勤怠管理ツール比較、副業の時間を請求書に変える4手順
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副業の稼働時間は、本業の会社が自動で把握してくれる仕組みがありません。記録・通算・申告は本人が行う前提です。ツールは「個人が無料で使えるか」「案件ごとに集計できるか」「請求書へ渡せるか」の3点で選び、記録→月末集計→単価計算→請求書発行→月次保存の流れに乗せると、確定申告の根拠資料まで一続きになります。
下半期に入ると、案件が重なって稼働の輪郭がぼやけてきます。土日に3時間、平日の夜に1時間半、打ち合わせが1本。記憶をたどって「たぶん20時間くらい」と書いた請求書は、自分でも根拠を説明できません。
正直なところ、これは意志の問題ではなく仕組みの問題です。本業の会社が副業先の稼働時間を自動で把握する仕組みは存在せず、記録も通算も申告も本人が主体的に行う前提になっています。厚生労働省の案内でも、労働者自身が本業・副業の業務量や健康状態を管理し、勤務先の副業ルール(就業規則等)を確認したうえで業務内容や就業時間を選ぶ必要がある、とされています。
裏を返すと、記録する場所さえ決まれば、請求書も確定申告も同じ1本の線でつながります。その線をどう引くかを、ツール選びと月末の手順に分けて見ていきます。
副業の稼働時間を記録する意味は?
「時間を測る」と聞くと管理されている感じがしますが、副業の場合の目的は監視ではありません。自分の請求金額と申告内容に根拠を持たせることです。
会社員の副業所得が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。ここでの20万円は売上ではなく、必要経費を差し引いたあとの「所得」です。さらにこの20万円ルールは所得税に関する特例で、住民税の申告は別途必要になります(多くの自治体では、所得額にかかわらず住民税の申告義務があります)。
申告をする以上、帳簿と請求書のつじつまが合っている必要があります。何にどれだけ稼働したかの記録は、請求内容の裏づけであり、あとから聞かれたときの説明資料になります。月末に記憶で埋めた数字だけが残っている状態と、日々のタイムログが残っている状態では、この点が大きく違います。
なお、副業先が業務委託契約か雇用契約かで、労働時間を本業と通算する扱いが変わります。雇用契約で副業をしている場合は通算の対象になるため、厚生労働省のガイドライン(2020年9月改定)では、あらかじめ本業・副業双方の労働時間の上限を決めてそれぞれの範囲内で管理する「管理モデル」という簡素化の方式も示されています。自分の契約がどちらなのかは、契約書の表題と報酬の支払われ方を見て確認しておくと安心です。
- 副業先との契約が業務委託か雇用契約か(契約書の表題)
- 本業の就業規則の副業・兼業に関する条項(届出制か許可制か)
- 報酬が時間単価か固定単価か(記録の粒度が変わる)
- インボイスの登録番号を請求書に載せる必要があるか
工数管理ツールはどう選ぶ?
ツールの多くは企業の勤怠管理向けに作られていて、承認フローや有給の残数管理まで備えています。副業の稼働時間を残すだけなら、その大半は使いません。選ぶ軸は次の3つに絞れます。
- 個人が無料〜低コストで使えるか副業の記録が主目的なら、高機能な企業向けツールは過剰です。まず無料プランの範囲で足りるかを見ます。
- 案件・クライアント単位でタグ付け集計できるか請求書は案件ごとに出します。合計時間しか出ないツールだと、結局あとで按分し直すことになります。
- 集計結果を請求書に渡せるかCSVなどで書き出せるか、請求書作成サービスと直接つながるか。ここが切れていると月末の転記作業が残ります。
ここでいう工数管理とは、「だれが」「なにに」「どのくらい」時間を使ったかを案件単位で残すことを指します。以降もこの意味で使います。
主なツールの性格の違い
| ツール | 向いている使い方 | 集計の単位 | 決め手 |
|---|---|---|---|
| TimeCrowd | 副業の稼働をシンプルに記録したい個人 | だれが・なにに・どのくらいをリアルタイムで可視化 | 個人利用に無料プランがあり、チーム利用に広げる余地もある |
| Toggl Track | 案件数が多く、プロジェクトを分けて測りたい人 | プロジェクト単位(無料でプロジェクト数無制限) | ワンクリックで計測を開始できる手軽さ |
| ジョブカン勤怠管理 | 勤怠と工数をまとめて管理したい人・小規模チーム | 勤怠管理に工数管理機能を追加する構成 | 勤怠管理 月額200円/ユーザー(税抜)に工数管理 月額100円/ユーザーを上乗せ |
| freee工数管理(freee勤怠管理と同じfreeeシリーズ) | 会計・請求までfreeeで揃えている人 | 工数管理・労務費管理をクラウドで一元化 | freee会計・freee請求書との連携を前提に設計されている |
freeeほか各社公式サイトの公表情報をもとに作成
上の表を副業の会社員という前提で読むと、選択はかなり絞れます。案件が数件で「時間を残せればいい」ならTimeCrowdかToggl Track、会計・請求をfreeeで揃えているならfreee工数管理、本業側でも勤怠を管理する立場ならジョブカン勤怠管理、という分かれ方です。副業ひとりの記録のために、承認フロー付きの勤怠管理を契約する必要はありません。
案件が1件だけで、毎月ほぼ同じ固定単価で請求しているなら、専用ツールを入れる価値は小さいかもしれません。その場合はカレンダーに稼働を入れて色分けするだけでも、根拠資料としては成立します。ツールの導入自体が目的になって、記録が続かなければ本末転倒です。まず1か月、手元のカレンダーで続くかを試してから決めても遅くありません。
料金と無料枠はどこまで使える?
時間を測るツールと請求書を作るツールは、別々のサービスであることがほとんどです。両方の無料枠を合わせてどこまでいけるかを、まとめて見ておきます。
| ツール | 用途 | 無料プランの範囲 | 有料プランの目安 |
|---|---|---|---|
| TimeCrowd | 工数・時間管理 | 個人利用は無料プランあり | チーム向け上位プランは公式サイトで要確認 |
| Toggl Track | 工数・時間管理 | 5ユーザーまで・プロジェクト数無制限で無料 | 上位プランはユーザー課金制(詳細は公式サイト確認) |
| ジョブカン勤怠管理 | 勤怠管理+工数管理 | 無料プランあり | 勤怠管理 月額200円/ユーザー(税抜)+工数管理 月額100円/ユーザー |
| Misoca(弥生) | 請求書・見積書作成 | 月10通まで永年無料 | プラン15:年額8,800円(月15通)/プラン100:年額33,500円(月100通) |
| freee請求書 | 請求書作成 | 発行数無制限で無料利用可 | freee会計との連携は別途契約が前提 |
弥生株式会社(Misoca公式)ほか各社公式サイトの公表データをもとに作成(2026年9月時点)
上の表の無料枠を見ると、副業の規模なら時間管理も請求書発行も無料の範囲で回せることが多いとわかります。請求書の通数が月10通に収まるならMisocaの永年無料プラン、通数が読めない、あるいは増えそうならfreee請求書の無料利用、という分け方が目安です。工数記録から請求書発行までを1つのサービス内で完結できる製品もありますが、無料プランではユーザー1名・2プロジェクトまでといった制限が付くことがあります。
料金は変わります。ここに挙げた金額は2026年9月時点で確認できた内容なので、契約前に各社の公式ページで最新の条件を見てください。
記録から請求書までの手順は?
月末にやることを毎回ゼロから考えていると、それ自体が負担になって記録が止まります。手順を固定して、同じ順番で流すのが続けるコツです。
- 案件ごとにタグを付けて記録するツールで案件名・クライアント名のタグを作り、作業を始めるときに計測を開始します。打ち合わせや調査の時間も、請求対象なら同じように記録します。
- 月末に案件別でエクスポートするCSVやレポート機能で、案件別の合計稼働時間と稼働内容を書き出します。ここで初めて「今月は何にどれだけ使ったか」が数字になります。
- 単価をかけて金額を出す時間単価なら合計時間×単価、固定単価なら契約額をそのまま使い、稼働時間は内訳の裏づけとして手元に残します。
- 請求書を作って発行する案件名・稼働内容・金額を請求書作成ツールに入力します。このとき、インボイス対応の要否(適格請求書発行事業者の登録番号を記載するかどうか)を確認します。
- 月次で保存するエクスポートしたデータと発行した請求書を、同じ月のフォルダにまとめて保存します。確定申告のときに帳簿と突き合わせる根拠資料になります。
この5つのうち、詰まりやすいのは2番目です。月末にエクスポートする日をあらかじめ決めておくと、記録の抜けにもその場で気づけます。月末営業日に予定を入れておくだけで十分です。
インボイスの扱いは今年どう変わる?
インボイス制度(適格請求書発行事業者登録制度)は2023年10月に始まりました。適格請求書を発行できるのは税務署に登録した課税事業者だけで、免税事業者のままでは発行できません。請求書のフォーマットを決めるとき、自分がどちらなのかで記載内容が変わります。
2026年は判断の節目でもあります。小規模事業者向けの「2割特例」(消費税の納付額を売上にかかる消費税の2割に軽減する措置)は、2023年10月分の申告から2026年分の申告までで終了します。課税事業者として登録している人は、2026年中に登録を続けるか免税事業者に戻るかを考えるタイミングにあたります。
発注する企業側にも経過措置があり、免税事業者からの仕入れについて、2023〜2026年は仕入税額の80%、2026年以降の3年間は50%を控除できます。取引先から「インボイスは発行できますか」と聞かれる背景はここにあります。自分の登録状況を請求書のテンプレートに反映しておくと、毎月確認する手間がなくなります。
登録を続けるか戻すかは、取引先の構成・売上規模・経費の状況で結論が変わります。ここで扱えるのは制度の日程と仕組みまでで、個別の有利不利までは決められません。判断に迷う場合は、税理士や所轄の税務署に自分の数字を持って相談してください。
就業規則と契約書のどこを見ればいい?
ツールと手順が整っても、本業側のルールと食い違っていると意味がありません。確認する場所は決まっています。
- 就業規則の「副業・兼業」または「服務規律」の章 — 届出制か許可制か、禁止されている業種はあるか
- 同じ章の届出手続き — 提出先(直属の上司か人事か)、様式の有無、事後報告の要否
- 雇用契約書の労働時間・時間外労働に関する条項 — 通算を考える際の本業側の前提になります
- 副業先との契約書の表題と報酬条項 — 業務委託か雇用か、時間単価か固定単価か
人事に確認するなら、聞き方は具体的なほど早く終わります。「副業って大丈夫ですか」ではなく、「就業規則◯条の副業の届出について、様式と提出先を教えてください。業務委託で月10時間程度を想定しています」と、条項番号・契約形態・想定稼働を添えて聞きます。相手が判断に必要な材料を先に渡す形です。
稼働時間の記録は、この確認をした後にも効いてきます。届出に稼働見込みを書く欄がある場合、実績のログがあれば数字を出すのに迷いません。記録は請求と申告だけでなく、本業側への説明の根拠にもなります。
今週やるなら何から始める?
全部を一度に整えようとすると止まります。順番としては、記録の器を用意する、就業規則を確認する、月末の手順を決める、の3つです。
- 今日時間管理ツールを1つだけ無料プランで登録し、いま抱えている案件のタグを作る。
- 今週中就業規則の副業に関する条項を開いて、届出の要否と提出先をメモする。
- 今月末案件別にエクスポートして、請求書作成ツールに転記してみる。ここまでで1か月分の型ができます。
最初の月は記録の抜けがあって当然です。抜けたところは次の月に直せばよく、完璧な記録より続く記録のほうが、請求書にも申告にも効きます。まずは器を用意するところまで、今日のうちに済ませてしまうのが早道です。
よくある質問
副業の稼働時間は会社が把握してくれますか?
本業の会社が副業先の稼働時間を自動的に把握する仕組みはありません。厚生労働省の案内でも、労働者自身が本業・副業の業務量や健康状態を管理し、勤務先の副業・兼業ルールを確認したうえで業務内容や就業時間を選ぶ必要があるとされています。記録・通算・申告は本人が主体的に行う前提です。
副業の確定申告が必要になるのはいくらからですか?
会社員の場合、副業の所得が年間20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。この20万円は売上ではなく、必要経費を差し引いたあとの所得額を指します。なお20万円ルールは所得税に関する特例で、住民税は別途申告が必要になります(多くの自治体では所得額にかかわらず申告義務があります)。
工数管理ツールは無料で使えますか?
個人の副業利用なら無料プランで足りることが多いです。TimeCrowdは個人利用の無料プランがあり、Toggl Trackは5ユーザーまで・プロジェクト数無制限で無料で使えます。請求書側もMisocaが月10通まで永年無料、freee請求書は発行数無制限の無料利用が可能です(2026年9月時点。最新の条件は各社公式サイトで確認してください)。
インボイスの2割特例はいつまで使えますか?
小規模事業者向けの2割特例は、2023年10月分の申告から2026年分の申告まで適用され、2026年分をもって終了します。副業やフリーランスで課税事業者として登録している人は、2026年中に登録を続けるか免税事業者に戻るかを判断する時期にあたります。個別の有利不利は取引先の構成や売上規模で変わるため、税理士や税務署への相談が確実です。
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