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損益通算とは?株の損失を3年繰り越す確定申告の手順

2026年7月5日|いろは堂投資編集部
株価下落を示すグラフのイメージ画像

画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)

この記事の要点
上場株式等の売却損は、同じ年の他の売却益や申告分離課税を選んだ配当と相殺(損益通算)でき、それでも引ききれない損失は確定申告をすることで翌年以後3年間繰り越して使えます。特定口座(源泉徴収あり)で取引していても、繰り越した損失を翌年の利益にぶつけるには確定申告が必要で、しかも損失を出した年以降は取引がない年も連続して申告しないと繰越が途切れます。
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今年は売却でマイナスだった…。損しただけで、税金の話とは無縁だよね?

損失が出た年は、税金の面ではむしろ手を打てる年です。上場株式等の売却損は、同じ年の他の売却益と相殺できるうえ、引ききれなかった分を翌年以後3年間持ち越せます。持ち越した損失は、将来利益が出た年の税金をそのまま減らします。

ただし、この持ち越しは自動では起きません。正直なところ、ここを知らずに「特定口座(源泉徴収あり)だから申告不要」で終えてしまい、3年分の権利を捨てている人はかなりいます。しくみと手続きを順に見ていきます。

損益通算とは? 同じ年の利益と損失を相殺するしくみ

上場株式等の売却益には、申告分離課税として20.315%(所得税15.315%+住民税5%、復興特別所得税を含む)の税率がかかります。このとき、同じ年に出た売却損は売却益から差し引けます。これが損益通算です。

たとえば同じ年にX株で40万円の利益、Y株で15万円の損失が出たなら、課税の対象になるのは差し引き25万円です。20.315%をかけると税額は約5万円で、利益40万円のまま課税された場合(約8.1万円)より軽くなります。

相殺できる相手は売却益だけではありません。申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得等とも通算できます。配当で受け取った分に課された税金が、売却損によって還付されるかたちです。

損益通算できる/できない組み合わせ
  • できる: 上場株式等の売却益 × 上場株式等の売却損
  • できる: 申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得等 × 上場株式等の売却損
  • できない: NISA口座・旧ジュニアNISA口座で生じた売却損(非課税口座のため、そもそも損失がなかったものとして扱われる)
  • できない(繰越後): 繰り越した損失を一般株式等(非上場株式等)の譲渡所得等から控除すること

同一の証券会社の特定口座内であれば、この年内の相殺は口座側で自動的に処理されます。問題になるのは、年内で引ききれなかった損失の行き先です。

繰越控除とは? 引ききれない損失を3年持ち越す

🤔
年内に利益がまったく無かった年の損失は、そのまま消えるの?

消さずに済む制度が繰越控除です。正式には「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」といい、その年の損益通算をしてもなお控除しきれない損失を、翌年以後3年間にわたって繰り越せます。

繰り越した損失を使う順序も決まっています。まずその年の上場株式等の譲渡所得等から控除し、それでも控除しきれない場合に、申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得等から控除します。

数値例:50万円の損失を3年でどう使うか

1年目に売却で50万円の損失が出て、その年に相殺できる利益がなかったとします(以下は制度の説明のための仮の例です)。

その年の譲渡損益繰越損失の使用課税対象翌年へ繰り越す残り
1年目▲50万円0円50万円
2年目+30万円30万円を充当0円20万円
3年目+12万円12万円を充当0円8万円
4年目+40万円8万円を充当32万円0円(期限到来)

2年目の30万円の利益には本来20.315%、およそ6.1万円の税金がかかりますが、繰り越した損失を充てることでこの年の課税対象は0円になります。3年目、4年目も同様に、残った損失の分だけ課税対象が圧縮されていきます。

注意したいのは4年目です。1年目に生じた損失を使えるのは翌年以後3年間、つまりこの例では4年目までです。4年目に残った8万円を使い切れなければ、そこで期限切れになります。

特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告が必要な理由

😲
源泉徴収ありの口座にしてあるから、税金は全部お任せだと思ってた…

源泉徴収ありの特定口座が自動で処理してくれるのは、その口座の、その年の中での損益通算と納税までです。証券会社は前年以前にあなたがいくら損失を繰り越しているかを知らないため、繰越損失は源泉徴収の計算に入りません。

そのため、繰り越した損失と当年の利益をぶつけて税金を取り戻すには、確定申告というかたちで自分から申し出る必要があります。上の例の2年目でいえば、申告をしなければ約6.1万円が源泉徴収されたまま戻ってきません。

繰越が途切れる、いちばん多い落とし穴

繰越控除の適用を受けるには、損失が生じた年分に一定の書類を添付した確定申告書を提出したうえで、その後の年も連続して確定申告書を提出する必要があります。売買をまったくしなかった年、利益も損失も出なかった年でも申告が要ります。1年でも申告を飛ばすと、そこで繰越の権利が途切れます。「今年は取引していないから申告しなくていい」が、いちばん起きやすい取りこぼしです。

確定申告の流れは? 損失を繰り越すときの手順

  1. 年間取引報告書を用意する証券会社から交付される「特定口座年間取引報告書」を口座ごとに集めます。多くの証券会社では電子交付され、1月中旬〜2月頃にサイト上で確認できます。複数の証券会社を使っているなら全社分そろえます。
  2. その年の損益を通算する複数口座にまたがる利益と損失、申告分離課税を選ぶ配当を合算し、その年に引ききれない損失がいくら残るかを確認します。
  3. 申告書と付表を作成する確定申告書に加えて、「確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」の添付が必要です。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、年間取引報告書の内容を画面の項目どおりに入力していけば、繰越額の計算と付表の作成まで進められます。
  4. 期限内に提出する原則として翌年2月16日から3月15日までが申告期間です(暦により前後します)。e-Taxなら書面の郵送は不要で、マイナンバーカードとスマートフォンまたはICカードリーダーがあれば自宅から提出できます。
  5. 翌年以降も連続して申告する繰越が残っている間は、取引がない年も申告を続けます。前年の申告データを引き継げるので、2年目以降の入力負担は初回より軽くなります。

手続きの入り口は「損失をいくら繰り越すか」を確定させることです。そこさえ申告書に載れば、あとは翌年以降に同じ手続きを繰り返すだけになります。

NISA口座の損失はどう扱われる?

NISA口座と旧ジュニアNISA口座の中で生じた売却損は、損益通算にも繰越控除にも使えません。利益が非課税である代わりに、損失も税務上は存在しなかったものとして扱われるためです。

つまり、課税口座(特定口座・一般口座)とNISA口座で同じ年にそれぞれ損益が出ていても、NISA側のマイナスを課税口座のプラスにぶつけることはできません。ここまで見てきた3年繰越のしくみは、課税口座での取引に限った話です。

申告することで影響が出る場合もあります

確定申告をして所得や控除の内容が変わると、配偶者控除・扶養控除の判定や、国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料の算定に影響することがあります。特に、配当を申告分離課税として申告に含める場合は合計所得金額が変わり得ます。会社員の方でも、扶養に入っている方や国民健康保険に加入している方は、還付額だけでなくこうした影響も含めて判断すると安心です。判断に迷う場合は税務署や税理士に確認してください。

損した年に、まずやっておくこと

難しく考えなくても、損失が出た年にやることは3つに絞れます。

損失が出た年のチェックリスト
  • すべての証券会社の年間取引報告書を集め、合算後に残る損失額を把握したか
  • その損失を繰り越すための確定申告を、期限内に済ませたか
  • 繰越が残っている間、取引のない年も申告を続ける前提でカレンダーに入れたか

損失そのものは戻ってきません。それでも、将来利益が出たときの税金を減らす権利を3年分手元に残せるかどうかは、申告書を1回出すかどうかで決まります。取り戻せる可能性があるものを、知らないまま手放さないでおけば十分です。

投資にあたっての注意点(免責事項)

株式などの金融商品への投資には価格変動リスクがあり、元本保証はありません。運用によって損失が生じる可能性があります。投資は自己責任で行ってください。ここでの説明は一般的な税制のしくみの解説であり、特定の銘柄や商品の推奨、投資助言、利益の保証を行うものではありません。税制の取り扱いは個々の状況により異なり、制度改正もあり得ます。実際の申告や投資判断にあたっては、国税庁の情報や税務署・税理士などの専門家の確認を優先してください。

よくある質問

株の売却損は何年繰り越せますか?

上場株式等の譲渡損失のうち、その年の損益通算で控除しきれない金額は、確定申告をすることで翌年以後3年間にわたり繰り越し、上場株式等の譲渡所得等および申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等から控除できます。

特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要ですか?

その年の口座内の損益通算と納税は自動で処理されますが、前年以前から繰り越した損失を当年の利益と相殺して税金を取り戻すには確定申告が必要です。源泉徴収の計算には過去の繰越損失は反映されません。

取引がなかった年も確定申告が必要ですか?

繰越控除の適用を受け続けるには、損失が生じた年分の確定申告に加えて、その後の年も連続して確定申告書を提出する必要があります。売買がなく損益が発生しなかった年でも申告を続けないと、繰越の権利が途切れます。

NISA口座で出た損失も損益通算できますか?

できません。NISA口座および旧ジュニアNISA口座内で生じた譲渡損失は、税務上ないものとして扱われるため、課税口座の譲渡益や配当との損益通算にも、翌年以後への繰越控除にも使えません。

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