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4%ルールとは?定率・定額の取り崩しを数値で比較

2026年7月21日|いろは堂投資編集部
貯蓄・資産のイメージ写真

画像出典: 写真: Anemonemma, Generalissima, 3df(CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons)

この記事の要点
4%ルールは、米国の株式・債券の過去データをもとに「初年度に資産の約4%を取り崩せば30年もった」ことを示した試算で、1994年にウィリアム・ベンゲンが提唱しました。将来のリターンが過去平均を下回る場合や、取り崩し開始直後に大きな下落が来た場合には同じようには機能しません。取り崩し方には残高に対して毎年一定率を引き出す定率と、金額を固定する定額があり、前者は生活費が変動するかわりに枯渇しにくく、後者は生活費が安定するかわりに下落局面で資産の減りが速くなります。
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積み立てる話はよく見るのに、貯めた後にどう使うかの話が全然出てこない…。4%なら大丈夫って本当なのかな。

資産形成の情報は「どう増やすか」に偏りがちで、取り崩しの局面は自分で判断しなければならない場面が多く残ります。そこでよく引き合いに出されるのが4%という数字です。

ただ、この数字はどこかの機関が定めた基準ではなく、特定の国・特定の期間のデータから出てきた試算値です。前提を知らないまま結論だけを持ち帰ると、前提が崩れたときに気づけません。まずは、この4%がどこから来たのかから確認していきます。

4%ルールとは何か?

4%ルールとは、退職時点の資産に対して初年度に約4%を取り崩す水準であれば、過去の米国市場データ上は30年間資産が尽きなかった、という試算のことです。ファイナンシャルプランナーのウィリアム・ベンゲンが1994年の論文で示したもので、正確な数値は約4.15%でした。

ここで大事なのは、この4%が「平均的にうまくいく水準」ではなく、最悪ケースを基準に置いた数字だという点です。ベンゲンは米国の株式・債券の過去データを検証し、インフレの高進と株価の低迷が重なった1968年に退職を迎えたケースでも、30年間もちこたえた取り崩し率として約4%を導きました。平均的な年ではなく、いちばん条件の悪かった年を基準にしているわけです。

その後、1998年にCooley・Hubbard・Walzによる通称「トリニティ・スタディ」が発表され、株式と長期社債の配分比率、取り崩し期間の組み合わせごとに「資産が尽きない確率(成功率)」がシミュレーションされました。ベンゲンの研究とは用いている債券の種類が異なり(トリニティ研究は長期社債)、まったく同じ試算ではない点は押さえておいてください。

トリニティ・スタディでは、取り崩し率を上げるほど成功率が下がる傾向が確認されています。数字の水準は資産配分や取り崩し期間によって変動しますが、おおよその関係は次のとおりです。

取り崩し率成功率(資産が尽きなかった割合)
4%95%
5%68%
6%43%

Retirement Researcherの公表データをもとに作成(資産配分・取り崩し期間により数値は変動)

4%から5%へ、たった1ポイント上げただけで成功率が大きく下がっています。取り崩し率は少し動かすだけで結果が変わる、感度の高い数字だということが読み取れます。

4%ルールが崩れるのはどんなときか?

4%という数字は過去のデータから逆算されたものなので、将来が過去と同じように動かなければ、同じ結果にはなりません。崩れる条件は主に2つあります。

1. 将来のリターンが過去平均を下回る場合

試算の土台は、米国株と米国債が過去に生んだリターンです。今後の期間でこれを下回る運用結果になれば、同じ4%でも資産の減りは試算より速くなります。過去のデータは将来を保証しません。

2. 取り崩し開始直後に大きな下落が来る場合

これはシーケンス・オブ・リターンズ・リスク(順序リスク/リターンが起きる順番によって結果が変わるリスク)と呼ばれます。長期の平均リターンが同じでも、下落が先に来るか後に来るかで結末が変わる、という性質です。

絵にすると分かりやすくなります。資産を積み上げている最中は、価格が下がっても口数を買い増せるので、後で戻れば取り返せます。ところが取り崩し局面では逆で、価格が下がった年に生活費を引き出すと、安い値段で資産を手放すことになります。残った資産が減った状態で相場が戻っても、戻る対象そのものが小さくなっているため回復しきれません。同じ下落でも、積立期と取り崩し期ではダメージの意味が違います。

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平均が同じでも、順番で結果が変わるの?

順序が結果を左右するのは、毎年の引き出しが資産の元本を削っていくためです。上昇が先に来た人は、削られる前に資産が厚くなっているので、その後の下落に耐えられます。逆に下落が先に来た人は、薄くなった資産から引き出し続けることになります。この差は平均リターンの数字には表れません。

3. そもそも前提となる市場が違う場合

日本の投資家がそのまま当てはめられるわけではありません

4%ルールの根拠データは米国市場(米国株・米国債)のものです。日本に住む投資家の場合、為替の変動、日本の税制、市場のリターン水準の違いといった前提の差があります。海外資産を保有していれば円高・円安が受取額を左右しますし、売却時には課税もかかります。4%という数字は「そのまま使える基準」ではなく、取り崩しを考えるうえでの参考値・出発点として扱うのが実態に近い受け止め方です。

定率取り崩しと定額取り崩しは何が違う?

4%という水準の話とは別に、「率で引き出すか、金額で引き出すか」という設計の違いがあります。ここを混同すると、同じ4%でも資産の減り方がまったく変わります。

定率取り崩し

その時点の資産残高に対して、毎年一定の率を掛けて引き出す方式です。資産2,000万円に対して年4%なら初年度は80万円。翌年は値動きを経た後の残高に、あらためて4%を掛け直します。

定額取り崩し

初年度に決めた金額を、以後も固定で引き出す方式です。2,000万円の4%=80万円と決めたら、残高がいくらになっても毎年80万円を引き出します(物価上昇に合わせて金額を調整する設計もあります)。ベンゲンの試算が想定していたのは、この「初期取り崩し率を決めて金額を固定する」タイプです。

下落した年に何が起きるか

違いが一番はっきり出るのは、相場が下がった年です。資産2,000万円が2年目に1,600万円(-20%)まで下がったと仮定して比べてみます。

2年目の引き出し額定率4%:64万円 / 定額:80万円
引き出し後の残高定率:1,536万円 / 定額:1,520万円
生活費への影響定率:前年より16万円少ない / 定額:前年と同じ

一般的な定率・定額取り崩しの定義をもとに作成(税・手数料は考慮していません)

定率は、資産が減れば引き出す額も自動的に減ります。資産のペースに生活費を合わせる仕組みなので、理論上は残高がゼロになりにくい設計です。そのかわり、使える金額が年によって上下します。上の例では、生活費が1年で16万円縮む計算です。

定額は逆に、生活費が安定します。家計の見通しは立てやすい一方、下落した年も同じ金額を引き出すため、資産の目減りが速く進みます。取り崩し開始直後にこれが続いたときに問題になるのが、先ほどの順序リスクです。

どちらを軸に考えるかの判断材料
  • 生活費のうち、年金など他の安定収入でまかなえる割合はどのくらいか
  • 引き出し額が2〜3割減っても生活が回るか(回るなら定率の変動を吸収しやすい)
  • 資産を何年もたせたいのか(期間が長いほど取り崩し率の影響が大きくなる)
  • 下落した年に「引き出しを減らす」判断を自分が実行できるか

自分の場合の数字をどう出すか?

他人の4%ではなく、自分の資産で計算してみるのが出発点になります。手を動かす順番は次のとおりです。

  1. 取り崩し対象の資産額を確定する生活防衛資金や住宅費など、取り崩しに回さないお金を除いた金額を出します。ここを混ぜると計算が実態から離れます。
  2. 年間の必要額を洗い出す1か月の支出×12に、税金・保険・数年おきの大きな支出(家電の買い替え、修繕など)を足します。
  3. 他の収入でまかなえる分を差し引く年金や勤労収入などを引いた残りが、資産から引き出す必要のある金額です。
  4. 必要額 ÷ 資産額 を計算するこれが自分の取り崩し率です。この数字が4%より大きいほど、過去データの試算からも外れていきます。
  5. 下落局面を仮に当てはめる資産が2〜3割下がった前提で、定率なら引き出し額がいくらになるか、定額なら残高がどう減るかを計算します。ここで生活が成立しない場合、率か支出のどちらかを見直す材料になります。
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計算してみたら4%を超えてた…

取り崩し率が4%を超えていること自体が失敗ではありません。トリニティ・スタディの数値が示すとおり、率が上がるほど資産が尽きない確率は下がっていきますが、それは資産をどれだけの期間もたせたいかとセットで意味を持ちます。取り崩す期間が短ければ、より高い率でも成立します。

また、定率と定額は二択ではなく、生活の土台部分は定額で確保し、上乗せ分を定率にするといった組み合わせも設計としてはあり得ます。大事なのは、どの前提でその数字が成り立っているかを自分で説明できる状態にしておくことです。

4%という数字とどう付き合うか

4%ルールの価値は、「この率なら安全」という答えを与えてくれる点ではなく、取り崩し率という考え方そのものを持ち込んでくれる点にあります。資産をいくら持っているかではなく、その資産に対して毎年何%引き出しているかで見る。この視点があるだけで、判断の材料が具体的になります。

そのうえで、この数字の出どころ(1994年の米国データ、最悪ケース基準、30年という期間)と、崩れる条件(想定より低いリターン、開始直後の下落、市場・税制・為替の違い)を押さえておけば、前提が変わったときに気づけます。数字を覚えることより、前提を覚えることのほうが実際には役に立ちます。

投資判断はご自身の責任で

本記事は、資産の取り崩しに関する考え方と計算方法を教育目的で解説したものです。特定の商品・銘柄の推奨や、個別の投資助言を行うものではありません。ここで示した数値例はしくみを説明するための仮定であり、将来の運用成果を示すものでも保証するものでもありません。投資は自己責任であり、元本は保証されません。実際の取り崩し設計にあたっては、税制や手数料、ご自身の状況を踏まえてご判断ください。

よくある質問

4%ルールとは何ですか?

4%ルールとは、退職時点の資産の約4%を初年度に取り崩す水準であれば、米国の株式・債券の過去データ上は30年間資産が枯渇しなかった、という試算です。1994年にファイナンシャルプランナーのウィリアム・ベンゲンが論文で提唱したもので、正確には約4.15%という数値でした。公的機関が定めた基準ではなく、特定の市場・期間のデータから導かれた参考値です。

4%ルールは日本でもそのまま使えますか?

根拠となるデータが米国市場(米国株・米国債)のものであるため、そのまま当てはめられるとは限りません。為替変動、日本の税制、市場のリターン水準といった前提の違いがあります。4%は取り崩しを考える出発点の参考値として扱い、自分の資産額・必要額から実際の取り崩し率を計算して確認するのが現実的です。

定率取り崩しと定額取り崩しはどちらが安全ですか?

資産を枯渇させにくいという点では定率取り崩しです。資産残高に一定率を掛けて引き出すため、資産が減れば引き出し額も自動的に減ります。ただし生活費として使える金額が年によって変動します。定額取り崩しは生活費が安定する一方、下落した年も同額を引き出すため資産の減少が速く進みます。どちらが適するかは、他の安定収入の有無と支出を減らせる余地によって変わります。

シーケンス・オブ・リターンズ・リスクとは何ですか?

リターンが発生する順番によって最終結果が変わるリスクのことです。長期の平均リターンが同じでも、取り崩し開始直後に大きな下落が来ると、価格が下がった資産を売って生活費に充てることになり、資産が薄くなった状態で相場の回復を迎えるため取り返しにくくなります。4%ルールが想定通りに機能しなくなる主な条件のひとつです。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。