株のスクリーニング条件、最初に選ぶ4指標とは?
画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
スクリーニングは条件を一度に詰め込まず、1つずつ足して該当銘柄数の変化を見ながら調整するのが基本です。最初に設定するならPER・PBR・配当利回り・自己資本比率の4つで足り、それぞれ「利益に対する株価」「純資産に対する株価」「株価に対する配当」「返済不要の資本の割合」を測っています。条件は正解を当てるためではなく、数千銘柄を検討可能な数まで減らすために使います。
条件が多いのは、いろんな投資方針に対応するためです。全部使う前提の画面ではありません。実際に最初の絞り込みで動かすのは、多くても4〜5項目です。
とはいえ「PERを何倍にすればいいですか」と聞かれても、正解の数字は存在しません。スクリーニングは当たりの銘柄を出す機械ではなく、3,000銘柄を「自分が調べきれる数」まで減らすための道具だからです。20銘柄まで減れば、そこから先は決算資料を読む作業に移れます。
そこで、条件を1つずつ足して該当数の変化を見る手順を、そのまま真似できる演習の形で並べていきます。
スクリーニングとは何をする機能なのか?
スクリーニングは、上場している全銘柄に対して「PERが15倍以下」のような条件をかけ、当てはまる銘柄だけを残す機能です。証券会社の取引画面に無料で用意されていることがほとんどで、口座があれば追加費用なしで使えます。
ここで大事なのは、残った銘柄が「買っていい銘柄」ではないという点です。条件に当てはまっただけで、その会社が何を売っていて、なぜ株価がその水準なのかは何も判定していません。スクリーニングの出力は候補リストであって、結論ではありません。
調べる対象を絞るのが目的です。日本の上場企業は数千社あり、全部を見るのは現実的ではありません。条件で20〜50社まで落として、そこから四季報や決算短信を読む——この分業がスクリーニングの使い方です。
最初に設定する4つの条件は何を測っているのか?
設定できる条件は、大きくバリュエーション系(PER・PBR・配当利回りなど)、収益性系(ROE・ROA・EPSなど)、成長性系(売上高成長率・自己資本比率など)、テクニカル系(RSI・MACDなど)に分かれます。最初はバリュエーション系と財務の健全性から入るのが扱いやすく、意味も理解しやすい構成です。
まず4つの指標が何を計算しているかを、式ごと押さえます。式が分かると、条件を緩めたり厳しくしたりする判断が自分でできるようになります。
| 指標 | 計算式 | 読み取れること |
|---|---|---|
| PER(株価収益率) | 株価 ÷ EPS(1株当たり純利益) | 株価が1年分の利益の何倍か。低いほど利益に対して割安と解釈される |
| PBR(株価純資産倍率) | 株価 ÷ BPS(1株当たり純資産) | 株価が1株あたりの純資産の何倍か。1倍が解散価値の目安とされる |
| 配当利回り | 1株当たり配当金 ÷ 株価 | 株価に対して1年でいくら配当が受け取れるかの割合 |
| 自己資本比率 | 純資産 ÷ 総資産 × 100 | 資産のうち返済不要の資本が占める割合。財務の余裕度 |
松井証券ほか各社の公表資料をもとに作成
PBRだけは計算が3段階になります。会社全体の純資産を発行済株式数で割って1株あたりの純資産(BPS)を出し、株価をそのBPSで割る、という順序です。「株価が、その会社の持ち物の何倍で買われているか」を見ている、と考えると分かりやすくなります。
自己資本比率については、目安として40%以上なら財務健全性が高い、20%未満は注意が必要とされる傾向があります。ただし適正水準は業種で大きく変わります。多額の借入を前提に事業を回す業種では、低いこと自体が異常とは限りません。
実際の画面ではどう操作するのか?
ここではSBI証券の銘柄スクリーニングを例に手順を示します。他のネット証券にも同等の機能があり、指標の名前と設定の考え方は共通なので、別の会社の口座でもほぼそのまま読み替えられます。
- 機能を開くログイン後、「国内株式」メニューから「銘柄スクリーニング」を選びます。
- タブの構成を把握する画面には「データ詳細」タブと「スクリーニングマニュアル」タブがあります。自己資本比率や配当性向といった財務系の条件は「財務条件」タブから設定します。
- 条件を1つだけ入れるまずPERだけを入力します。この時点で該当銘柄数がリアルタイムに表示されるので、その数を控えておきます。
- 2つ目を足して数の変化を見る次にPBRを追加し、銘柄数がどれだけ減ったかを確認します。減り方が急なら、その条件が絞り込みの主役になっているということです。
- 目標の件数まで調整する20〜50件くらいを目安に、条件の上限・下限を緩めたり締めたりして調整します。
- 結果を保存して寝かせる出た銘柄をすぐ売買せず、リストとして残し、決算資料を読む対象にします。
この手順の肝は3番と4番で「1つずつ足して数を見る」ところです。条件を4つ同時に入れて0件になると、どれが効きすぎたのか分かりません。1つずつ足せば、犯人がその場で分かります。
演習:条件を1つずつ足して絞ってみる
実際に手を動かす流れを、緩めの条件から始める形で追ってみます。初心者向けの入り口としては「PER 5〜20倍」「PBR 0.5〜2倍」「配当利回り1%以上」から始め、極端な割高・割安を外して真ん中の価格帯を見る組み方が紹介されています。
- ステップ1:PER 5倍以上20倍以下 → 件数をメモ
- ステップ2:PBR 0.5倍以上2倍以下を追加 → 件数をメモ
- ステップ3:配当利回り1%以上を追加 → 件数をメモ
- ステップ4:自己資本比率40%以上を追加 → 件数をメモ
4つのメモを並べると、自分の条件のどこが厳しいのかが数字で見えます。たとえばステップ3で件数が半分以下に落ちたなら、配当利回りの条件が実質的な主フィルターになっているということです。無配の成長企業を最初から全部落としていることになるので、それが意図通りかを確認する必要があります。
PERの下限を5倍で切っている点にも意味があります。PERが極端に低い銘柄は「割安で放置されている」のではなく、一時的な特別利益で利益が膨らんでいたり、市場が業績の落ち込みを織り込んでいたりすることがあるためです。下限を設けるのは、数字だけが良く見える銘柄を先に外しておく作業です。
切り捨てた側を意識できるかどうかが、条件設定の上達の分かれ目になります。スクリーニングは「残したもの」より「落としたもの」の方が数が多い作業です。落とした集団の性質を言葉にできれば、条件を変えるべきかどうかも自分で判断できます。
条件を足しすぎるとどうなるのか?
件数を減らしたい一心で条件を10個も重ねると、該当0件か、極端に偏った数銘柄しか残らなくなります。しかもその数銘柄は、条件を厳しくした結果としてたまたま全項目を満たしただけで、優れているとは限りません。
実務的には次の順で調整すると詰まりにくくなります。
- 条件の数を増やさず、幅を動かすPERを20倍以下から15倍以下へ、といった具合に既存条件の範囲を締めます。
- それでも多いときだけ1つ足す収益性(ROEなど)や成長性(売上高成長率など)から1項目だけ追加します。
- 0件になったら直前の1つを外す最後に足した条件を戻せば、原因の切り分けが済みます。
なお売上高成長率は、一般的には「(当期売上高 − 前期売上高)÷ 前期売上高 × 100」で計算される指標です。伸びている会社を探す条件として使えますが、前期がたまたま落ち込んでいた場合も高い数字になるため、単年だけで判断しないほうが安全です。
テクニカル条件は最初から入れるべきか?
RSIやMACD、ストキャスティクス、DMIといったテクニカル系の条件も設定できます。これらは株価の値動きから、買われすぎ・売られすぎといった状態を数値化した指標です。
ただし最初の絞り込みで混ぜるのはおすすめしません。財務の条件が「どんな会社か」を選ぶのに対し、テクニカルの条件は「いま株価がどの位置にあるか」を選ぶもので、質問が別だからです。両方を同時にかけると、条件を緩めるべき理由が財務側にあるのかタイミング側にあるのか分からなくなります。
まず財務条件で候補リストを作り、その中でタイミングを見る——この二段構えにすると、それぞれの条件が何のためにあるかが崩れません。
条件を通過した銘柄が値上がりする保証はありません。指標はすべて過去または直近の決算数値をもとに計算されており、これから起きることは反映されていないからです。また、業績の急変直後は指標が実態とずれることがあります。決算発表の直後などは、数値が更新されているかを必ず確認してください。数値だけで完結させず、その会社が何で稼いでいるかを自分で読む工程は省けません。
絞ったあとに何を確認すればいいのか?
残った銘柄については、指標が良い理由を1社ずつ言葉にできるかを確認します。PERが低いなら、それは市場が将来の減益を見込んでいるからなのか、単に注目されていないだけなのか。同じ数字でも意味が正反対になります。
- 何を売って利益を出している会社かを、一文で説明できるか
- 直近の決算で売上・利益がどう動いたか
- その指標の数値が、直近の決算を反映した最新のものか
- 同じ業種の他社と比べて、指標が高い/低いのはなぜか
- 自己資本比率の水準が、その業種として普通の範囲か
この5点に答えられない銘柄は、まだ「調べ途中」です。答えられるまで調べるか、リストから外すかのどちらかにしておくと、条件だけで判断してしまう事故を防げます。
そして、条件は一度決めたら固定するものではありません。市場全体の水準は年ごとに動くため、同じPER15倍以下でも該当する銘柄数は変わります。3か月に一度くらい、同じ条件で件数がどう変化したかを見直すと、自分の条件が緩すぎる/厳しすぎるのかに気づけます。
なお、指数の見通しやアナリスト予想を条件設定の前提に置くのは避けたほうが賢明です。それらは特定の時点における予想であって、確定した前提ではありません。相場の方向を当てにいくのではなく、自分が調べられる数まで候補を減らす——スクリーニングはその作業のための道具として使うのが、いちばん壊れにくい使い方です。
投資にあたっての注意:本記事は情報提供を目的とした教育コンテンツであり、特定の銘柄や投資手法を推奨するものではありません。株式投資に元本保証はなく、価格変動により投資元本を割り込む損失が生じる可能性があります。掲載した指標や条件例は将来の運用成果を保証するものではありません。投資は自己責任であり、最終的な投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。
よくある質問
株のスクリーニング条件は何個くらい設定すればいいですか?
最初の絞り込みでは4〜5項目までに抑えるのが扱いやすい構成です。条件を10個以上重ねると該当0件になったり、極端に偏った数銘柄しか残らなくなったりします。件数が多すぎる場合は条件を増やすのではなく、PERを20倍以下から15倍以下にするといった形で既存条件の範囲を締めるほうが調整しやすくなります。
PERとPBRの違いは何ですか?
PERは「株価 ÷ EPS(1株当たり純利益)」で、株価が1年分の利益の何倍かを示します。PBRは「株価 ÷ BPS(1株当たり純資産)」で、株価が1株あたりの純資産の何倍かを示し、1倍が解散価値の目安とされます。PERは利益を基準に、PBRは会社が持つ資産を基準に株価の水準を見ている点が違いです。
スクリーニングで残った銘柄はそのまま買っていいのですか?
スクリーニングの結果は候補リストであり、購入すべき銘柄を示すものではありません。条件に当てはまったという事実だけで、その会社が何で稼いでいるか、指標がその水準になっている理由は判定されていません。残った銘柄については決算短信や四季報を読み、指標が良い(悪い)理由を説明できる状態にしてから判断する必要があります。
自己資本比率は何%以上を条件にすればいいですか?
一般的な目安として40%以上は財務健全性が高い、20%未満は注意が必要とされる傾向があります。ただし適正水準は業種によって大きく異なり、借入を前提に事業を回す業種では低い数値が普通の場合もあります。単一の基準で切るのではなく、同じ業種の他社と比べてどの位置かを確認するほうが実態に合った判断ができます。
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