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特別損失と特別利益の読み方、好決算で株価が下がる理由

2026年10月12日|いろは堂投資編集部
木製デスクで確定申告書類を手に持ちペンで記入する人物と電卓。

画像出典: ぱくたそ

この記事の要点
特別損失・特別利益は、本業とは関係のない臨時・一時的な損益で、損益計算書では経常利益の下に表示されます。純利益はこの一時的な数字を含むため、純利益だけを見ると本業の実力を取り違えます。決算短信では添付資料の損益計算書で特別損益の内訳項目を確認し、営業利益・経常利益と純利益を分けて比べるのが基本動作です。
😟
純利益が過去最高って書いてあったのに、翌日しっかり下がってる。数字は良かったのに、どこを読み落としたんだろう

中間決算が集中する時期になると、この落差に戸惑う場面が増えます。決算短信の表紙(サマリー情報)には経営成績がずらりと並び、純利益の増減率が目に入りやすい作りになっています。ただし純利益は、本業で稼いだ分と、その期だけの臨時の損益が合算された後の数字です。

その臨時の部分が「特別利益」「特別損失」です。ここを切り離して見るだけで、「数字は良いのに下がる」決算の中身がかなり説明できるようになります。読み方そのものは、短信のどこを開いて何と何を比べるか、という手順に落とせます。

特別損失・特別利益とは?

特別利益・特別損失とは、本業や経常的な活動とは関係なく、臨時的・一時的に生じた利益・損失のことです。会社の売上や仕入れのように毎期くり返し発生するものではなく、その期にたまたま起きた出来事から生まれます。

イメージとしては、家計の「給料」と「車を売って入ったお金」の違いに近いです。今月の収入が普段より多くても、中身が車の売却代金なら、来月から生活が楽になったわけではありません。会社の決算でも同じ切り分けが必要になります。

特別損失に並ぶ代表的な項目
  • 固定資産売却損
  • 長期保有していた株式・証券の売却損
  • 火災・自然災害・盗難による損失
  • 情報漏えいの対応費用、損害賠償費
  • リストラ費用・休業損失
  • 前期損益修正損
特別利益に並ぶ代表的な項目
  • 固定資産売却益
  • 長期保有していた株式・証券の売却益
  • 災害関連の補助金・助成金
  • 前期損益修正益

項目名を見ると性質がはっきりします。本社ビルを売った、保有していた取引先の株を売った、工場が災害にあった、人員構造を見直した。どれも「来期も同じ金額が出るとは考えにくい」出来事です。この「来期も続くか」という問いが、あとで出てくる判断基準の軸になります。

損益計算書のどこに出てくる?

特別損益が置かれる位置には意味があります。損益計算書は上から下へ、利益を段階的に計算していく構造になっています。

  1. 営業利益本業の売上から、原価と販管費を引いた利益。事業そのものの稼ぎ。
  2. 経常利益営業利益に、利息や為替差損益などの財務的な損益を加減したもの。くり返し発生する活動までを含んだ利益。
  3. 特別利益・特別損失ここで臨時・一時的な損益を加減する。
  4. 税引前利益 → 当期純利益税金を差し引いて、最終的に残る利益。

注目したいのは、特別損益が経常利益の「下」にあることです。経常利益は会社の正常な収益力を示す利益として位置づけられており、特別損益は含まれません。逆に純利益は特別損益を通過した後の数字なので、臨時の出来事をまるごと抱えています。

つまり純利益の大きな変動は、本業が急に強くなった/弱くなったことを意味するとは限りません。特別利益・特別損失の発生があれば、当期純利益は期によって大きく振れます。会社の本来の稼ぐ力を見たいときは、特別損益を除いた経常利益や営業利益に目を移すのが基本の順序です。

決算短信のどこを開けばいい?

決算短信は「サマリー情報」と「定性的情報・財務諸表等(添付資料)」の二段構えです。サマリー情報は定型様式で、経営成績・財政状態・キャッシュフロー・配当・業績予想の5ブロックが並びます。

特別利益・特別損失の内訳、つまり個別の項目名と金額は、このサマリー情報の本体ではなく添付資料の側に載ります。連結・単体の損益計算書と、その注記です。表紙だけを見て判断すると、純利益の増減率は分かるのに理由が分からない状態になります。

  1. 短信PDFを後ろまでスクロールする添付資料の「連結損益計算書」を探す。連結決算をしていない会社なら単体の損益計算書。
  2. 経常利益の下を見る「特別利益」「特別損失」という見出しがあるか確認する。金額ゼロや記載なしなら、その期は純利益と経常利益の差が税金中心ということになる。
  3. 内訳項目を書き出す固定資産売却益、投資有価証券売却損、減損損失(保有する工場や店舗などの資産が、見込んだほど稼げないと判断されたときに、帳簿上の価値を切り下げて損失として計上するもの)など、項目名と金額をメモする。注記に補足説明が付くこともある。
  4. 前期の同じ欄と並べる前年同期の列が隣にあるので、前期に大きな特別損益がなかったかを見る。ここが後述の「反動」の確認になる。
内訳が見つからないこともあります

金額の重要性が乏しいと判断された項目は、記載を一部省略できる扱いがあります。内訳が細かく書かれていない場合は、注記や決算説明資料のほうに説明が回っていることもあります。短信に書かれていないことを推測で埋めず、「公表されている範囲で分からない」と扱うほうが安全です。

数字が良いのに株価が下がるのはなぜ?

🤔
増益って書いてあれば、株価は上がるものだと思ってた

決算と株価の関係は、絶対額の良し悪しだけでは決まりません。発表前に市場が何を期待していたか、そして前期の数字がどう作られていたかが効いてきます。よく挙げられる要因は次のあたりです。

好決算でも売られうる主な要因
  • 期待に届かない会社予想が増益でも、市場がさらに高い成長を見込んでいた場合、発表後に売りが出ることがある
  • 特別利益の反動前期に固定資産売却益や投資有価証券売却益などの特別利益が大きく計上されていると、当期はその反動で純利益が減益予想になり、表面上の「純利益減益」がネガティブに受け取られやすい
  • すでに織り込み済みPER(株価が1株当たり利益の何倍かを示す指標)やPBR(株価が1株当たり純資産の何倍かを示す指標)が高い水準にあり、好材料を株価が先に反映していた場合、好決算でも株価が動きにくい(出尽くし)
  • 発表前の上昇の反動決算前に株価が上がっていた分の利益確定売りが出る

このうち特別損益と直接関わるのが2つ目です。前期に一度だけの売却益が乗っていれば、当期の純利益はそれを超えにくくなります。本業が前年並み、あるいは伸びていても、純利益の欄には「減益」と表示されうるわけです。

逆のパターンもあります。当期に大きな特別損失(減損損失やリストラ費用など)を計上して純利益が小さく見えても、営業利益・経常利益の段階では伸びている、という形です。純利益だけを追うと、この2つを同じ「悪い決算」として扱ってしまいます。

本業の実力と一時的要因を見分ける手順

ここまでを、短信を開いたときの作業手順にまとめます。架空のA社を例に数字を当てはめます(実在企業の数値ではなく、読み方を示すための例です)。

前期(中間)当期(中間)
営業利益80億円92億円
経常利益85億円96億円
特別利益40億円0億円
特別損失0億円0億円
税引前利益125億円96億円

上の表のA社は、営業利益・経常利益の段階では増益です。それでも税引前利益は125億円から96億円へ減ります。前期にあった特別利益40億円が当期はゼロになったためで、本業の伸び(営業利益+12億円)が反動に飲み込まれた形です。前期の特別利益の内訳が固定資産売却益だと分かれば、来期も同額が出るとは考えにくい、と整理できます。

  1. 営業利益と経常利益の増減を先に見る純利益より前に、この2段を前年同期と比べる。本業と財務活動までの流れがここに出る。
  2. 特別損益の内訳項目を性質で分類する「毎期起こりうるか」「来期も同じ金額が出るか」で、一時的か継続的かを仕分ける。災害損失や固定資産売却損益は一時的側に寄る。
  3. 前期の特別損益の有無を確認する前期に大きな特別利益があれば、当期の純利益は前期を超えにくい。減益の表示が反動によるものかを切り分ける。
  4. 純利益の増減の理由を一文で言えるか確かめる「本業の伸びで増えた」「前期の売却益の反動で減った」のどちらなのかを言語化する。言えないなら、まだ内訳を読めていない。
この手順で分からないこともあります

上の整理は「特別損益を除けば本業の推移が見える」という前提に立っています。実際には、リストラ費用が毎期のように計上されて実質的に継続コストに近くなっている場合や、会計基準の変更・事業の売却で前期と当期の比較の土台そのものがずれる場合があります。また減損損失は一時的な計上ですが、その資産の将来の稼ぎが下がったという判断の表れでもあり、本業と無関係とは言い切れません。項目名だけで機械的に仕分けず、注記の説明まで読む余地を残しておくほうが確実です。

株価がなぜ動いたかの説明も、決算の内容だけで一つに決まるものではありません。見方が割れること自体が普通で、市場全体の地合いや金利・為替の動きも同時に効いています。

中間決算の時期はいつ確認すればいい?

日本の上場企業は3月期決算の会社が中心で、中間決算(第2四半期決算)の発表は10月中旬から11月中旬にかけて集中します。たとえば京成電鉄は2026年3月期第2四半期(中間期)決算を2025年10月31日に発表し、NSKは2026年3月期第2四半期決算を2025年11月4日に発表しています。東武鉄道は2026年11月上旬に第2四半期決算発表を予定しています(各社IRカレンダーより)。

個別企業の正確な発表日は、各社のIRページか、東証が運営する適時開示情報の公表サイト「TDnet」で確認するのが確実です。上場企業が決算短信などを発表すると、まずここに掲載されます。この時期は短期間に大量の短信が出るため、保有・検討している銘柄の発表日を先に押さえておくと、添付資料まで読む時間を作れます。

  1. 発表日を事前に調べる各社IRカレンダーまたはTDnetで日付を確認する。
  2. 発表後、短信の添付資料まで開くサマリー情報の純利益だけで止めず、損益計算書の特別損益欄へ進む。
  3. 営業利益・経常利益・特別損益・純利益を並べて記録する前年同期の列とセットで残しておくと、次の四半期で比較の土台になる。

ここまでの読み方は、決算期を問わず同じ手順で使えます。四半期ごとにこの4つの欄を記録していくと、特別損益がどれくらいの頻度で、どんな項目で出ている会社なのかが自分の記録から見えてきます。

投資判断は自己責任です。株式や投資信託には元本保証はなく、価格変動により損失が生じる可能性があります。この記事は決算資料の読み方を説明する教育目的の内容で、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

よくある質問

特別損失が出ている会社は避けたほうがいいのですか?

特別損失の有無だけで良し悪しは決まりません。特別損失は本業と関係のない臨時・一時的な損失で、固定資産売却損や災害損失、リストラ費用などが含まれます。本業の状況は営業利益・経常利益の段階で確認し、特別損失の内訳項目が来期も続く性質のものかどうかを合わせて見る必要があります。

特別利益と特別損失の内訳は決算短信のどこに載っていますか?

内訳の項目名と金額は、決算短信のサマリー情報ではなく、添付資料に含まれる損益計算書(連結・単体)と注記に記載されます。金額の重要性が乏しいと判断された項目は記載が一部省略される扱いがあるため、内訳が細かく書かれていない場合もあります。

経常利益と純利益のどちらを見るべきですか?

役割が違うため両方を見ます。経常利益は特別損益を含まないため、会社の正常な収益力を示す利益として扱われます。純利益は特別損益と税金を通過した後の最終的な利益で、株主に帰属する金額や配当の原資に関わります。本業の実力を見るなら経常利益・営業利益、最終的に残った金額を見るなら純利益です。

中間決算の発表はいつ頃ですか?

3月期決算の企業が中心の日本の上場企業では、中間決算(第2四半期決算)の発表は10月中旬から11月中旬に集中します。個別企業の正確な発表日は、各社のIRカレンダーや、東証が運営する適時開示情報の公表サイト「TDnet」で確認できます。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。