Web会議で自分だけ途切れる原因は上り速度とジッター
画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
Web会議で自分の映像・音声だけが乱れるとき、原因は下り速度ではなく上り(アップロード)速度と、ジッター(データが届くタイミングのばらつき、単位はms)にあります。必要な帯域は1Mbps前後と小さいため、速度が十分でも途切れる場合はジッターを疑うのが近道です。上り速度とジッターを測り、有線接続・同時通信の停止・ルーター再起動・VPNオフの順に切り分けます。
速度テストで大きな数字が出ているのに、自分の映像や音声だけが相手側で乱れる。この組み合わせは珍しくありません。速度テストの大きな数字は、たいてい「下り」の値だからです。
Web会議で自分の映像と音声を相手に届けているのは、下りではなく上り(アップロード)の回線です。そしてもうひとつ、速度とはまったく別の指標が関わっています。ジッターと呼ばれる、データが届くタイミングのばらつきです。この2つを知ってから測り直すと、原因の見当がかなり絞れます。
なぜ「自分だけ」途切れるのか?
Web会議には、送る通信と受け取る通信の2方向があります。相手の顔と声が自分の画面に届くのは下り、自分の顔と声が相手に届くのは上りです。この2つは別々の道だと考えると整理しやすくなります。
自分の映像・音声だけが乱れているなら、問題は上り側にあります。逆に、相手の映像がカクついて自分は問題ないと言われる場合は、自分の下り側か相手の上り側の話になります。「誰の何が乱れているか」で、見るべき方向が決まります。
家庭向けのインターネット回線は、下り速度を売りにしたプランが多く、実測でも上りは下りより大幅に遅いことが一般的です。普段の速度測定で下りの数字しか見ていなかったなら、上りの実力はまだ確かめていないことになります。
- 自分の映像・音声だけが乱れる → 自分の上り側
- 相手の映像・音声だけが乱れる → 相手の上り側か自分の下り側
- 全員がバラバラに乱れる → 会議サービス側か、参加人数に対する各自の環境
Web会議に必要な速度はどれくらい?
ここで意外に思われるのが、必要な帯域の小ささです。Zoom社が公開している目安を用途ごとに並べると、次のようになります。
| 用途 | 目安の帯域 |
|---|---|
| 1対1・高品質ビデオ | 上り下りとも600kbps程度 |
| 1対1・720p HD | 上り下りとも1.2Mbps程度 |
| グループ通話・高品質ビデオ | 上り800kbps/下り1.2Mbps程度 |
| グループ通話・720p HD | 上り下りとも1.5Mbps程度 |
| 音声のみ(VoIP) | 60〜80kbps程度 |
Zoom社が公開している推奨帯域の情報をもとに作成(数値は目安)
上の表のとおり、映像を使う一般的な場面でも必要な帯域はMbps単位の小さな値にとどまります。1080pのフルHDまで上げても、送信側で3Mbps前後という水準です。つまり、Web会議が求めているのは数十Mbpsの太さではなく、1Mbps前後の細い帯域が途切れずに流れ続けることです。上りが数Mbps出ているのに途切れるなら、足りないのは速度ではありません。ここで登場するのがジッターです。
ジッターとは?速度が十分でも途切れる理由
ジッター(jitter)は、データが届くタイミングのばらつきを示す指標で、単位はms(ミリ秒)です。連続して測定したときの、到着間隔の最大値と最小値の差として算出されることが多い値です。速度が「1秒間にどれだけ運べるか」なのに対し、ジッターは「一定のリズムで届いているか」を表します。
音声や映像は、細かく分けたデータが等間隔で届くことを前提に再生されます。届くタイミングがバラつくと、再生側は次のデータを待つことになり、その待ち時間が音の途切れやコマ落ちとして表に出ます。回線が「遅い」のではなく「不安定」なときにジッターは大きくなります。
目安として、ジッターがおおむね10ms以下であれば比較的安定した通信とされています。ただしこれは回線速度の測定サービス各社が示す一般的な目安で、公的な統一基準ではありません。数十msの値が常に出ているようなら、速度の数字がどれだけ大きくても会議の品質は安定しません。
速度とジッターはどう違うのか
水道にたとえると、速度は蛇口の太さ、ジッターは水の出方のむらです。太い蛇口でも、水がドバッと出たり止まったりを繰り返せば、コップに一定量ずつ注ぎ続けることはできません。Web会議が必要としているのは、太さよりも安定した出方のほうです。この例えは水量と時間のイメージにすぎませんが、「大きい数字=快適」ではないことは掴めるはずです。
原因を切り分ける手順は?
ここまでの話を、実際に手を動かす順番に落とし込みます。上から順に試して、どこで症状が変わるかを見ていきます。
- 上り速度を測るスピードテストで、下りだけでなく上り(アップロード)の数値を必ず確認します。1Mbpsを下回るようなら、まず速度そのものが不足しています。
- 同じ画面でジッターを見る多くの速度測定ツールはping・jitterも同時に表示します。ジッターが10msを大きく超えているなら、原因は速度ではなく安定性側にあります。
- Wi-Fiをやめて有線LANにする無線は有線よりジッターが出やすいため、これだけで改善することがあります。改善したなら原因はWi-Fi区間に絞れます。
- 同じ回線の他の通信を止める動画配信、オンラインゲーム、クラウドへの大容量アップロードなどが裏で走っていないか確認します。特にアップロードは上りを直接奪います。
- ルーターと端末を再起動する長時間動き続けたルーターは、熱や処理の蓄積で速度が落ちることがあります。手間が小さいわりに効く一手です。
- VPNをオフにして試すVPN(社外から社内ネットワークへ安全に接続するための仕組み。通信を別の拠点経由で中継します)を使っていると、経路が遠回りになり、Web会議の遅延や映像と音声のずれの原因になる場合があります。会社支給の端末では、切ってよいか確認してから試してください。
この6つで変化が出た地点が、そのまま原因の在りかです。原因は大きく、ネット回線そのもの、端末やアプリの設定、周辺機器や電波環境の3系統に分けられます。手順の3と5で改善したなら電波環境側、4で改善したなら回線の取り合い、2だけが悪いなら回線の安定性側、という具合に読み取れます。
今日からできる対策は?
まず効くのは有線接続
大事な会議の日だけでもLANケーブルでつなぐ、という運用はかなり有効です。無線は電子レンジやBluetooth機器、隣家のWi-Fiなどの影響を受け、そのたびに到着タイミングが乱れます。有線はその不確定要素をまとめて外せます。ケーブルを常設したくないなら、会議の前だけ差す形でも効果は同じです。
上りを奪っているものを減らす
クラウドストレージの同期、バックアップ、動画のアップロードは上りを大きく使います。会議中は一時停止する設定にしておくと、細い上り帯域を会議に譲れます。家族が同時に動画をアップしている、という単純な理由で毎回同じ時間帯だけ荒れることもあります。
それでも荒れるなら映像を下げる
先ほどの目安のとおり、映像を切って音声だけにすれば必要帯域は60〜80kbps程度まで落ちます。HD送信をオフにする、背景ぼかしのような処理を切る、といった調整でも送るデータは軽くなります。会議で本当に落としてはいけないのは映像ではなく音声です。荒れているときは、映像を諦めるのが最も確実な回避策です。
上り速度もジッターも良好で、有線でも症状が変わらない場合は、自分の環境以外に原因がある可能性があります。会議サービス側の一時的な不具合、社内ネットワークの制限、相手側の受信環境などです。また、集合住宅で回線設備を他世帯と共有している場合、宅内の対策では限界があり、回線そのものの見直しが必要になることもあります。手順を一通り試して変化がないなら、自分の設定をこれ以上いじるより、時間帯を変えて再測定して傾向を掴むほうが早道です。
速度の数字は分かりやすいぶん、そこで判断を止めてしまいがちです。上り速度とジッターという2つの見方を持っておくと、「回線が悪い」で終わらせずに、どこが悪いのかまで自分で辿れるようになります。次の会議の前に、上りとジッターを一度測っておくだけでも十分な備えになります。
よくある質問
Web会議で自分だけ音声が途切れるのはなぜですか?
自分の映像・音声を相手に送っているのは上り(アップロード)回線のため、上り側に問題があると自分の発信だけが相手側で乱れます。下り速度がいくら速くても、上りが細かったり不安定だったりすれば症状は出ます。
ジッターとは何ですか?何msなら問題ありませんか?
ジッターはデータが届くタイミングのばらつきを示す指標で、単位はms(ミリ秒)です。おおむね10ms以下であれば比較的安定した通信とされていますが、これは測定サービス各社が示す一般的な目安であり、公的な統一基準ではありません。
Web会議にはどれくらいの回線速度が必要ですか?
Zoom社が公開している目安では、1対1の高品質ビデオ通話で上り下りとも600kbps程度、720pのHD画質で1.2Mbps程度、音声のみなら60〜80kbps程度とされています。数十Mbpsの速度は必要なく、細い帯域が安定して流れ続けることのほうが重要です。
Wi-Fiと有線LAN、Web会議にはどちらが向いていますか?
有線LANのほうが向いています。無線は電子レンジやBluetooth機器、周囲のWi-Fiなどの影響でデータの到着タイミングが乱れやすく、有線よりジッターが大きくなりやすいためです。会議のときだけケーブルを接続する運用でも効果があります。
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