下半期予算執行の10月、副業営業で差がつく提案の組み立て方
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日本企業で最も多い3月決算では、10月から3月が下半期にあたり、10月は下半期予算が執行段階に入る月です。10月に初めて接点を持つ新規開拓では、翌年度の予算取りを狙うより、まだ使い切っていない下半期予算の消化ニーズに寄せた提案のほうが現実的です。相手の決算月を先に調べ、提案の内容と金額をその期の残り予算に収まる形で出すのが要点になります。
提案の中身が同じでも、届いたタイミングによって扱いは変わります。企業がお金を使う枠は年度単位で決まっていて、枠が空いている時期と、枠がもう埋まっている時期があるからです。
ここでは、日本企業でいちばん多い3月決算を軸に、年度のどこで何を出すと話が進みやすいのかを整理します。副業で動ける時間は限られているので、送る量を増やすより、送る先と時期を選ぶほうが効きます。
そもそも企業の予算は、いつ決まっていつ使われる?
まず前提をそろえます。日本企業でいちばん多い事業年度は「4月1日〜翌年3月31日」の1年決算で、東証プライム市場の上場企業では3月決算が約68%を占めます。決算月の分布でも3月が最多(約18.3%)で、次いで12月・9月・6月と続きます。つまり、取引先候補の多くは4月始まりの年度で動いていると考えて大きく外しません。
この年度の中で、お金の流れは二段階に分かれます。予算を決める段階と、決まった予算を使う段階です。3月決算の企業では、前年の秋(10〜11月頃)から次年度の各部門予算案を作り、経営陣に提出して取締役会や経営会議で議論します。予算は遅くとも翌2月中には確定することが多い流れです。
言い換えると、10月に相手が向き合っているのは「来年度の予算づくり」と「今期の下半期予算の消化」の両方ということになります。この二つは、提案の出し方がまったく違います。
3月決算の企業なら、4月〜9月が上半期、10月〜3月が下半期です。10月は下半期のスタート月で、下半期に割り当てられた予算が執行段階に入るタイミングにあたります。
3月決算企業への提案は、年間でどう組み立てる?
複数の一次情報で共通して示されているのは、夏・秋・年明けの3フェーズという型です。それぞれ相手側の状態が違うので、こちらから出すものも変わります。
| 時期 | 相手側の状態 | こちらから出すもの |
|---|---|---|
| 7〜9月 | 次年度の予算要求が部門内でまとめられ始める | 情報提供・関係構築。提案が予算案に組み込まれるには前年7〜10月頃の接触が理想とされる |
| 10〜11月 | 各部門が経営陣に予算計画を提出する | 個別提案・見積の提示 |
| 1〜2月 | 翌期4月始動に向けた発注先の選定期 | 最終的な判断材料の提出 |
上の表で押さえておきたいのは、10〜11月の「個別提案」は、多くの場合7〜9月にすでに接点を持った相手に対して行われるという点です。夏に認知され、秋に具体案を出し、そこで予算に組み込まれる。この順番が本筋になります。
年明け1〜3月、つまり当期の期末に近づく時期の提案は、当期の余剰予算を消化しての即時発注か、翌期予算への組み込みを見据えた提案か、二択になりやすいとされています。
10月に「初めて接点を持つ」場合、どこを狙えばいい?
ここが副業者にとっていちばん実務的な論点です。10月に初めて連絡する相手に対して、来年度の予算に入れてもらう提案をしても、理想的な時期からは少し遅れています。相手の部門はすでに予算案をまとめる作業に入っているからです。
そこで現実的なのが、まだ使い切っていない下半期予算(10月〜3月)の消化ニーズに寄せるという考え方です。すでに枠として確保されている予算に対して「その枠でできること」を出すほうが、新しい枠を作ってもらうより決裁の階段が少なくて済みます。これは一次情報からの論理的な整理であり、統計で裏づけられた断定ではないので、あくまで一般的な傾向として使ってください。
- 単発・小規模で完結する(年間契約でなく1本から)
- 金額が決裁者の裁量に収まる範囲になっている
- 着手から納品までが年度内(3月末まで)に確実に終わる
- 「今ある課題をこの期のうちに片づける」という言い方になっている
逆に、来年度からの継続運用や大型リニューアルの話は、10月の新規接触では動きにくくなります。その場合は無理に押さず、次の夏(7〜9月)の関係構築フェーズに向けた種まきとして扱うほうが素直です。今期は小さく入り、来期に大きく提案する、という二段構えにできます。
うまく噛み合うと、どのくらいの形になる?
この二段構えがはまったときの姿を、具体的に描いておきます。10月に単発の仕事を1本引き受けて年度内に納めると、その実績は「発注したことのある相手」という履歴になります。社内では、一度取引した相手への追加発注のほうが、まったくの新規より通しやすいのが普通です。
すると、翌年1〜2月の翌期予算の詰めの時期に、今度はこちらから声をかけられる立場になります。秋に単発1本、冬に翌期の相談、春から継続の一部を担当。この階段を1社ぶん登れると、翌年度は「毎月決まった量の仕事がある取引先」が1社できることになります。
金額の規模感も、市場の広がりから見当がつきます。ランサーズの「フリーランス実態調査2024」では、2024年の広義フリーランス人口は1,303万人、経済規模は20兆3,200億円で、10年前と比べて約40%成長しています。うち副業として働く「副業系すきまワーカー」は424万人(26.9%)です。副業で企業から仕事を受ける形自体は、すでに珍しいものではなくなっています。
参考傾向として、BtoBベンチャー企業の経営者103名を対象にした調査(2023年3月公表)では、次年度予算の見通しを「現状維持」と答えたのが53.4%、「増加」が29.1%でした。やや前のデータですが、予算そのものが縮む前提で身構えなくてよい、という材料にはなります。
相手の決算月は、どうやって調べる?
ここまでの話は全部「相手の決算月がいつか」が土台になります。3月決算が最多とはいえ、12月・9月・6月決算の企業もあります。決算月が違えば、下半期の始まりも予算づくりの時期も丸ごとずれます。
- 企業サイトの会社概要を見る「事業年度」「決算期」の欄に書かれていることが多いところです。上場企業なら決算短信やIR情報のページで確認できます。
- 決算月から逆算して年度を引く決算月の翌月が年度の始まりです。3月決算なら4月始まり、12月決算なら1月始まりで、下半期はそれぞれ10月〜3月、7月〜12月になります。
- 提案の時期を割り振る相手ごとに「夏=認知」「秋=個別提案」「期末=消化 or 翌期」のどこに今いるかを書き出します。同じ10月でも、12月決算の企業にとっては期末が近い時期です。
- リストに列を足す営業先リストに「決算月」「今どのフェーズか」「次に連絡する月」の3列を追加します。これだけで、送る順番が決まります。
大企業ほど予算の承認プロセスが複雑で、予算案の提出時期も早くなります。相手の規模が大きいほど前倒しで動く、と覚えておくと時期の読みがずれにくくなります。
公共系の案件を狙う場合は何が違う?
官公庁や自治体を視野に入れているなら、民間とは別のルールが働きます。国の予算は憲法上の「単年度主義」(会計年度独立の原則)が基本で、内閣が毎年度予算を編成し、国会の承認を経て執行されます。1年で完結しない契約は例外扱いで、複数年にわたる事業の総額をあらかじめ国会が認める「継続費」や、来年度以降に支払う約束を今年度に結んでおく「国庫債務負担行為」といった制度を使って対応します。裏を返せば、原則としてはその年度の予算で始まり、その年度で終わる仕事が基本形だということです。
自治体・官公庁側の流れは、予算要求 → 査定 → 議会承認 → 執行という順で進みます。営業側は「いつ・誰に・何を」提案するかをこの4段階に合わせて考えることになり、執行段階に入ってから初めて存在を知らせても間に合いません。
加えて、官公庁のIT調達では、既存ベンダーが安定運用のために継続して運用保守を受託するケースが多いという実態調査(2022年2月公表)があります。新規で入り込むなら、発注が動く前の情報提供や実績のアピールの時期が勝負どころになるということです。副業規模でいきなり元請けを狙うより、受託した事業者の下で一部を担当する入り方のほうが現実的な場面も多くなります。
ここまでの話は、企業や官公庁を相手にする案件(BtoB)を前提にしています。個人向けのサービスやスキルマーケットでの受注が中心なら、相手に年度予算という概念がないので、この時期の考え方は当てはまりません。また、予算サイクルに合わせるということは「今すぐ返事がこなくても半年待つ」場面が出るということでもあります。今月の収入をすぐ増やしたい段階なら、まずは短期で決まる案件を確保してから、並行して仕込むほうが精神的に持ちます。
9月のうちに何を用意しておけばいい?
10月に動くなら、材料は前の月に揃えておくほうが楽です。連絡してから作り始めると、返事が来たときに出せるものがありません。
- 実績が3点ほど並んだポートフォリオ(URL1本で見せられる形)
- 単発で完結するメニューと、その概算金額
- 着手から納品までの標準的な日数
- 請求書のひな形と、振込先の口座情報
- 営業先リスト(決算月・フェーズ・次回連絡月の列つき)
初回の連絡で長い自己紹介を書く必要はありません。「誰の何を、どのくらいの期間と金額で解決できるか」を3行で書き、実績のURLを1本添えるだけで十分に伝わります。下半期予算に寄せるなら、「年度内に完了する単発の形でもお受けできます」の一文を入れておくと、相手が枠と照らし合わせやすくなります。
返信が来たら、受注までどう進める?
返事をもらったあとが、いちばん止まりやすいところです。次の順番で進めると、初めてでも最後まで抜けが出にくくなります。
- やりたいことと期限を聞く最初の返信では売り込まず、解決したい課題・希望の完了時期・社内で決める人が誰かの3点を質問します。年度内納品が必要かどうかも、ここで確認します。
- 作業を分けて見積を出す「一式」でなく、作業ごとに項目を分けて金額と日数を書きます。相手は社内で説明する必要があるので、何にいくらかかるかが分かれているほうが通しやすくなります。
- 範囲と修正回数を先に決めるどこまでが料金に含まれるか、修正は何回までか、追加が出たらどう精算するかを見積書に書き添えます。ここを曖昧にしたまま進めるのが、あとでいちばん揉めます。
- 社内の検討期間を待つ金額によっては決裁者の承認が要ります。「いつ頃までにご返答いただけそうですか」と一度だけ聞いておき、その日を過ぎたら短く確認の連絡を入れます。
- 発注の形を書面で残す発注書か、少なくとも金額・納期・作業範囲・支払期日をメールで相互に確認します。契約書のひな形がある会社なら、押印や電子契約の手続きに従います。
- 着手前に支払条件をそろえる締め日と支払日(月末締め翌月末払いなど)、請求書の送付先を確認します。ここまで決まって、はじめて受注です。
- 納品して請求する納品時に何を渡したかを一覧で添え、検収の返事をもらってから請求書を出します。この一連が、次の案件のときの実績になります。
返信がないことは失敗ではありません。相手のフェーズが合っていなかっただけ、という場合が多いからです。リストに「次回連絡月」を書いておけば、断られたのではなく順番待ちだと整理できます。
受注が増えたあとの制度面は?
下半期に案件が重なると、年間の副業収入がそれまでと変わってくることがあります。給与以外の所得が年間20万円を超えると原則として確定申告が必要になるため、10月以降に受注が増えそうなら、この時点で入金と経費の記録を始めておくと年明けが軽くなります。会社員なら、勤務先の就業規則で副業の可否と申請の要否も先に確認しておいてください。
確定申告の具体的な手順は別記事で扱っています。まずは相手の決算月を1社ぶん調べるところから始めれば、営業リストは今日から作り始められます。
よくある質問
3月決算企業の下半期はいつからいつまでですか?
3月決算企業の事業年度は4月1日から翌年3月31日までで、上半期が4月〜9月、下半期が10月〜3月です。10月は下半期のスタート月にあたり、下半期に配分された予算が執行段階に入るタイミングになります。
日本企業で3月決算はどのくらいの割合ですか?
東証プライム市場の上場企業では3月決算が約68%を占めます。企業全体の決算月の分布でも3月が最多で約18.3%、次いで12月・9月・6月と続きます。日本企業で最も多い事業年度は4月1日から翌年3月31日までの1年決算です。
次年度の予算に提案を組み込んでもらうには、いつ連絡すべきですか?
3月決算企業の場合、次年度予算の要求は前年の夏頃から部門内でまとめられ始めるため、提案が予算案に組み込まれるには前年7〜10月頃の接触が理想とされています。10〜11月は各部門が経営陣に提出する予算計画に対して個別提案や見積を出すフェーズにあたります。
官公庁の案件は民間と何が違いますか?
国の予算は憲法上の単年度主義(会計年度独立の原則)が基本で、毎年度予算を編成し国会の承認を経て執行されます。複数年にまたがる契約は継続費や国庫債務負担行為といった例外的な制度で対応します。自治体・官公庁では予算要求、査定、議会承認、執行という順に進むため、執行段階に入ってから接触しても間に合わず、その前の情報提供の時期が重要になります。またIT調達では既存ベンダーが継続受託するケースが多いという実態調査(2022年2月公表)もあります。
※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。