内定が複数あるとき、決め方は?比較軸の作り方
画像出典: 写真: Shixart1985(CC BY 2.0 / Wikimedia Commons)
複数の内定で迷う原因は、比べる軸がないまま条件を並べていることにあります。まず自分の優先したいことを3行で書き出し、MUST(必須)とWANT(あると嬉しい)に分けて1〜5点で採点すれば、感覚ではなく根拠で選べます。点差が僅差なら、判断材料が足りないサインなので、返答期限を延ばすより先に企業へ質問して埋めるほうが早く決まります。
複数内定で決まらない最大の理由は、比べる軸が定まっていないことです。給与を見ればA社が良く、仕事内容を見ればB社が良い。これは当たり前で、条件は必ず一長一短になります。軸がないまま条件を往復すると、見るたびに答えが変わって永遠に決まりません。
複数内定は「贅沢な悩み」と言われがちですが、実際には今後数年の働き方を左右する意思決定です。軽く扱う話でもなければ、感覚で決めていい話でもありません。複数内定の悩みを扱った記事でも、軸を持たずに比べると目移りして決まらないと指摘されています。
やることは単純です。先に自分の軸を決めてから、企業をその軸に当てはめる。順番を逆にしないだけで、1〜2時間で結論が出ます。
なぜ複数内定は決められなくなるのか?
決められない状態には、だいたい共通の構造があります。A社の給与とB社の仕事内容のように、比較できないもの同士を直接比べようとしている状態です。単位が違うものは、そのままでは大小が出ません。
もうひとつは、全部を満たそうとしていることです。給与も仕事内容も勤務地も人間関係も全部いい会社は、そもそも候補に残っていません。どれかを諦める前提に立たないと、比較は始まりません。
優先順位づけを一気にやろうとすると難しく感じますが、「絶対に外せないもの」だけを2〜3個選ぶ作業なら手が動きます。順位を全部つけるのではなく、上位だけを切り出すのがコツです。転職軸の作り方を解説した記事でも、まず自分の優先したいことを書き出し、各社がそれを満たすかを確認する順番が基本手順として示されています。
比較軸はどう作る? 3行メモから始める
いきなり表を作らず、まず白紙に3行だけ書きます。お題は「今回の転職で、自分は何を変えたかったのか」です。
- 今の職場で一番つらいのは、裁量がなく決裁待ちの時間が長いこと
- 次は、企画から関われる立場になりたい
- 年収は今より下げたくない(最低でも同額)
ポイントは、会社の良し悪しではなく「自分の現状の不満」から書き始めることです。会社側の魅力から書くと、両社の求人票をなぞるだけになって軸になりません。不満は自分の中にしかないので、これが一番ブレない出発点になります。
3行が書けたら、そこから比較軸のカテゴリに落とします。よく使われるのは次のあたりです。
| カテゴリ | 軸になる例 |
|---|---|
| 給与・待遇 | 年収レンジ、賞与の有無、昇給の仕組み |
| 仕事内容 | 担当範囲、裁量の大きさ、任される工程 |
| 成長機会 | 身につくスキル、社内での経験の広がり |
| 働き方 | 勤務地、リモート可否、残業の実態 |
| 組織風土 | 意思決定の速さ、面接で会った人の雰囲気 |
全カテゴリを使う必要はありません。3行メモに出てこなかったカテゴリは、あなたにとって今回の優先事項ではないということです。捨てて構いません。
MUSTとWANTに分けるとどう変わる?
軸を並べたら、それぞれを2種類に仕分けします。
- MUST(必須条件)これを満たさないなら入社しない、という水準の軸。2〜3個に絞る。
- WANT(望ましい条件)あると嬉しいが、なくても入社の判断は変えない軸。いくつあってもよい。
この仕分けが効くのは、点数の重みを変えられるようになるからです。就活・転職の企業比較でよく使われる意思決定マトリックスでは、各軸を1〜5点で評価したうえで、MUST項目の点数を2倍にするなど重要度に応じた傾斜をつけます。事業内容・組織風土・会社基盤・立地といった軸をMUSTとWANTに分けて3社を採点した実例も紹介されています(unistyle)。
傾斜をつけないと、細かいWANTの積み上げでMUSTがひっくり返ります。「福利厚生と立地とオフィスの綺麗さでA社の勝ち」という結論が出たとき、たいてい原因はこれです。
点数表はどう作る? 実際の手順
紙でもスプレッドシートでも構いません。5分でできます。
- 行に軸を並べる3行メモから起こした軸を、MUSTを上、WANTを下にして並べる。
- 列に会社を並べる内定が出ている会社を横に並べる。3社以上でも同じやり方でいける。
- 1〜5点で採点する「満たしている=5、ほぼ満たす=4、どちらとも言えない=3、やや不足=2、満たさない=1」で埋める。迷ったら3を入れて先へ進む。
- MUSTの点数を2倍にするMUST行だけ点数を2倍して書き直す。
- 列ごとに合計する合計点の高い方が、あなたの軸に照らして条件を満たしている会社。
より簡易にやるなら、各軸を「◯=3点、△=2点、×=1点」で埋めて合計するやり方でも比較はできます(キャリアパーク転職エージェント)。まず手を動かすことが目的なので、精密さより完成させることを優先してください。
採点の例を挙げます。裁量と年収をMUSTに置いた人が、2社を比べた場合です。
| 軸 | 区分 | A社 | B社 |
|---|---|---|---|
| 企画から関われる裁量 | MUST(×2) | 2 → 4 | 5 → 10 |
| 年収が現状以上 | MUST(×2) | 5 → 10 | 4 → 8 |
| 通勤1時間以内 | WANT | 4 | 2 |
| リモート可 | WANT | 3 | 4 |
| 合計 | — | 21 | 24 |
この表の値打ちは、B社が勝ったことそのものより、「自分は通勤時間よりも裁量を取った」という選択の中身が目に見えることにあります。入社後に通勤がしんどい日が来ても、自分が何と引き換えにそれを選んだかを覚えていられます。後悔しにくいのは、条件が良い選択ではなく、理由を説明できる選択です。
点差が僅差だったらどうする?
合計が1〜2点差だった場合、コインを投げる必要はありません。僅差は「どちらでもいい」ではなく、判断材料が足りていないサインです。採点で「3」を多くつけた行を見返してください。そこが、あなたがまだ知らない部分です。
分からない項目は、聞けば埋まります。内定が出た後の質問は選考に響かないかと心配する人がいますが、入社を真剣に検討しているからこその質問です。次のような形で人事に連絡すれば十分通ります。
- 入社直後に担当する業務は、どの範囲を想定されていますか
- 配属予定チームの残業時間は、月あたりどのくらいが平均ですか
- リモート勤務は、実際にはどのくらいの頻度で利用されていますか
- 1年後、どんな状態になっていることを期待されていますか
面談や面接で会った現場の人に、あらためて話す時間をもらうのも有効です。求人票に書けない粒度の話は、そこで一番出てきます。
いつまでに決めればいい? 期限の考え方
点数表を作る前に、必ず確認しておくべきことがあります。各社の返答期限です。期限を把握しないまま検討を始めると、片方の期限が先に来て、比較そのものが成立しなくなります。
期限が近くて比較しきれない場合は、黙って粘るのではなく、企業側へ状況を伝えてください。他社の選考結果を待っていることを正直に伝え、いつまで待てるかを確認する。内定をキープしたまま連絡を絶つ形はNG事例として挙げられており、判断が長引く場合は早めに状況を共有するのが望ましいとされています(セラク)。
伝え方は難しく考えなくて大丈夫です。
- 内定のご連絡をいただき、ありがとうございます。
- 前向きに検討しておりますが、現在もう1社の選考結果を待っている状況です。
- 大変恐縮ですが、◯月◯日までご回答をお待ちいただくことは可能でしょうか。
- ご事情が難しい場合は、その旨お知らせいただけますと幸いです。
期限を切って聞くのが要点です。「もう少しお待ちください」だけだと相手も判断できず、印象も良くありません。
MUSTに置いた軸のどれか一つが「絶対に無理」な水準で欠けている場合、合計点を出す意味はありません。たとえば介護や育児の都合で勤務地が動かせない人にとって、勤務地は点数で他と足し引きするものではなく、満たさない時点で候補から外れる条件です。
また、選考中に強い違和感を覚えた会社を、点数が高いからと選ぶのもおすすめしません。面接での対応や説明の一貫性から感じた違和感は、多くの場合その組織の実態を反映しています。点数表は考えを整理する道具であって、あなたの判断を上書きするものではありません。
決めたあと、もう一方にはどう伝える?
1社に決めたら、もう1社へは速やかに辞退の連絡を入れます。ここを引き延ばすと、相手は採用計画を動かせません。辞退連絡も配慮すべきものとされており(就活の未来)、丁寧に伝えれば関係が悪くなることはまずありません。
- まず結論を書く「内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました」を早い位置に置く。
- 理由は簡潔に「検討の結果、他社にてお世話になることといたしました」で十分。詳細な比較内容を書く必要はない。
- 感謝を添える選考で時間を割いてもらったことへの御礼を1文。
電話が必要かどうかは相手との関係次第ですが、まずメールで一報を入れ、返信で電話を求められたら応じる形で問題ありません。転職エージェント経由の場合は、担当者へ先に連絡すれば代わりに伝えてもらえます。
決めたあとに迷いが戻ってきたら
入社日が近づくと、選ばなかった方が良く見えてくることがあります。選ばなかった選択肢には悪い面が現れないので、当然そうなります。
そのときに開くのが、作った点数表です。自分が何をMUSTに置き、何を引き換えにしたかが書いてあるので、記憶ではなく記録で振り返れます。判断を変えるべき新しい事実が出てきたなら考え直せばいいし、そうでないなら、あなたはすでに自分の基準で選び切っています。
そして、その表は次の転職でも使えます。1年後に見返すと、MUSTに置いた軸が変わっていることに気づくはずです。それは判断が間違っていたのではなく、あなたの状況が動いたということです。
よくある質問
複数内定で迷ったとき、まず何から手をつければいいですか
企業の条件を並べる前に、自分の優先事項を3行書き出すところから始めます。「今の職場で一番つらいこと」「次の職場で変えたいこと」「譲れない条件」の3つを自分の言葉で書くと、それがそのまま比較軸になります。会社の魅力から書き始めると求人票をなぞるだけになり、軸ができません。
内定先を点数で比較する具体的な方法を教えてください
比較軸を行、会社を列にした表を作り、各軸を1〜5点で採点します。そのうえで、これを満たさなければ入社しないというMUST項目の点数だけを2倍にし、列ごとに合計します。MUSTに傾斜をつけないと、細かい希望条件の積み上げで必須条件がひっくり返るため、重みづけが重要です。
内定の返答期限を延ばしてもらうことはできますか
他社の選考結果を待っている場合、企業へ状況を伝えて回答期限の相談をすることは一般的に行われています。その際は「もう少し待ってほしい」ではなく、◯月◯日までという具体的な日付を提示して可否を尋ねるのが適切です。連絡せずに保留し続けることは避けるべきとされています。
点数の合計が僅差だった場合はどう決めればいいですか
僅差はどちらでもよいという意味ではなく、判断材料が不足しているサインです。採点で「どちらとも言えない(3点)」をつけた項目を見直し、入社後の担当範囲や残業の実態、リモート勤務の利用頻度などを企業に直接質問して埋めます。内定後の質問は選考評価に影響しないため、遠慮する必要はありません。
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