強みの棚卸し、面接でも使える3つのワーク
画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
強みが出てこないのは中身が無いからではなく、経験が言葉に変換されていないだけです。①半期の出来事を20個書き出す、②うまくいった場面の共通点を拾う、③同僚に「私の持ち味は何?」と聞く——この3ワークを順にやると、下期の目標設定面談や面接でそのまま話せる一文になります。所要は合計60〜90分ほどです。
強みが出てこない一番の理由は、経験が言葉に変換されないまま貯まっていることです。毎日仕事をしていれば、うまくやれたことは必ずあります。ただそれは「先週の火曜、あの資料を作り直した」という出来事の形で記憶されていて、「構成を組み直す力」という言葉の形では保存されていません。
だから、その場で急に聞かれても取り出せない。中身が空っぽなのではなく、検索用のラベルが貼られていないだけです。
下期がはじまるこの時期は、目標設定面談や上期の振り返りで必ずと言っていいほどこの質問が来ます。逆に言えば、直近半年ぶんの出来事が記憶に残っている今が、棚卸しには一番やりやすいタイミングです。
なぜ「強み」だけ答えられないのか?
面談で職務内容を聞かれれば、たいていの人はすらすら答えられます。「請求処理を担当しています」「A社の窓口をやっています」——これは事実をそのまま言えばいいからです。
ところが強みは、事実そのものではなく、複数の事実から抜き出した共通の性質を指します。つまり、強みを答えるという作業は、記憶を思い出す作業ではなく、要約する作業です。要約は、材料が目の前に並んでいない状態ではできません。
面談の席で3秒考えて出てこないのは当然で、材料を並べる工程を事前に済ませていないからです。この記事の3ワークは、その「並べる」工程を分解したものです。
- ワーク1:この半年の出来事を20個書き出す(30分)
- ワーk2:うまくいった場面の共通点を拾う(20分)
- ワーク3:同僚に「私の持ち味は何?」と聞く(1週間)
※ワーク3は相手の返事待ちがあるため日数がかかりますが、自分の手を動かす時間は5分程度です。
ワーク1:この半年の出来事をどう書き出す?
いきなり「強みを書き出そう」とすると手が止まります。最初に書くのは強みではなく、ただの出来事です。評価も分析もせず、事実だけを並べます。
- 期間を区切るこの4月から今日までなど、半年ぶんに限定します。社会人生活すべてを対象にすると膨大で終わりません。
- カレンダーとメールを開く記憶をたどるのではなく、スケジュールと送信済みメールを上から見ていきます。会議名や件名が、そのまま出来事の見出しになります。
- 1行20〜30字で書く「新人の田中さんに議事録の型を教えた」「B社の納期遅れを先に電話で伝えた」。この粒度で構いません。
- 20個たまるまで止めない15個あたりで手が止まりますが、そこから先に出てくるものが本命であることが多いです。小さすぎると感じる出来事も入れてください。
書き出しの対象になる出来事
「成果」と呼べるものだけを探すと数が集まりません。次の4種類を対象にすると、たいてい20個は超えます。
| 種類 | 具体例 |
|---|---|
| 感謝されたこと | 「助かった」「早くて助かる」と言われた場面 |
| 頼まれたこと | 他の人ではなく自分に回ってきた仕事 |
| 直したこと | 手順・書式・段取りを自分の判断で変えたこと |
| 苦にならないこと | 周りは面倒がるのに、自分は平気だった作業 |
最後の「苦にならないこと」が特に重要です。自分にとって当たり前になっている行動や、周囲から褒められた経験は、強み発見の手がかりとしてよく挙げられます。当たり前だからこそ自分では強みだと気づけず、他人から見ると際立って見えます。
数字はワーク1の段階では要りません。ここで数字を条件にすると、営業以外の職種はほぼ全滅します。定量化はワーク2で強みの裏づけを選ぶときに、可能なものだけ後から足せば十分です。まずは数を集めることを優先してください。
ワーク2:共通点から強みをどう言葉にする?
20個並んだら、次は分類です。ここで初めて「強みらしい言葉」に変換します。
- うまくいった側に印を付ける20個のうち、自分なりに手応えのあったものに丸を付けます。8〜12個くらいになるはずです。
- 「何をしたから」を1語で書き添える各出来事の横に、うまくいった理由を動詞1語で書きます。「先回りした」「分解した」「巻き込んだ」「粘った」など。
- 同じ語が3回以上出たものを拾う3回以上くり返し登場した動詞が、あなたの再現性のある行動パターンです。1回きりならたまたま、3回なら癖です。
- 1文の形に整える「〈行動〉ことで〈相手・組織〉の〈困りごと〉を減らせる」という型に入れます。
1文に整えた例
| 拾った動詞 | 整えた強みの一文 |
|---|---|
| 先回りした | 遅れそうな案件を発生前に共有することで、関係先の手戻りを減らせる |
| 分解した | 大きな依頼を作業単位に割ることで、着手までの停滞をなくせる |
| 巻き込んだ | 関係部署を早めに同席させることで、後工程の差し戻しを防げる |
この型を使う理由は、「協調性があります」のような形容だけの答えは、誰が言っても同じ文になってしまうからです。行動と、それによって減る困りごとまで書くと、あなた以外には書けない文になります。
ジョハリの窓で「自分では見えていない側」を意識する
ジョハリの窓(1955年に米国の心理学者ジョセフ・ルフトとハリー・インガムが考案した自己分析モデル)は、自己を4つの領域に分けて整理します。
| 開放の窓 | 自分も他人も知っている自己 |
|---|---|
| 盲点の窓 | 自分は気づいていないが他人は知っている自己 |
| 秘密の窓 | 自分は知っているが他人は気づいていない自己 |
| 未知の窓 | 誰も知らない自己 |
ここまでのワーク1・2で扱えるのは、上の表のうち「自分が知っている自己」を含む2つ、つまり開放の窓と秘密の窓の範囲だけです。他者からのフィードバックを集めて「盲点の窓」を広げることで、新たな強みに気づけるとされています。だからワーク3が要ります。
ワーク3:人に聞くとき、何と切り出せばいい?
他己分析——同僚や上司、友人に「私の強みや持ち味は何だと思う?」と直接尋ねる方法は、実践的な手段としてキャリア相談の現場でも挙げられます。とはいえ、いきなり真顔で聞かれると相手も答えに詰まります。聞き方を工夫すると精度が上がります。
- 「下期の目標設定を書いていて、自分の持ち味を言葉にするのに詰まってます。◯◯さんから見て、私に頼むならどんな仕事だと思いますか?」
- 「一緒にやったA案件、私がやってて助かった部分ってありました?逆に物足りなかった点も教えてもらえると助かります」
- 「私って、周りと比べて何をしてるときが早いと思います?」
3つとも「強み」という言葉を使っていません。「頼むならどんな仕事か」「何をしているときが早いか」と、行動を聞く形にするのがコツです。抽象的な質問より具体的な質問のほうが、相手も答えやすく、返ってくる内容も具体的になります。
聞く相手は3人、種類を変える
- 同じチームの同僚日常の仕事ぶりを一番見ている人。作業レベルの持ち味が返ってきます。
- 他部署の関係者あなたを「窓口」として見ている人。対外的にどう映っているかがわかります。
- 以前一緒に働いた人今の役割の色が付いていない分、変わらない特性が出てきます。
3人から返ってきた言葉と、ワーク2で自分が書いた一文を並べてみてください。重なった部分が、面談でも面接でも通用する強みです。ずれた部分は捨てるのではなく、「自分は自覚していなかったが評価されている点」としてメモしておきます。
異動や転職の直後で、今の職場での経験が3か月に満たない場合、ワーク1で20個は集まりません。その場合は期間を前職まで広げるか、材料が貯まる下期の終わりまで待ったほうが精度は上がります。
また、人に聞くワーク3は、関係が良好でない相手にやると逆効果です。無理に3人そろえる必要はなく、1人でも構いません。誰にも聞ける相手がいない時期なら、ワーク1・2だけでも面談で話せる形にはなります。
面談でどう話せばいい?
整えた一文は、そのまま口に出すと硬く聞こえます。面談や面接では、次の3ステップの順で話すと自然です。
- 強みを一文で言う「遅れそうな案件を早めに共有して、関係先の手戻りを減らすところだと思っています」
- 裏づけの場面を1つ出す「上期のB社の件で、納期が危ないとわかった時点で先に電話を入れました」
- 次にどう使うかを添える「下期は同じやり方を新人にも共有していきたいです」
3つ目まで言えると、自己評価ではなく今後の使い道の話になります。強みは「持っている性質」ではなく「これから何に使えるか」として話すと、聞き手に伝わります。
下期の目標設定に落とすなら
目標設定シートの「重点課題」欄に困っているなら、ワーク2の一文をそのまま素材にできます。「〈強みの行動〉を、〈今より広い範囲〉に適用する」という形にすると、無理のない目標になります。
たとえば「案件の早期共有」が強みなら、下期の目標は「担当案件だけでなくチーム全体の進捗共有の型を作る」。新しい能力を身につける目標より、すでにできていることの適用範囲を広げる目標のほうが、達成の見通しが立ちます。
3つのワークをいつやるか
60〜90分まとまった時間が取れなくても構いません。分割してもワークとして成立します。
| ワーク1 | 通勤中や昼休みに、カレンダーを見ながら5個ずつ4回に分ける |
|---|---|
| ワーク2 | 20個そろった週末に、まとめて20分 |
| ワーク3 | 雑談やチャットのついでに、1人ずつ1週間かけて |
大事なのは、面談の当日に考えないことです。材料さえ並べてあれば、あとは選ぶだけになります。次に「あなたの強みは?」と聞かれたとき、頭が真っ白になる代わりに、ワーク2で書いた一文がそのまま出てきます。
始めるのは5個で十分です。5個書いた時点で、思っていたより自分がいろいろやっていたことに気づくはずです。あとは20個まで伸ばすだけです。
よくある質問
自分の強みがわからないとき、まず何をすればいいですか?
強みを直接考えるのをやめて、直近半年の出来事を20個書き出すところから始めてください。強みは複数の経験から共通点を抜き出したものなので、材料が並んでいない状態では言葉になりません。カレンダーと送信済みメールを上から見ていくと、記憶をたどるより早く集まります。
数字で示せる成果がない職種でも強みは言語化できますか?
できます。強みの一文は「〈行動〉ことで〈相手〉の〈困りごと〉を減らせる」という形で作れば、定量的な成果がなくても成立します。たとえば「大きな依頼を作業単位に割ることで、着手までの停滞をなくせる」という形です。数字は裏づけとして後から足せるものだけ足せば十分です。
ジョハリの窓とは何ですか?
1955年に米国の心理学者ジョセフ・ルフトとハリー・インガムが考案した自己分析モデルで、自己を「開放の窓(自分も他人も知っている)」「盲点の窓(自分は気づかず他人は知っている)」「秘密の窓(自分は知っていて他人は気づいていない)」「未知の窓(誰も知らない)」の4象限に分けます。他者からのフィードバックを集めて盲点の窓を広げることで、自分では気づけない強みに出会えるとされています。
同僚に強みを聞くのが気まずいときはどうすればいいですか?
「強み」という言葉を使わず、行動を聞く形に変えると切り出しやすくなります。「私に頼むならどんな仕事だと思いますか?」「私って何をしているときが早いと思います?」のように具体的に尋ねると、相手も答えやすくなります。聞ける相手がいない時期なら、経験の書き出しと共通点の抽出だけでも面談で話せる形にはなります。
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