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ミスの指摘、言い方で萎縮させないための3手順

2026年10月27日|いろは堂キャリア編集部
室内のソファで書類を手に向き合って話す男女2人のスーツ姿の会社員

画像出典: ぱくたそ (© すしぱく)

この記事の要点
ミスを指摘するときは、人格ではなく「今回の特定の行動」に対象を絞り、いつ・何が起きたかを事実として伝えるのが基本です。そのうえでその行動が誰にどう影響したかを共有し、次回どう確認するかを本人の言葉で言語化してもらうと、萎縮させずに再発防止につながります。指摘は他の人がいない場所で行い、感情が高ぶったときは言葉を発する前に一呼吸置きます。
😟
後輩の同じミスが3回目。でも強く言って落ち込ませるのも気まずくて、結局「次から気をつけてね」で終わってしまう……

指摘する側も、けっこう消耗します。言い方を間違えれば相手が萎縮し、やわらげすぎると何も伝わらない。その間を狙おうとして、毎回その場で言葉を探すことになります。

ただ、ここは感覚ではなく順番の問題です。「何を言うか」より「どの順番で言うか」を決めておくほうが、言葉は自然に出てきます。以下では、事実の伝え方・影響の共有・次回の確認までを、そのまま口に出せる言い回しの形で並べます。

ミスの指摘で相手が萎縮するのはなぜ?

萎縮が起きやすいのは、指摘の矢印が「行動」ではなく「人」に向いたときです。「なぜあなたはいつもこうなんだ」と言われると、相手は今回の出来事ではなく自分自身を否定されたと受け取ります。問題にする対象を「今回の〇〇という行動について」と限定すると、人格否定にならず受け止めやすくなるとされています。

もうひとつは、場所です。新人・若手への指摘は、他の人がいない個室や場所で行うのが基本とされます。人前で叱ると、本人の自信喪失や積極性の低下につながりやすいためです。立ち話でその場で済ませたくなる場面こそ、「ちょっと10分いい?」で場所を移すほうが早く終わります。

感情が高ぶっているときは、まだ話さない

怒りの感情のピークは、発生から概ね数秒〜6秒程度で収まるとされています。「今カッとなった」と気づいたら、すぐに言葉を発さず一呼吸置く。これだけで、感情的な叱責やハラスメント化を避けやすくなります。黙るのが難しければ、「あとで確認させて」と一言だけ残して離れる手もあります。

萎縮させない言い方の型は?

ここで使うのは、人材育成の場で知られる2つの型を組み合わせたものです。ひとつはSBI型。Situation(状況)→Behavior(行動)→Impact(影響)の順に伝える手法で、状況・具体的な行動・その影響という順序で話すため内容が理解しやすく、相手の内省を促しやすいとされています。もうひとつがサンドイッチ型で、褒める→改善点→褒めるの順に挟み、受け手のモチベーション低下を抑えることを狙う手法です。

両者は重点が違います。次の整理は、それぞれの型の説明をもとに編集部で並べたものです。

型重点順番
SBI型事実の構造化による理解促進・内省状況→行動→影響
サンドイッチ型受け手の心理的ダメージの軽減褒める→改善点→褒める

カオナビ人事用語集の解説をもとに作成

上の表のとおり、片方だけでは足りません。心理的ダメージの軽減に寄せると事実がぼやけ、構造化だけだと受け止めが重くなります。そこで実務では、骨格をSBI型の事実提示で組み、最後に期待やフォローの言葉を添える併用の形が扱いやすくなります。以下はその併用型を、口に出せる言い回しに落としたものです(型の名称は上記の手法由来、言い回し自体は編集部で作成しています)。

  1. 状況を置く「先週の〇〇の案件なんだけど」と、いつ・どの仕事の話かを先に示します。何の話か分からないまま指摘が始まると、相手は身構えるだけで内容が入りません。
  2. 行動を事実で言う「〇〇の資料、◯日までに提出することになっていたけれど、まだ提出されていない」。「ちゃんとやって」のような曖昧な言い方を避け、何が・いつ・どこで・どのように問題だったかを事実で伝えます。
  3. 影響を伝える「先方の確認が1日ずれて、〇〇さんの作業が後ろに詰まった」。その行動が誰にどんな迷惑・リスクを生んだかまで説明すると、相手は自分の行動の重要性を理解しやすくなります。
  4. 原因を一緒に探す「どこで止まった?」と尋ね、本人と一緒に特定します。詰問にならないよう、主語を人ではなく作業の流れに置くのがコツです。
  5. フォローの言葉で終える「この案件、〇〇さんが一番流れを分かっているから任せてる」。期待や信頼を伝えて終えます(サンドイッチ型の最後の要素です)。

避けたい言い方と、置き換えの文例は?

同じ内容でも、主語と対象のとり方で受け取られ方が変わります。下の対応は、事実ベース・行動限定という原則を文例に当てはめて編集部で整理したものです。

避けたい言い方置き換え
なぜいつもこうなの今回の〇〇の工程について確認したい
ちゃんと確認して提出前に、日付と宛名の2点を声に出して読み上げてほしい
常識でしょうこの作業は◯◯の順でやる決まりになっている
やる気あるの◯日の期限に対して、今どこまで進んでる?
🤔
事実だけ伝えると、冷たく聞こえない?

冷たく感じられるのは、事実を伝えたあとに何も続かないときです。目的は責めることではなく、相手に受け入れてもらい行動を変えてもらうことだとされています。事実のあとに「次どうするか」と「任せている」が続けば、同じ事実提示でも相手の受け止めは変わります。

再発防止につながる確認の手順は?

叱責や責任追及だけでは再発防止につながりにくく、チームの「助け合い」「挑戦」といった心理的安全性の因子を下げてしまう可能性があるという指摘があります。つまり、強く言うほど次が防げるわけではありません。防ぐ側の作業は、原因の切り分けから始まります。

ここで借りるのは、運輸・製造分野のヒヤリハット対策の整理です。ヒヤリハット(事故には至らなかった危ない出来事)の共通原因は、人的要因(思い込み・慣れ・確認不足)、設備要因(老朽化・点検不備・故障の見逃し)、管理要因(手順逸脱・情報共有不足・教育不足)の3つに整理されています。オフィスの仕事のミスも、「本人の思い込みや慣れ」「ルール・手順の不備」「共有不足」のどこに起因するかを切り分けると、打つ手が変わります。

原因の切り分け(この3つを本人と確認する)
  • 思い込み・慣れ: 本人が「いつもこうだから」で進めていた
  • 手順の不備: そもそも手順が決まっていない/決まりが古い
  • 共有不足: 変更や前提が本人に届いていなかった

切り分けの意味は、手順の不備や共有不足なら本人の注意では直らない、という点にあります。手順が決まっていないなら決める、届いていなかったなら共有の経路を変える。ここを人的要因として扱うと、本人が何度謝っても同じことが起きます。

そのうえで、次回の確認方法を具体化します。安全管理の基本動作として挙げられているのは、指差呼称(声に出して確認すること)の徹底、異常を放置しないこと、「いつも通り」で済ませず都度確認すること、ヒヤリハット(軽微な気づき)を早期に報告・共有することです。これらは製造・運輸分野の手法ですが、「原因を切り分ける→次回の確認ポイントを具体化する→声に出す/記録する習慣にする」という考え方はデスクワークにも移せます。

  1. 確認の対象を1〜2点に絞る「全部見直す」は実行されません。「宛名と金額」「日付と添付」のように、過去に外した箇所だけを指定します。
  2. 声に出す形にする送信前に読み上げる、チャットに「日付OK・添付OK」と打つなど、頭の中で終わらない形にします。
  3. 本人に言語化してもらう「次はどこで止めて確認する?」と尋ね、本人の言葉で手順にしてもらいます。こちらが与えた手順より定着します。
  4. 軽微な気づきを出せる口を用意する「危なかった」程度の話をその日のうちに言える相手になっておくと、ミスになる前に止まります。
この型が合わない場面もあります

対象は、改善の余地がある通常のミスです。ハラスメントや安全上の重大な違反、繰り返しの改善要求に応じないケースは、個人間の言い方の工夫で収める話ではなく、上司や人事と対応を決める領域になります。また、相手が明らかに動揺している最中は、その日は事実確認だけで止め、原因と対策は日を分けたほうが話が進みます。

指摘の前に30秒で整える準備は?

型があっても、準備なしで口を開くと「なぜ」から始まりがちです。話しかける前に、手元で次の4つだけ埋めます。これは本人と上司が同じ事実認識を持つための順番で、前半はSBI型の構造に沿っています。

話す前のメモ(30秒で埋める)
  • いつ・どの仕事か(日付と案件名)
  • 起きた事実(起きたことだけ。解釈を書かない)
  • 誰にどう影響したか
  • 次回どこを確認してほしいか(1〜2点)

このメモの効き目は、埋めている間に一呼吸が入ることにもあります。書けない項目があるなら、それはまだ指摘ではなく確認の段階です。その場合は「〇〇の件、今どうなってる?」から入れば足ります。

言い方の型は、相手を気持ちよくさせるための道具ではありません。事実が正確に届き、次の行動が変わる確率を上げるための順番です。まずは次の一件で、事実と影響の2つを言葉にしてみるところからで十分です。

よくある質問

ミスを指摘するとき、人前で言ってはいけないのはなぜですか?

新人・若手への指摘は他の人がいない個室や場所で行うのが基本とされています。人前で叱ると本人の自信喪失や積極性の低下につながりやすく、伝えたい内容よりも恥ずかしさが残ってしまうためです。

SBI型フィードバックとは何ですか?

Situation(状況)→Behavior(行動)→Impact(影響)の順に伝えるフィードバックの手法です。状況・具体的な行動・その影響という順序で話すため内容が理解しやすく、相手の内省を促し信頼関係の構築にもつながるとされています。

サンドイッチ型フィードバックとSBI型はどう違いますか?

サンドイッチ型は褒める→改善点→褒めるの順で挟み、受け手の心理的ダメージの軽減に重点を置く手法です。SBI型は事実を構造化して理解と内省を促すことに重点があります。事実提示をSBI型の順で行い、最後に期待やフォローの言葉を添える併用の形も使えます。

強く叱れば同じミスは減りますか?

叱責や責任追及だけでは再発防止につながりにくく、チームの助け合いや挑戦といった心理的安全性の因子を下げてしまう可能性があるという指摘があります。原因が思い込みなのか手順の不備なのか共有不足なのかを切り分け、次回の確認ポイントを具体化するほうが再発防止に向きます。

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