Will-Can-Must、30分でキャリアを整理する書く順番
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Will-Can-Mustは、Can(できること)→Must(求められていること)→Will(やりたいこと)の順で書き出すと進みやすくなります。3つの円が重なる部分が今の仕事の軸、重ならない部分が次の一歩の候補です。最後に行動を1つだけ決め、次の節目で見直します。
キャリアを考える時間が取れないのではなく、白紙のノートを前にして手が止まる。これが正直なところだと思います。「5年後どうなりたい?」から始めると、答えが出ないまま30分が過ぎます。
Will-Can-Mustというフレームワークは、その白紙を3つのマスに区切ってくれます。ただし、多くの解説が「Will(やりたいこと)」から並べるので、いちばん書きにくいところから始めてしまいがちです。書く順番を変えるだけで、同じフレームワークが一気に進みます。
下期の目標設定シートを出す前、上期の振り返り面談の準備をする前に、手元のノートで30分。そのための手順を、書き出す問いと記入例まで含めて渡します。
Will-Can-Mustとは何を整理するフレームワークか
Will-Can-Mustは、キャリアを3つの円で捉える考え方です。人材開発やキャリアコンサルティングの現場で広く使われています。
| Will | 将来やりたいこと・なりたい姿。2〜3年後をイメージすると考えやすい |
|---|---|
| Can | 現時点でできること。これまでの経験・スキル・得意分野 |
| Must | 所属する組織や環境から期待されている役割、達成すべき目標、果たすべき責任 |
東京しごとセンターヤングコーナーの公表内容をもとに作成
この3つの円が重なる部分が、目標設定やキャリアの軸になります。やりたくて、できて、求められている。その三重の重なりが、いま力を入れるべき場所です。
逆に言えば、重ならない部分にこそ情報があります。「やりたいけど、できない」は学ぶ対象。「求められているけど、できない」は今期の課題。「できるけど、求められていない」は活かし場所を探す対象。3つのマスを埋めること自体がゴールではなく、ズレを見つけることが目的です。
なぜCanから書き始めるのか
Willが最初に来るのは名前の並びであって、書く順番ではありません。人材育成の解説でも、若手が伸びる王道のパターンとして「まず会社から求められるMustを徹底的にこなし、Canを広げ、最終的にWillを見つける」という順序が挙げられています。やりたいことは、できることが増えた先に見えてくるという考え方です。
ノートに書く場面でも同じことが起きます。Canは事実なので手が動きます。Mustは評価シートや目標管理の資料を見れば書けます。この2つで紙が埋まってくると、「この延長でどうなりたいか」というかたちでWillが出てきます。ゼロから未来を発明しなくてよくなるわけです。
だから順番はCan → Must → Will。所要時間はそれぞれ10分ずつ、合計30分を目安にします。
30分ワークはどう進めるか
- 紙とペンを用意する(1分)ノートを見開きで使い、左ページを3分割してCan・Must・Willの欄を作ります。右ページは重なりとズレを書くために空けておきます。スマホのメモでも構いませんが、3つを同時に視界に入れられる形にしてください。
- Canを書き出す(10分)3つの問いに答えます。「長く携わった仕事は何か」「最も熱心に勉強したことは何か」「周りから褒められることは何か」。1問につき3つ以上、箇条書きで出します。
- Mustを書き出す(10分)同じく3つの問いです。「会社から期待されている役割は何か」「達成を求められている目標は何か」「果たすべき社会的な役割は何か」。目標管理シートや直近の面談メモを開きながら書くと具体的になります。
- Willを書き出す(10分)「今、興味があること・挑戦したいことは何か」「仕事を通じて実現したいことは何か」「やりがいを感じるのはどんな瞬間か」。2〜3年後の自分をイメージして答えると、遠すぎず近すぎない粒度になります。
- 重なりとズレを右ページに書く(5分)3つすべてに近い内容が入っているものを「軸」として囲みます。2つにしか入っていないものは、後述の分類でズレとして書き出します。
- 次の一歩を1つだけ決める(4分)ズレの中から1つ選び、今週中に着手できる大きさまで小さくします。ここは絶対に1つに絞ってください。
Canを書くときのコツ
Canの欄で「大した経験がない」と手が止まる場合、粒度が大きすぎます。「営業ができる」ではなく、「初回訪問前に相手企業の直近の発表を調べて話題を1つ用意する」「見積の作り直しを半日以内で回せる」まで分解します。細かく書くほど、後でMustやWillと突き合わせやすくなります。
それでも出てこないときは、「周りから褒められること」の問いを起点にしてください。自分では当たり前だと思っている作業ほど、他人から見た強みになっています。過去1年でお礼を言われた場面、頼まれごとが集中した仕事を思い出すと出てきます。
Mustを「やらされごと」で終わらせない
Mustは義務の欄なので、書いていて気が滅入ることがあります。ただ、ここには会社が自分に何を期待しているかという情報が入っています。目標管理シートに書かれた数値だけでなく、面談で上司が繰り返し口にすることや、自分に集まってくる相談の種類も書いてください。明文化されていない期待のほうが、実は日々の時間を多く使っています。
3つのズレを、次の一歩に変える
書き終えたら、2つの円にしか入っていない項目を分類します。ここが行動の材料になる部分です。
- Will × Can(やりたい・できる/求められていない)…社内で活かせる場を探すか、社外で試す。例: 社内公募や兼務の募集を確認する、小さく副業として試す
- Must × Can(できる・求められている/やりたくない)…すぐ手放せないので、時間の比率を見直す。例: 定型部分を仕組み化して、空いた時間をWillの領域に回す
- Will × Must(やりたい・求められている/まだできない)…最優先の学習対象。例: 必要なスキルを1つに絞り、今期中に手を動かす機会を1回作る
3つとも埋まることがありますが、動かすのは1つだけにします。3つ同時に手をつけると、どれも中途半端なまま次の節目が来ます。選ぶ基準は「今週中に最初の30分を確保できるか」。確保できないものは、今回は選ばないでください。
一歩の書き方テンプレート
決めた一歩は、次の形で1文にしてノートの最後に書きます。曖昧なまま置くと、翌週には消えています。
- 【いつ】9月◯日(曜日)の◯時から30分
- 【何を】〜を調べる/〜に声をかける/〜を1本書く
- 【終わりの合図】何ができていたら「やった」と言えるか
記入例です。「9月12日(土)10時から30分、社内公募の過去1年の募集職種を一覧にする。募集された部署名と時期をメモに書き出せたら完了」。ここまで具体的にすると、当日に迷いません。
下期の目標設定と面談に、そのまま使う
この30分のワークは、ノートの中だけで終わらせるともったいない使い方になります。9月から10月にかけては、上期の振り返り面談と下期の目標設定が重なる時期です。書いたものはそのまま材料になります。
- 上期の振り返り面談…Canの欄が実績の棚卸しになります。「何ができるようになったか」を、細かい粒度のまま話せます
- 下期の目標設定…Will × Mustの重なりを目標欄に置くと、会社の期待と自分の意欲が両立した目標になります
- 上司へのキャリア相談…Will × Canで「求められていない」と感じている部分を、そのまま相談材料にできます
- 後輩の育成・1on1…同じ3つの問いを後輩に渡せます。Canから聞くと、若手ほど話しやすくなります
面談で「今後どうしたいですか」と聞かれて言葉に詰まるのは、準備の量ではなく、書き出した記録がないことが原因です。手元に3つの円が書かれたノートが1枚あるだけで、その場で考えなくてよくなります。
転職も選択肢に入れるなら、時間軸を先に決める
整理した結果、「今の会社ではWillが実現できない」という結論になることもあります。その場合、9月の時点では入社時期の逆算を先に決めたほうが動きやすくなります。現実的な選択肢は2つです。
| 年内入社 | 9月中に応募を始め、10〜11月で選考。冬の賞与を受け取れない可能性があるため、賞与の支給条件(支給日の在籍要件)を就業規則で先に確認する |
|---|---|
| 1月以降の入社 | 12月の賞与支給後に退職を申し出て、引き継ぎ期間を確保する。9〜11月は情報収集と書類準備に充てられるため、在職中でも進めやすい |
どちらを選ぶかで、9月にやることが変わります。年内入社なら今月が応募のヤマ場です。1月以降なら、いま急ぐ必要はなく、職務経歴書の下書きとCanの棚卸しを進めておけば十分です。時間軸を決めずに求人だけ眺めると、動いた気になって何も決まらないまま年末が来ます。
今すでに心身の余裕がない状態なら、キャリアの整理は後回しで構いません。将来を考える作業は、体力を使います。まず休む、業務量を減らす相談をする。そちらが先です。
また、3つの円が全部きれいに重なる状態は、そう頻繁には訪れません。ズレがあるのが普通です。埋まらない欄があっても、それが今の現在地だという情報として残しておけば十分に役立ちます。
なぜ一度で完成させないほうがいいのか
Will-Can-Mustは、一度作って終わりにするものではありません。環境も気持ちも変わるため、定期的に見直すことが推奨されています。実際、半年前に書いたMustは、異動や担当変更で中身が入れ替わっていることがよくあります。
見直すタイミングは、節目に紐づけておくと忘れません。下期の期首、年末年始、年度末、大型連休の中日。カレンダーに30分だけ枠を取っておけば、そのたびに前回のノートと比べられます。前回との差分こそが、自分が動いた証拠になります。
30分、ノート1見開き、問いは9つ。今日それだけやっておけば、下期の面談も、来年の選択も、白紙から考えずに済みます。
よくある質問
Will-Can-Mustはどの順番で書けばいいですか?
Can(できること)→Must(求められていること)→Will(やりたいこと)の順が進めやすい順番です。Canは過去の事実、Mustは目標管理シートなどの資料から書けるため手が動きやすく、その2つが埋まると「この延長でどうなりたいか」というかたちでWillが出てきます。人材育成の解説でも、若手はMustをこなしてCanを広げ、最終的にWillを見つけるという順序が王道のパターンとされています。
Willがどうしても思いつかない場合はどうすればいいですか?
Willの欄を空欄のまま残して構いません。その場合はCanとMustの重なり、つまり「できて、求められていること」の中で、やっていて負担が少ない作業に印を付けてください。やりがいを感じる瞬間の共通点が、次に書き直すときのWillの手がかりになります。将来像は2〜3年後をイメージすると、遠すぎず考えやすくなります。
3つの円が重ならない場合、キャリアの方向性が間違っているということですか?
重ならないことは問題ではなく、むしろ普通の状態です。重ならない部分は行動の材料になります。「やりたいけどできない」は学習の対象、「求められているけどできない」は今期の課題、「できるけど求められていない」は活かす場所を探す対象、というように次の一歩に変換できます。
整理した内容を上司との面談でどう使えばいいですか?
Canの欄は上期の振り返り面談で実績の棚卸しとしてそのまま話せます。WillとMustが重なる部分は、下期の目標設定シートに書く目標の候補になります。会社の期待と自分の意欲が両立する領域なので、上司にも納得されやすい形になります。ノートを1枚手元に置いておけば、面談の場で考え込まずに済みます。
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