副業を始める前の3つの確認、申告の注意点
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会社員が副業を始める前に確認すべきことは3つあります。①自社の就業規則が禁止・許可制・届出制のどれか、②副業先と雇用契約を結ぶかどうか(労働時間の通算と雇用保険の扱いが変わります)、③税金の申告方法です。副業所得が年20万円以下なら所得税の確定申告は不要という特例がありますが、住民税に同じ枠はないため申告は原則必要です。
副業でつまずく人の多くは、稼げなかったからではなく、始める前に確認しておけば済んだことを、後から知ることになるからです。就業規則に許可申請の規定があったと後で気づく。年明けに住民税の申告が必要だったと知る。どちらも、始める前の30分で防げます。
正直なところ、副業の準備で本当に面倒なのは最初だけです。確認するのは、会社のルール・働き方の形・税金の3つ。順番に見ていきます。
手順1:自社の就業規則はどう書いてあるか?
最初にやることは、副業サイトへの登録ではなく、自社の就業規則を開くことです。社内ポータルやイントラの「規程集」に置かれていることが多く、見つからなければ人事・総務に「就業規則を確認したい」と伝えれば閲覧できます。会社には就業規則を従業員が見られる状態にしておく義務があるためです。
開いたら「副業」「兼業」「他社の業務」といった語で探します。会社の規定は、だいたい次の3タイプに分かれます。
| 禁止 | 原則として認めない。例外規定があるかどうかまで読む |
|---|---|
| 許可制 | 事前に申請し、会社の承認を得てから始める |
| 届出制 | 始めることを届け出る。承認までは求められない |
国が示している「モデル就業規則」は、副業・兼業の原則禁止規定をすでに削除しています。現在の規定例は「勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」としたうえで、労務提供上の支障がある場合、企業秘密が漏洩する場合、会社の信用や名誉を損なう場合、競業により会社の利益を害する場合には制限・禁止できる、という形です。
ただしこれはあくまでモデル(参考)であり、実際に自分を縛るのは自社の就業規則です。国が副業を認める方向だから大丈夫、とは言えません。
- 副業は禁止・許可制・届出制のどれか
- 事前申請が必要な場合、申請先と様式はどこにあるか
- 禁止される対象(競合他社・同業種など)に自分の副業が当たらないか
- 勤務時間外という条件がついているか
とくに注意したいのが3つ目です。本業と同じ業種で副業をすると、競業にあたるとして止められることがあります。スキルを活かせる分野ほどここに引っかかりやすいので、始める前に確認しておくと安心です。
就業規則違反として懲戒の対象になり得ます。「小さい金額だからいいだろう」で始めると、後から申請しづらくなり、隠し続けることになります。許可制なら、収入がゼロのうちに申請を出しておくほうが気楽です。
手順2:雇用契約を結ぶ副業か、そうでないか?
働き方の形によって、労働時間と保険の扱いが変わります。ここが2つ目の確認ポイントです。副業は大きく2種類に分けられます。
| 雇用型 | アルバイト・パートなど、副業先と雇用契約を結ぶ働き方 |
|---|---|
| 非雇用型 | 業務委託・フリーランスなど、雇用契約を結ばない働き方 |
副業先とも雇用契約がある場合、労働基準法上の労働時間の通算対象になり得ます。本業と副業の労働時間が合算されて扱われるということです。一方、雇用契約のない業務委託型の副業は労働時間通算の対象外、というのが厚生労働省のガイドラインを踏まえた実務上の整理です。
雇用保険についても知っておきたい原則があります。雇用保険は二重に加入できません。複数の勤務先でいずれも所定労働時間が週20時間以上になる場合でも、加入するのは1社のみで、原則として主たる賃金を受ける事業所になります。
例外もあります。2022年1月に始まった「雇用保険マルチジョブホルダー制度」では、65歳以上の労働者に限り、2つの事業所の所定労働時間を合算して週20時間以上になれば雇用保険に加入できます。本人からの申出による制度です。
なお、雇用保険の適用対象は現行では週所定労働時間20時間以上ですが、2028年度から週10時間以上20時間未満の労働者にも適用を拡大する方向で法改正が進んでいます。短時間のアルバイトを続けるつもりなら、頭の片隅に置いておくとよい変化です。
- 契約は雇用契約か、業務委託契約か
- 雇用契約なら、週の所定労働時間は何時間か
- 本業と合わせた総労働時間が、自分の体力の範囲に収まるか
労働時間の話は制度の話に見えますが、実際にきくのは体調のほうです。本業の繁忙期と副業の締切が重なる月を想像して、それでも回せる分量から始めるのが現実的です。
手順3:確定申告と住民税をどうするか?
この「20万円ルール」は、半分だけ正しい理解です。正確には、所得税だけの話です。
その前に、副業の所得には種類があります。雑所得(本業のかたわらで単発・小規模に得た収入。業務委託やアフィリエイトの多くはここ)と、事業所得(継続的・反復的に、独立した事業として行っている収入)です。どちらに当たるかで税金の計算方法が変わりますが、始めたばかりの段階では雑所得になるケースが大半です。
給与所得者が副業(雑所得・事業所得など)で得た所得が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要という特例があります。ただし条件があり、医療費控除など他の理由で確定申告をする場合は、この特例は使えません。その場合は20万円以下でも副業分を含めて申告する義務が生じます。
そしてもう一点。この特例は所得税だけに適用されるもので、住民税には同様の非課税枠がありません。副業の所得が20万円以下であっても、住民税の申告は原則として必要です。「20万円以下だから何もしなくていい」と覚えていると、ここが抜けます。
- 1年分の収入と経費を記録する取引ごとに日付・金額・内容を残しておきます。表計算ソフトで十分です。年明けにまとめて思い出すのは、まず無理だと思っておいてください。
- 所得(収入−経費)を計算する20万円を超えていれば確定申告、超えていなければ住民税の申告を検討します。他の控除で確定申告をする予定があるなら、金額にかかわらず副業分も申告します。
- 3月15日までに手続きを済ませる住民税の申告期限は原則として翌年3月15日で、確定申告と同時期です。1〜3月の予定に組み込んでおきます。
住民税の納付方法は選べる
住民税の徴収方法には、給与から天引きされる「特別徴収」と、自分で納付する「普通徴収」があります。確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」で「自分で納付」を選ぶと、副業分の住民税の納税通知書が自宅に届き、本業の給与から天引きされません。
普通徴収を選んでも、自治体によって運用が異なるためリスクは残ります。さらに、アルバイト・パートのように雇用契約に基づく給与所得の副業は、原則として特別徴収(給与天引き)が必須とされ、普通徴収への切り替えを認めない自治体も多くあります。雑所得・事業所得の副業とは扱いが違う点に注意してください。
結局のところ、確実なのは手順1に戻ること。就業規則を確認し、必要なら申請しておくほうが、隠し続けるより負担が軽く済みます。
3つの手順を、いつまでに終わらせるか?
順番と目安をまとめます。副業を思い立った週にやることは、実は1つだけです。
- 今週:就業規則を開く禁止・許可制・届出制のどれかを確認します。許可制なら申請様式の場所まで見ておきます。ここで禁止だとわかれば、後の2つは不要になります。
- 副業先を選ぶとき:契約の形を確認する雇用契約か業務委託か。雇用契約なら週の所定労働時間も確認します。
- 始めた日から:記録をつける収入と経費を都度メモします。翌年の3月15日までに申告できる状態を、最初から作っておきます。
3つを一度に片づけようとすると、それだけで疲れて始められなくなります。今週やるのは、就業規則を開くところまでで十分です。そこで自分の会社のルールがわかれば、次に何をすればいいかは自然に決まります。
制度は変わっていきます。雇用保険の適用拡大のように、数年先に条件が動く話もあります。だからこそ、始める前に一度確認しておいた形を覚えておくと、あとで見直すときも早く済みます。
よくある質問
副業の所得が年20万円以下なら、何も申告しなくてよいですか。
いいえ。所得税の確定申告は不要という特例がありますが、住民税には同様の非課税枠がないため、20万円以下でも住民税の申告は原則必要です。また、医療費控除など他の理由で確定申告をする場合は20万円以下の特例が使えず、副業分も含めて申告する義務が生じます。
就業規則はどこで確認できますか。
社内ポータルやイントラネットの規程集に置かれていることが多く、見つからない場合は人事・総務に閲覧を申し出れば確認できます。会社には就業規則を従業員が見られる状態にしておく義務があります。「副業」「兼業」「他社の業務」といった語で検索し、禁止・許可制・届出制のどれに当たるかを確認します。
本業と副業の両方で雇用保険に入ることはできますか。
原則としてできません。雇用保険は二重加入ができず、複数の勤務先でいずれも所定労働時間が週20時間以上の場合でも、加入するのは主たる賃金を受ける事業所の1社のみです。ただし65歳以上の労働者に限り、2022年1月開始の雇用保険マルチジョブホルダー制度により、2つの事業所の所定労働時間を合算して週20時間以上になれば本人の申出で加入できます。
住民税を普通徴収にすれば、会社に副業を知られずに済みますか。
確実とは言えません。確定申告書第二表で「自分で納付」を選べば副業分の納税通知書が自宅に届きますが、自治体によって運用が異なります。さらにアルバイト・パートなど給与所得の副業は原則として特別徴収が必須とされ、普通徴収への切り替えを認めない自治体も多くあります。就業規則を確認し、必要なら申請しておくほうが確実です。
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