モバイルバッテリー第三者検査の義務化、2027年3月に何が変わる?
画像出典: ぱくたそ
経済産業省は2026年8月31日、有識者会合でモバイルバッテリーを電気用品安全法の「特定電気用品」に指定し、国に登録された第三者機関による適合性検査を製造・輸入事業者へ義務づける方針案を示しました。マークは丸型「○PSE」から菱形「◇PSE」へ移り、2027年2月までに関係政省令(法律の下で細かい基準を定める国の命令)を公布、2027年3月の施行を目指す予定です。手持ちの製品は、本体に○PSEマークと届出事業者名・定格が印字されているか、膨張や異常発熱がないかを確認すれば今日のうちに判断できます。
モバイルバッテリーの安全規制が変わる方向で動き出しました。経済産業省が2026年8月31日の有識者会合で示した方針案は、製造・輸入する事業者に対して、国が登録した第三者機関の検査を義務づけるというものです。
ここで気になるのは、すでに買ってしまった手元の1個がどうなるかというところでしょう。結論から言えば、規制がかかるのはこれから市場に出す事業者側で、手持ちの製品を捨てる話ではありません。ただ、事故の報告件数が4年で約4倍に増えたという数字が今回の背景にあり、自分の1個が安全側かどうかを見る目は持っておいたほうがいい段階に来ています。
何が発表されたのか?
経済産業省は2026年8月31日、有識者会合で、発火事故が相次ぐモバイルバッテリーについて、国の登録を受けた第三者機関による検査を製造・輸入事業者に義務づける方針案を示しました。同日、日本経済新聞・時事通信・ケータイWatchなど複数のメディアが同じ内容を報じています。
ポイントは、検査する主体が変わることです。これまで事業者が自分で確認していた部分に、外部の検査機関が入ります。製品の設計だけでなく、作っている工場の検査も含まれる予定です。
○PSEと◇PSEはどう違う?
まず前提をそろえておきます。国内で売られる電気製品には、電気用品安全法にもとづく「PSEマーク」が付いています。ここまでは多くの人がなんとなく見たことがある部分でしょう。違うのはこの先で、PSEマークには形が2種類あるという点です。
| 区分 | 現行:特定電気用品以外 | 変更後:特定電気用品 |
|---|---|---|
| マークの形 | PSE 丸型「○PSE」 | PSE 菱形「◇PSE」 |
| 確認の方法 | 事業者が自ら基準適合を確認する自己確認方式 | 自己確認に加え、国に登録された第三者検査機関による適合性検査(工場検査を含む) |
経済産業省の方針案の報道内容をもとに作成(マークの形は形状を示した図示)
上の表のとおり、本体に印字されるマークは丸から菱形へ変わります。菱形の「◇PSE」は、もともと電気ストーブや配線器具のように危険度が高いと位置づけられた116品目に使われてきた区分です。丸型の「○PSE」が341品目に適用されているのに対し、◇PSE側は検査の要求が厳しくなっています。モバイルバッテリーを後者へ移す、というのが今回の方針案の中身です。
自己確認方式は「事業者が自分で基準に合っているかを確認して表示する」しくみです。基準そのものは法律で定められているので申告だけで済むわけではありませんが、第三者のチェックが必ず入るわけではない、という違いがあります。だからこそ、出所のはっきりしない製品にマークだけ印刷されているケースが問題になってきました。
なぜ今、規制が厳しくなるのか?
背景にあるのは事故件数の増え方です。モバイルバッテリーに関する製品事故の報告は、2021年の51件から2025年には192件へ増えました。4年間で約4倍です。
製品評価技術基盤機構(NITE:製品の事故情報を集めて分析する国の機関)は2026年6月4日に発表した「2025年度事故情報収集報告書」で、リチウムイオン電池を搭載した製品のうち、主にモバイルバッテリーを含む「充電器」の事故件数が「バッテリー類」を上回り、製品群別でトップになったと報告しています。
件数だけでなく、起きたときの深刻さも規制を押した要因です。NITEの別の集計では、2020年から2024年の5年間でリチウムイオン電池搭載製品の事故が1860件あり、そのうち約85%(1587件)が火災に至っています。発煙で済まず、燃え広がる確率が高い事故だという点が、この製品の特徴です。電車や新幹線、商業施設といった公共の場での発火が相次いだことも、社会的な関心を高めました。
2026年8月31日時点で示されたのは方針案です。技術基準の詳細や検査項目の具体的な内容を定める政省令(法律の下で細かい基準を定める国の命令)の条文は、まだ確定していません。以下のスケジュールも「目指す」段階の予定で、今後変わる可能性があります。
いつから義務になるのか?
- 技術基準の具体化検査で何をどう確認するかを詰める段階です。ここが固まらないと政省令の条文が書けません。
- 2027年2月までに政省令を公布電気用品安全法の関係政省令を公布する予定です。
- 2027年3月に施行モバイルバッテリーが特定電気用品となり、◇PSEへの移行が始まります。
- その後1年間の経過措置経過措置とは、新しい基準へ切り替えるまでに認められる猶予のことです。事業者が対応するための期間が設けられる予定で、ここから逆算すると完全な義務化は2028年3月頃という見込みになります。
4段目の完全義務化の時期は、方針案と経過措置の予定から導いた見込みであり、確定した日付ではありません。買い替えの予定を組むときは、2027年3月から売り場のマークが切り替わり始める、という程度の見方が実態に近いはずです。
手持ちの製品はどう確認すればいい?
規制の対象は事業者ですから、施行されても手元の製品が違法になるわけではありません。とはいえ毎日カバンに入れて持ち歩くものなので、いま安全側かどうかを一度見ておく価値はあります。パッケージではなく本体そのものを見るのが要点です。
- 背面か底面に丸形PSEマーク、届出事業者名、定格(入出力の電圧・電流、容量のmAh表記)が印字されているか
- 販売元・製造元の名称と、日本語で問い合わせできる窓口が明記されているか
- PSEロゴだけが印刷され、事業者名の記載がない製品ではないか
- BMS(電池保護回路:過充電・過放電・過電流・温度を管理するしくみ)の搭載や、複数の保護機構についての説明があるか
- 型番をNITEや消費者庁のリコール情報サイトで検索して、対象になっていないか
事業者名も窓口も書かれていない製品は、何かあったときに連絡する先がありません。極端に安い製品や、フリマアプリなどで入手した出所のはっきりしない製品は、この点で確認が難しくなりがちです。
使用をやめたほうがいいサイン
製造から年数が経った製品では、外から見てわかる劣化のサインが出ます。本体の膨張、異臭、充電中の異常な発熱、充電時間が急に悪くなった——このどれかが出ている製品は、使用を中止してください。膨らんでケースが浮いてきたものを「まだ充電できるから」と使い続けるのが、いちばん避けたい状態です。
高温環境はリチウムイオン電池にとって負担になります。NITEは2025年6月26日に、夏場のリチウムイオン電池製品の発火リスクへ注意を呼びかける発表を行い、「夏バテ=夏のバッテリー」という言い方で注意喚起をしています。真夏の車内やダッシュボードの上に置いたことがある製品は、上のサインをより丁寧に見ておいたほうが安心です。
買い替えるなら何を見る?
すぐ買い替える必要はありませんが、劣化のサインが出ていて交換するなら、確認する場所は上のチェックと同じです。本体に事業者名と定格が印字され、日本語の問い合わせ窓口があるか。保護回路についての説明があるか。この2点が書かれている製品を選べば、少なくとも責任の所在がはっきりします。
2027年3月以降は、菱形の◇PSEマークが付いた製品が出てきます。第三者機関の検査を通ったことを示す表示なので、売り場で見比べるときの目印として覚えておくと役に立つはずです。今の時点で○PSEの製品を買っても問題はありません。急いで買い替えるより、今ある1個の状態を見てから決めれば十分です。
PSEマークは印刷物なので、マークがあること自体は製品の安全を保証しません。だからこそ届出事業者名や定格の表記、問い合わせ窓口といった複数の要素をあわせて見る必要があります。第三者検査が義務化される狙いも、まさにこの「表示だけでは分からない」部分を外部が確認するところにあります。
モバイルバッテリーの選び方そのものを整理したい場合は、容量や出力の見方をまとめた記事もあわせて読んでみてください。
よくある質問
モバイルバッテリーの第三者検査義務化はいつから始まりますか?
経済産業省は2027年2月までに電気用品安全法の関係政省令(法律の下で細かい基準を定める国の命令)を公布し、2027年3月の施行を目指す方針案を示しています。施行後は事業者の対応猶予として1年間の経過措置期間が設けられる予定です。ただし2026年8月31日時点では方針案の段階で、技術基準の詳細を定める政省令はまだ確定していません。
○PSEと◇PSEマークの違いは何ですか?
丸型の○PSEは「特定電気用品以外」の区分で、事業者が自ら基準適合を確認する自己確認方式です。菱形の◇PSEは危険度の高い製品向けの「特定電気用品」の区分で、自己確認に加えて国に登録された第三者検査機関による適合性検査(工場検査を含む)が必要になります。モバイルバッテリーは前者から後者へ移る方針案が示されています。
今持っているモバイルバッテリーは義務化後に使えなくなりますか?
義務がかかるのは製造・輸入する事業者で、すでに所有している製品の使用を禁止する内容ではありません。ただし本体に膨張・異臭・異常な発熱・充電時間の急激な悪化といった劣化のサインが出ている製品は、規制とは関係なく使用を中止してください。
モバイルバッテリーの事故はどのくらい増えていますか?
モバイルバッテリーに関する製品事故の報告件数は2021年の51件から2025年には192件へ増え、4年間で約4倍になりました。NITE(製品評価技術基盤機構)は2026年6月4日発表の報告書で、主にモバイルバッテリーを含む「充電器」の事故件数が製品群別でトップになったと報告しています。
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