副業の経費はどこまで?家事按分でみる判断基準
画像出典: 写真: Joe lope(CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)
副業の経費は「業務に必要だと客観的に説明できる部分」まで認められます。自宅の家賃や通信費のようにプライベートと共用する支出は家事関連費と呼ばれ、使用面積・使用時間など合理的な基準で区分した部分だけを必要経費にできます。割合に法定の上限はなく、税務署に聞かれたときに根拠を示せるかどうかが判断の軸になります。
経費の線引きは、副業を始めた人がほぼ全員つまずくところです。ネットで調べると「家賃は3割まで」「通信費は5割が目安」といった数字が出てきますが、その%は法律で決まった基準ではありません。目安として紹介されているだけの数字を、そのまま鵜呑みにすると危ういところです。
正直なところ、判断の軸はもっとシンプルです。国税庁が示している考え方は「業務上直接必要だったことが明らかに区分できる部分は必要経費にできる」というもの。つまり%の暗記ではなく、自分でその割合を説明できるかどうかが勝負になります。ここでは経費の基本、家事按分の出し方、迷いやすい支出の整理を順に見ていきます。
副業の経費とは?そもそも何が認められるのか
必要経費とは、その収入を得るために直接かかった費用のことです。国税庁のタックスアンサー(No.2210 必要経費の知識)では、家事上の費用――つまり生活のための支出――は必要経費にならないと明記されています。日々の食費や趣味の買い物が経費にならないのは、この原則によるものです。
ただし現実の副業では、生活と仕事がはっきり分かれていない支出のほうが多いはずです。自宅の一室で作業すれば家賃はどちらの費用なのか、スマホ1台で連絡も遊びもするなら通信費はどう扱うのか。こうした生活と業務の両方に関わる支出を「家事関連費」と呼びます。
国税庁は家事関連費について、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる部分の金額は、必要経費にできるとしています。例として挙げられているのが店舗併用住宅の租税公課・家賃・水道光熱費です。自宅で副業をする人の状況は、まさにこの考え方の延長線上にあります。
- その支出がなければ、副業の収入は得られなかったと言えるか
- 業務で使った部分と生活で使った部分を、記録から区分できるか
- 区分に使った基準を、第三者に聞かれて説明できるか
3つとも「はい」なら経費に入れて構いません。どれかが「いいえ」なら、その支出は入れない、もしくは区分できる形に記録の取り方を変えるのが先です。
家事按分とは?割合の決め方と計算のしかた
家事按分は、ひとつの支出を業務分と生活分に分けて、業務分だけを経費に計上する手続きです。やることは掛け算ひとつで、支出額に業務で使った割合をかけるだけ。難しいのは計算ではなく、その割合をどう決めるかにあります。
実務でよく使われるのは、使用面積・使用時間・使用日数といった誰が見ても数えられる基準です。感覚で「だいたい3割くらい」と決めるのではなく、数えられるものを数えて割合を出す。ここが説明力の分かれ目になります。
家賃を按分する(使用面積で分ける)
- 部屋全体の広さを確認する賃貸契約書に記載された専有面積を使います。仮に50㎡としましょう。
- 仕事に使っている部分の広さを測る一室を作業部屋にしているなら、その部屋の面積。10㎡なら全体の20%です。
- 家賃に割合をかける家賃10万円 × 20% = 2万円が月の経費。年間なら24万円になります。
- 根拠を残す間取り図に作業スペースを書き込んでおけば、聞かれたときにそのまま示せます。
通信費・光熱費を按分する(使用時間で分ける)
ネット回線やスマホは面積で測れないので、使用時間を基準にします。1日24時間のうち副業に4時間使っているなら約17%、平日のみ稼働なら日数もかけ合わせる、といった具合です。週何時間作業したかをカレンダーやツールの稼働記録に残しておくと、割合の根拠がそのまま帳簿の裏づけになります。
車を使う副業なら、走行距離で分ける
納品や打ち合わせで自家用車を使うなら、ガソリン代や駐車場代・自動車保険料といった車両関連の費用も按分の対象になります。基準になるのは走行距離です。月の総走行距離が800kmで、そのうち仕事の移動が200kmなら25%。この割合をガソリン代や車両関連費にかけた分が経費になります。訪問先と日付、その日の走行距離をメモしておけば、それがそのまま根拠になります。
| 支出 | よく使われる基準 | 残しておく記録 |
|---|---|---|
| 家賃・地代 | 使用面積 | 間取り図・賃貸契約書 |
| 電気代 | 使用時間・使用面積 | 作業時間の記録 |
| 通信費 | 使用時間・使用日数 | 稼働時間のログ |
| ガソリン代・車両費 | 走行距離・使用日数 | 走行記録・訪問先メモ |
割合に法定の上限がない以上、上の表の基準はあくまで実務でよく採られる考え方です。自分の使い方に合った数え方があるなら、そちらを使って構いません。大事なのは基準が客観的であることと、一度決めたら気分で動かさないことです。
拾い直すと、金額はここまで変わります
按分を「面倒だから全部入れない」で済ませていた人が、根拠を作って計上に切り替えると数字ははっきり動きます。家賃10万円の20%で年24万円、電気代1万円の20%で年2.4万円、通信費8千円の30%で年約2.9万円。この3つを整えるだけで年およそ29万円が必要経費として積み上がります。
所得税と住民税を合わせた負担率が仮に20%なら、同じ収入のまま手元に残る額が年5万円台で変わる計算です。副業の売上が変わらなくても、記録の取り方だけで結果が動く。ここが経費を整える一番のうまみです。
なお、使い方が変わったら割合は見直します。副業の稼働時間が倍になったのに去年の割合を使い続けるのは、実態と合っていないことになります。年に一度、確定申告の前に点検する習慣をつけておくと安全です。
青色申告と白色申告で家事按分のルールは違う?
違いがあります。白色申告では、その支出の主要部分――おおむね50%以上――が業務のためであれば家事関連費を必要経費にできる、という整理が一般的です。一方青色申告では、業務遂行上必要な部分が明らかに区分できれば、事業割合が50%未満でも必要経費にできます。
この差は副業には効いてきます。会社員の副業で、自宅の一室が家全体の20%というのはごく普通の状況です。青色申告なら、区分の根拠さえあればその20%を計上できることになります。
青色申告をするには開業届と「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要で、要件を満たせば青色申告特別控除も受けられます。最大65万円の控除には、複式簿記(ひとつの取引を「現金が減った/経費が増えた」のように二面から記録する方式。会計ソフトを使えば入力は日々の取引を打ち込むだけです)による記帳、貸借対照表(年末時点の財産と借金の一覧表)と損益計算書(1年分の売上と経費、その差引きの利益をまとめた表)の添付、期限内申告に加えて、e-Tax申告か電子帳簿保存(帳簿を紙に印刷せずデータのまま保存する方法。事前に税務署の承認手続きが必要です)のいずれかが必要です(満たさない場合は55万円)。どちらの表も会計ソフトが日々の入力から自動で作ってくれます。帳簿の手間は増えますが、按分の自由度と控除を合わせて考えると、継続的に副業収入がある人には検討する価値があります。
副業が単発の一時収入にとどまっている段階では、複式簿記の負担に見合わないことがあります。青色申告は帳簿の作成と保存が義務になるため、年に数万円の収入のために会計ソフトと格闘するのは合理的ではありません。継続して反復的に収益が出るようになってからで遅くはありません。
経費にしていいか迷いやすい支出はどう考える?
グレーに見える支出は、たいてい「業務との関連をどこまで具体的に説明できるか」で色が決まります。実務系メディアの整理でも、迷いやすいものとして自宅兼用の家賃・光熱費・通信費(按分が必要)、書籍やセミナー参加費(業務との関連の明確さが必要)、交際費やカフェでの作業代(必要性の説明が難しく否認されるリスクが高いとされる)が挙げられています。
書籍・セミナー参加費
受注しているジャンルの専門書や、実際に使うスキルの講座なら業務との関連は説明しやすい支出です。逆に、いつか役立つかもしれない一般教養書は関連が薄くなります。「どの案件のために買ったか」を1行メモしてレシートに添えておくと、後から自分でも判断がつきます。
カフェ代・交際費
ここは慎重に扱う場所です。ひとりでの作業に使ったカフェ代は、自宅でもできる作業である以上「業務上直接必要だった」と示しにくい支出とされています。取引先との打ち合わせであれば、日付・相手・用件をメモしておくことで説明の材料になります。判断に迷うなら入れないほうが、後で否認されて修正するより負担は軽く済みます。
パソコン・機材
仕事とプライベートで兼用するなら、これも按分の対象です。なお青色申告者には、30万円未満の減価償却資産(パソコンや車のように、本来は何年かに分けて少しずつ経費にしていく高額な備品のこと)を、買った年に一括で経費計上できる特例があります(要件あり)。高価な機材を買う予定があるなら、この特例の存在は知っておいて損はありません。
- 日付/金額
- 何のために使ったか(案件名・目的)
- 業務割合(按分するなら何%と、その根拠)
これを支出のたびに書くだけで、確定申告の時期に「これ何だっけ」と悩む時間がほぼ消えます。経費判断でいちばん厄介なのは、記憶が薄れた後に思い出そうとすることなので。
そもそも確定申告は必要?20万円ルールの落とし穴
給与所得者の副業所得が年間20万円以下なら所得税の確定申告は不要、という「20万円ルール」があります。ここでいう所得は収入から必要経費を引いた後の金額なので、経費の考え方はこの判定にも直結します。売上25万円でも、按分した家賃や通信費を正しく計上して所得が20万円以下になれば、所得税の申告そのものが不要になるということです。
ただし注意点があります。この特例は所得税に限った話で、住民税には20万円の特例がありません。所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要になります。また医療費控除など年末調整の対象外の控除を受けるために確定申告をするなら、20万円以下の副業所得もあわせて申告することになります。
もうひとつ、家内労働者等――内職や在宅ワークのように、特定の相手から継続して仕事を受けて自宅で作業する人のことです――の要件を満たす場合には、必要経費として55万円まで認められる特例があります(令和2年分〜令和6年分の金額)。実際にかかった経費が55万円に満たなくてもこの額まで差し引ける仕組みなので、該当するかどうかは国税庁のタックスアンサー No.1810 で要件を確認してみてください。
今日からできる、経費で迷わないための一歩
経費の線引きで消耗しないコツは、判断を後回しにしないことに尽きます。年末にレシートの山と向き合うから難しくなるのであって、支出したその日なら理由は覚えています。
- 副業専用の入れ物を作る財布の中でもクリアファイルでもいいので、副業関連のレシートを分けておきます。
- 按分するものを書き出す家賃・電気・通信・車。自分が按分するのはどれかを紙1枚に書き出し、それぞれの基準(面積か時間か走行距離か)を決めます。
- 割合の根拠を1回だけ作る間取り図に作業スペースを描く、週の作業時間を数える、1か月の走行距離を控える。一度作れば、あとは毎月同じ割合を使えます。
- 月末に10分だけ集計する1か月分をまとめる習慣ができれば、確定申告はその12回分を足すだけの作業になります。
最初の1回さえ作ってしまえば、経費の判断は「毎年悩むもの」から「決めた基準を当てはめるだけの作業」に変わります。難しく見えるのは仕組みが複雑だからではなく、根拠が手元にないからです。いい感じに整えておけば、来年の自分がいちばん助かります。
※税額や申告の要否は個々の状況によって異なります。判断に迷う支出や制度の適用可否については、所轄の税務署または税理士へご確認ください。
よくある質問
副業の家賃は何%まで経費にできますか?
家事按分の割合に法令上の一律基準はありません。使用面積や使用時間など客観的で合理的な基準で業務使用部分を区分し、その割合を説明できることが求められます。たとえば50㎡の住居のうち10㎡を作業部屋として使っているなら20%が根拠のある割合になります。
白色申告でも家事按分はできますか?
できます。ただし白色申告では、その支出の主要部分(おおむね50%以上)が業務のためであることが求められるという整理が一般的です。青色申告の場合は、業務遂行上必要な部分が明らかに区分できれば事業割合が50%未満でも必要経費にできます。
自家用車のガソリン代は経費にできますか?
仕事の移動に使った部分は経費にできます。走行距離を基準に按分するのが一般的で、月の総走行距離のうち仕事の移動が占める割合をガソリン代や車両関連費にかけて計算します。訪問先・日付・走行距離を記録しておくと根拠になります。
カフェでの作業代は経費になりますか?
ひとりでの作業に使ったカフェ代は、自宅でも同じ作業ができる以上「業務上直接必要だった」と説明しにくく、否認リスクが高い支出とされています。取引先との打ち合わせであれば、日付・相手・用件を記録しておくことで説明の材料になります。
副業所得が20万円以下なら経費を計算しなくていいですか?
20万円の判定は収入から必要経費を差し引いた所得で行うため、経費の把握は必要です。また20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税には同様の特例がないため住民税の申告は別途必要になります。
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