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106万円の壁撤廃で手取りはいくら減る?計算手順

2026年9月10日|いろは堂キャリア編集部
電卓とペンで明細書の数字を確認する手元のクローズアップ

画像出典: 写真: Dave Dugdale from Superior, USA(CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons)

この記事の要点
2025年6月に成立した年金制度改正法で、短時間労働者の社会保険加入にかかる賃金要件(月8.8万円・年収106万円)の撤廃が決まりました。撤廃後は「週の所定労働時間20時間以上・雇用期間2ヶ月超見込み・学生でない」の3要件を満たせば月収にかかわらず加入対象となり、本人負担の保険料は給与のおおむね14〜15%が目安になります。施行時期は厚生労働省の発表を確認したうえで、まず自分の雇用契約書の所定労働時間を確認し、勤務先に加入時期と標準報酬月額の見込みを聞くところから始められます。
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106万円の壁がなくなるって聞いたけど、わたしは年収100万円くらい。関係あるの?

賃金の基準がなくなるということは、これまで「106万円を超えないように」と調整していた人ほど、金額とは別の条件で加入対象に入る可能性があるということです。新しい分かれ目は年収ではなく、雇用契約書に書かれた週の所定労働時間になります。

とはいえ、加入するとどれくらい手取りが減るのか、いつから何をすればいいのかが分からないままだと、シフトを増やすか減らすかも決めようがありません。正直なところ、条件しだいで一時的に手取りが下がる年収帯は実際にあります。だからこそ、数字の形を先に知ってから決めればいい話です。

ここでは、制度の変更点、手取りを自分で見積もる手順、そして勤務先に確認しておく6項目を順番に渡します。

106万円の壁の撤廃で何が変わる?

2025年6月13日に年金制度改正法が成立し(同年6月20日公布・一部施行)、短時間労働者の社会保険(厚生年金・健康保険)に適用されていた賃金要件——月額8.8万円以上、年収に換算して約106万円——の撤廃が決まりました。実際にいつから適用されるかの施行時期は、厚生労働省の発表を確認してください。

撤廃後の加入条件は3つに整理されます。週の所定労働時間が20時間以上雇用期間が2ヶ月を超える見込み学生でないこと。この3つを満たせば、月収がいくらであっても社会保険への加入義務が生じます。「106万円の壁」が「週20時間の壁」に置き換わる、と言われるのはこのためです。

現行(2026年9月時点)と撤廃後のちがい
  • 現行: 従業員51人以上の企業で、週20時間以上・月8.8万円以上・2ヶ月超見込み・学生でない、の4要件すべてを満たすと加入
  • 撤廃後: 上記から「月8.8万円以上」が外れ、残る3要件で判定
  • 企業規模要件(従業員51人以上)は即座には撤廃されず、2027年10月以降に段階的な緩和が予定されている

企業規模の要件については、2029年10月に個人事業所を含む常時5人以上の全業種事業所が対象になる見込みとされています。最終的にすべての企業が対象となる時期は、出典により2029年・2035年と記述が異なり、確定した内容として扱えません。厚生労働省は今回の適用拡大で、新たに約200万人が厚生年金の加入対象になると見込んでいます。

130万円の壁はどうなる?

ここは混ざりやすいところなので、先に切り分けておきます。「130万円の壁」は今回の改正で撤廃される壁とは別の制度で、当面存続します。130万円の壁は、配偶者などの扶養(第3号被保険者)から外れ、自分で国民年金・国民健康保険などに加入することになる年収の基準です。今回なくなるのは、勤務先の社会保険に入るかどうかを決めていた月8.8万円という賃金の基準のほうです。

もうひとつ、2026年4月から、19歳以上23歳未満の子を扶養する場合の特定親族特別控除に関連して扶養認定基準が150万円へ引き上げられる変更もあります。こちらは税制側の話で、社会保険の適用拡大とは別枠です。数字が近いので、自分がどの制度の話をしているのかを毎回確かめながら読み進めてください。

加入すると手取りはいくら減る?

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保険料って、給料からどのくらい引かれるものなんだろう

社会保険料の本人負担は、厚生年金保険料と健康保険料の合計です。どちらも会社と本人で半分ずつ負担します(労使折半)。厚生年金の保険料率は18.3%、協会けんぽの健康保険料率は都道府県によって約9.7〜10%前後。合計すると28%前後で、その半分を本人が払うため、本人負担はおおむね給与の14〜15%が目安になります。

実際の保険料は、毎月の給与そのものではなく標準報酬月額(給与を区切りのよい等級に当てはめた金額)をもとに決まります。ここでは目安をつかむために、給与のおよそ15%と置いて計算します。

年収社会保険加入の有無手取り額の目安
105万円未加入(扶養内)約104.5万円
106万円加入(保険料負担発生)約89.2万円
120万円加入約102万円
124.3万円加入(手取り回復ライン)約104.5万円
130万円加入約110万円

マネイロメディアの試算をもとに作成(公的機関が公表した数値ではありません)

上の表は40歳未満・配偶者の扶養内で働くパートなど、特定の条件での試算例です。保険料率や扶養の状況によって金額は動くので、あくまで数字の「形」を見るものとして扱ってください。

その形とは、こういうことです。この試算では、年収105万円で加入していなければ手取りは約104.5万円。ここから年収を1万円だけ増やして106万円になり保険料が発生すると、手取りの目安は約89.2万円まで下がります。年間の保険料負担が約16万円前後発生するため、年収は増えたのに手取りは減るという逆転が起こりうるということです。そして年収124.3万円まで増やすと手取りは約104.5万円に戻り、加入前の水準に追いつく計算になります。

壁の前で立ち止まるか、回復ラインの向こう側まで進むか——判断の材料になるのは、この「一度下がる」「どこで戻る」の2点です。

自分の場合を計算する4ステップ

  1. 契約上の週の所定労働時間を確認する雇用契約書か労働条件通知書を開き、週何時間で契約しているかを見ます。20時間以上なら、賃金要件の撤廃後は加入対象に入ります。
  2. 月の給与額を出す直近の給与明細から、通勤手当などを除いた月額の賃金を確認します。ボーナスがある場合は年収から月あたりに均さず、まずは毎月の額で見ます。
  3. 月額に15%をかけるこれが本人負担の保険料のおおよその額です。月8万円なら約1.2万円、月10万円なら約1.5万円。ここが毎月引かれることになります。
  4. 回復ラインまでの距離を測る手取りを維持したいなら、減る分(月額の約15%)を補うために年収をどれだけ増やす必要があるかを見ます。上の試算では、105万円の水準を保つのに124.3万円まで、約19万円分の上乗せが必要でした。

ステップ3の15%は目安です。正確な保険料は標準報酬月額の等級と、加入する健康保険の都道府県別料率で決まるので、実額は勤務先の給与担当や年金事務所、ねんきんネットで確認してください。会社の給与担当に「加入した場合の給与明細のシミュレーション」を依頼できるかを聞くのが、いちばん早くて確実です。

手取りが減る分、何が増える?

保険料の負担だけを見ると差し引きの話に見えますが、加入によって受けられるものも増えます。ここを知らないまま「損だから週20時間未満に抑える」と決めてしまうと、判断材料が半分になります。

ひとつは厚生年金です。国民年金(基礎年金)だけの場合と比べ、報酬に応じた報酬比例部分が上乗せされるため、将来受け取る年金額が増えます。もうひとつは健康保険の給付。病気やけがで働けない期間の傷病手当金、出産で休む期間の出産手当金が受けられるようになります。これらは国民健康保険にはない給付です。

さらに、企業側が手取りの減少を補う仕組みもあります。厚生労働省の「年収の壁・支援強化パッケージ」では、賃上げなどの要件を満たす企業が社会保険適用促進手当を支給して本人負担分を相殺する形が想定されています。自分の勤務先が使う予定があるかどうかで、実際の手取りの落ち方は変わってきます。

向いていないケースもあります

短期間で働く予定がはっきりしている場合や、配偶者の会社から扶養手当・家族手当が出ていて、その支給条件が扶養内であることに紐づいている場合は、加入によって手取り以外の部分でも減る分が出ます。手当の支給要件は会社ごとに違うので、保険料の計算より先に、配偶者側の就業規則を確認してください。ここを見落とすと、上の表の計算だけでは判断を誤ります。

会社に確認しておく6項目は?

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何を聞けばいいのか分からなくて、そのままになってる

聞く内容を決めておけば、シフトの相談のついでに5分で済みます。下の6つをメモして持っていってください。

勤務先に確認する6項目
  • 自社が現在「特定適用事業所」(従業員51人以上)に該当するか。該当しない場合、賃金要件の撤廃後に自分がいつから加入対象になるか
  • 雇用契約上の週の所定労働時間が20時間以上かどうか
  • 雇用契約期間が2ヶ月を超える見込みかどうか
  • 加入した場合の標準報酬月額の見込みと、本人負担の保険料額。給与明細でのシミュレーションを依頼できるか
  • 「社会保険適用促進手当」など、手取り減少を補う制度・助成金を活用する予定があるか
  • 配偶者側の会社(扶養の認定を行う健康保険組合)への、扶養から外れる手続きのタイミング

2番目の所定労働時間には補足が要ります。基準になるのは雇用契約に書かれた所定労働時間で、突発的な残業で一時的に週20時間を超えただけでは、直ちに加入対象にはなりません。逆に言えば、契約上20時間以上であれば、実際の勤務が少ない月があっても対象です。「実績としては週18時間くらい」と思っていても、契約書の数字が違えば結論が変わるので、記憶ではなく書面で確かめてください。

いつまでに確認しておく?

施行の時期が近づいてから慌てないために、勤務条件の見直しやシフトの組み直しを申し出やすいタイミングで聞いておくと動きやすくなります。年末調整の書類が配られる前に自分の加入状況の見込みを把握しておくと、扶養の欄をどう書くかで迷いません。契約の週20時間を境に働き方を調整したい場合、契約書の変更には会社側の手続き期間も要ります。確認を先に済ませ、調整の相談はその結果を見てから、という順番にすると無理がありません。

調整するにしても、しないにしても、判断の材料は「契約上の週の所定労働時間」「本人負担の保険料の目安」「手取りが回復する年収ライン」の3つです。まずは契約書を開くところからで十分です。

よくある質問

106万円の壁はいつ撤廃されますか?

2025年6月13日に成立した年金制度改正法により、短時間労働者の社会保険適用における賃金要件(月額8.8万円以上・年収換算106万円)の撤廃が決まりました。実際の施行時期については、厚生労働省の発表を確認してください。

106万円の壁が撤廃されると、社会保険の加入条件はどうなりますか?

賃金要件の撤廃後は、「週の所定労働時間が20時間以上」「雇用期間が2ヶ月を超える見込み」「学生でないこと」の3要件を満たせば、月収の水準にかかわらず社会保険への加入義務が生じます。なお、企業規模要件(従業員51人以上)は即座には撤廃されず、2027年10月以降に段階的に緩和される予定です。

社会保険に加入すると手取りはどのくらい減りますか?

本人が負担する厚生年金保険料と健康保険料は合わせて給与のおおむね14〜15%が目安です。40歳未満・配偶者の扶養内で働くモデルケースの試算例では、年収105万円で未加入なら手取り約104.5万円、年収106万円で加入すると手取り約89.2万円となり、年収124.3万円まで増やすと手取りが約104.5万円に回復するとされています。実額は標準報酬月額や都道府県別の健康保険料率で変動するため、勤務先や年金事務所で個別に確認してください。

130万円の壁も一緒になくなるのですか?

なくなりません。130万円の壁は、配偶者などの扶養(第3号被保険者)から外れて自分で国民年金・国民健康保険などに加入することになる年収の基準で、今回撤廃される社会保険の賃金要件とは別の制度です。当面存続します。

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