いろは堂キャリア
← 戻る

インボイス2割特例が終了、副業の申告はどう選ぶ?

2026年9月25日|いろは堂キャリア編集部
屋内の木製デスクに日本語の申請書類と電卓、メガネケースが置かれている写真

画像出典: ぱくたそ

この記事の要点
インボイスの2割特例は、2026年9月30日を含む課税期間までが対象です。個人事業者は暦年が課税期間なので、2026年分(2026年1〜12月)の消費税申告が2割特例を使える最後の年になります。2027年分からは、事前届出のいらない3割特例か、届出が必要な簡易課税か、実額計算の本則課税のいずれかを選ぶことになります。
😟
副業でインボイス登録したけど、2割特例が終わるって聞いて。来年からどうすればいいのか全然わからない…

副業で開業届を出し、取引先の求めに応じてインボイス登録をした会社員にとって、消費税の申告は「2割特例に丸を付けるだけ」で済んできた部分が大きいはずです。売上にかかった消費税の2割を納めればよく、経費の消費税を集計する必要もありませんでした。

その仕組みに期限が来ます。正直なところ、ここは一度だけ手を動かして、自分がどの方式に進むかを決めてしまうのが一番ラクです。必要なのは「2026年分の申告」「2027年分の方式」「2027年中に出すかどうかの届出」の3つを決めることだけで、今日30分あれば方向は出せます。

2割特例はいつまで使える?

2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の対象は、適格請求書発行事業者の令和5年(2023年)10月1日から令和8年(2026年)9月30日までの日が属する各課税期間です。ここで読み違えやすいのが区切り方で、「2026年9月30日まで」ではなく「2026年9月30日を含む課税期間まで」が正確な言い方になります。

個人事業者の課税期間は原則として1月1日〜12月31日です。会社員の副業も同じ扱いなので、2026年9月30日は2026年1〜12月の課税期間に含まれます。つまり2026年分の消費税申告(2027年春に行う申告)までは、要件を満たせば2割特例をそのまま使えます。10月1日を境に今年の分が使えなくなる、ということではありません。

まず押さえる3つの年
  • 2026年分(今年) — 2割特例が使える最後の年
  • 2027年分・2028年分 — 3割特例が使える2年間
  • 2029年分以降 — 3割特例は使えない。簡易課税か本則課税

2027年分から新しくできた3割特例とは?

令和8年度税制改正で、個人事業者である適格請求書発行事業者について、令和9年分(2027年分)と令和10年分(2028年分)の消費税申告に限り、納付税額を課税標準額に対する消費税額の3割とできる経過措置が創設されました。売上にかかった消費税の3割を納める形で、計算の考え方は2割特例と同じ並びです。

対象は、インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者に限られ、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下であることが条件です。副業として始めて、登録のために課税事業者になった人は、この条件に当てはまることが多い立場になります。

事前の届出は不要で、確定申告書に3割特例を適用する旨を付記するだけで選べます。2割特例と同じ申告時選択方式なので、「何も出さなければ3割特例が候補として残る」と考えておけば、いま急いで書類を出す必要はありません。ただし3割特例は2年間限定で、令和11年分(2029年分)以降は使えません。

🤔
じゃあ2年間は何もしなくていい、で合ってる?

何もしないという選択が成り立つ年ではありますが、2029年分から先の受け皿を作る作業だけは、この2年のあいだに済ませておく必要があります。その受け皿が簡易課税です。

簡易課税と本則課税、どちらが自分に合う?

簡易課税は、事業を第1種〜第6種に区分し、それぞれのみなし仕入率(経費の消費税をこの割合とみなす率)を課税売上に係る消費税額に乗せて仕入控除税額を計算する制度です。実際の経費を1件ずつ集計しなくてよいのが特徴で、基準期間(前々年)の課税売上高が5,000万円以下であることが適用要件です。副業規模なら通常この範囲に収まります。

事業区分みなし仕入率該当業種の例
第1種事業(卸売業)90%商品を仕入れてそのまま他の事業者に販売する卸売業
第2種事業(小売業等)80%商品を仕入れて性質・形状を変えずに消費者に販売する小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡)等
第3種事業(製造業等)70%農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡を除く)、鉱業、建設業、製造業等
第4種事業(その他)60%飲食店業など第1〜3種・第5種・第6種以外の事業
第5種事業(サービス業等)50%運輸通信業、金融・保険業、サービス業(ライター・デザイナー・プログラマー・コンサル等の知的サービス業を含む)
第6種事業(不動産業)40%不動産業

国税庁の公表データをもとに作成

上の表で、会社員の副業に多いライター・デザイナー・プログラマー・コンサルタントなどの知的サービス業は、基本的に第5種事業(みなし仕入率50%)に入ります。複数の業種を営んでいて売上を区分管理していない場合は、営む事業のうち最も低いみなし仕入率が全体に適用される点に注意してください。副業で受託の開発と物販を両方やっているなら、帳簿で売上を分けているかどうかが効いてきます。

もう一方の本則課税(一般課税)は、実際の課税仕入れにかかった消費税額を集計して仕入税額控除する方式です。みなし仕入率を使わず実額で計算するため、経費の割合が大きい年や高額な設備投資をした年は簡易課税より有利になりやすく、還付を受けられる場合もあります。その代わり、帳簿と請求書等の保存要件があり、日々の経理の手間は簡易課税より重くなります。

判断の軸は「自分の経費率」ひとつ

比べ方はシンプルで、自分の実際の経費率(課税仕入の割合)が、みなし仕入率より高ければ本則課税、低ければ簡易課税が有利という関係になります。第5種なら50%が分かれ目です。売上に対する課税仕入れが半分を超えているかどうか、を見ればよいことになります。

パソコンとソフト代くらいしか経費がないライター・デザイナー・エンジニアのような粗利率の高い働き方は、実額の課税仕入が少ないため、簡易課税のほうが納税額が小さくなるケースが多いとされています。逆に、仕入れの多い物販や、機材を大きく買う予定のある年は本則課税が視野に入ります。

届出はいつ出せばいい?

簡易課税を受けるには、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します。この原則だけを読むと「2026年12月31日までに出さないと2027年分に間に合わない」と身構えますが、2割特例を使った人にはゆるめる特例があります。

2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に簡易課税選択届出書を提出し、その課税期間から簡易課税の適用を受ける旨を記載すれば、前日に提出したものとみなされます。2026年分で2割特例を使った人は、2027年中に届出書を出せば2027年分から簡易課税を適用できます。2026年末までに前倒しで出す必要はありません。

簡易課税には2年縛りがあります

一度簡易課税を選ぶと、原則として2年間は本則課税に戻せません。設備投資で還付を受けたい年が来ても、直前に一般課税へ変更することはできない仕組みです。届出を出す前に、翌々年までの見込み(大きな機材購入や事業拡大の予定があるか)を一度考えておいてください。

もうひとつ、混ざりやすいところを整理しておきます。3割特例と簡易課税は「どちらかを選ぶ届出」があるわけではなく、簡易課税の届出を出していない限り、3割特例(または本則課税)が適用される関係です。届出を出してしまうと簡易課税側に寄るため、「3割特例を2年使いながら、届出だけ先に出しておく」という組み合わせは成立しません。2029年分からの移行を見据えて、いつ届出を出すかが判断のポイントになります。

今年の秋に何をすればいい?

  1. 2026年分は2割特例で確定と決める要件を満たしていれば、今年の申告(2027年春)までは従来どおりです。ここは動かす必要がありません。
  2. 自分の業種区分を書き出す取引先に出している請求書の内容を見て、上の表のどの種に当たるかを決めます。複数あるなら、会計ソフトで売上を業種別に分けて記録し始めてください。
  3. 直近1年の経費率を概算する2025年分の帳簿で「課税仕入れの合計 ÷ 課税売上の合計」を出します。第5種なら50%より上か下かだけ見れば十分です。
  4. 2027年分の方式を仮決めする経費率が低いなら簡易課税、設備投資の予定があるなら本則課税、判断を先送りしたいなら届出なしで3割特例。ここまでをメモに残します。
  5. 届出のタイミングをカレンダーに入れる簡易課税へ移るなら、2027年中に届出書を提出します。年末に慌てないよう、申告作業をする春のうちに処理するのがおすすめです。
😌
やることが5つに収まるなら、週末に片付けられそう。

副業の税務は、締切の直前にまとめて考えようとするほど重くなります。経費率の概算まで済ませてしまえば、残りは届出を出すか出さないかの二択です。いまは結論を出さなくても、数字だけ手元に用意しておけば、来年の申告のときに迷わず決められます。

勤務先との関係で確認しておくこと

申告方式の変更そのものは、勤務先に報告が必要なものではありません。ただ、副業の規模が変わるタイミングで届出を扱うなら、自分の就業規則の副業許可条項と、提出済みの副業申請の内容(業務内容・想定収入の記載)がいまの実態と合っているかを一度見直しておくと安心です。届出内容と申請内容がずれたままになっているケースは、意外とよくあります。

よくある質問

インボイスの2割特例は2026年9月30日で使えなくなりますか?

2割特例の対象は2023年10月1日から2026年9月30日までの日が属する各課税期間です。個人事業者の課税期間は1月1日〜12月31日のため、2026年9月30日を含む2026年分(2026年1〜12月)の消費税申告までは、要件を満たせば2割特例を使えます。使えなくなるのは2027年分の申告からです。

3割特例を使うのに届出は必要ですか?

事前の届出は不要です。確定申告書に3割特例を適用する旨を付記するだけで選択できます。対象は個人事業者の適格請求書発行事業者で、インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になり、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下である人です。適用できるのは2027年分と2028年分の2年間に限られます。

副業のライターやエンジニアは簡易課税の何種になりますか?

ライター・デザイナー・プログラマー・コンサルタントなどの知的サービス業は、基本的に第5種事業(サービス業等)でみなし仕入率50%に区分されます。複数の業種を営んでいて売上を区分管理していない場合は、営む事業のうち最も低いみなし仕入率が全体に適用されます。

簡易課税の届出書はいつまでに出せばよいですか?

原則は適用を受けようとする課税期間の初日の前日までですが、2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に届出書を提出し、その課税期間から簡易課税の適用を受ける旨を記載すれば、前日に提出したものとみなされます。2026年分に2割特例を使った個人事業者は、2027年中に提出すれば2027年分から簡易課税を適用できます。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。