日銀短観9月、業況判断DIで保有株の金利影響を点検
画像出典: ぱくたそ
日本銀行は2026年10月1日8時50分、短観(2026年9月調査)を発表しました。大企業製造業の業況判断DIは+24で6四半期連続の改善、大企業非製造業は+35で5四半期ぶりの悪化です。政策金利が1.25%まで上がった局面では、この業種ごとの方向と自分の保有株の業種を突き合わせることで、金利上昇の影響を受けやすい部分がどこかを点検できます。
短観(全国企業短期経済観測調査)は、日本銀行が年4回、資本金2000万円以上の民間企業約1万社に「いまの景気は良いか悪いか」を直接聞いた調査です。ニュースで流れるのは大企業製造業の1つの数字だけですが、実際には業種別・規模別に集計されています。つまり、自分が持っている株の業種に絞って読み直せる調査でもあります。
正直なところ、短観を見ても「へえ、景気は悪くないのか」で終わってしまいがちです。せっかく四半期に1回しか来ない企業の生の声なので、保有株の点検に使うところまで持っていきましょう。
日銀短観(2026年9月調査)で何が発表されたのか?
日本銀行は2026年10月1日8時50分に、短観の2026年9月調査を発表しました。中心となる数値は次のとおりです。
| 区分 | 2026年6月調査 | 2026年9月調査 |
|---|---|---|
| 大企業・製造業 業況判断DI | +22 | +24 |
| 大企業・非製造業 業況判断DI | +37 | +35 |
日本銀行の公表データをもとに作成
上の表のとおり、製造業と非製造業で方向が分かれました。大企業製造業は2ポイント改善して6四半期連続の改善、大企業非製造業は2ポイント悪化して5四半期ぶりの悪化です。発表前の市場予想は製造業+25、非製造業+36とされていたため、どちらも予想をわずかに下回る水準でした。
ここで出てくる業況判断DIは、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた指数です。プラスが大きいほど「良い」と答えた企業が多いことを示します。水準そのものより、前回調査から上がったか下がったかという方向のほうが、相場では材料として扱われます。
なぜ今回の短観が注目されているのか?
日銀は2026年9月17〜18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.25%へ引き上げることを決めました。そして次回の会合は2026年10月29〜30日に予定されています。今回の短観は、その会合前に日銀が手にする最もまとまった企業データです。
追加利上げの見方は一本ではありません。2026年9月下旬時点の報道では、10月会合での利上げ確率は約3割、12月会合までの利上げ確率は9割超との観測が伝えられていました。元日銀理事の門間一夫氏は、情勢次第では10月会合での利上げもあり得るとしつつ、12月利上げをほぼ確実とするメインシナリオを示しています(2026年9月27日時点)。こうした確率は日々動き、見方も割れています。ひとつの数字を前提に判断を固めないほうが無難です。
ニュースで報じられるのは大企業の2区分だけですが、短観はもっと細かく業種別に集計されています。そこまで降りていくと、保有株の点検に使える形になります。
業種別の業況判断DIはどこで見られる?
建設・不動産・金融・小売・卸売・運輸・電気ガスといった業種ごとのDIは、ニュースの要約には出てきません。2020年3月調査分からは「短観 調査全容」という資料に業種別計数が統合されており、業種ごとの数字を見るにはこの資料を開く必要があります。
- 日銀の短観ページを開くブラウザで 日本銀行の短観ページにアクセスします。最新の調査回が一番上に並んでいます。
- 「概要」と「調査全容」を使い分ける概要PDF(2026年9月調査はtka2609.pdf、236KB)には大企業製造業などの代表的な数値が載ります。業種別の内訳は「調査全容」のPDFです。
- 調査全容から自分の業種の行を探す業況判断DIの表は、業種が縦に、規模(大企業・中堅企業・中小企業)が横に並ぶ形です。保有株の業種と、その企業の規模に近い列を見ます。
- 「現状」と「先行き」を2つ書き写す短観のDIは、現状と先行き(3か月後の予想)の両方が公表されます。この2つをセットで記録します。
手間はかかりますが、やることは「自分の業種の行を4つの数字で書き写す」だけです。四半期に1回なので、年4回の作業になります。
業種別のDIは、集計サイトやまとめ記事にも転載されています。ただし何年何月調査の数値なのかが曖昧なまま載っている場合があり、古い回の数字を今回の数字と勘違いすると点検そのものが無意味になります。業種別の数値は日銀公式の調査全容PDFで確認してください。この記事でも、業種別DIの具体的な数値は公式資料で確認できた範囲を超えて書いていません。
保有株の業種と金利の関係をどう照合する?
政策金利が上がる局面では、業種によって追い風と逆風がはっきり分かれます。一般的なセオリーとして整理されているのは次のような分かれ方です。
- 銀行・保険などの金融業(貸出金利や運用利回りの改善による利ざや拡大が期待される)
- 不動産(借入コストの上昇、不動産投資の利回り悪化)
- 建設(借入コスト上昇による住宅・設備投資需要の下押し)
- 高配当株やREIT(不動産に投資して賃料収入などを分配する、証券取引所で売買できる投資商品)(債券利回りが上がることで相対的な利回りの魅力が下がる)
- 高成長企業・無配企業・借入依存度の高い企業(資金調達コストの上昇)
ここで大事なのは、この一般論と短観のDIは別の情報だということです。一般論は「金利が上がればこの業種は苦しい方向」という理屈の話で、短観のDIは「その業種の企業が実際にいま景況感をどう感じているか」という事実の話です。理屈では逆風の業種でも、DIが改善方向を示していることはあります。
照合の手順はこうなります。
- 保有株を業種でグループ分けする証券口座の保有一覧を開き、銘柄を業種ごとにまとめます。この時点で「金融が3割、不動産が2割」のような構成が見えます。
- 逆風側の比率を数える上の2つの枠を使い、金利上昇で逆風になりやすいとされる業種の合計評価額が、保有全体の何%かを計算します。
- その業種のDIを調査全容から拾う逆風側に該当した業種について、現状DIと先行きDIを書き写します。
- 方向を突き合わせる「理屈では逆風/DIも悪化方向」なのか、「理屈では逆風/DIは改善方向」なのかを分けます。前者は注視の優先度が高い組み合わせ、後者は理屈だけで判断しなくてよい組み合わせです。
たとえば保有の2割が不動産業で、その業種の先行きDIが現状より下がっていたとします。この場合「金利の理屈でも逆風、企業自身の見通しも慎重」という二重の確認が取れたことになります。逆に先行きDIが上がっていれば、金利の理屈だけで慌てる必要は薄いと読めます。どちらも売買の答えではなく、どこを優先して情報を追うかの順番づけです。
先行きDIと現状DIの差は何を教えてくれる?
短観の特徴は、回答した企業自身が3か月後をどう見ているかまで分かることです。現状DIと先行きDIの差を取ると、その業種の企業が「このあと良くなると思っているのか、悪くなると思っているのか」が符号で出ます。
水準と方向は別に読みます。現状DIが+30でも、先行きDIが+20なら、企業は10ポイント分の悪化を見込んでいることになります。水準は高いままでも、方向は下向きです。相場が反応しやすいのは後者の変化のほうです。
今回の大企業非製造業は、現状DIが+35という高い水準にありながら前回から2ポイント悪化しました。水準で見れば良好、方向で見れば5四半期ぶりの反転です。この2つを同時に持っておくのが短観の読み方になります。
物価見通しと想定為替レートも同じ資料にある
短観には、企業が見込む消費者物価上昇率(企業の物価見通し)も含まれます。2026年6月調査の時点では、全規模・全産業平均の1年後の見通しが調査開始以来の高い水準にあると報じられていました。ただし参照する報道によって数値が異なって伝えられており、物価見通しの具体的な数値は日銀公式の「企業の物価見通し」統計で確認するのが確実です。
この物価見通しが9月調査でも高止まりしていれば、追加利上げの観測を強める材料とみられています。利上げ観測が強まるかどうかは、先ほどの逆風業種の比率がそのまま効いてくる部分です。
同じ資料には、企業が事業計画の前提にしている想定為替レートも載ります。輸出が多い企業や、輸入コストが重い企業を持っているなら、実際の為替水準と想定レートの差が収益の上振れ・下振れの点検材料になります。なお2026年9月調査の想定レートの具体的な数値は、公式の調査全容で確認してください。
この点検を売買ルールにどう組み込む?
短観だけで売買を決めることはできません。年4回しか出ないため、個別企業の業績や決算とはタイミングも粒度も合いません。組み込むなら「比率の上限を決めるための材料」として使うのが現実的です。
- 点検の日を固定する短観は3月・6月・9月・12月の調査が発表されます。発表日に保有一覧を開くことを、年4回の定例作業にします。
- 逆風側の比率に上限を決めておく「金利上昇で逆風とされる業種は合計◯%まで」という自分の線を先に決めます。数字は人によって違っていいもので、超えたら新規の買い増しを止める、という形で使います。
- DIの方向で優先順位をつける上限に近い業種のうち、現状DIも先行きDIも悪化方向のものから、決算や開示を優先して確認します。
- 次の金融政策決定会合の日程を控える次回は2026年10月29〜30日です。会合前後は金利の見通しが動きやすいため、点検を終えた状態で迎えるようにします。
- 判断の材料を複数にする短観のDI、決算の数字、自分の取得単価の3つが揃ってから動く、という順番を決めておきます。
インデックスファンドの積立だけを続けている場合、業種の偏りはもともと分散されているため、この点検で得られるものは多くありません。また保有が1〜2銘柄に絞られている場合も、業種比率という考え方がうまく機能しません。保有が複数業種にまたがり、自分で業種の比率を調整できる状態になってから使う手順です。
短観のDIは景況感という主観の集計値であり、株価の先行きを示すものではありません。業種別の数値も、個々の企業の業績とは一致しません。この記事の業種の例示はいずれも一般的なセオリーの説明であり、特定の銘柄や業種の売買をすすめるものではありません。記載の数値・確率は本文に示した時点のもので、その後変動します。
投資は自己責任です。元本は保証されません。最終的な判断は、ご自身で一次資料を確認したうえで行ってください。
よくある質問
日銀短観の業況判断DIとは何ですか?
業況判断DIは、調査に回答した企業のうち景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた指数です。プラスが大きいほど「良い」と答えた企業が多いことを示します。短観は年4回(3月・6月・9月・12月)実施され、資本金2000万円以上の民間企業約1万社を対象に、業種別・規模別(大企業・中堅企業・中小企業)に集計されます。
2026年9月調査の業況判断DIはどうなりましたか?
日本銀行が2026年10月1日8時50分に発表した短観(2026年9月調査)では、大企業製造業の業況判断DIが+24、大企業非製造業が+35でした。製造業は2026年6月調査の+22から2ポイント改善して6四半期連続の改善、非製造業は+37から2ポイント悪化し5四半期ぶりの悪化です。発表前の市場予想は製造業+25、非製造業+36とされていました。
業種別の業況判断DIはどこで確認できますか?
業種別の計数は2020年3月調査分から日本銀行の「短観 調査全容」という資料に統合されており、建設・不動産・金融・小売・卸売・運輸・電気ガスなどの業種別DIはこのPDFで確認します。日本銀行の短観ページ(https://www.boj.or.jp/statistics/tk/index.htm)から、調査回ごとの概要PDFと調査全容PDFの両方にアクセスできます。
金利が上がると逆風になりやすいとされる業種はどこですか?
一般的なセオリーとしては、不動産(借入コストの上昇と不動産投資利回りの悪化)、建設(借入コスト上昇による住宅・設備投資需要の下押し)、高配当株やREIT(不動産に投資して賃料収入などを分配する、証券取引所で売買できる投資商品。債券利回り上昇により相対的な利回り魅力が低下するとされる)、借入依存度の高い企業や高成長・無配企業(資金調達コストの上昇)が挙げられます。逆に銀行・保険などの金融業は利ざや拡大が期待される側とされます。いずれも理屈の上での整理であり、個々の企業の業績や株価がそのとおりに動くことを示すものではありません。
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