貸借対照表とは?自己資本比率と流動比率の読み方
画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
貸借対照表は左に資産、右に負債と純資産が並び、左右の合計が必ず一致する表です。財務の安全性は主に2つの比率で測れます。自己資本比率(純資産÷総資本×100)は長期的な財務体質を、流動比率(流動資産÷流動負債×100)は1年以内の支払い能力を示します。
損益計算書なら「売上が伸びた」「利益が減った」と読みどころが分かりやすいのに対して、貸借対照表は左右に金額が並ぶだけで、どこが良くてどこが危ないのかの手がかりが見えにくい表です。正直なところ、最初のうちは眺めても何も浮かんでこなくて当然だと思います。
ただ、この表には決まった型があります。左右の並び方が分かり、2つの比率を計算できるようになるだけで、貸借対照表は「会社の体力測定の結果表」として読めるようになります。ここでは構造の整理から始めて、架空の会社の数字を使って実際に電卓を叩くところまでやってみます。
貸借対照表とは何を示している表なのか?
貸借対照表(バランスシート、B/S)は、決算日という一時点での会社の財政状態を示す財務諸表です。損益計算書が「1年間でいくら稼いだか」という期間の記録なのに対し、貸借対照表は「その瞬間に何をどれだけ持っていて、その元手をどこから調達したか」という写真のような記録になります。
表は左右に分かれています。左側(借方)が「資産の部」で、右側(貸方)が「負債の部」と「純資産の部」です。ここが最初のつまずきどころなのですが、左右はまったく別の話をしているわけではありません。右側は「お金をどこから持ってきたか」、左側は「そのお金を今どんな形で持っているか」を示しています。同じお金を調達側と運用側の2つの角度から見ているので、資産合計=負債合計+純資産合計が必ず一致します。バランスシートという呼び名はここから来ています。
手元の1万円を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。その1万円は「自分で稼いだお金」か「誰かから借りたお金」のどちらかです。これが右側の情報にあたります。そして今その1万円が財布に入っているのか、商品券に変わっているのか、というのが左側の情報です。出どころと今の形、両方を並べて書いているのが貸借対照表の正体です。
資産・負債・純資産はどう分かれている?
左右それぞれの中身も、さらに分かれています。分類の基準になっているのは「1年以内かどうか」という時間の物差しです。
左側の資産の部は、流動資産と固定資産に分かれます。流動資産は現金・預金・売掛金(商品を売ったがまだ入金されていない代金)・棚卸資産(在庫)など、おおむね1年以内に現金化される資産です。固定資産は土地・建物・機械など、長期にわたって保有し事業に使う資産を指します。
右側の負債の部も同じ考え方で、流動負債と固定負債に分かれます。流動負債は買掛金(仕入代金の未払い分)や短期借入金など1年以内に返済期限が来るもの、固定負債は長期借入金や社債など返済期限が1年より先のものです。
そして右側の下段にある純資産は、返済義務のないお金です。株主が出資した資本金や、これまで稼いで社内に積み上げてきた利益剰余金などがここに入ります。負債が「いつか返すお金」なのに対して、純資産は「返さなくていいお金」だという違いが、このあと出てくる安全性の指標の土台になります。
- 流動資産 ── 1年以内に現金化される資産(現金・売掛金・在庫など)
- 固定資産 ── 長期保有の資産(土地・建物・機械など)
- 流動負債 ── 1年以内に返済期限が来る負債(買掛金・短期借入金など)
- 固定負債 ── 返済期限が1年より先の負債(長期借入金・社債など)
- 純資産 ── 返済義務のないお金(資本金・利益剰余金など)
自己資本比率はどう計算する?
ブロックの位置が分かったら、いよいよ比率の計算に入ります。まず自己資本比率です。これは会社の元手のうち、返さなくていいお金がどれだけの割合を占めるかを示す指標で、長期的な財務体質の健全性を測る代表的な物差しとされています。
計算式はこうです。
自己資本比率(%)= 自己資本(純資産)÷ 総資本(負債+純資産の合計)× 100
総資本というのは右側全体の合計、つまり負債と純資産を足した金額です。貸借対照表は左右が一致するので、これは資産合計と同じ数字になります。分母を探すときは資産合計の欄を見ればよい、と覚えておくと迷いません。
財務省の財務総合政策研究所は、法人企業統計調査における自己資本比率を「総資本のうち純資産(新株予約権を除く)の占める割合」と定義し、企業の財務体質の健全性を測る指標として扱っています。国の統計でも同じ式が使われている、標準的な指標です。
では、計算した数字はどのくらいなら良いとされるのでしょうか。会計・税理士系のメディアでは、水準ごとにおおむね共通した見方が示されています。
| 50%以上 | 優良水準の目安 |
|---|---|
| 40%前後 | 全産業平均の水準 |
| 20%未満 | 財務体質が弱いとされる水準の目安 |
会計・税理士系メディアで共通して示される目安(マネーフォワード クラウドほか)をもとに作成
ここで注意したいのは、この数字はあくまで大づかみな目安だということです。設備を多く抱える製造業と、在庫も設備も少ない業種とでは、健全とされる水準そのものが変わります。業種別・資本金階級別の自己資本比率は財務省の法人企業統計調査で公表されているので、気になる会社があるときは同調査の資料で同業種の水準と比べるのが筋の通った見方になります。
流動比率で何が分かる?
自己資本比率が長期的な体質を見る指標だとすると、流動比率はもっと短い時間軸、つまり「1年以内に支払いが詰まらないか」を見る指標です。
計算式は次のとおりです。
流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
1年以内に返さなければならない負債を、1年以内に現金化できる資産でどれだけ賄えるか、という比率です。100%なら「ちょうど賄える計算」、それを下回ると短期的な資金繰りに懸念があるとされます。会計系メディアで示される目安としては、200%以上が理想的、120〜150%程度あれば健全とされることが多い水準です。
ただしこちらも業種特性の影響を強く受けます。在庫の回転が速いのか遅いのか、現金商売なのか掛取引が中心なのかで、必要な余裕の厚みが変わるためです。数字だけを他業種と横並びにして優劣を決めることはできません。
2つの指標は連動しないことがあります。たとえば純資産が厚くても、その資産のほとんどが土地や建物といった固定資産に姿を変えていれば、手元の流動資産は薄いという状態がありえます。長期的な体質は良好でも、目先の支払いには余裕がない。この2つは違う質問に答える指標なので、両方を見る意味があります。
実際に計算してみよう(数値例の演習)
ここからは手を動かします。以下は教育目的で組み立てた架空の会社の数字で、実在する企業のデータではありません。
| 流動資産 | 600万円 |
|---|---|
| 固定資産 | 400万円 |
| 資産合計(総資産) | 1,000万円 |
| 流動負債 | 300万円 |
| 固定負債 | 200万円 |
| 負債合計 | 500万円 |
| 純資産 | 500万円 |
まず左右の一致を確認しておきます。資産合計1,000万円に対して、負債合計500万円+純資産500万円=1,000万円。きちんと一致しています。実際の決算書を読むときも、最初に資産合計の数字を押さえておくと、そのあとの計算で分母を探し回らずに済みます。
- 総資本を確認する負債合計500万円+純資産500万円=1,000万円。資産合計と同じ数字になります。
- 自己資本比率を計算する500万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 50%。優良水準の目安とされる50%に該当します。
- 流動比率を計算する600万円 ÷ 300万円 × 100 = 200%。理想的とされる200%の水準に該当します。
- 2つを並べて意味を読む元手の半分が返済不要のお金で賄われており、1年以内の支払い義務300万円に対して現金化できる資産が倍の600万円ある、という状態を示しています。
数字の入れ替えでも試してみると、指標の動き方が体に入ります。たとえば同じ総資産1,000万円でも、純資産が200万円・負債が800万円なら自己資本比率は20%です。総資産の大きさが同じでも、右側の内訳が違えば財務の安全性はまったく別物になるということが、計算してみると数字として見えてきます。
この2つの比率だけで判断していい?
自己資本比率と流動比率は財政状態を測る便利な物差しですが、いずれも決算日という一時点を切り取った数字にすぎません。決算日の直前に大きな入金があったか、直後に大きな支払いが控えているかまでは表に出てこないという限界があります。
また、流動資産の中身の質も比率には表れません。同じ600万円の流動資産でも、現金預金が中心なのか、回収が滞っている売掛金や売れ残った在庫が積み上がった結果なのかで、意味はまったく違います。流動比率が高いからといって、自動的に安全だとは言い切れません。
そのため実務では、貸借対照表を単体で見るのではなく、損益計算書やキャッシュフロー計算書と合わせて読むのが基本とされています。貸借対照表が「決算日時点の状態」を示すのに対し、キャッシュフロー計算書は「その期に現金がどう動いたか」を示します。利益が出ていても現金が減り続けている会社は、貸借対照表の比率だけでは異変に気づけないことがあります。
また、1期分の数字だけを見るのではなく、複数年の推移を並べることも欠かせません。自己資本比率が40%という同じ数字でも、30%から改善してきた40%と、55%から低下してきた40%とでは、読み取るべき方向がまるで違います。決算短信や有価証券報告書には過去数期分の数字が載っているので、比率は必ず時系列で並べてみてください。
今日から使える読み方の手順
最後に、実際の決算資料を開いたときの流れを手順として整理しておきます。
- 資産合計を押さえるこれが総資本であり、自己資本比率の分母になります。左右が一致していることも確認します。
- 純資産の金額を探す右側の下段にあります。資産合計で割って100を掛ければ自己資本比率が出ます。
- 流動資産と流動負債を拾うそれぞれの小計欄を見て、流動資産÷流動負債×100で流動比率を出します。
- 同業他社・同業種平均と比べる目安の数値そのものより、同じ業種の中でどの位置にいるかが判断材料になります。
- 過去数期分を並べる比率が改善方向なのか低下方向なのか、推移で確認します。
電卓を叩く作業自体は1社あたり数分です。この2つの比率を自分の手で計算する習慣がつくと、決算資料が「読めない数字の羅列」から「確認できる情報」に変わります。まずは自分が気になっている会社の決算短信を1社分開いて、資産合計と純資産の2つの数字を探すところから始めてみてください。
※本記事は財務諸表の読み方に関する教育・用語解説を目的としたものであり、特定の銘柄や投資手法を推奨するものではありません。記載の数値例は解説のために構成した架空のもので、実在する企業のデータではありません。投資は自己責任でご判断ください。元本が保証されるものではなく、損失が生じる可能性があります。
よくある質問
貸借対照表の左右が必ず一致するのはなぜですか?
貸借対照表の右側は資金の調達元(負債と純資産)を、左側はその資金が現在どのような資産の形になっているかを示しているためです。同じ資金を調達側と運用側の2つの角度から記録しているので、資産合計=負債合計+純資産合計が必ず一致します。
自己資本比率は何%あれば良いとされますか?
会計・税理士系メディアで共通して示される目安では、全産業平均はおおむね40%前後、50%以上が優良水準の目安、20%未満は財務体質が弱く倒産リスクが相対的に高い水準の目安とされます。ただし適正水準は業種によって異なるため、同業種の水準と比べて判断する必要があります。
流動比率と自己資本比率は何が違いますか?
流動比率は流動資産÷流動負債×100で計算し、1年以内に返済すべき負債を1年以内に現金化できる資産でどれだけ賄えるかという短期の支払能力を示します。一方、自己資本比率は純資産÷総資本×100で計算し、返済義務のないお金が元手全体に占める割合という長期的な財務体質を示します。時間軸の異なる別々の指標です。
流動比率が高ければ資金繰りは安全と言えますか?
必ずしもそうとは言えません。流動比率は流動資産の金額しか見ておらず、その中身の質は反映されないためです。現金預金が中心の600万円と、回収の滞った売掛金や売れ残り在庫が積み上がった600万円では意味が異なるため、流動資産の内訳やキャッシュフロー計算書と合わせて確認する必要があります。
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