年末調整の基礎控除申告書、副業ありの書き方と新様式
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副業が給与なら本業の給与収入と合算して「給与所得の収入金額」欄へ、業務委託など給与以外なら経費を引いた後の「給与所得以外の所得の合計額」欄へ記入します。両方を足した「合計所得金額の見積額」で控除額の区分が決まり、令和8年分はこの判定表の数値が改正されています。金額は年末時点の見込み額(概算)で構いません。
毎年なんとなく名前と印だけ書いて出していた紙が、副業を始めた年から急に難しく見えます。特に「基礎控除申告書」は、記入した金額によって控除額が変わる欄があり、空欄のままでは処理が進みません。
やることは、実はそんなに多くありません。副業の収入が「給与」か「給与以外」かで書く欄が分かれ、それを足した金額で控除額の区分が決まる、という一本道です。令和8年分からは、その区分を判定する表の数値が改正されました。順番に埋めていきましょう。
令和8年分の基礎控除申告書は何が変わった?
用紙の正式名称は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」です。長いですが、1枚の用紙に4種類の申告書が同居している、という意味で、この「4申告書一体型」の構成自体は令和7年分以前と同じです。
変わったのは中身の数値です。国税庁は令和8年6月30日に令和8年分の各種様式を公表しました。数値が改正されたのは3か所で、①基礎控除申告書の「控除額の計算」表、②配偶者控除等申告書の「判定」欄、③特定親族特別控除申告書の「控除額の計算」表です。令和8年度税制改正は原則として令和8年12月1日施行のため、令和8年12月に行う年末調整から改正後の数値で計算します。
背景にあるのは、いわゆる「年収の壁」の引き上げです。令和7年度改正で所得税の課税最低限が30年ぶりに103万円から160万円へ上がり、令和8年度改正でさらに178万円へ引き上げられました。あわせて、物価上昇に連動して基礎控除等を適時引き上げる「スライド制」も導入されています。
この結果、所得税の基礎控除額は合計所得金額489万円以下(給与収入に換算すると665万5,556円以下)の人で最大104万円になりました。従来の最大58万円、令和7年度改正の特例による最大95万円という水準からの、さらなる引き上げです。同一生計配偶者・扶養親族の合計所得金額の要件も、58万円以下から62万円以下に緩和されました。
ネット上の解説記事には、令和7年度改正時点の「最大95万円」の表を掲載したままのものが残っています。区分ごとの金額は必ず、国税庁が公表している令和8年分の様式PDF(2026bun_06.pdf)に印刷されている「控除額の計算」表を見て転記してください。手元の用紙にその表は印刷されているので、実務上は用紙に書いてある表だけを見れば足ります。
副業の収入はどの欄に書く?
書く欄は副業の形態で二手に分かれます。ここを取り違えると、合計所得金額の見積額がまるごとずれます。
副業が給与の場合(週末のアルバイト、パート、他社との雇用契約など)。この収入は本業の給与と同じ性質なので、「給与所得の収入金額」欄に本業分と合算した金額を書きます。本業・副業を問わず、その年の1月から12月に受け取る給与収入の合計見積額です。
副業が給与以外の場合(業務委託、フリーランスの報酬、クラウドソーシングの案件など)。こちらは「給与所得以外の所得の合計額」欄に書きます。注意したいのは、ここに入れるのが振り込まれた売上そのものではなく、必要経費を差し引いた後の「所得」だという点です。売上40万円・経費12万円なら、書く数字は28万円です。
- 本業の給与明細(直近月まで)か、給与収入の年間見込み額がわかるもの
- 副業先の支払通知書・報酬明細(給与かどうかが書かれています)
- 副業の経費を集計したもの(会計ソフトの年初からの集計画面で可)
- 会社から渡された令和8年分の用紙(控除額の計算表が印刷されているもの)
合計所得金額の見積額はどう計算する?
「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」欄には、給与所得の所得金額(給与収入から給与所得控除を差し引いた後の額)と、給与所得以外の所得の合計額を足した金額を書きます。給与の欄が「収入」ベースなのに対し、こちらは「所得」ベースである点が、最初に混乱しやすいところです。
給与収入から所得金額への換算は、用紙の裏面や手引きにある換算表で行います。自分で計算する必要はなく、収入額を表に当てはめて対応する所得金額を読み取るだけです。
- 本業の給与収入の見込み額を出す直近の給与明細にある累計額に、残り月分の見込みと賞与を足します。
- 副業が給与型か給与以外かを分ける支払通知書や契約書で確認します。源泉徴収票が出るなら給与型です。
- 給与型の副業は本業と合算する「給与所得の収入金額」欄は、本業+副業の給与の合計額になります。
- 給与以外の副業は経費を引いて所得にする売上から必要経費を差し引いた額を「給与所得以外の所得の合計額」欄へ。
- 合計所得金額の見積額を出す給与収入を換算表で所得金額に直し、給与以外の所得を足します。
- 控除額の計算表で区分をチェックする見積額が当てはまる区分にチェックを入れ、右側に基礎控除額を転記します。
年末時点の正確な金額がまだ分からない場合は、1年間の見込み額(概算)で構いません。1円単位で当てる必要はなく、控除額の区分が変わらない精度で足ります。12月の賞与額が未確定でも、前年実績などから見込みで入れて進めて問題ありません。
副業先に扶養控除等申告書を出している場合は?
2か所以上から給与を受けていて、副業先に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出している人は、その旨を基礎控除申告書に記載する必要があります。用紙に該当の記載欄があるので、心当たりがある人は副業先に提出した書類を確認してください。
この書類は、副業先の給与からの源泉徴収額を調整するためのものです。提出した覚えがはっきりしない場合は、副業先の給与明細で源泉徴収の欄がどう扱われているかを見るか、副業先の担当者に直接聞くのが早道です。
年末調整をすれば確定申告はいらない?
年末調整は「主たる給与の支払者」、つまりメインの勤務先でしか受けられない手続きです。ここで精算されるのは本業の給与についての税額であり、副業分の給与や業務委託の報酬は年末調整の対象外です。基礎控除申告書に副業の金額を書くのは、控除額の判定に合計所得金額が必要だからであって、副業分の税金がそこで清算されるわけではありません。
そのため、給与所得以外の所得が年20万円を超える場合など、一定の条件に当てはまる人は別途確定申告が必要になります。年末調整の紙を出したあとに、翌年2〜3月の確定申告がもう一段待っている、という二段構えです。
また、申告書に書いた見積額と実際の所得が大きくずれた場合も、確定申告で精算することになります。年末調整の時点では見込みで出しておき、確定した数字は確定申告で整える、という順番だと考えておけば大丈夫です。
配偶者控除・特定親族特別控除も同じ用紙で申告するため、扶養している家族がいる人は、本人の基礎控除だけでなく家族側の所得要件(62万円以下など)の確認も必要です。副業を法人化している、事業所得と雑所得の区分に迷いがある、副業の赤字を給与と通算したい、といった場合は、税務署の相談窓口か税理士に確認してください。判定を誤ると納税額そのものが変わります。
提出前の最終チェック
- 給与以外の副業を「収入」のまま書いていないか(経費を引いた所得か)
- 給与型の副業を本業の給与収入に合算し忘れていないか
- 合計所得金額の見積額が「収入」ではなく「所得」の合計になっているか
- 控除額の計算表の区分にチェックを入れ、金額を右側へ転記したか
- 副業先に従たる給与の扶養控除等申告書を出している場合、その記載をしたか
迷ったら、国税庁の各種申告書・記載例のページに記載例が公開されています。制度の全体像は「A2-4 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除及び所得金額調整控除の申告」のページにまとまっています。用紙を前にして手が止まったら、この2つを開けば答えが載っています。
よくある質問
副業の売上をそのまま「給与所得以外の所得の合計額」に書いてもいいですか?
いけません。この欄に書くのは売上(収入)から必要経費を差し引いた後の「所得」金額です。たとえば業務委託の売上が40万円で経費が12万円なら、記入するのは28万円です。
副業の金額がまだ確定していません。空欄で出していいですか?
空欄ではなく、1年間の見込み額(概算)で記入します。年末時点の正確な金額が分からない場合は概算で構いません。実際の所得と大きくずれた場合は、翌年の確定申告で精算します。
令和8年分の基礎控除額はいくらになりますか?
合計所得金額489万円以下(給与収入換算で665万5,556円以下)の人で最大104万円です。令和8年度税制改正で「年収の壁」が160万円から178万円へ引き上げられたことに伴う改正で、令和8年12月に行う年末調整から改正後の金額で計算します。区分ごとの具体的な金額は、用紙に印刷されている「控除額の計算」表で確認してください。
年末調整で副業分の税金も精算されますか?
されません。年末調整は主たる給与の支払者(メインの勤務先)でのみ行われ、副業分の給与や業務委託の報酬は対象外です。給与所得以外の所得が年20万円を超える場合など、条件に当てはまる人は別途確定申告が必要です。
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