第1四半期決算の進捗率、25%で判断していい?
画像出典: 写真: Dave Dugdale from Superior, USA(CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons)
業績進捗率は「期初からの累計実績 ÷ 会社発表の通期業績予想 × 100」で計算し、営業利益ベースを基本に見ます。第1四半期末の単純な時間按分の目安は約25%ですが、不動産や小売のように利益の出る時期が偏る業種では、この目安だけでは判断できません。過去数年の同じ四半期の進捗率と比べて、今年がどれだけ離れているかを見るのが実務的な読み方です。
四半期決算の数字は、単体で眺めても良し悪しが判断できません。売上や利益の金額そのものより、「会社が自分で出した通期予想に対して、今どこまで来ているか」という位置関係のほうが情報量があります。これを数値化したものが業績進捗率です。
計算式は難しくありません。ただ、出てきた数字を「25%より上か下か」だけで判断すると、業種によっては真逆の結論になります。正直なところ、ここでつまずいている人はかなり多いです。
計算の手順、前年同期との比べ方、季節性のある業種での落とし穴まで、実際に手を動かす形で見ていきます。
そもそも進捗率とは?計算式と使う数字
業績進捗率とは、期初から当該四半期までの累計実績を、会社が発表している通期業績予想で割った割合です。式にすると次のとおりです。
- 進捗率(%) = 期初〜当該四半期の累計実績 ÷ 会社発表の通期業績予想 × 100
- 基本は営業利益ベースで算出する
- 売上高・経常利益の進捗率も併せて見ると精度が上がる
ここで大事なのは、分母が会社自身が出した予想だという点です。アナリスト予想でも、あなたの期待値でもありません。つまり進捗率は「会社が自分で立てた計画に対して、自分がどこまで達成できているか」を示す自己採点の指標です。
営業利益ベースを基本にするのは、本業の稼ぐ力の進み具合が最も見たいところだからです。売上だけ順調でも利益が伴わなければ、通期予想の達成は怪しくなります。逆に、本業とは関係のない一時的な収益(保有資産の売却益など、会計上は特別利益と呼びます)で経常利益だけが膨らんでいる場合も、営業利益を見れば本業の実態が分かります。
1Q・2Q・3Qの時間按分の目安
1年を4等分すると、各四半期末で累積すべき割合は次のようになります。これが「単純な時間按分の目安」です。
| 時点 | 時間按分の目安 |
|---|---|
| 第1四半期末 | 約25% |
| 中間期(第2四半期)末 | 約50% |
| 第3四半期末 | 約75% |
この目安は、あくまで「1年を均等に割ったらこうなる」というだけの数字です。実際の企業活動が均等に進むとは限らないので、この数値を合格ラインとして扱うのは危険です。25%を超えたから上振れ確定、下回ったから未達確定、という読み方はできません。
時間按分は「他に手がかりがないときの最初の物差し」です。後述する季節性のある業種では、1Q時点で10%台でも計画どおりということも、40%台でも実は例年より遅いということもあります。目安を出発点にして、必ず次の章の比較作業まで進めてください。
実際に計算してみる(数値演習)
架空の会社を使って、手を動かしてみます。実在の企業ではありません。
- 通期営業利益予想:200億円
- 第1四半期(4〜6月)の営業利益実績:36億円
- 累計実績を確認する第1四半期なので累計=その四半期の実績そのままで36億円。第2四半期以降は「累計」の数字を使います。決算短信(会社が決算発表と同時に公表する、業績数値をまとめた数ページの書類)の表紙には累計値が載っているので、四半期単独の数字と取り違えないよう注意してください。
- 通期予想で割る36 ÷ 200 = 0.18
- 100を掛けて%にする0.18 × 100 = 進捗率18%
- 時間按分の目安と比べる1Q末の目安25%に対して18%。単純比較では7ポイント下回っています。
- ここで止めない18%という数字だけでは「遅れている」とは断定できません。次の章の作業に進みます。
手順自体はこれだけです。決算短信のPDFか、証券会社のアプリの業績画面から2つの数字を拾えば30秒で出せます。
売上・経常利益も並べて見る
営業利益だけでなく3つ並べると、進み方の偏りが見えてきます。同じA社の例です。
| 項目 | 1Q累計実績 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 620億円 | 2,400億円 | 25.8% |
| 営業利益 | 36億円 | 200億円 | 18.0% |
| 経常利益 | 40億円 | 210億円 | 19.0% |
売上は目安どおり進んでいるのに、営業利益だけが遅れている形です。売上が計画線で利益が遅れている=コストが想定より重いという読み方ができます。原材料費なのか、人件費なのか、先行投資なのかは決算説明資料の費用の内訳で確認します。逆に売上が遅れていて利益が進んでいるなら、採算重視の販売に切り替えている可能性があります。
この「3つの進捗率のズレ」を見る作業が、進捗率をひとつの数字で終わらせないための最初の一歩です。
なぜ夏に1Q決算が集中するのか
7月から8月にかけて決算発表が立て込むのには、制度的な理由があります。東京証券取引所には、上場企業が決算などの重要な情報をいつまでに公表すべきかを定めた適時開示ルールがあり、そこでは第1・第3四半期の決算開示は原則として四半期末後45日以内に行うことが適当とされています。
日本取引所グループの公表情報をもとに作成
3月期決算の会社なら第1四半期は6月末で締まるので、その45日後は8月中旬。日本の上場企業は3月期決算が多いため、7月下旬から8月上旬に発表がまとまって押し寄せることになります。この時期に「進捗率」という言葉をあちこちで見かけるのは、そのためです。
裏を返すと、この時期は短期間に大量の決算を処理することになります。だからこそ、1銘柄あたり30秒で出せる進捗率という物差しが役に立ちます。
季節性で進捗が偏る業種にどう対応するか
ここが本題です。単純な時間按分だけでは正しく判断できない銘柄があります。
業種によっては、利益の出る時期が特定の四半期に集中します。よく挙げられるのが次のような例です。
- 不動産:物件の引き渡しが1〜3月期に集中しやすく、期末に利益が寄る
- 小売:クリスマス商戦のある時期に利益が偏りやすい
不動産のように売上計上が引き渡しのタイミングに依存する業態では、1Q時点の進捗率が一桁台でも計画どおりということが起こります。逆に、期末に利益が集中する構造だと知らずに「25%を割っている」とだけ見て判断すると、事実と逆の結論になります。
季節性を織り込む具体的な手順
対処法はシンプルで、時間按分ではなく、その会社自身の過去と比べることです。
- 前年同期の進捗率を計算する去年の1Q累計実績 ÷ 去年の期初時点の通期予想 × 100。決算短信の前年同期比較欄と、前年の期初予想を使います。
- できれば過去3〜5年分を並べる年によるブレを均すため、複数年の1Q進捗率を並べて平均を出します。この平均が、その会社にとっての「実質的な25%ライン」になります。
- 今年の進捗率との乖離を見る今年18%、過去3年平均が17%なら、ほぼ例年どおり。今年18%で過去平均が28%なら、10ポイントの遅れという評価になります。
- 乖離の理由を資料で確認する決算説明資料や決算短信の文章欄で、会社側が進捗をどう説明しているかを読みます。数字の裏づけを取る工程です。
この手順を踏むと、「25%」という他人の物差しから、「その会社の例年」という自前の物差しに切り替わります。同じ18%でも、意味がまったく変わってくるわけです。
実際に比べてみる(演習の続き)
先ほどのA社の18%を、過去と並べてみます。
| 年度 | 1Q進捗率(営業利益) |
|---|---|
| 3期前 | 16.5% |
| 2期前 | 17.8% |
| 前期 | 17.2% |
| 過去3期平均 | 17.2% |
| 今期 | 18.0% |
この会社はもともと1Qの進捗が17%前後で推移する構造だと分かります。今期の18.0%は平均を0.8ポイント上回っており、「25%に届いていないから遅い」ではなく「例年どおり、むしろやや前倒し」という評価に変わります。
数字は同じ18%です。比較対象を変えただけで結論が反転しました。進捗率を使うときの本質は、計算そのものではなく何と比べるかを選ぶことにあります。
進捗率を見るときにやりがちな間違い
ここまでの内容を、注意点の形で整理しておきます。
累計と単独を取り違える。第2四半期以降は「4〜9月の累計」と「7〜9月の3か月単独」の両方が決算短信に載っています。進捗率に使うのは累計のほうです。
通期予想が期中に修正されている。会社が業績予想を上方・下方修正すると分母が変わります。前年と比べる際は、どの時点の予想を分母にしたかを揃えないと比較になりません。
通期予想を出していない会社がある。予想を非開示にしている企業では、そもそも進捗率が計算できません。この場合は前年同期比の増減率など、別の指標で見ることになります。
進捗率で株価の動きは説明できない。進捗率は業績の進み具合を測る道具であって、株価の先行きを示すものではありません。株価は市場が織り込んでいる予想との差で動くため、進捗が良好でも株価が下がることは普通に起こります。
四半期ごとの読み方の重心
同じ進捗率でも、どの四半期かで意味の重みが変わります。
| 四半期 | 読み方の重心 |
|---|---|
| 1Q | サンプルが少なく、ブレも大きい。過去平均との比較を重視する |
| 2Q(中間) | 半期分が確定し精度が上がる。通期予想の修正が出やすい時期 |
| 3Q | 残り3か月。この時点の乖離は通期着地に直結しやすい |
上の表のとおり、夏に出る1Qは、1年で最も情報が少ない段階の決算です。1Qの進捗率だけで通期の結論を出そうとしないことが、この時期の数字との付き合い方になります。あくまで「今のところどう進んでいるか」を把握する材料として使い、2Q・3Qで更新していく前提で見るのが現実的です。
この夏、実際にやってみること
保有銘柄や気になっている銘柄で、次の作業をしてみてください。手順は先ほどのとおりです。
- 決算短信の1ページ目を開く累計の売上高・営業利益・経常利益と、通期予想が同じページに載っています。
- 3つの進捗率を計算する電卓かスプレッドシートで割り算するだけ。1銘柄1分もかかりません。
- 過去3年分の1Q進捗率も同じ手順で出す過去の決算短信は、企業の公式サイトにあるIRページ(投資家向けに決算資料や業績情報をまとめた専用ページ)に残っています。ここが少し手間ですが、一度作れば来年以降も使えます。
- 乖離が大きい銘柄だけ、決算説明資料まで読む全銘柄を精読する必要はありません。数字でふるいにかけてから深掘りするのが効率的です。
この作業の価値は、ニュースの「好調」「低迷」という形容詞を、自分で検算した数字に置き換えられることにあります。見出しの印象と実際の進捗が食い違っていることは珍しくありません。
最後に一つ。進捗率は業績を評価するための道具であって、売買の判断基準そのものではありません。指数の見通しや市場全体の予想も、あくまで予想であって前提ではないという点は常に意識してください。
この記事は決算数値の読み方を解説する教育目的の内容であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。株式などの金融商品には元本保証はなく、価格変動により損失が生じる可能性があります。投資は自己責任です。最終的な投資判断はご自身の責任と判断で行ってください。
よくある質問
業績進捗率はどうやって計算しますか?
期初から当該四半期までの累計実績を、会社が発表している通期業績予想で割り、100を掛けて算出します。営業利益ベースで計算するのが基本で、売上高・経常利益の進捗率も併せて確認すると精度が上がります。
第1四半期の進捗率は何%あれば正常ですか?
1年を均等に4分割した時間按分の目安は約25%ですが、これは合格ラインではありません。業種の季節性によって利益の出る時期が偏るため、その企業自身の過去数年の第1四半期進捗率と比較して、今年がどれだけ乖離しているかで判断します。
なぜ7〜8月に第1四半期決算の発表が集中するのですか?
東京証券取引所が定める適時開示ルール(上場企業が重要な情報をいつまでに公表すべきかを定めた決まり)で、第1・第3四半期の決算開示は原則として四半期末後45日以内が適当とされているためです。3月期決算の企業は6月末が第1四半期末となり、その45日以内である7月下旬から8月中旬に発表が集中します。
季節性のある業種はどう見ればよいですか?
不動産は物件引き渡しが1〜3月期に集中しやすく、小売はクリスマス商戦のある時期に利益が偏りやすいなど、四半期ごとの利益貢献に偏りがあります。こうした業種では時間按分の25%と比べるのではなく、前年同期や過去数年平均の進捗率との乖離度を確認します。
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