オフィス防災グッズ7点、帰宅困難に備える持ち物
画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
オフィスのデスクに置く防災グッズは、折りたたみヘルメット・ホイッスル・小型懐中電灯・予備電池・常備薬1日分・体温計・歩きやすい運動靴の7点が土台になります。あわせて、オフィス所在地の区市町村が公開する一時滞在施設一覧のブックマーク、東京都の「帰宅困難者対策支援」LINE(ID: @157tdhuh)の友だち登録、東京都防災アプリのインストールの3つを平時に済ませておくと、発災時に開設中の施設をその場で探せます。
帰宅困難は、災害というより「長い足止め」として襲ってきます。倒壊も停電もしていないのに、電車だけが止まって動けない。そのとき困るのは大きな備えではなく、ホイッスルが1つ、常備薬が1回分、歩ける靴が1足あるかどうかという細かいところです。
会社としての備蓄は総務が持っていることが多いはずです。東京都帰宅困難者対策条例は、事業者に従業員1人あたり3日分——食料9食・水9リットル・毛布1枚——の備蓄に努めるよう求めています。ただしそれは全員に均等に配られる想定の共有物で、自分の薬や自分の足に合う靴までは含まれません。個人で埋めるのはその隙間です。
ここでは、デスクの引き出し1段に収まる最小限の中身と、オフィス周辺の逃げ場を平時に確認しておく手順を、そのまま実行できる形で並べます。
デスクに置く防災グッズは何を選べばいい?
防災グッズは用途別に「持ち歩き用」「避難用(非常持ち出し袋)」「在宅避難用」の3つに分けて考えるのが基本とされています。オフィスのデスクに置くものは、このうち持ち歩き用に近い最小限セットと考えると迷いません。非常持ち出し袋を丸ごと会社に置く必要はなく、引き出し1段に収まる量が現実的です。
実際に個人向けのオフィス防災キットとして挙げられている品目は、折りたたみヘルメット、ホイッスル、小型懐中電灯、予備電池、常備薬1日分、体温計です。さらに、徒歩帰宅が許可された場合に持ち出す「徒歩帰宅セット」として、歩きやすい運動靴、ホイッスル、飲料水500ml、栄養補助食品、帰宅支援マップが挙げられています。この2つを重ねて整理すると、次の7点が土台になります。
| 品目 | 何のために持つか | 選ぶときの目安 |
|---|---|---|
| 折りたたみヘルメット | 落下物から頭を守る | 畳んだ状態で厚さ数cm・引き出しに平置きできるもの |
| ホイッスル | 暗所や瓦礫の中で自分の居場所を知らせる | 手のひらに収まる大きさ・ストラップ付き |
| 小型懐中電灯+予備電池 | 停電した室内・階段を照らす | ペン程度の太さ。電池は本体と同じ規格を1組 |
| 常備薬1日分 | 服薬の中断を防ぐ | 1回分ずつ小分け。薬名と服用時間のメモを同封 |
| 体温計 | 滞在中の体調変化を確かめる | ペン型の電子式 |
| 歩きやすい運動靴 | 徒歩帰宅の判断が出たときに歩き出せる | 履き慣れたスニーカー1足を袋に入れて |
| 飲料水500ml+栄養補助食品 | 支給が届くまでの数時間をつなぐ | 常温保存・期限が半年以上先のもの |
並べてみると、7点はどれも手のひらから靴1足までの大きさで、合わせても引き出し1段に収まります。この中で優先順位が高いのは常備薬と靴です。水と食料は会社の備蓄や周辺の一時滞在施設で手当てできる可能性がありますが、自分の処方薬と自分の足に合う靴だけは、誰も代わりに用意してくれません。まず入れるならこの2つからです。
置き場所と入れ替えのルール
引き出しの奥にしまうと、いざというとき同僚が取り出せません。上司や近くの席の人に「一番下の引き出しに防災用のものが入っています」と一言伝えておくだけで、自分が席を外している間の使い勝手が変わります。
- 入れる場所を1か所に固定する複数の引き出しに散らさず、下段の1つにまとめます。袋やポーチに入れておくと、避難時にそのまま持ち出せます。
- 年2回、点検日を決める防災週間(9月)と年度末など、覚えやすい時期に固定します。乾電池の液漏れ、栄養補助食品と薬の期限、靴のサイズ感を確認します。
- 常備薬は残量を書いたメモを添える1日分だけ入れる場合、薬の名前と服用のタイミングを書いた紙を同封しておくと、体調を崩したときに人に説明できます。
持病があって毎日の服薬が欠かせない人、乳幼児の迎えが必要な人は、この7点だけでは足りません。前者は主治医に「災害時の予備分を持てるか」を一度相談しておく、後者は保育園・学校の引き取りルールと連絡手段を家族と決めておく——この2つは、デスクの中身より先に済ませておく価値があります。
また、東京都は個人・家庭向けに「東京備蓄ナビ」を公開しており、家族構成と住居タイプを入力すると必要な備蓄品目と数量が個別に表示されます。自宅側の備えはそちらで確認するのが早道です。
会社の備蓄と個人の備えはどう分担する?
会社が用意すべきものと自分で持つべきものが混ざると、どちらも中途半端になります。条例が事業者に求めている水準を基準に、線を引いてしまうほうが早いです。
| 共有備蓄(会社が努力義務) | 食料9食分・水9リットル(3リットル/日×3日)・毛布1人1枚 |
|---|---|
| 個人で持つ(デスク) | 常備薬・運動靴・ホイッスル・懐中電灯・体温計など、体や持病に紐づくもの |
東京都帰宅困難者対策条例に関する公表情報をもとに作成
上の表で会社側にあたる部分は、総務や施設管理の担当に「3日分の備蓄はどこに、何人分ありますか」と一度聞けば確認できます。防災週間の時期なら不自然な質問にもなりません。自分の分だけを気にするより、この一言のほうが職場全体の備えを動かすことがあります。
オフィスの周りで、どこに逃げれば安全ですか?
帰宅困難者向けの逃げ場は「一時滞在施設」と呼ばれ、行き先が固定の避難所とは別に、発災後に順次開設されます。大地震発生時、受入可能になった施設の情報は東京都・各区市町村・駅前滞留者対策協議会などから発信されます。つまり当日その場で調べる情報であり、事前にできるのは「調べる手段を持っておくこと」です。
手段は3つあり、いずれも平時に数分で終わります。
- オフィス所在地の一時滞在施設一覧をブックマークする区市町村ごとに受入施設の一覧が公開されています。たとえば千代田区・中央区・新宿区は、それぞれ自区内の施設一覧をウェブサイトで公表しています。「(区名) 帰宅困難者 一時滞在施設」で検索し、スマホのブックマークに入れておきます。
- 東京都の「帰宅困難者対策支援」LINEを友だち登録するID は @157tdhuh。東京都帰宅困難者対策オペレーションシステム(キタコンDX)の公式アカウントで、発災時に周辺で開設中の一時滞在施設をスマホから検索でき、入館手続きもスマホ上で行えます。
- 東京都防災アプリを入れておく混雑箇所の状況や一時滞在施設の開設状況を確認できます。発災後にアプリストアからダウンロードするのは、回線が混む状況では現実的ではありません。
この3つは、通勤中のスマホで10分あれば終わります。そして終わったあとは、何も起きなければ一生使いません。それでいい種類の準備です。
民間の一時滞在施設は、事業者の意向により事前に施設名を公表していない場合があります。区の一覧を見て「思ったより少ない」と感じても、当日はそれ以上の施設が開く可能性があるということです。逆に言えば、事前の一覧だけを頼りに歩き出すのは危険で、当日の開設情報を確認する手段(上のLINEやアプリ)をあわせて持っておく意味がここにあります。
ルートは「歩く前提」で一度たどっておく
徒歩帰宅の判断が出たときのために、オフィスから自宅方向へのルートを地図で一度なぞっておきます。見るのは距離だけではありません。大きな川を渡るか、長い橋やアンダーパスを通るか、途中にコンビニや公共施設があるか。この3点が、歩くかその場に留まるかの判断材料になります。
徒歩帰宅セットに帰宅支援マップが含まれているのは、スマホの電池が切れた状態でも道がわかるようにするためです。紙の地図が大げさに感じるなら、自宅までのルートをスクリーンショットで数枚撮っておくだけでも、圏外や電池残量が心もとない状況で助けになります。
台風の日、いつ帰るか判断できません
台風は地震と違って予測がつく災害です。だからこそ、判断は当日ではなく前日に済ませておくほうが確実です。前日の時点で「明日は何時までに帰る」「この路線が止まったら会社に留まる」と自分の中で線を決めておくと、当日は決めた通りに動くだけになります。
- 使う路線の運休・計画運休の告知をどこで見るか(鉄道会社の公式アカウントなど)
- 何時までに退社するか、その判断を誰に伝えるか
- 帰れなかった場合、会社に留まるか一時滞在施設へ向かうか
そしてむやみに移動しないのが帰宅困難者対策の基本です。一斉に人が動くと駅や道路が混雑し、救助や消火の妨げになります。会社に留まれる状況なら留まる——そのために、引き出しの7点があります。備えの目的は早く帰ることではなく、帰れない一晩を無事にやり過ごすことです。
明日やることを1つだけ選ぶなら
7点そろえるのも、3つの登録を済ませるのも、まとめてやろうとすると先延ばしになります。最初の1つを選ぶなら、会社に置く運動靴です。玄関にある履き慣れたスニーカーを袋に入れて持っていくだけで、買い物も検索もいりません。
それが引き出しに入った日から、少なくとも「歩けないから動けない」という状態はなくなります。残りの6点とアプリの登録は、次の週末でも間に合います。
よくある質問
オフィスのデスクに置く防災グッズは最低限どれくらい必要ですか?
引き出し1段に収まる範囲で十分です。個人向けのオフィス防災キットとしては折りたたみヘルメット、ホイッスル、小型懐中電灯、予備電池、常備薬1日分、体温計が挙げられ、徒歩帰宅時に持ち出すセットとしては歩きやすい運動靴、飲料水500ml、栄養補助食品、帰宅支援マップが挙げられています。この中で会社の備蓄では代替できない常備薬と運動靴を最優先で用意するのが現実的です。
会社は従業員向けにどれくらいの備蓄をする義務がありますか?
東京都帰宅困難者対策条例は、事業者に対し従業員1人あたり3日分の水・食料等の備蓄に努めるよう求めています。目安は食料9食分、水9リットル(1日3リットル×3日)、毛布1人1枚です。努力義務のため実際の備蓄量は会社によって異なり、総務や施設管理の担当者に確認するのが確実です。
発災時に一時滞在施設をその場で探すにはどうすればいいですか?
東京都の「帰宅困難者対策支援」LINE公式アカウント(ID: @157tdhuh)を事前に友だち登録しておくと、発災時に周辺で開設中の一時滞在施設をスマホから検索でき、入館手続きもスマホ上で行えます。東京都防災アプリや東京都防災マップからも、混雑箇所の状況や一時滞在施設の開設状況を確認できます。いずれも回線が混む発災後ではなく、平時に登録・インストールを済ませておく必要があります。
一時滞在施設の場所は事前にすべて調べられますか?
区市町村が自区内の受入施設一覧をウェブサイトで公表しており、千代田区・中央区・新宿区などが該当します。ただし民間の一時滞在施設は事業者の意向により事前に施設名を公表していない場合があるため、事前の一覧がすべてではありません。大地震発生時、受入可能となった施設の情報は東京都・各区市町村・駅前滞留者対策協議会等から順次発信されるため、当日の開設情報を確認する手段もあわせて用意しておく必要があります。
※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。