年収交渉の言い方、転職の内定後に使える3段階の伝え方
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転職の年収交渉は、内定の感謝を述べてから相談を切り出し、実績を根拠に希望額を幅で伝える流れが基本形です。切り出す前に希望額・許容額・最低ラインの3つの数字と、労働条件通知書の年収内訳を確認しておきます。内定を承諾して署名した後は原則として交渉できないため、動けるのは署名前のオファー面談までです。
年収の話を切り出すのは、気が重いものです。せっかく内定をもらったのに、お金の話で印象を悪くしたらどうしよう、という不安もあります。
ただ、年収交渉で評価を落とすかどうかを分けるのは「交渉したかどうか」ではなく「どう伝えたか」です。一方的に金額を要求する形になると信頼関係を損ねますが、根拠を添えて相談の形で持ち出すなら、企業側も検討の材料として受け取れます。逆に、何も言わずに承諾して署名してしまうと、そこから先は原則として交渉できません。
以下では、切り出す前の準備と、実際に口に出す言い方を文例の形で並べます。なお本文の手順・文例は転職支援サイトの解説をもとに筆者が整理したもので、公式な様式ではありません。
いま年収交渉をする地合いはどうなっている?
交渉の前に、自分が立っている市場の状況を知っておくと腰が据わります。マイナビが2026年10月15日に発表した『マイナビ転職』掲載の正社員求人の平均初年度年収は、経験者求人・未経験求人のどちらも高い水準で推移しました。
| 対象 | 2026年7月 | 2026年8月 | 2026年9月 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 521.3万円 | 511.6万円 | 512.5万円 |
| 経験者求人 | 585.6万円 | 578.0万円 | 572.2万円 |
| 未経験求人 | 456.8万円 | 451.8万円 | 457.4万円 |
マイナビキャリアリサーチLabの公表データをもとに作成(正社員求人の平均初年度年収)
上の表の全体欄のうち、7月の521.3万円は調査開始以来の最高値です。前月の512.4万円より8.9万円、前年同月の496.0万円より25.3万円高い数字でした。2026年度上半期の平均は513.2万円で、こちらは上半期として過去最高、2021年度上半期と比べると60.0万円の増加でした。
ここで大事なのは、この数字の意味を取り違えないことです。これは求人に掲載された提示年収の平均で、誰かが交渉して勝ち取った結果の統計ではありません。つまり「交渉すれば521万円もらえる」という話ではなく、「企業が初年度に提示する金額の相場が上がっている」という話です。自分の提示額が相場に対して低く見えるなら、その違和感には根拠があるかもしれない、という程度の後ろ盾として使うのが正しい使い方です。
業種によって上がり方は違う
同じ調査の2026年7〜9月の業種別では、金融・保険が625.2万円(前年同期比+145.7万円)、IT・通信・インターネットが592.9万円(+91.2万円)、コンサルティングが570.0万円(+54.9万円)と上位に並びました。エリア別では7月単月で関東が548.0万円と最も高く、近畿が513.6万円、東海が510.5万円でした。
マイナビキャリアリサーチLabの公表データをもとに作成(2026年7〜9月の業種別、カッコ内は前年同期比)
自分の志望業種が大きく伸びている側なのか、そうでないのかは、希望額の決め方に影響します。伸びている業種なら相場を根拠にしやすく、そうでないなら自分の実績そのものを根拠の柱にしたほうが話が通ります。
交渉を切り出す前に、何を準備しておく?
年収交渉で失敗しやすいのは、準備なしで感情だけを伝えてしまうときです。「もう少しほしい」は交渉ではなく要望なので、相手は検討のしようがありません。切り出す前に、次の6つを埋めておきます。
- 転職サイトやエージェントで、自分の経歴の市場価値をおおまかに把握する
- スキル・実績・現職年収・入社後の貢献から、希望額の根拠を言葉にする
- 希望額・許容額・最低ラインの3つの数字を決める
- 応募先企業の給与水準を調べる
- 労働条件通知書で年収の内訳(基本給・賞与・手当)を確認する
- 年収以外の交渉材料(福利厚生・役職・働き方)を整理する
とくに効くのが3つの数字です。希望額だけを持って臨むと、下げられたときに判断の基準がなくなります。「ここまでなら納得できる」許容額と「これを下回るなら辞退する」最低ラインを先に決めておくと、面談の場で即断しなくて済みます。
内訳の確認も見落としがちです。提示された総額が希望に届いていても、賞与が業績連動で変動する前提なら、実際に受け取る額は年によって動きます。基本給がいくらで、賞与と手当がいくら乗った数字なのかを分けて見ておくと、交渉すべき場所が基本給なのか別の条件なのかがはっきりします。
年収交渉の言い方は? 3段階で組み立てる
口に出す順番には型があります。前置きで立場を示し、根拠を自分の仕事の話として語り、金額は幅で渡す。この3段階を踏むと、要求ではなく相談として受け取られます。
- 「決めたうえでの相談」だと先に伝える最初の一言を金額から始めないだけで、受け取られ方が変わります。「内定をいただけたこと、ありがたく受け止めています。入社の意思を前提に、待遇の点だけ一度ご相談させていただけますでしょうか」。入る気がある人の確認なのか、条件が合わなければ去る人の交渉なのかを、相手は最初に知りたがります。
- 根拠は「相場」ではなく「自分の仕事」で語る相場の数字をそのまま理由にすると、評価の話が他人の平均値の話にすり替わります。使うなら自分の実績に接続します。「前職では〇〇の案件を担当範囲ごと引き継ぎ、〇%の改善まで持っていきました。同じ役割を貴社の△△でも担えると考えており、年収〇〇〜△△万円でご検討いただけないでしょうか」。相場は、自分の希望額が非常識な線でないことの裏付けとして心の中で使えば十分です。
- 幅で渡し、通らなかった先の話もできる形で締める「貴社で長く働くつもりで伺っています。金額の調整が難しい部分があれば、そこも含めてご相談させてください」。金額が通らなければ入らない、という印象を残さず、次の話題(条件面)への入口も残せます。
同じ内容でも、言い方で受け取られ方が変わる
伝える中身が同じでも、主語が「相場」か「自分」かで印象が分かれます。
| 避けたい言い方 | 言い換え |
|---|---|
| 「相場だともう少し高いようなので、上げていただきたいです」 | 「〇〇の経験が貴社の△△で活きると考えており、その前提での金額をご相談させてください」 |
| 「他社からは〇〇万円の提示をいただいています」 | 「貴社を第一に考えているので、待遇の点だけ整理させていただきたいです」 |
| 「600万円でないと厳しいです」 | 「560〜600万円のあたりでご検討いただけないでしょうか」 |
現職の年収を根拠にする場合
実績を数字で語りにくい職種なら、現職年収を軸にする形もあります。「現職では年収〇〇万円をいただいています。今回はより大きな責任を担うため、現職以上の待遇を希望します」。この言い方は、担う範囲が広がることと待遇を結びつけているので、単なる横並びの比較になりません。
金額は「幅」で伝える
「600万円でお願いします」と一点で出すと、企業側は是か非かしか返せません。希望額は5〜10%程度の幅を持たせて伝えると、相手が調整できる余地が生まれます。「560〜600万円」のように下限を許容額の近くに置いておけば、下限で決まっても納得できる着地になります。
希望額が通らなかったら、どう返す?
提示額が動かないこともあります。そこで黙ってしまうと、情報を得られないまま終わります。使える返し方は2つです。
ひとつは理由を聞くこと。「評価の背景をお伺いしてもよろしいでしょうか」と尋ねると、金額の根拠が見えます。等級制度の上限に当たっているのか、入社時の評価がまだ暫定なのかで、その後の見通しが変わります。
もうひとつは、交渉の軸をずらすこと。「金額面が難しければ、〇〇といった条件面はいかがでしょうか」と切り替えます。ここで出せるのが、準備段階で整理しておいた年収以外の材料です。
- 資格取得やスキル習得の費用支援
- リモートワークの頻度
- 昇格・昇給を検討してもらうタイミング
- 役職や担当範囲
年収の数字だけを見て辞退するより、こうした条件を含めた総合で判断したほうが、入社後の満足度に近い比較ができます。
やってはいけないことは?
年収交渉が理由で内定が取り消される可能性は一般に低いとされていますが、伝え方によっては選考の評価に影響する場合があります。一方的な要求や高圧的な態度は、入社前から信頼関係を損ねます。「上げてもらえないなら辞退します」のような条件の突きつけ方も、相談の形から外れます。
そしてもっとも大きな制約が、タイミングです。内定を承諾した後の交渉は原則としてできません。労働条件通知書に署名する前に、疑問は全部つぶしておく必要があります。
その場で結論を出す必要もありません。提示を受けたら「社内で相談したいので、2〜3日ほど検討のお時間をいただけますでしょうか」と伝えて持ち帰ります。数字を冷静に見比べる時間があるかどうかで、判断の質は変わります。
今日できる最初の一歩は?
まだ内定が出ていない段階でも、準備は始められます。むしろ、オファー面談が決まってから慌てて数字を作るほうが根拠は弱くなります。
- 実績を3つ書き出す担当した仕事と、動かした数字をセットで書きます。数字が出ない仕事なら、任された範囲や期間を書きます。
- 3つの数字を決める希望額・許容額・最低ラインを紙に書いて固定します。面談の場で考えないためです。
- 志望業種の相場を調べる求人情報を10件ほど並べて、提示年収のレンジを見ます。相場からずれた希望額は通りません。
- 年収以外にほしいものを挙げる金額で折り合わないときの第二案になります。
年収の話を切り出すのは、権利の主張というより、入社前に認識を合わせる作業です。言い方の型を持っておけば、気後れする場面は少し減ります。
よくある質問
年収交渉はいつ切り出すのが適切ですか?
内定後、労働条件通知書に署名する前のオファー面談の場が適切です。内定を承諾した後の交渉は原則としてできないため、署名前に疑問を解消しておく必要があります。提示を受けたその場で即決せず、2〜3日の検討期間をもらって数字を見比べるのも有効です。
年収交渉をすると内定が取り消されることはありますか?
交渉が理由で内定が取り消される可能性は一般に低いとされています。ただし伝え方によっては選考の評価に影響する場合があるため、一方的な要求や高圧的な態度は避け、内定への感謝を述べたうえで実績を根拠に相談の形で持ち出すのが基本です。
希望年収は一つの金額で伝えるべきですか、幅を持たせるべきですか?
5〜10%程度の幅を持たせて伝えるのが現実的です。一点の金額だと企業側は是か非かしか返せませんが、幅があれば調整の余地が生まれます。下限を自分の許容額の近くに置いておけば、下限で決まった場合でも納得できる着地になります。
転職求人の提示年収の相場はいまどのくらいですか?
マイナビが2026年10月15日に発表した『マイナビ転職』掲載の正社員求人の平均初年度年収は、2026年7月が521.3万円で調査開始以来の最高値、8月が511.6万円、9月が512.5万円でした。これは求人の掲載時提示年収の平均で、個人の交渉結果の統計ではありません。
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