるようになる4手順
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OJTは「やってみせる(Show)→説明する(Tell)→やらせてみる(Do)→振り返る(Check)」の4段階で進めると、教えたことが相手の動きとして残りやすくなります。つまずきの多くは手順の抜けで起き、特に「説明だけで実演しない」「やらせたあと何も言わずに終わる」の2つが典型です。教える前に業務を小さく分け、「どこまでできれば一人前か」を本人と言葉で揃えておくことが出発点になります。
仕事ができることと、仕事を教えられることは別の技能です。自分の手は動くのに、同じことを人にやってもらおうとすると急に言葉が出てこない。この感覚は、指導を初めて任された人がほぼ全員ぶつかるところです。
厚生労働省の能力開発基本調査では、正社員に計画的なOJTを実施している事業所はおよそ6割とされています。裏を返せば、残りは現場の人が自分の感覚で教えている状態ということです。教え方が自己流になるのは個人の責任ではなく、手順が共有されていないことから起きます。
幸い、人に作業を習得してもらう手順には昔から知られた型があります。ここでは、その型を自分の現場で使える形に落として、明日からの1回に当てはめられるようにします。
OJTの教え方の基本手順とは?
人材育成の分野で広く使われているのが「4段階職業指導法」です。Show(やってみせる)→ Tell(説明する)→ Do(やらせてみる)→ Check(評価して次につなげる)の4つを、この順番で踏みます。第一次世界大戦期の米国の造船所で、短期間に大勢の人を現場に立たせる必要から生まれたとされる手法で、以来さまざまな業種で紹介され続けています。
この4つは、どれかを抜いても成立しません。順番にも意味があります。先に説明から入ると、相手は何の話をされているのか絵が描けないまま言葉だけを受け取ることになる。まず動きを見せて、そのあとで「今やったのはこういう意図です」と意味を乗せる。この順序だから頭に残ります。
- Show(やってみせる)自分が実際にその作業を最初から最後までやって見せます。解説は最小限にして、まず全体の流れを目で追ってもらうのが目的です。
- Tell(説明する)見せた動きに言葉を足します。なぜその順番なのか、どこで判断が分かれるのか、見ているだけでは伝わらない意図を補います。
- Do(やらせてみる)本人に手を動かしてもらいます。最初は横について、手元を見ながら進めてもらいます。
- Check(振り返る)できた点とこれからの点を伝え、本人にも過程を振り返ってもらいます。そのうえで次に何を教えるかを決めます。
各ステップでよくある失敗は?
手順が抜けている箇所は、だいたい決まっています。自分の直近の指導を思い出しながら読むと当てはまる箇所が見つかるはずです。
Show が抜ける: 口頭だけで済ませてしまう
「この申請はA課長に回してから経理ね」と言葉で伝えて終わる形です。説明した側は伝えた気になりますが、相手の頭には画面も書類も浮かんでいません。自分の作業が一人では見せにくいものでも、画面を共有しながら一度通す、過去に自分が作った成果物を開いて見せる、といった形で「現物」を見せる時間を作ります。
Tell が抜ける: 見せるだけで意図を言わない
背中を見て覚えろ、に近い状態です。動きは真似できても、例外が起きた瞬間に止まります。「なぜこの順番なのか」を一言足すだけで、相手は応用が利くようになります。
Do が抜ける: 急がしくて結局自分でやってしまう
目の前の締切を考えると自分でやったほうが速い。これは事実なので否定しません。ただ、Doを飛ばした分は必ずあとで自分の工数として戻ってきます。全部を任せられない日は、工程を区切って「今日はこの入力までを本人、その先は自分」と分けると現実的です。
Check が抜ける: やらせっぱなしで終わる
いちばん多い抜けがここです。本人は、自分のやり方が合っていたのか間違っていたのかわからないまま次の仕事へ進みます。良かった点を具体的に言われていないと、何を再現すればいいのかもわかりません。
1回の指導で定着する作業はそう多くありません。手順を守ったのに相手ができるようにならないとき、原因は教え方ではなく「一度に渡した範囲が広すぎた」ことが多いです。この場合は手順を変えるのではなく、次の見出しの分け方を見直してください。
教える前に何を準備すればいい?
指導の質は、実際に教え始める前にかなりの部分が決まります。準備は大きく2つです。
業務を小さく分けて、順番を決める
一度に教える範囲を小さく区切り、1つ習得を確認してから次へ進むやり方は、OJTの効率を上げるコツとして人材育成の実務でよく挙げられます。たとえば「請求書の処理を教える」ではなく、「①受領して内容を確認する ②システムに入力する ③承認に回す ④控えを保管する」のように分け、今日は①と②まで、と決めておきます。
分けるときの目安は、Show から Check までを1回の時間内で終えられる大きさかどうかです。やって見せるだけで30分かかるなら、その単位はまだ大きすぎます。
「どこまでできれば一人前か」を言葉にして共有する
指導する側とされる側で、ゴールの認識が食い違ったまま進むのは、OJTの典型的なつまずきとして挙げられる点です。教える側は「確認なしで最後まで回せる状態」を考えているのに、本人は「手順どおりに触れた」で達成したつもりになっている。これが評価の時期にすれ違いとして表に出ます。
防ぐには、最初に基準を口に出すだけで足ります。
- 「この業務は、月末の30件を一人で、私に聞かずに処理できたら任せた状態にします」
- 「判断に迷う例外だけは、できるようになっても相談してください。そこは私の仕事です」
- 「今日できなくて当たり前の範囲なので、できない前提で何回か繰り返します」
フィードバックはどう伝えればいい?
効果を上げているOJT担当者の行動として人材育成の実務で挙げられるのは、進捗を定期的に見ていること、良かった点を具体的に返していること、そして本人自身に結果を振り返らせていることです。この3つめが、意外と抜けます。
人は、経験したことを自分の言葉にした時点で持ち帰れるものになります。こちらが評価を言い渡して終わると、相手の中には「怒られなかった」しか残りません。
- 「今日のうち、自分でうまくいったと思うのはどこでしたか」
- 「止まったところ、何がわからなくて止まりましたか」
- 「次に同じ作業をやるなら、どこを変えますか」
- 「私の説明で、わかりにくかったところはどこですか」
最後の問いは、聞きづらいぶん効きます。相手の理解度ではなく自分の説明を点検する質問なので、答える側の心理的な負担が軽く、かつ次の指導がそのまま改善されます。
良い点と改善点はセットで、具体的に
「よくできてたよ」だけでは、何を再現すればいいのか伝わりません。褒めるときほど、動作のレベルまで具体的に言葉にします。「期日の3日前に下書きを出してきたのが良かった。あれだと直す時間が取れる」といった形です。改善点も同様で、「もう少し丁寧に」ではなく「宛名の役職は送信前に名刺で照合してください」と動作で渡します。
指導を自分の仕組みにするには?
1回の指導で使えるチェックリスト
ここまでの内容を、実際の1サイクルに沿って並べたものです。公式の様式ではなく、4段階職業指導法と実務でよく挙げられるつまずきをもとに整理した確認項目として使ってください。指導の直後、席に戻ったタイミングで上から目を通すのが運用しやすい形です。
- 業務を小さく分解し、今日どこまで教えるか順序を決めてから始めたか
- 「どこまでできれば一人前か」の基準を本人と言葉で共有したか
- やってみせる・説明する・やらせてみる・振り返るの4つを全部踏んだか
- 最初のDoは、同行して手元を見ながらやらせたか
- 結果だけでなく、過程を本人に振り返らせる問いかけをしたか
- 良かった点と改善点を、動作のレベルまで具体的に伝えたか
- 次回どこから教えるかを決めて、本人にも伝えたか
7つ全部を毎回満たす必要はありません。この一覧の使いどころは、うまくいかなかったときに原因を自分の感覚ではなく項目で特定できることにあります。「相手の飲み込みが悪い」で終わらせず、「Checkを飛ばしていた」まで下ろせれば、次の1回は確実に変わります。
教える側の負担はどう減らす?
OJT担当は、育成計画の管理から実務指導、フィードバック、関係づくりまで役割が広く整理されがちですが、これを一人の善意で抱えると続きません。教育を個人の頑張りではなく仕組みで回す発想が有効とされるのは、まさにこの理由からです。
自分の手元でできることとして、教えた内容をその都度メモに残し、次の人にも使える手順書へ育てていく方法があります。1回目の指導が最も時間がかかり、2人目からは同じ説明を繰り返さずに済みます。教えながら作る手順書は、自分の業務の棚卸しにもなります。
上司や周囲に相談してよい範囲も、早めに確認しておくと楽になります。評価に関わる部分、勤怠や体調の相談など、現場の指導担当が一人で判断しない方がよい領域は必ずあります。線引きを先に握っておくと、迷う時間が減ります。
この教え方は異動してきた人にも使える?
使えます。むしろ中途入社や異動で来た人のほうが、4段階を丁寧に踏む価値があります。社会人としての基礎がある分、説明を省きたくなりますが、省いてよいのは一般的なビジネスの作法であって、その部署特有のやり方ではありません。
新人には不要な説明を長々と足すと見下した印象になり、経験者に前提を省きすぎると置いていくことになります。相手がすでに持っている前提は説明せず、まだ持っていない前提だけを渡す。これが、相手を選ばず効く基準です。
迷ったら、最初に本人へ聞いてしまうのが早道です。「前の部署で似た業務はありましたか」「どこから説明があると助かりますか」。この一言で、渡す範囲がかなり絞れます。
よくある質問
OJTの4段階職業指導法とは何ですか?
Show(やってみせる)、Tell(説明する)、Do(やらせてみる)、Check(評価して追加指導する)の4段階で指導を進める手法です。第一次世界大戦期の米国の造船所で、短期間に多くの人員を育成する必要から生まれたとされ、現在も人材育成の基本形として広く紹介されています。
計画的なOJTを実施している企業はどのくらいありますか?
厚生労働省の能力開発基本調査によると、正社員に対して計画的なOJTを実施している事業所はおよそ6割で推移しています。残りは明確な計画を置かずに現場で指導している状態と言えます。
OJTで新人がなかなか覚えてくれないときはどうすればよいですか?
一度に教えている範囲が広すぎる可能性があります。業務を小さく区切り、1つ習得を確認してから次へ進む形にすると定着しやすくなります。やってみせる・説明する・やらせてみる・振り返るの4段階のうち、どれかが抜けていないかも確認してください。
OJTのフィードバックは何を伝えればよいですか?
良かった点と改善点をセットで、動作のレベルまで具体的に伝えます。「よくできた」ではなく「期日の3日前に下書きを出したのが良かった」のように行動を名指しすると、相手は何を再現すればよいかがわかります。あわせて本人自身にも過程を振り返らせると定着が進みます。
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