社用端末棚卸し、台帳と現物どちらが先?
画像出典: 写真: Shixart1985(CC BY 2.0 / Wikimedia Commons)
社用スマホ・PCの棚卸しは「台帳を先に整えてから現物を突合する」順序で進めると漏れが出にくくなります。台帳には端末番号・保有者・契約更新日・保証期限を持たせ、MDMは稼働中の端末の状態確認に使い分けます。棚卸しは半期に1回程度が一般的で、下期の始まりはちょうどその区切りにあたります。
資産棚卸しは、担当になって初めて「どこまでやれば完了なのか」がはっきりしない仕事です。台数を数えるだけなら半日で終わりそうに見えて、実際に始めると倉庫の予備機、退職者から返ってきていない端末、いつの間にか更新月を過ぎていた回線が次々に出てきます。
正直なところ、この作業がやっかいなのは「情報が1か所にない」ことが原因です。端末の稼働状況はMDM(モバイルデバイス管理ツール)に、契約と保証期限は購入時の書類やキャリアの管理画面に、誰が持っているかは総務のExcelに——と分かれていると、どれを正としてよいかわからなくなります。
そこで、洗い出す順番と、それぞれの情報をどこから取るかを先に決めてしまいます。順番が決まれば、あとは埋めていくだけの作業になります。
そもそも資産棚卸しとは何をする作業?
棚卸しは、その時点の資産台帳が実態と合っているかを確認し、記録し直す作業です。現物管理における棚卸しは一般に年1〜2回、半期に1回程度の頻度で実施され、目的は資産の状態・状況を改めて記録して固定資産台帳の正確性を担保することにあります。
ここで言う固定資産管理は、土地建物・機械装置・車両・ソフトウェアなど企業が保有する固定資産全体を対象にした管理体系で、会計上の管理(減価償却など)と現物管理の両方を含みます。IT資産管理はその一部で、PCやスマホなどのIT機器を中心に一元管理する機能として位置づけられます。
つまり、あなたが任されたのは「会社の資産全体の記録のうち、IT機器の部分が実態と合っているか」を確かめる仕事です。台数を数えるのが目的ではなく、台帳を信用できる状態に戻すことが目的だと捉えると、どこまでやれば完了かの線が引けます。
MDMがあれば棚卸しは不要では?
MDMと資産台帳は、見ている対象がそもそも違います。MDM(Jamf や Intune などのモバイルデバイス管理ツール)が映すのは「今、電源が入って通信している端末」です。逆に言えば、電源の入っていない倉庫の予備機や、回線の契約更新日・端末の保証期限といった紙の上の情報は、MDMの画面には最初から存在しません。
| 確認したいこと | MDM | 台帳 |
|---|---|---|
| 稼働中の端末の状態 | わかる | わからない |
| 設定・アプリの配布状況 | わかる | わからない |
| 紛失時の遠隔ロック・初期化 | できる | できない |
| 倉庫の予備在庫の所在 | わからない | わかる |
| 契約プランと契約更新日 | わからない | わかる |
| 購入日と保証期限 | わからない | わかる |
上の表で「わからない」が並ぶ行が、棚卸しで人の手を動かすことになる部分です。MDMの運用要件は「端末の状態が見えること」「必要な設定・アプリを配布できること」「不具合や逸脱を是正できること」の3点に整理されますが、これは全て稼働中の端末を前提にした話で、在庫と契約は範囲の外にあります。
だからといって契約情報を別のExcelに逃がすと、今度は二重管理になり、どちらが正しいのかわからなくなります。効果的なのは、契約・保証期限・端末番号といった台帳情報は管理台帳で正確に持ち、セキュリティ対策の実行はMDMで自動化するという役割分担です。この分け方にすると、担当者の負担を抑えながら安全な運用を維持できます。
なお、端末数が100台を超えてくると、MDMや資産管理ツールだけではカバーしきれない部分が出てきます。倉庫の実機を誰がどう確認するかという現物管理の仕組みも、あわせて決めておく必要があります。
棚卸しで洗い出す項目は?
洗い出す項目を先に固定してしまうと、途中で「これも見なきゃ」と増えていく事態を防げます。社用スマホ・PCの棚卸しでは、次の5つが基本の確認項目です。
- 端末台数と保有者の突合(誰が何を持っているか)
- 契約プラン・契約更新日・解約期限の確認
- 端末購入日・保証期限・故障履歴の確認
- MDM登録状況(未登録端末がないか)の確認
- 退職者・異動者からの回収状況の確認
このうち見落としやすいのが、下2つです。MDM未登録の端末は管理画面に出てこないため、台帳側から「登録済みフラグが立っていない行」を探さないと発見できません。退職者の端末も、人事の退職者リストと突き合わせて初めて「返却されていない1台」が浮かび上がります。
契約更新日と保証期限を必ず項目に入れるのは、放置したときの金額が大きいからです。法人携帯は契約更新時期や端末保証期限の管理を怠ると、割引期間が終わったあとの割高な請求が続いたり、故障時に保証が切れていて修理費が跳ね上がったりします。棚卸しは、この2つの日付を年に一度は目視する数少ない機会でもあります。
どの順番で進めれば漏れが出ない?
結論から言うと、台帳を先に整えてから現物を確認する順序が漏れを減らします。現物から数え始めると、数えた端末が台帳のどの行に対応するのかを毎回探すことになり、逆に台帳にしか存在しない「行方不明の端末」が最後まで見つかりません。
- 台帳の器を作る端末番号(製造番号やシリアル)、機種名、保有者、部署、購入日、保証期限、回線番号、契約プラン、契約更新日、MDM登録有無。この列を用意します。既存の台帳がある場合は、足りない列を追加するところから始めます。
- 契約情報を先に埋めるキャリアの法人向け管理画面と購入時の書類から、回線番号・プラン・契約更新日・購入日・保証期限を転記します。ここは現物を触らずに机上で完結する部分なので、先に片づけると後半が楽になります。
- MDMの一覧を書き出すMDMの管理画面から端末の一覧を出力し、台帳の端末番号と突き合わせます。MDMにあって台帳にない端末、台帳にあってMDMにない端末を、それぞれ別の色で印を付けます。
- 人事情報と突き合わせる直近半期の退職者・異動者のリストを入手し、台帳の保有者欄と照合します。退職者名が残っている行が、回収漏れの候補です。
- 現物を確認する残った不明分と、倉庫の予備在庫を実機で確認します。ここまでで対象がかなり絞られているため、全台を触る必要はありません。
- 差分の理由を記録する合わなかった行について、いつ・なぜ差分が生まれたかを書き残します。次回の棚卸しで同じ差分を一から調べ直さずに済みます。
3の突合で出てくる「MDMにあるのに台帳にない端末」は、購入時の台帳登録が抜けたケースが多く、比較的すぐ解決します。厄介なのは逆で、台帳にあるのにMDMにも現物にも見当たらない端末です。これは電源が入っていない在庫か、回収漏れかのどちらかなので、5と4で切り分けます。
下期の始まりに棚卸しをする意味は?
棚卸しの一般的な頻度が年1〜2回であることを踏まえると、期の切り替わりは実施タイミングとして理にかなっています。会計上の区切りと現物の記録を同じ時期に揃えておくと、台帳の数字と資産の実態がずれにくくなるためです。
実務上の利点もあります。下期の始まりに契約更新日を一覧で見直しておくと、下期のうちに更新月を迎える回線が事前に把握できます。更新月を過ぎてから気づくのと、半年前に把握しておくのとでは、プラン見直しや機種変更の打ち手の数が変わります。
端末数が数台規模の会社では、ここまでの手順は過剰です。台帳の列を増やすより、キャリアの管理画面のスクリーンショットを保存しておくほうが早く終わります。逆に数百台規模で複数拠点にまたがる場合は、担当者ひとりで全項目を追うのは現実的ではなく、拠点ごとの担当と確認日を先に割り振る作業が必要になります。また、各社のサービス内容・価格・機能は改定されることがあるため、契約条件の詳細は契約中のキャリアやMDMベンダーの最新情報を確認してください。
次回を楽にするために今回やっておくことは?
今回の棚卸しで一番価値があるのは、実は数えた結果そのものではなく、次回同じ作業を半分の時間で終わらせるための仕込みです。
具体的には3つあります。ひとつめは、台帳の列を今回の項目で固定してしまうこと。次回は空欄を埋めるだけになります。ふたつめは、端末を新しく買ったとき・返却されたときに台帳を更新する担当と手順を決めておくこと。棚卸しがつらいのは、半年分の更新をまとめてやるからです。
みっつめは、契約更新日と保証期限をカレンダーの予定として登録しておくことです。台帳の中の日付は見に行かないと気づけませんが、予定として通知が来れば期限前に手を打てます。この3つを済ませておくと、次の期末には差分の確認だけで棚卸しが終わります。
よくある質問
資産棚卸しはどのくらいの頻度で行うもの?
現物管理における棚卸しは一般的に年に1〜2回、半期に1回程度の頻度で実施されます。目的は資産の状態・状況を改めて記録し、その時点の固定資産台帳の正確性を担保することにあります。
MDMがあれば資産台帳は不要になる?
不要にはなりません。MDMは稼働している端末の遠隔設定変更・遠隔ロックや初期化・位置情報取得・アプリ配布といった制御を得意とする一方、倉庫の予備在庫や契約情報などの台帳管理は苦手で、別管理にすると二重管理が発生します。契約・保証期限は台帳、セキュリティ対策の実行はMDM、という役割分担が現実的です。
IT資産管理と固定資産管理はどう違う?
固定資産管理は土地建物・機械装置・IT機器・車両・ソフトウェアなど企業が保有する固定資産全体を対象に、会計上の管理と現物管理の両方を含む管理体系です。IT資産管理はその一部で、IT機器を中心とした一元管理機能として位置づけられます。
社用スマホの契約更新日を管理しないとどうなる?
法人携帯は契約更新時期や端末保証期限の管理を怠ると、割引期間が終了したあとに割高な請求が続いたり、故障時に保証が切れていて修理費用が増大したりします。こうした事態を避けるため、台帳での一元管理が推奨されています。
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