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在宅ワークの設備投資、10万・30万円が分かれ目

2026年8月24日|いろは堂副業編集部
屋内の木製机に置かれたノートパソコンでオンライン会議画面を映す様子

画像出典: 写真: Project Kei(CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)

この記事の要点
在宅ワークの設備は、取得価額10万円未満なら消耗品費として買った年に全額経費にできます。10万円以上30万円未満は青色申告なら少額減価償却資産の特例で一括計上でき(年間合計300万円まで)、30万円以上は原則4年ほどかけて減価償却します。プライベートと共用する部屋や機器は、面積や時間を基準にした家事按分が必要です。
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椅子が合わなくて腰が痛い。でも5万円の椅子を副業のために買っていいのか、経費になるのかも分からなくて…

在宅で作業する時間が増えると、必ずぶつかる悩みです。設備にお金をかければ作業は速くなりそうだけれど、そのぶん手元の利益は減る。しかも「経費にできる」と聞いても、どこまでが経費なのかがはっきりしない。

正直なところ、この判断は感覚でやると危ういところです。経費のルールは10万円と30万円という金額のラインで機械的に切り替わるので、先にその線を知っておくと、買う前に「これは今年いくら落とせる買い物か」まで見えるようになります。買う・買わないを決めるのは、そのあとで十分です。

設備の購入費は、いくらから経費の扱いが変わる?

まず前提を合わせます。事業のために買ったものは経費になりますが、「買った年に全額を落とせるか」「何年かに分けて落とすか」が取得価額で分かれます。取得価額とは、本体価格に送料や設置費など使えるようにするまでの費用を含めた金額です。

線は10万円と30万円の2本で、金額帯は3つに分かれます。

10万円未満消耗品費として、購入した年度に全額を経費計上できる(申告の種類を問わない)
10万円以上30万円未満青色申告者なら「少額減価償却資産の特例」で購入年度に全額を一括計上できる(年間合計300万円が上限)。白色申告者は減価償却の対象
30万円以上申告の種類にかかわらず、原則として法定耐用年数にわたって分割して減価償却する(オフィス家具・什器は4年が多い)

在宅ワークの経費に関する税務解説の公開情報をもとに作成

上の表で効いてくるのが申告の種類です。10万円以上30万円未満の一括計上は、租税特別措置法第28条の2の特例によるもので、青色申告をしている人だけが使えます。5万円の椅子なら白色でもその年に全額落とせますが、15万円の椅子だと扱いが変わる、というわけです。

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同じ椅子でも、青色か白色かで今年の計上額が変わるんですね

青色申告の届出は開業届とセットで出しておくと、こういう場面で選択肢が増えます。すでに副業で継続的に収入がある人ほど、効いてくる差です。

副業を始めてから、最初の1案件まではどう進む?

設備の話の前に、経費が発生する土台のほうを先に置いておきます。設備投資が意味を持つのは「納品する仕事がある」状態になってからです。逆に言えば、最初の1案件までは今ある機材のままで十分に走れます。

  1. 売るものを1つに絞る「文章を書く」「動画を切る」「スプレッドシートを整える」など、本業や趣味ですでにやったことがある作業をひとつ選びます。複数を並べると実績が分散して選ばれにくくなります。
  2. 見せられるサンプルを1本つくる実績ゼロでも、自分で題材を決めて成果物を1本作れば提示できます。記事なら1本、動画なら1分、資料なら1枚で構いません。
  3. 案件が並ぶ場所に登録するクラウドソーシングのサービスや、知人・前職のつながりに「こういう作業を受けています」と伝えるところから始めます。最初は単価より、納品までを一周させることを優先します。
  4. 応募文に「作業環境」を書き添える納期を守れる根拠として、稼働できる時間帯と作業環境(画面の枚数、通信、静かに通話できるか)を一行入れます。ここで初めて、設備が受注理由になります。
  5. 1案件納品して、詰まった工程をメモする「資料と原稿の行き来で時間を食った」「書き出しが遅くて待ち時間が長い」など、実際に詰まった場所を残します。次に買う設備は、このメモが決めてくれます。
最初の1案件を受ける前に用意しておくもの
  • サンプル成果物(1本でよい)
  • 稼働できる曜日・時間帯の一覧
  • 請求書を出せる準備(氏名・振込先)
  • 開業届と青色申告承認申請書(継続して受ける見込みが立ってから)

この順番だと、設備を買う時点で「何のための投資か」が自分の言葉で説明できます。経費として説明しやすいのも、実はこの状態です。

プライベートと共用するものは、何割を経費にできる?

ここが一番つまずきやすいところです。仕事専用で使うものは全額が対象ですが、少しでもプライベートで使うなら「家事按分」といって、事業で使っている分だけを取り出して経費にします。仕事部屋の家賃や電気代、そして自室の椅子やモニターも同じ考え方です。

按分の割合に、法律で決まった数字はありません。実務上は概ね20〜60%程度に落ち着くことが多いとされています。大事なのは数字の大小より、なぜその割合なのかを税務署に説明できることです。

計算の型は主に2つあります。

  1. 面積で按分する業務に使う面積 ÷ 住居全体の面積。50㎡の住まいのうち10㎡を仕事部屋にしているなら20%です。
  2. 時間で按分する1日の業務時間 ÷ 24時間。フルタイムで8時間働くなら約33%になります。
  3. 組み合わせる面積按分に「週のうち何日業務に使うか」を掛ける複合型も可能です。副業で平日夜と週末だけ稼働する人は、この形が実態に近くなります。
按分の根拠として残しておくもの
  • 間取り図(業務スペースの面積が分かるもの)
  • 作業時間の記録・タイムシート
  • 仕事部屋やデスク周りの写真
  • 案件の納品日・稼働日が分かる記録

これらは提出を求められて初めて用意するより、買った時期に一緒に保管しておくほうが手間がかかりません。写真はスマホで1枚撮っておけば十分です。

設備投資は、どの順番でお金をかけるべき?

優先順位は、職種によってかける先が変わります。自分の作業のうち、時間を一番食っている工程を助けるものから買うのが基本です。

Webライター系

投資の中心はPCと外付けキーボード、外付けモニターです。文字を打つ時間と、資料を見ながら書く時間が長いため、入力デバイスと画面の枚数が効きます。金額としては10万円未満に収まるものが多く、消耗品費として買った年に処理できる範囲です。

エンジニア系

ハイスペックPC、デュアル4Kモニター、メカニカルキーボード、専用チェアなど、高額投資になりやすい構成です。ここまで来ると30万円のラインをまたぐ機器が出てくるので、購入前に青色申告の状況を確認しておく価値があります。

動画編集者

三者の中で最も設備費が大きくなりやすい職種です。カラーグレーディングに対応するモニターは20〜40万円程度、加えて大容量の外付けSSDが必要になります。40万円のモニターは30万円のラインを超えるため、原則として複数年に分けた減価償却の対象です。今年の利益から全額を引けるつもりで買うと、資金計画がずれます。

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椅子は最初に買うべきですか?それとも後回し?

椅子の優先度は、座っている時間の長さで決まります。事業用途で使う椅子は、10万円以上であっても減価償却または少額減価償却資産の特例の対象になるので、金額を理由に諦める必要はありません。ただし副業で1日1〜2時間しか座らない段階なら、同じ5万円を先にモニターへ回したほうが作業時間の短縮に直結することが多いはずです。

設備投資は、収入としてどこまで返ってくる?

ここは期待していい部分です。設備投資が効くのは、単価が上がるからではなく、同じ作業にかかる時間が縮んで受けられる本数が増えるからです。時給ではなく本数で考えると、回収の見通しが立ちます。

たとえば1本8,000円の記事を月4本書いているライターが、モニターを1枚足したとします。資料と原稿を切り替える手間が減り、1本あたり4時間かかっていた作業が3時間になったとすると、同じ月16時間で5本まで届きます。月8,000円の増加なら、3万円のモニターは4か月ほどで元が取れる計算です。

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1本増えるだけでも、そこから毎月ずっと乗るんですね

効き方が大きいのは、待ち時間そのものを削る投資です。動画編集で書き出しに30分待っていた人がPCを更新して10分になれば、1日2本の書き出しでも月に十数時間が浮きます。その時間をそのまま次の案件に回せるなら、20万円台の機材でも半年から1年で回収の目処が立ちます。

加えて、環境が整うと受けられる案件の幅も広がります。静かに通話できる環境とデュアルモニターがあるだけで、打ち合わせを伴う継続案件に手を挙げられるようになる、といった変化です。単発の作業だけを受けていた段階から、月額で続く契約へ移れると、収入の読みやすさが変わります。

向いていないケースもあります

副業の売上がまだ小さい段階では、設備投資の節税効果もそのぶん小さくなります。経費は「税金がゼロになる魔法」ではなく、あくまで利益から差し引くものです。売上が年間数万円の時期に30万円の機材を買っても、手元のお金は確実に減ります。まずは今の機材で1案件を納品し、作業のどこが詰まるかを体感してから投資するほうが、外れの買い物を避けられます。

また、家事按分の割合を実態より大きく取ると、指摘を受けたときに説明できません。「仕事に使っている実感」ではなく、面積や時間という測れる根拠で決めてください。

買う前に確認しておくことは?

順番としては、次の流れで確認すると迷いにくくなります。

  1. その設備が助ける工程を書き出す「画面が狭くて資料と原稿を行き来している」など、具体的な困りごとに紐づけます。紐づかない買い物は、事業との関連も説明しにくくなります。
  2. 取得価額を確認する本体価格だけでなく、送料・設置費を含めた合計で10万円・30万円のどちらのラインに入るかを見ます。
  3. 申告の種類を確認する青色申告なら30万円未満まで一括計上の道があります。白色なら10万円が分かれ目です。
  4. 按分の割合を先に決めておくプライベートでも使うなら、購入時点で「面積20%」「時間30%」など根拠を決め、メモを残します。
  5. 領収書と保管方法を決めるネット購入なら注文履歴のPDFを保存。品名・金額・日付が分かる形で残します。

減価償却になった場合、実際どう処理する?

30万円以上(白色申告なら10万円以上)の設備は、法定耐用年数で分割して経費にします。オフィス家具・什器は4年とされるものが多く、たとえば40万円のモニターなら、単純計算で年10万円ずつを4年間かけて計上していくイメージです。

ここで押さえておきたいのは、お金は買った年に全額出ていくのに、経費になるのは分割だという点です。手元の現金と帳簿上の経費がずれるので、高額な機材を買う年は資金繰りを別に見ておく必要があります。

会計ソフトを使っている場合は、購入時に「固定資産」として登録すれば、以降の償却費は自動で計算されるものが一般的です。手入力で毎年計算するより、登録の一手間をかけたほうが確実です。

金額のラインから逆算して決める

設備投資で迷ったとき、判断の順番はこうです。まずその設備が自分の作業のどこを助けるか。次に取得価額が10万円・30万円のどちらのラインに入るか。最後にプライベート利用があるなら按分の根拠をどう残すか。この3つが決まれば、買う判断も帳簿の処理も同時に片づきます。

いきなり全部そろえる必要はありません。今いちばん時間を食っている工程をひとつ選んで、そこに10万円未満の範囲で手を打つ。それだけでも作業の体感は変わりますし、経費処理も消耗品費の一行で済みます。環境への投資は、稼いでから整えるより、稼ぐ速度を上げるために先に打つほうが回収が早いことも多いものです。

なお、経費計上の可否や按分割合の最終的な判断は個別の事情によって変わります。金額が大きい設備を導入する際は、税務署の相談窓口や税理士に一度確認しておくと安心です。

よくある質問

10万円未満のモニターや椅子は、買った年に全額経費にできますか?

取得価額が10万円未満の設備は「消耗品費」として、購入した年度に全額を経費計上できます。取得価額には送料や設置費など、使えるようにするまでにかかった費用も含めて判定します。

15万円の椅子を買った場合、経費の扱いはどうなりますか?

青色申告者であれば、租税特別措置法第28条の2の「少額減価償却資産の特例」により、合計300万円を上限として購入年度に全額を経費にできます。白色申告の場合は10万円以上のため、原則として法定耐用年数(オフィス家具・什器は4年が多い)にわたって減価償却します。

家事按分の割合はどれくらいが目安ですか?

法律上の明確な基準はありませんが、実務上は概ね20〜60%程度とされることが多いです。面積按分(業務使用面積÷住居全体面積)や時間按分(1日の業務時間÷24時間)で算出し、間取り図やタイムシート、写真などの根拠資料を保管しておきます。

動画編集用の高額モニターは今年の経費にできますか?

カラーグレーディング対応モニターは20〜40万円程度が目安で、30万円以上になると原則として法定耐用年数にわたる減価償却の対象です。30万円未満に収まる場合は、青色申告者なら少額減価償却資産の特例で購入年度に一括計上できます。

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