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配当控除とは?申告で税金が戻る分岐点は695万円

2026年7月4日|いろは堂投資編集部
西宮税務署の外観写真

画像出典: 写真: Suikotei(CC BY 4.0 / Wikimedia Commons)

この記事の要点
国内株式の配当は受け取り時に20.315%が源泉徴収されますが、確定申告で「総合課税」を選ぶと配当控除(課税総所得1,000万円以下の部分は所得税10%・住民税2.8%)が使え、税負担が下がる場合があります。有利・不利の分岐点はおおむね課税所得695万円で、これを超えると申告分離課税・申告不要のままのほうが軽くなりやすい構図です。ただし総合課税を選ぶと合計所得金額が増え、扶養の判定や国民健康保険料に影響することがあります。
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配当金って、証券口座に入ってきた時点で税金が引かれてますよね。あれって、もう終わった話じゃないんですか?

配当金の入金明細を見ると、「配当金額」と「お受取金額」の間に差があります。国内株式の配当からは、受け取りの時点で20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が差し引かれているためです。10万円の配当なら、手元に残るのはおよそ7万9,685円です。

この差し引かれた税金は、多くの人にとってそのまま確定します。ただし確定申告で「総合課税」という受け取り方を選ぶと、差し引かれた分の一部が戻ってくる場合があります。その鍵になるのが配当控除という制度です。

正直なところ、これは「誰でも得する裏技」ではありません。人によっては申告しないほうが軽く済みますし、税金以外のところで負担が増えることもあります。どちらの側に自分がいるのかを、順に見ていきます。

配当控除とは?なぜ配当だけ控除があるのか

配当控除は、国内株式等の配当所得について「総合課税」を選んで確定申告した場合にだけ使える税額控除です。税額控除(計算した税額から直接差し引くタイプの控除)なので、所得を減らすのではなく、税金そのものを減らします。

なぜ配当にだけこんな制度があるのか。ここを押さえると、後の話が全部つながります。

会社が1年間稼いだ利益には、まず法人税がかかります。配当は、その法人税を払った後に残った利益から株主へ支払われます。そして受け取った株主には所得税がかかります。つまり、同じ1つの利益に対して、会社の段階と株主の段階で二度課税されている状態です。この重なりを調整するために設けられているのが配当控除です(国税庁「配当控除」)。

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じゃあ、放っておいても自動で調整されるものなんですか?

配当控除には、使うための入口の条件があります。配当を「総合課税」で確定申告したときにだけ使え、申告分離課税を選んだ配当や、申告不要制度のまま放置した配当は対象外です(国税庁)。証券口座で源泉徴収されたまま何もしなければ、それは申告不要制度を選んだ扱いになります。だから多くの人が、この制度を使わないまま通り過ぎています。

総合課税と申告分離課税は何が違う?

配当の課税方法には、大きく3つの選択肢があります。前提を合わせるために、まずこの3つの性格の違いを区切っておきます。

配当の受け取り方3パターン
  • 申告不要制度/源泉徴収された20.315%で完結。確定申告をしない。配当控除は使えない
  • 申告分離課税/確定申告するが、配当を他の所得と分けて一律20.315%で課税。配当控除は使えないが、株の売却損と配当などの利益を相殺する「損益通算」ができる
  • 総合課税/配当を給与などの他の所得と合算し、超過累進税率で課税。配当控除が使える唯一の方法

ここで効いてくるのが税率の性格です。申告不要と申告分離は、所得がいくらであっても20.315%で固定されます。一方の総合課税は、所得税が5.105%から45.945%まで段階的に上がる超過累進税率で、これに住民税10%が乗ります。

つまり総合課税は、所得が低い人にとっては20.315%より安い税率が適用され、所得が高い人にとっては20.315%よりずっと高い税率になる方式です。そこへさらに配当控除が差し引かれる、という二段構えになっています。

配当控除は何%引かれるのか

控除率は、課税総所得金額(申告分離課税分を含み、山林所得・退職所得を除いた金額)が1,000万円を超えるかどうかで変わります。

課税総所得金額所得税からの控除率住民税からの控除率
1,000万円以下の部分に対応する配当所得10%2.8%
1,000万円を超える部分に対応する配当所得5%1.4%

SMBC日興証券および国税庁の公表情報をもとに作成(証券投資信託等は控除率が異なる場合があります)

上の表の「所得税10%・住民税2.8%」が、多くの個人投資家が対象になる部分です。住民税は本来一律10%ですが、ここから2.8%が引かれるので、住民税の実質負担は7.2%になります。この7.2%という数字が、次の分岐点の話で主役になります。

有利になる分岐点は課税所得695万円

総合課税と申告分離課税、どちらが軽いのか。配当控除を適用した後の実効税率を並べると、境目がはっきり見えます。

課税所得所得税(配当控除後)住民税(配当控除後)合計の実効税率
330万円未満0%相当7.2%7.2%
330万円以上695万円未満10.21%7.2%17.41%
695万円以上900万円未満13.273%7.2%20.473%

大和ネクスト銀行の公表データをもとに作成

上の表を、申告分離課税・申告不要の20.315%と見比べてください。課税所得695万円未満の行はいずれも20.315%を下回り、695万円以上の行は20.473%と上回ります。ここが分岐点です。課税所得がおおむね695万円以下なら総合課税が有利になりやすく、超えると申告分離課税・申告不要のままのほうが軽くなりやすいという構図になります。

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前に調べたときは「900万円まで有利」と書いてあった気がするんですが……

「900万円まで有利」という説明は、制度改正の前の話です。かつては所得税と住民税で別々の課税方式を選ぶことができ、「所得税は総合課税、住民税は申告不要」という組み合わせを使うと、住民税の7.2%すら回避できました。この合わせ技によって有利なラインが900万円まで伸びていたのです。

ところが2023年分(令和5年分)の確定申告から、所得税と住民税で異なる課税方式を選べなくなりました。住民税の扱いが所得税の申告書の記載に連動するようになったためです。この改正で合わせ技が使えなくなり、両方とも総合課税で判断することになった結果、ボーダーラインが695万円程度へ下がりました(大和ネクスト銀行)。古い解説記事を読むときは、この点に注意が必要です。

数値例で確かめる

課税所得400万円の人が、年間20万円の配当を受け取ったケースで並べてみます。ここでの課税所得とは、年収そのものではなく、各種控除を差し引いた後の金額です(源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」からさらに所得控除を引いた額に相当します)。

  1. 何もしない場合配当20万円 × 20.315% = 約40,630円が源泉徴収され、そこで確定します。
  2. 総合課税で申告した場合課税所得400万円は表の「330万円以上695万円未満」の行なので、配当控除後の実効税率は17.41%。20万円 × 17.41% = 約34,820円が本来の負担になります。
  3. 差額が還付の対象すでに40,630円を納めているので、差額のおよそ5,810円が戻る計算です。

金額の感覚としては、配当が20万円で約6千円弱。配当が年50万円あれば1万4千円台になります。派手ではありませんが、申告書に数字を入れるだけで確定する差です。

総合課税を選ぶと、税金以外で負担が増えることがある

実効税率だけで決めると、後で困ることがあります

総合課税を選ぶと、配当所得が他の所得と合算されて合計所得金額そのものが増えます。この合計所得金額は、税額の計算以外の場面でも使われる数字です。そのため、配当所得を申告した結果として次のような影響が出ることがあります(大和ネクスト銀行)。

  • 配偶者控除・配偶者特別控除が減額される、または受けられなくなる
  • 扶養控除の判定に影響する(親の扶養に入っている場合など)
  • 国民健康保険料(税)や後期高齢者医療保険料の算定基準額が上がる

とくに国民健康保険に加入している自営業・フリーランスの方や、年金生活で後期高齢者医療保険料を負担している方は、還付される所得税・住民税より保険料の増加額のほうが大きくなることがあります。会社員で健康保険が給与ベースの方はこの影響を受けにくいですが、扶養の判定には引き続き注意が必要です。

判断の順番としては、まず実効税率の表で「税額としては有利か」を確かめ、次に「合計所得金額が増えて困る事情がないか」を確かめる。この2段階で見るのが安全です。国民健康保険料の計算方法は自治体ごとに定められているため、影響が気になる場合は住んでいる市区町村の窓口や、税務署・税理士に確認するのが確実です。

確認から申告までの進め方

実際に検討する場合の手順を、順に並べます。

  1. 自分の課税所得を確認する会社員なら源泉徴収票、確定申告をしている方なら前年の申告書控えで確認します。年収ではなく、所得控除を差し引いた後の課税される所得金額を見ます。
  2. 695万円のラインと照らす課税所得が695万円を大きく超えているなら、総合課税を選ぶ理由は基本的にありません。この時点で検討を終えてよいケースです。
  3. 配当の年間合計額を出す証券会社が交付する年間取引報告書や配当金計算書で、その年に受け取った国内株式の配当額と源泉徴収額を確認します。
  4. 副作用がないか点検する扶養の判定、配偶者控除、国民健康保険料。前の章のチェック項目に該当しないかを見ます。
  5. 確定申告書で総合課税を選ぶ国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、配当所得の入力画面で課税方法を選択します。総合課税を選ぶと配当控除が自動で計算に反映されます。
申告前に手元にそろえておくもの
  • 源泉徴収票(会社員の場合)
  • 特定口座年間取引報告書、または配当金計算書・支払通知書
  • マイナンバーが確認できる書類
  • 還付金を受け取る本人名義の口座情報

なお、申告方法の選択はその年ごとに判断できます。今年は総合課税、来年は申告不要、という選び方も可能です。課税所得は転職・昇給・退職などで変わるため、毎年その年の状況で確認する形になります。

配当控除の対象にならないケース

配当だからといって、すべてが配当控除の対象になるわけではありません。混同しやすい点を整理します。

対象外・注意が必要なもの
  • NISA口座の配当/そもそも非課税なので、源泉徴収されておらず、戻る税金もありません。控除の検討対象外です
  • 外国株式の配当/配当控除は国内株式等が対象です。外国株の配当は、現地で引かれた税金と日本の税金の重複を調整する「外国税額控除」という別の制度の話になります
  • 申告分離課税を選んだ配当/株の売却損と配当などの利益を相殺する「損益通算」を目的に申告分離課税を選ぶと、配当控除は使えません。損益通算のメリットと配当控除のメリットは同時に取れないため、どちらが大きいかの比較になります
  • 証券投資信託の分配金/配当控除の対象にはなりますが、控除率が株式の配当とは異なる場合があります

3つ目の「損益通算か配当控除か」は、その年に株式の売却損が出ている人にとって実際に迷うところです。売却損が大きい年は、配当控除を使わずに申告分離課税で損益通算するほうが有利になることもあります。損益通算のしくみそのものについては、別の記事で扱っています。

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全員が申告すべきものじゃない、と分かっただけでもすっきりしました。

制度としての結論はシンプルです。課税所得695万円というラインを一度自分で確認しておけば、毎年迷わずに判断できます。使える側の人は数千円から数万円の還付、使えない側の人は申告不要のままで最適。どちらだとしても、知ったうえで選んだという状態になります。

税額の計算や適用の可否は個々の所得構成や自治体の制度によって変わります。実際の申告にあたっては、国税庁の確定申告書等作成コーナーで試算するか、所轄の税務署・税理士へ確認してください。

投資に関する免責事項

本記事は税制および投資に関する一般的な情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の推奨や投資助言を行うものではありません。株式投資に元本保証はなく、株価の変動により損失が生じる可能性があります。配当についても、企業の業績や方針により減配・無配となることがあります。税制は改正される場合があり、実際の税額や適用可否は個別の状況によって異なります。投資は自己責任であり、元本保証はありません。最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。税務上の取り扱いについては所轄の税務署または税理士へ、投資判断については必要に応じて専門家へご相談ください。

よくある質問

配当控除は確定申告しなくても適用されますか?

適用されません。配当控除は国内株式等の配当を「総合課税」で確定申告した場合にのみ使える税額控除です。証券口座で源泉徴収されたまま何もしない場合は申告不要制度を選んだ扱いとなり、配当控除の対象外になります。

総合課税と申告分離課税はどちらが有利ですか?

課税所得によって変わります。配当控除適用後の実効税率は課税所得330万円未満で7.2%、330万円以上695万円未満で17.41%、695万円以上900万円未満で20.473%です。申告分離課税・申告不要は一律20.315%のため、課税所得がおおむね695万円以下なら総合課税、超えるなら申告分離課税・申告不要が有利になりやすい構図です。

配当控除の控除率は何%ですか?

課税総所得金額が1,000万円以下の部分に対応する配当所得は、所得税10%・住民税2.8%を税額から控除できます。1,000万円を超える部分に対応する配当所得は所得税5%・住民税1.4%です。証券投資信託等は控除率が異なる場合があります。

総合課税を選ぶデメリットはありますか?

配当所得が他の所得と合算されて合計所得金額が増えるため、配偶者控除・配偶者特別控除の減額、扶養控除の判定への影響、国民健康保険料(税)や後期高齢者医療保険料の算定基準額の上昇といった副作用が生じる可能性があります。還付される税額より保険料の増加額が大きくなることもあるため、税額だけで判断しないことが大切です。

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