Qi2のワイヤレス充電、置くだけで位置が合うしくみ
画像出典: ぱくたそ
ワイヤレス充電が遅い・始まらない原因の多くは、充電器と端末のコイルの位置ズレです。Qi2は充電コイルの周囲にリング状の磁石を置く「Magnetic Power Profile(MPP)」を中核にしており、端末を近づけると磁石同士が引き合ってコイルの中心同士が正しい位置へ引き込まれます。出力は当初の最大15Wから、2025年7月発表の新版Qi v2.2.1(Qi2 25W)で最大25Wに引き上げられました。
ワイヤレス充電が遅い・途中で止まる・そもそも始まらない。この原因として多いのが、本体の故障ではなく端末と充電器のコイルがほんの数mmずれていることです。ワイヤレス充電は、充電器の中のコイルと端末の中のコイルを向かい合わせて電力を渡しています。中心がずれると渡せる電力が落ちる、という物理の話なので、見た目にはきちんと置けていても起こります。
正直なところ、この「置き位置の勘」を読者側の努力でどうにかするのは無理があります。Qi2はそこを規格の側で解決しに来た世代です。何がどう変わったのか、順に見ていきます。
ワイヤレス充電が遅くなるのはなぜ?
ワイヤレス充電は、充電器側のコイルに電流を流して磁界を作り、端末側のコイルがその磁界を受け取って電気に戻すしくみです。向かい合わせた2つの輪の中心が重なっているときがいちばん効率よく、ずれるほど受け取れる量が減ります。
ここで厄介なのは、端末の背面にコイルの位置が描かれていないことです。従来のQi(無印)では、コイルの位置合わせは完全に手動・目視頼りでした。数mmのズレでも充電速度が大きく落ちたり、充電そのものが始まらなかったりします。受け取れなかった分のエネルギーは熱になるため、「充電が遅いのに本体だけ熱い」という状態もここから起きます。
- 置き直すと充電ランプが点いたり消えたりする
- 同じ充電器でも日によって朝の残量が違う
- 充電は進んでいるのに端末の背面が熱い
- 厚いケースやカード類を挟むと充電されない
Qi2とは? 何が第2世代なのか
Qi2は、無線電力の国際標準化団体 Wireless Power Consortium(WPC/ワイヤレス充電の規格を決めている業界団体)が策定した、ワイヤレス充電規格の第2世代です。2023年1月、米ラスベガスで毎年開かれる世界最大級の家電見本市CES 2023で発表されました。
その中核にあるのが「Magnetic Power Profile(MPP)」という磁力で位置を合わせる規格です。これはAppleがMagSafe技術をベースにWPCへ提供し、WPC会員と共同開発したものです。つまりiPhoneで先に実用化されていた「磁石でぴたっと貼り付く充電」の考え方が、メーカーをまたいだ共通規格になった、というのがQi2の本質です。
磁石の役目は、くっつけることではなくコイルの中心を正しい位置へ連れていくことです。置いた瞬間にコイルの中心がどう決まるかを、世代ごとに並べます。
| コイル周囲の磁石 | 置いたときのコイル中心の決まり方 | 中心がずれたまま充電したとき | |
|---|---|---|---|
| 従来のQi(無印) | なし | 人が目で狙った位置のまま(毎回ばらつく) | 速度が大きく落ちる・始まらない・背面が熱くなる |
| Qi2(MPP) | コイルの周囲にリング状に配置 | 磁石同士が引き合い、中心同士が同じ位置へ引き込まれる | ずれた状態で止まりにくい(スナップして収まる) |
上の表の下段がMPPの構造です。充電器側も端末側も、コイルを囲むようにリング磁石が入っています。向かい合うリングが引き合うと、輪の中心と中心が重なる一点に端末が滑り込む。人が目で狙う代わりに、物理的な力が毎回同じ位置に収めてくれる形です。
これにより位置ズレによる充電効率の低下・充電失敗・発熱が抑えられます。速くなったというより、本来出るはずの速さを毎回取り逃がさなくなった、と捉えるのが正確です。
「マグネット付き」と「Qi2」は同じではない
ここは買い物で間違いやすいところです。Qi2のロゴを表示するには、WPCが指定する独立試験機関での認証取得が必須で、マグネットによる位置合わせ機能(MPP)を備えない製品はQi2として認証されません。逆に言えば、磁石が入っているだけの製品が自動的にQi2になるわけでもありません。
通販の商品名に「マグネット式ワイヤレス充電器」とあっても、Qi2認証品とは限りません。判断の手がかりになるのは、商品ページにQi2のロゴまたは「Qi2認証」の記載があるかどうかです。記載がない製品は、磁石で位置は合うがQi2としての出力条件は満たしていない、という可能性があります。
Qi2は何ワットまで出せる? 15Wと25Wの違い
出力は一度引き上げられています。
| 規格の版 | 最大出力 |
|---|---|
| Qi2(2023年発表時) | 15W |
| Qi2 25W(Qi v2.2.1 / 2025年7月発表) | 25W |
Wireless Power Consortiumの公表データをもとに作成(2025年7月時点)
発表時のQi2の最大出力は15Wでした。その後2025年7月23日、WPCは米ワシントンD.C.で新版のQi v2.2.1をブランド名「Qi2 25W」として正式発表し、最大25Wに対応しました。従来の15Wから約67〜70%の出力向上です。
つまりQi2という名前の中に2つの出力段階があります。買う前に見るのは「Qi2対応」の文字だけでは足りず、25Wまで出せる版かどうかまで確認する必要があります。
なお、この引き上げには理由があります。WPCの市場調査では、「ワイヤレス充電をもっと速くしてほしい」が消費者の要望で最も多い改善点でした。発表の時点では受電・送電機器14台が限定ローンチの認証テストを完了しており、数百台規模の機器が本認証テストの順番待ちをしている状態でした。
自分の端末はQi2に対応している?
対応状況はメーカーごとに歩みが違います。手元の端末がどの段階にいるかで、買うべき充電器も変わります。
- iPhoneの場合Appleは2023年発売のiPhone 15シリーズからQi2に対応しています。iPhone側のMagSafeの磁石リングが、Qi2のMPPと同じ仕組みを採用しています。
- Pixelの場合2025年発売のGoogle Pixel 10シリーズ(Pixel 10、Pixel 10 Pro、Pixel 10 Pro XL、Pixel 10 Pro Fold)がQi2に対応し、Qi2 25Wも含みます。Android端末としては大規模な展開です。
- そのほかのAndroidAndroid初のQi2対応機種はHMD Skylineでした。物理キーボード付きの「Clicks Communicator」もQi2対応を謳っています。Samsung Galaxy S26シリーズは、報道によればGalaxy S26が専用マグネットケース併用でQi2対応、Galaxy S26+がQi2.2で最大20W、Galaxy S26 Ultraが対応アクセサリとマグネットケース併用で最大25W対応とされています(いずれも発表前の報道で、Samsungの公式発表ではありません)。
買い替えずに済む条件
Qi2のために端末を買い替える必要があるかというと、多くの人は不要です。位置ズレの問題は、端末側が非対応でも位置が毎回同じになる状況を作ればほとんど解消します。
- Qi2非対応の端末に、マグネット内蔵ケースを付けてマグネット式充電器を使う(Galaxy S26でケース併用が前提とされているのと同じ考え方です)
- スタンド型・くぼみのある充電器で、置く位置が物理的に決まる
- 就寝中など充電にかけられる時間が長く、15Wと25Wの差が実用上問題にならない
- 充電の大半を有線で済ませており、ワイヤレスは一時置きとして使っている
逆に25Wの恩恵が効くのは、出かける前の20分だけ充電したい、デスクに置くたびに短時間ずつ足していきたい、といった使い方です。
確認した結果ごとに、次にやること
対応しているかを調べたあと、結果によって打ち手が分かれます。
- 充電器側もQi2認証品かを確認する。端末だけ対応していても、充電器が非対応なら磁石での位置合わせは働きません
- 25Wを狙うなら、充電器が「Qi2 25W」(Qi v2.2.1)の版かまで確認する
- 金属プレート入りのケースやカード類を背面に挟んでいないか見直す
- マグネット内蔵ケース+マグネット式充電器で、位置ズレだけを先に解消する
- または置く位置が決まるスタンド型・くぼみ型の充電器に替える
- 買い替えの予定があるなら、次の端末を選ぶときの条件にQi2を入れておく。今すぐ替える理由にはなりません
- 背面に磁石で軽いものが貼り付くか試す。リング状に貼り付くならMPPと同じ構造の磁石が入っています
- メーカーの製品仕様ページで「Qi2」または「MagSafe」の記載を探す
- 判断がつかないうちは、Qi2専用ではなく従来のQiにも対応した充電器を選べば無駄になりません
Qi2でも遅いままなら、どこを見るか
磁石で位置が合っても、ワイヤレス充電が有線より遅いこと自体は変わりません。渡す途中で熱になる分があるためです。そのうえで、Qi2にしたのに期待より遅い場合の見どころを挙げます。
ひとつは充電器に差している電源アダプタです。充電器が25Wを出せても、電源側がそれだけの電力を渡せなければ出ません。もうひとつは端末の温度で、熱を持つと端末側が自分で充電速度を落とします。夏の車内や布団の上など、熱のこもる場所での充電は遅くなって当然です。
背面に金属プレートが入ったケースや、カードを挟むタイプのケースを使っている場合、磁石の効きも電力の伝わりも落ちます。また磁石が常に背面に近づくことを気にする人、手帳型ケースを外したくない人には、置き位置が固定されるスタンド型の有線充電のほうが素直です。短時間で一気に充電したい場面でも、やはり有線が速いままです。
よくある質問
Qi2とQiの違いは何ですか?
最大の違いは位置合わせの方法です。従来のQi(無印)は充電コイルの位置合わせが手動・目視頼りで、数mmのズレでも充電速度が落ちたり充電が始まらないことがありました。Qi2は中核機能「Magnetic Power Profile(MPP)」として充電コイルの周囲にリング状の磁石を配置し、置くと磁石同士が引き合ってコイルの中心同士が自動的に正しい位置へ引き込まれます。
Qi2の最大出力は何ワットですか?
2023年1月、米ラスベガスで開かれる家電見本市CES 2023で発表された当初のQi2は最大15Wでした。2025年7月23日にWireless Power Consortiumが発表した新版Qi v2.2.1(ブランド名「Qi2 25W」)では最大25Wに対応し、従来の15Wから約67〜70%の出力向上となっています。
マグネットが付いている充電器はすべてQi2ですか?
いいえ。Qi2のロゴを表示するには、Wireless Power Consortiumが指定する独立試験機関での認証取得が必須です。マグネットによる位置合わせ機能(MPP)を備えない製品はQi2として認証されませんが、逆に磁石が入っているだけの製品がQi2認証品であるとも限りません。商品ページにQi2認証の記載があるかで確認できます。
iPhoneとAndroidのどの機種がQi2に対応していますか?
iPhoneは2023年発売のiPhone 15シリーズからQi2に対応し、MagSafeの磁石リングがQi2のMPPと同じ仕組みを採用しています。AndroidではHMD Skylineが初の対応機種で、2025年発売のGoogle Pixel 10シリーズ(Pixel 10、Pixel 10 Pro、Pixel 10 Pro XL、Pixel 10 Pro Fold)がQi2 25Wを含めて対応しています。
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