年末調整の申告書、178万円の壁で変わる書き方
画像出典: ぱくたそ (撮影: すしぱく)
令和8年分の年末調整では、基礎控除申告書が「基礎控除・配偶者控除等・特定親族特別控除・所得金額調整控除」の4つを兼ねた1枚の様式になり、扶養親族の所得要件も62万円以下(給与収入のみなら136万円以下)へ変わりました。記入の順番は、①自分の合計所得金額の見積額を出す→②配偶者と19〜22歳の子の年収見込みを確認する→③該当する欄だけ記入する、の3段階です。所得税の「壁」と社会保険の130万円の壁は別制度なので、家族の働き方を決める前に人事へ確認する項目を分けておくと手戻りがありません。
毎年なんとなく書いていた書類が、今年から様式ごと変わっています。令和8年分の申告書は、基礎控除・配偶者控除等・特定親族特別控除・所得金額調整控除の4つが1枚にまとまった兼用様式です。欄が増えたぶん、自分に関係のある欄だけを見分けられれば作業自体はすぐ終わります。
正直なところ、制度の細かい理屈まで覚える必要はありません。必要なのは「自分の見積額」「配偶者の年収見込み」「19〜22歳の子の年収見込み」の3つの数字を先に用意することと、迷ったときに人事へどう聞くかです。ここでは、その順番に沿って進めます。
令和8年分の年末調整で、何が変わった?
変わったのは主に2点です。ひとつは基礎控除の金額、もうひとつは扶養に入れられる家族の収入ラインです。所得税がかかり始める給与収入のライン(いわゆる年収の壁)は、令和6年分までの103万円、令和7年分の160万円を経て、令和8年分からは178万円になります。基礎控除の引き上げと、給与所得控除(給与収入から自動的に差し引かれる、会社員版の経費にあたる控除)の最低保障額の引き上げを組み合わせた結果です。
ここでいう合計所得金額とは、給与収入から給与所得控除を引いたあとの金額のこと(副業などがあればそれも合算します)。申告書に書くのは「収入」ではなく、この「所得」である点が最初のつまずきどころです。
基礎控除の額は、この合計所得金額の見積額に応じて決まります。申告書には控除額計算表が印刷されているので、見積額を当てはめて「基礎控除の額」欄へ記入する流れです。自分で計算式を組み立てる必要はなく、見積額さえ出せば表が答えを教えてくれます。
記入はどの順番で進める?
申告書は上から順ではなく、数字を用意してから該当欄だけ埋めるほうが早く終わります。手元に用意するのは給与明細か前年の源泉徴収票、そして家族の年収見込みのメモです。
- 自分の合計所得金額の見積額を出す1〜12月の給与収入の見込みを合計し、副業やその他の収入があれば合算します。給与だけなら、申告書の裏面(または計算表)にある換算表で所得に直します。
- 基礎控除の額を判定する見積額を控除額計算表に当てはめ、「基礎控除の額」欄へ記入します。ここまでは全員が通る欄です。
- 配偶者がいれば年収見込みを確認する本人の合計所得金額900万円以下、かつ配偶者の合計所得金額95万円(給与収入のみなら160万円)以下なら、A欄の「源泉控除対象配偶者」へ記入します。
- 19〜22歳の子がいれば年収見込みを確認するアルバイト収入が一定額を超えると、新しく設けられた「特定親族特別控除」の欄の出番になります。
- 該当しない欄は空欄のまま提出する4つの申告が1枚になっているだけで、全員が全部書く様式ではありません。
所得金額調整控除の欄は、収入が850万円を超えていて、かつ扶養している子などがいる人に関係する部分です。当てはまらなければ触らずに進めて問題ありません。
扶養に入れられる家族の収入ラインは?
家族の欄で迷いやすいのは、区分ごとにラインが違うことです。「扶養」とひとくくりに覚えていると、配偶者と子で違う数字が出てきて混乱します。区分ごとの所得要件は次のとおりです。
| 扶養親族等の区分 | 改正後の所得要件 | 改正前の所得要件 |
|---|---|---|
| 扶養親族/同一生計配偶者/ひとり親の生計を一にする子 | 62万円以下(136万円以下) | 58万円以下(123万円以下) |
| 特定親族 | 62万円超123万円以下(136万円超197万円以下) | 58万円超123万円以下(123万円超188万円以下) |
| 配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 62万円超133万円以下(136万円超207万円以下) | 58万円超133万円以下(123万円超201万5,999円以下) |
| 勤労学生 | 89万円以下(163万円以下) | 85万円以下(150万円以下) |
国税庁の公表データをもとに作成(括弧内は給与収入のみの場合の目安)
括弧のない数字が所得、括弧内が給与収入の目安です。家族に年収を聞くときは「所得はいくら?」ではなく「今年の給与収入の見込みはいくら?」と聞くほうが話が早いのは、この括弧内の数字と照らせるからです。配偶者控除・扶養控除の対象となる年収上限は、いずれも103万円から123万円へ引き上げられています。
19〜22歳の子がアルバイトをしている場合
大学生年代の子については、これまでの103万円のラインが123万円まで広がりました。さらに、年収123万円超〜150万円の範囲では新設の「特定親族特別控除」が適用され、控除額は63万円です。年収150万円超〜188万円では控除額が段階的に減っていく仕組みになっており、収入が増えた瞬間に親の税負担が急に重くなることを避ける設計です。
子の年収見込みを聞いたら、申告書の控除額の表でその年収が入る範囲を探すだけで、書く金額が決まります。
人事にはいつ、どの言葉で聞けばいい?
提出締切の直前は、人事の担当者に問い合わせが集中します。聞くなら書類が配られた直後、締切の1週間以上前が最も答えが早く返ってきます。そのとき、制度の説明を求めるのではなく「自分のこのケースで、この欄を書くのか」という形にすると1往復で終わります。
- 「令和8年分の基礎控除申告書について、1点だけ確認させてください。配偶者の給与収入が今年◯◯万円の見込みなのですが、源泉控除対象配偶者の欄に記入する対象になりますでしょうか」
- 「大学生の子のアルバイト収入が年間◯◯万円の見込みです。特定親族特別控除の欄への記入が必要か、ご確認いただけますでしょうか」
- 「年内の給与の見込額を確認したいのですが、賞与を含めた支給見込みがわかる資料はいただけますでしょうか」
- 「提出後に家族の収入見込みが変わった場合、いつまでなら修正をお願いできますでしょうか」
3つ目の「年内の見込額」は、自分で計算するより人事や給与担当に聞いたほうが確実な項目です。賞与の支給見込みが読めないと見積額がぶれるためで、聞くこと自体は珍しい問い合わせではありません。
4つ目の修正期限も、先に聞いておくと安心できます。年末調整は会社の給与計算スケジュールに組み込まれているため、締切後いつまで差し替えが効くかは会社によって違います。
提出前のチェックリスト
書き終えたら、封をする前に次の項目を上から順に確認してください。どれも、あとから修正が発生しやすいところです。
- 合計所得金額の見積額に、副業やその他の収入を合算したか
- 賞与の支給見込みを見積額に含めたか
- 基礎控除の額を、控除額計算表に当てはめて判定したか(去年の金額を書き写していないか)
- 配偶者の年収は「見込み」で確認したか(昨年の実績で書いていないか)
- 19〜22歳の子のアルバイト収入を本人に確認したか
- 自分に該当しない欄を、無理に埋めていないか
- 氏名・マイナンバー・押印など、会社指定の記入箇所が埋まっているか
ここで扱っているのは所得税の話で、社会保険の被扶養者かどうかを決める「130万円の壁(106万円の壁)」は別の制度です。申告書で扶養の欄に書けたからといって、社会保険上も扶養に入り続けられるとは限りません。家族の働き方そのものを見直すなら、健康保険の扶養認定基準を別途確認する必要があります。
また、年の途中で転職した人、副業の所得が一定額を超える人、医療費控除や初年度の住宅ローン控除を受ける人は、年末調整だけで完結せず確定申告が必要になる場合があります。該当しそうなら、年末調整の書類を出す段階で人事に伝えておくと、あとの手続きがスムーズです。
今年の様式はどこで確認できる?
令和8年分の扶養控除等申告書、基礎控除申告書等、保険料控除申告書の様式は、国税庁のサイトで公表されています。会社から配られた用紙の欄がつぶれて読めないときや、記入例を見たいときは、国税庁の申告書ページで最新の様式を確認できます。
制度の改正内容そのものを確認したい場合は、「源泉所得税の改正のあらまし」に控除額の表がまとまっています。手元の申告書と見比べながら進めれば、迷う欄はかなり絞り込めるはずです。
様式が変わった年は、例年どおりに書き写すのが一番の落とし穴です。見積額を出し直すところから始めれば、あとは表に当てはめる作業になります。わからない欄をひとつ抱えたまま締切を待つより、配られた週のうちに1行のメッセージで聞いてしまうほうが早く終わります。
よくある質問
令和8年分の年末調整で、基礎控除申告書の様式はどう変わりましたか?
令和8年分は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という1枚の兼用様式になり、4つの申告がまとまっています。全員が全欄を記入する様式ではなく、自分に該当する欄だけを埋めて提出します。
178万円の壁とは何ですか?
所得税がかかり始める給与収入のライン(いわゆる年収の壁)が、令和6年分までの103万円、令和7年分の160万円を経て、令和8年分から178万円に引き上げられることを指します。基礎控除の引き上げと、給与所得控除(給与収入から差し引かれる会社員版の経費にあたる控除)の最低保障額の引き上げを組み合わせて実現されるもので、所得税(国税)の制度です。
配偶者を「源泉控除対象配偶者」の欄に書けるのはどんな場合ですか?
申告者本人の合計所得金額が900万円以下で、かつ配偶者の合計所得金額が95万円(給与収入のみなら160万円)以下の場合に、申告書A欄の「源泉控除対象配偶者」へ配偶者の情報を記入します。どちらか一方でも超える場合はこの欄の対象外です。
大学生の子のアルバイト収入がいくらまでなら、親の控除に影響しませんか?
19〜22歳の特定親族については、年収123万円までが従来の扶養の枠にあたり、123万円超〜150万円では新設の特定親族特別控除により63万円の控除が適用されます。150万円超〜188万円では控除額が段階的に減っていくため、収入が増えても親の税負担が急に重くならない仕組みになっています。
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