いろは堂投資
← 戻る

外国税額控除で米国ETF分配金はいくら戻る?計算手順

2026年10月21日|いろは堂投資編集部
室内の机上に税金関連の書類や計算機、マーカーが散らばっている写真。

画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)

この記事の要点
米国ETFの分配金は、米国で10%が源泉徴収され、その残額に日本で20.315%がかかります。米国で引かれた分は確定申告で外国税額控除を申請すると所得税額から差し引けますが、戻る上限は「所得税額×(調整国外所得金額÷所得総額)」で決まります。分配金が所得全体に比べて小さい多くの個人投資家は、この限度額内に収まります。NISA口座の分配金は国内が非課税のため対象外です。
😟
米国ETFの分配金、入金額が思ったより少ない。税金が二重に引かれてる気がするんだけど…

米国ETFの分配金は、受け取るまでに2か国で課税されます。まず米国で10%が引かれ、そのあと残った金額に日本の20.315%がかかります。証券口座の入金明細だけを見ていると、この2段構えが見えにくいんです。

正直なところ、ここは「気のせい」ではありません。ただし、米国側で引かれた分は確定申告で外国税額控除を申請すれば、所得税額から差し引ける仕組みがあります。いくら戻るのかは計算式で決まっていて、自分の数字を当てはめれば事前に分かります。

米国ETFの分配金は、どの順番で税金が引かれる?

順番が大事なので、お金の流れをそのまま追いかけます。米国ETFから分配金が出ると、最初に米国側で源泉徴収が行われます。日米租税条約により、米国での配当源泉徴収税率は原則10%に軽減されています(条約がない国では30%等になる場合があります)。

その10%が引かれた残額に対して、日本国内で20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)がかかります。この「米国で引かれ、さらに日本でも引かれる」状態が、いわゆる二重課税です。

税引前の分配金が10万円だった場合で数えてみます。

  1. 米国で10%10万円 × 10% = 1万円が米国で源泉徴収され、残りは9万円。
  2. 日本で20.315%9万円 × 20.315% ≒ 18,284円が国内で源泉徴収される。
  3. 手元に残る10万円 −1万円 −18,284円 ≒ 71,716円。

取り戻しの対象になるのは、この最初の1万円です。日本側の18,284円は通常どおりの国内課税なので、外国税額控除では戻りません。

🤔
じゃあ売却益のほうはどうなるの?

譲渡益(キャピタルゲイン)は外国税額控除の対象外です。米国株の譲渡益には米国での源泉徴収が基本的に発生しないため、そもそも二重課税の構造になりません。対象は配当・分配金だけと覚えておくと迷いません。

外国税額控除とは? 戻る金額の上限はどう決まる?

外国税額控除は、居住者が外国所得税を納付した場合に、一定の限度額の範囲でその年の所得税額から控除できる制度です。国税庁タックスアンサー No.1240「居住者に係る外国税額控除」に規定されています。

ここで効いてくるのが「一定の限度額」という条件です。米国で払った額がそのまま無条件に戻るのではなく、限度額と外国税額のうち小さいほうが実際の控除額になります。限度額の式は次のとおりです。

所得税の控除限度額その年分の所得税額 ×(その年分の調整国外所得金額 ÷ その年分の所得総額)
復興特別所得税の控除限度額その年分の復興特別所得税額 ×(その年分の調整国外所得金額 ÷ その年分の所得総額)

国税庁タックスアンサー No.1240の公表データをもとに作成

式の形を言葉にすると、「自分が払った所得税のうち、国外から得た所得が占める割合ぶんまで」が上限、ということです。なお「その年分の所得税額」は、配当控除(国内株式の配当を総合課税で申告したときに、計算した所得税額から一定額を差し引ける控除)や住宅ローン控除といった税額控除を適用した後の所得税額を指します。住宅ローン控除で所得税がほとんど残っていない年は、掛け算の元になる数字が小さくなるため限度額も小さくなります。

調整国外所得金額とは、国外源泉所得の合計額をベースに一定の調整を加えた金額です。米国ETFの分配金しか国外所得がないなら、その分配金(税引前)が出発点になります。

多くの人は限度額に収まる

分配金が10万円で、給与などを含めた所得全体がその何十倍もある——という形なら、割り算の答え(調整国外所得金額 ÷ 所得総額)が小さくても、掛ける相手の所得税額が十分にあるため、限度額は1万円を上回ります。分配金の規模が所得全体に対して小さい個人投資家の多くは、米国で払った10%相当額の全額が限度額内に収まります。

所得税の控除限度額を超える外国税額がある場合、超過分は住民税側の控除限度額の範囲でさらに控除できる仕組みがあります(所得税の控除限度額の30%が目安とされる運用で、地方税の制度のため金額は居住自治体の計算に従います)。この住民税側の限度額について、国税庁の個別ページでの明記は確認できていません。まずは所得税の限度額に収まるかどうかを自分の数字で確かめるのが現実的です。

NISA口座の分配金は対象になりません

NISA口座(新NISAを含む)で保有している米国株・米国ETFの配当金等は、国内側がもともと非課税です。日本で課税されていない以上「二重課税」の構造にならないため、外国税額控除の適用対象外になります。米国側の10%は源泉徴収されたまま、還付されません。対象になるのは特定口座・一般口座といった課税口座の分配金だけです。

いくら戻るか、自分の数字で計算する手順は?

必要な数字は4つだけです。順に拾っていきます。

  1. 外国所得税額を調べる証券会社が発行する「特定口座年間取引報告書」(または年間の取引報告書・分配金のお知らせ)を開き、分配金(外貨・円換算後)と、米国で徴収された外国所得税額(外貨・円換算後)を確認します。円換算後の金額が記載されているので、自分で為替計算をやり直す必要はありません。
  2. 所得税額・所得総額を確定申告書から拾うその年の所得税額、調整国外所得金額、所得総額を、確定申告書(第一表・第二表・第三表)から把握します。
  3. 限度額の式に当てはめる所得税額 ×(調整国外所得金額 ÷ 所得総額)を計算します。復興特別所得税についても同じ割合で計算します。
  4. 小さいほうを採る手順1の外国所得税額と手順3の限度額を比べ、小さいほうの金額が実際に控除できる外国税額控除額です。
  5. 明細書に記入する確定申告書に添付する「外国税額控除に関する明細書」に、保有数量・税引前配当金額・外国で徴収された税額・円換算した金額を記入します。
計算前に手元に揃えるもの
  • 特定口座年間取引報告書(証券会社の電子交付ページからダウンロード)
  • 確定申告書の第一表・第二表(第三表は分離課税——配当を給与などほかの所得と合算せず、別枠で税額を計算する方式——を選ぶ場合)
  • 外国税額控除に関する明細書
  • 給与所得の源泉徴収票など、所得総額の根拠になる書類

限度額を超えたらどうなる?

控除しきれなかった外国税額(控除限度超過額)は、翌年以降3年間繰り越せます。逆に、限度額のうち使わなかった余裕部分(控除余裕額)も同じく3年間の繰越が可能です。今年使い切れなくても、翌年以降の枠で使えるので、超過したからといってその場で消えるわけではありません。

計算してみた結果で、次に何をする?

数字が出たら、判断は3通りに分かれます。

計算結果次の動き
外国税額 ≦ 限度額確定申告で外国税額控除を申請すれば、米国で引かれた額がほぼ全額、所得税額から控除される
外国税額 > 限度額限度額までを今年控除し、超過分を翌年以降3年間の繰越として明細書に記録しておく
NISA口座のみで保有対象外のため申告による取り戻しはできない。課税口座での保有分があるかを確認する

そして、ここが一番の分かれ目です。確定申告をしないと外国税額控除は適用されず、米国で払った10%は戻りません。証券会社が自動で処理してくれるものではないので、申告するかどうかを自分で決める必要があります。

金額が数百円なら申告の手間と釣り合わないと判断する人もいますし、分配金が積み上がってきたタイミングで申告を始める人もいます。まず手順1の年間取引報告書を開いて、外国所得税額の欄がいくらかを見る。それだけで、申告する価値があるかどうかの見当はつきます。

申告方式の組み合わせに注意

外国税額控除は、総合課税(配当を給与などほかの所得と合算して税率を決める方式)・分離課税のいずれを選んだ場合でも適用できます。ただし配当控除との併用など、制度の組み合わせには留意が必要です。どの方式が有利かは所得の構成によって変わるため、金額が大きい場合や判断に迷う場合は税務署・税理士に確認してください。

なお、この記事の計算例は税率と計算式の当てはめ方を示すための例示です。実際の金額は所得構成や適用する税額控除によって変わります。投資は自己責任であり、元本は保証されません。税制の取り扱いは改正される場合があるため、申告の際は国税庁の最新情報を確認してください。

よくある質問

米国ETFの分配金は、結局いくら税金が引かれますか?

税引前の分配金に対して、まず米国で10%が源泉徴収され、その残額に日本国内で20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)がかかります。税引前10万円なら米国で1万円、残り9万円に対して日本で約18,284円が引かれ、手元には約71,716円が残ります。

外国税額控除を申請すると、米国で引かれた10%は全額戻りますか?

全額とは限りません。戻る上限は「その年分の所得税額×(調整国外所得金額÷所得総額)」で計算した控除限度額で、外国税額と限度額のうち小さいほうが実際の控除額になります。分配金の規模が所得全体に対して小さい個人投資家の多くは、米国で払った10%相当額が限度額内に収まります。

NISA口座で持っている米国ETFの分配金も外国税額控除の対象になりますか?

対象外です。NISA口座(新NISAを含む)の配当金等は国内側が非課税のため、二重課税の構造になりません。米国側で源泉徴収された10%は負担したままとなり、還付されません。外国税額控除の対象になるのは特定口座・一般口座など課税口座で受け取った分配金です。

控除しきれなかった外国税額は切り捨てになりますか?

切り捨てにはなりません。控除しきれなかった外国税額(控除限度超過額)も、限度額のうち使わなかった余裕部分(控除余裕額)も、翌年以降3年間繰り越すことができます。超過した年は明細書に記録を残し、翌年以降の枠で使います。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。