残業は月何時間から危険?45・80・100時間の線と相談先
画像出典: ぱくたそ
残業が多いかどうかは、月45時間・80時間・100時間という国の基準線で判断できます。始業終業をPCログや勤怠アプリで客観的に記録し、月の時間外労働をこの3つの線と照らすのが出発点です。月80時間を超えて疲労の蓄積があれば医師の面接指導を申し出られ、社外には匿名・無料の労働条件相談ほっとライン(0120-811-610)があります。
「多いかどうか」は感覚ではなく、時間数の基準線で判断できます。国の制度には月45時間・80時間・100時間という3つの線が引かれていて、自分の残業時間がどの線の手前にあるかで、できることが変わります。
正直なところ、忙しい時期に自分の残業時間を正確に言える人は多くありません。まずは記録を持つところからで十分です。この記事は会社から何かを配られるのを待つ側ではなく、自分から動く側に立つための手順を並べています。今日ひとつログを見るだけでも、話は前に進みます。
長時間労働が起きやすい業種はどこ?
過労死等防止対策白書は、過労死等防止対策推進法に基づいて政府がまとめる年次の報告書です。令和7年版が閣議決定・公表され、過労死等の労災請求件数と労災支給決定(認定)件数の傾向、重点業種の労災認定状況、外食産業の働き方の実態などが調査分析されています。
この白書には、過去の版から継続して調査研究の重点業種として8つの分野が置かれています。自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療(勤務医)、建設業、メディア業界(新聞記者等)、芸術・芸能分野です。自分の仕事がここに入るなら、同じ業種の働き方が国の調査対象になるほど長時間労働と結びつきやすい、という事実をまず押さえておくと判断の助けになります。
同じ職場でも、時間が偏るのは誰か
令和7年版で詳しく調べられたのは外食産業です。職種別に、週の労働時間が60時間以上と回答した割合を見ると次のようになっています。
| 職種 | 週60時間以上の回答割合 |
|---|---|
| 店長 | 29.0% |
| エリアマネージャー・スーパーバイザー | 24.0% |
厚生労働省「令和7年版過労死等防止対策白書」の外食産業に関する調査分析の公表データをもとに作成(週60時間以上の回答割合が高い上位2職種)
上の表のとおり、割合が最も高いのは店長で、約3割にあたります。長時間労働が現場全体に均等にあるのではなく、店長やSVといった責任者クラスに偏る傾向が白書で指摘されています。役職が上がったタイミングで時間が伸びた心当たりがあるなら、個人の段取りの問題と決めつける前に、この偏りを思い出してください。
残業時間の基準線はどこにある?
会社が残業をさせるには、労使で結ぶ36(サブロク)協定が必要です。その上限は、一般則では次のように定められています。
| 区分 | 上限 |
|---|---|
| 原則(36協定) | 月45時間・年360時間 |
| 特別条項(時間外労働のみ) | 年720時間以内 |
| 特別条項(時間外+休日労働、単月) | 100時間未満 |
| 特別条項(時間外+休日労働、2〜6か月平均) | 80時間以内 |
| 月45時間超が許される回数 | 年6回まで |
厚生労働省(長崎労働局資料)の公表データをもとに作成
上の表は一般則で、建設業・自動車運転の業務・医師にはそれぞれ別の上限値があります。特別条項は「臨時的な特別の事情」がある場合に限って使えるもので、毎月の長時間労働を前提にした運用は違法となり得ます。繁忙期が一年中続いている状態は、本来の制度の想定から外れています。
もうひとつ覚えておきたいのが過労死ラインです。これは脳・心臓疾患の労災認定基準で使われる目安で、発症前おおむね2〜6か月にわたって月平均80時間を超える時間外労働があった場合、または発症前1か月に100時間を超えていた場合に、業務と発症の関連性が強いと評価されます。80時間・100時間という数字は、ここから来ています。
適用猶予が終わった業種はどう変わった?
建設業、自動車運転の業務、医師の3業種は、働き方改革関連法の上限規制について5年間の適用猶予がありましたが、2024年4月1日から本格適用されました。猶予期間中の感覚のまま働いている職場もあるため、自分の業種の現在の上限を確認する価値があります。
- 自動車運転の業務: 特別条項付き36協定でも、年間の時間外労働の上限は年960時間
- 建設業: 上限規制が全面適用。ただし災害の復旧・復興の事業に限り、単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内の規制は適用除外
- 医師: 医療機関の機能に応じて複数の水準の上限時間と罰則が設定されている
残業を可視化する手順は?
ここからが自分から動く側の作業です。以下の順番は、労働時間の把握に関する法令・ガイドラインが求めている方法に自分の記録を合わせる形で、筆者が手順として整理したものです。
- 自分の業種が重点8業種に入るか確認する自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療(勤務医)、建設業、メディア業界、芸術・芸能分野。該当するなら、記録は早めに始めておく。
- 客観的な記録を手元に持つ始業・終業時刻と休憩時間を、PCの使用時間のログ、タイムカード、勤怠アプリで残す。自己申告のメモだけに頼らない。
- 月の時間外労働を3つの線と照らす月45時間(原則の上限)、月80時間(面接指導の申し出ができる水準)、月100時間(単月の上限)。今月が今どのあたりかを月中に一度見る。
- 80時間を超えたら面接指導を申し出る申し出るのは本人。放っておいても自動では始まらない。
- 改善しなければ窓口を段階的に使う社内の相談窓口・産業医 → 労働条件相談ほっとライン → 総合労働相談コーナーの順。
記録を残すことには法的な裏づけがあります。2019年4月から、労働安全衛生法第66条の8の3により、事業者は労働者の労働時間の状況を客観的に把握することが義務になりました。労働安全衛生規則では、その方法として「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」が規定されています。会社が持つべき記録と同じ土俵のログを、自分でも持っておくというのがここでの考え方です。記録は作成後3年間の保存が求められています。
どこまでが労働時間に入る?
厚労省のガイドライン「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義しています。ポイントは、明示の指示がなくても、黙示の指示で業務に従事していれば労働時間に該当するとしていることです。
「残業しろとは言われていないが、終わらせないと翌日の業務が回らない」という状態で作業していた時間は、自主的なサービス残業として切り捨てずに記録しておいてください。始業前の準備、持ち帰った作業、休憩時間中の電話対応も同じです。
勤怠の記録は本来、会社も法令上持っておくべきものです。自分の手元にある記録を、すぐに誰かへ見せる必要もありません。まずは自分が現状を数字で知るための記録と考えれば、始めるハードルは下がります。
医師の面接指導はどう申し出る?
労働安全衛生法に基づき、時間外・休日労働が月80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者から申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施する義務があります。起点は本人の申し出です。会社側から声がかかるのを待っていると、超えた月が何度も過ぎていきます。
申し出の先は、職場の人事労務の担当部署か、産業医・衛生管理者が置かれていればその窓口です。伝える内容は難しくありません。「先月の時間外労働が80時間を超えていて、疲労の蓄積を感じています。面接指導を申し出たいのですが、手続きを教えていただけますか」。この一文で足ります。手元の勤怠記録の月合計を添えると、話が早く進みます。
面接指導は医師が本人の疲労や健康状態を確認し、必要に応じて事業者へ就業上の措置を意見する仕組みです。面接を受けたこと自体が業務量を減らすわけではありません。面接のあとも時間が減らない、そもそも申し出に応じてもらえない、という場合は次の外部窓口へ進む段階だと考えてください。
社外の相談窓口はどう使い分ける?
社外の窓口は2つ押さえておけば十分です。匿名で話を聞きたい段階と、具体的な是正を求める段階とで使い分けます。
まずは電話で: 労働条件相談ほっとライン
フリーダイヤル0120-811-610(はい!ろうどう)。無料・匿名で相談でき、労働基準法等の違反の疑いや、法令の意味について説明を受けられます。受付時間は平日(水曜を除く)17時〜22時、土日祝日9時〜21時で、仕事が終わったあとの時間帯や休日にかけられるのが大きな利点です。土日祝の時間帯は年度によって変わることがあるため、最新の案内を確認してからかけてください。
「これは違法なのか」「自分の記録は証拠になるのか」といった確認から入れます。名前を出さずに済むので、職場に知られることを心配せずに使えます。
具体的に動くなら: 総合労働相談コーナー
全国の労働局・労働基準監督署内に設置されている窓口で、労働条件、解雇、いじめ・嫌がらせ、採用など職場のトラブル全般を、専門の相談員が面談または電話で受け付けます。無料・予約不要・秘密厳守で、労働者からも事業主からも相談できます。利用時間は9時30分〜12時と13時〜17時(土日祝日・年末年始を除く)です。
面談で相談するときは、勤怠の記録、36協定の内容(わかる範囲で)、時間外労働の月ごとの合計を持っていくと、状況の説明が短く済みます。
- 直近数か月の始業・終業時刻がわかる記録(PCログ、タイムカード、勤怠アプリの画面)
- 月ごとの時間外労働の合計時間
- 給与明細(残業代の支給額がわかるもの)
- 社内で相談した相手と日付、その回答
今日できることはどれ?
一度に全部やる必要はありません。今日のうちに終わるのは、先月の時間外労働の合計を1つ出すことです。勤怠システムの月次画面を開けば数分で出ますし、無ければPCの起動と終了の時刻を1か月分書き出すところからで構いません。
その数字が45時間を超えていたか、80時間に近かったか。それだけで、次に自分が取る行動が決まります。45時間の手前なら記録を続けるだけで十分ですし、80時間を超えていたなら面接指導の申し出が選択肢に入ります。急いで何かを決める必要はなく、数字を知ってから考えれば間に合います。
よくある質問
過労死等防止対策白書の重点業種は何ですか?
過労死等防止対策白書の調査研究における重点業種は、自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療(勤務医)、建設業、メディア業界(新聞記者等)、芸術・芸能分野の8分野です。令和7年版では外食産業の働き方の実態が詳しく調査分析され、店長の29.0%が週60時間以上勤務と回答しています。
残業は月何時間までが上限ですか?
36協定による時間外労働の上限は、一般則で原則月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情がある場合に限り特別条項で延長できますが、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満かつ2〜6か月平均80時間以内、月45時間を超えられるのは年6回までという制限があります。自動車運転の業務は特別条項でも年960時間が上限です。
過労死ラインとは何時間のことですか?
過労死ラインは脳・心臓疾患の労災認定基準で使われる目安で、発症前おおむね2〜6か月にわたり月平均80時間を超える時間外労働があった場合、または発症前1か月に100時間を超える時間外労働があった場合に、業務と発症の関連性が強いと評価される基準です。
残業について匿名で相談できる窓口はありますか?
厚生労働省の「労働条件相談ほっとライン」(0120-811-610)は無料・匿名で利用でき、労働基準法等の違反の疑いや法令の意味について説明を受けられます。受付時間は平日(水曜を除く)17時〜22時、土日祝日9時〜21時です。面談で具体的に相談したい場合は、全国の労働局・労働基準監督署内にある総合労働相談コーナーが予約不要・秘密厳守で利用できます。
※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。