新NISAの2つの枠、年360万円の使い分け
画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
新NISAのつみたて投資枠は年120万円で、金融庁の基準を満たした投資信託を積立でのみ買えます。成長投資枠は年240万円で、上場株式やETF(証券取引所に上場していて株式のように売買できる投資信託)・REITも対象になり一括購入もできます。両方使えば年最大360万円、生涯1,800万円のうち成長投資枠で使えるのは最大1,200万円までです。
枠が2つあると聞くと、どちらか選ばなければいけないように見えます。ただ実際には新NISAはこの2枠を同時に使える設計で、選ぶというより「どちらにいくら入れるか」を決める話になります。
違いは大きく3つだけです。買える商品、年間の上限額、買い方(積立か一括か)。ここを数字で押さえると、自分の口座画面でどちらを押せばいいかが決まります。
つみたて投資枠と成長投資枠は何が違う?
まず全体像を1枚で見ておきます。新NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2枠で構成され、併用が可能です。
| つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
| 対象商品 | 長期・積立・分散に適した公募株式投資信託(金融庁の基準を満たすもの) | 上場株式・投資信託・ETF・REIT など |
| 買い方 | 積立のみ | 積立と一括(スポット)の両方 |
| 非課税保有期間 | 無期限 | 無期限 |
| 生涯投資枠での扱い | 合計1,800万円のうち全額を使うことも可能 | 合計1,800万円のうち最大1,200万円まで |
金融庁の公表データをもとに作成
上の表で押さえたいのは一番下の行です。生涯投資枠1,800万円は2枠の共通の器で、そのうち成長投資枠として使えるのは1,200万円までという内側の制限がかかっています。逆につみたて投資枠は、1,800万円すべてを埋めることができます。
つみたて投資枠で買えるのはどんな商品?
つみたて投資枠の対象は、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託に限定されています。金融庁が定めた要件——信託報酬(投資信託を持っている間、運用や管理の費用として資産から毎日差し引かれる手数料)が低水準であること、分配頻度が毎月でないこと等——を満たした商品だけが並ぶ仕組みです。
本数は2026年1月15日時点で347本、2026年4月30日時点で353本。国内で売られている投資信託の総数から見ればごく一部で、「候補があらかじめ絞られている棚」がつみたて投資枠だと考えると近いです。
公表されている内訳の類型は3区分です。指数に連動する「指定インデックス投資信託」、それ以外のアクティブ運用等、そしてETF(上場株式投資信託。証券取引所に上場していて、株式と同じように市場でそのまま売買できる投資信託のこと)。商品名を1本ずつ調べる前に、この3区分のどれを見ているのかを確認すると迷いにくくなります。
- 年間上限は120万円
- 買えるのは金融庁の基準を満たした公募株式投資信託のみ(2026年4月30日時点353本)
- 買い方は積立のみ。一括購入はできない
- 金融機関側で月の積立上限を10万円(=120万円÷12ヶ月)に設定していることが多い
成長投資枠は何でも買えるの?
成長投資枠は、上場株式・投資信託・ETF・REIT(不動産投資信託)など幅広い商品が対象です。個別株を買えるのはこちらの枠だけ、という点が一番大きな違いになります。
ただし「上場していれば何でも」ではなく、除外条件があります。整理銘柄・監理銘柄(上場廃止が決まった銘柄、その恐れがあるとして取引所が投資家に注意を促している銘柄)に指定された上場株式、信託期間(その投資信託を運用すると決められている期間。満了すると運用が終わり払い戻される)が20年未満の投資信託、毎月分配型の投資信託、デリバティブ取引(先物やオプションなど、価格の変動そのものを対象にした取引)を用いた一定の投資信託などは対象外です。長く持つ前提から外れる商品が落とされている、と考えると条件の並びが読みやすくなります。
成長投資枠で買える投資信託の一覧は、投資信託協会のウェブサイトで公表されています。証券会社の画面で「成長投資枠で買えます」と表示されていても、原典で確かめられる場所があることは知っておくと安心です。
成長投資枠のほうが年間上限が大きく、買える商品も多いため、上位の枠のように見えることがあります。ただし対象が広いということは、値動きの幅が大きい商品も選べるということです。非課税になるのは利益が出た場合の話で、損失が出れば非課税の恩恵はありません。通常の課税口座なら、ある取引の損失を別の取引の利益と相殺して税金を減らせます(損益通算)が、NISA口座の損失はこの相殺に使えません。枠の広さと自分に合うかどうかは別の話として扱ってください。
年間360万円の枠はどう組み合わせる?
2枠は併用できるので、年間の投資額は最大360万円(120万円+240万円)になります。実際の埋め方を、上限額から計算した例で見ていきます。
- 例1:積立だけで進めるつみたて投資枠で毎月3万円ずつ積み立てると年36万円。上限120万円の範囲内なので、成長投資枠を使わなくても制度としては何も問題ありません。
- 例2:積立を上限まで使い、さらに個別株も買うつみたて投資枠を毎月10万円(年120万円=上限いっぱい)にしたうえで、成長投資枠で年150万円分の個別株やETFを購入。合計270万円で、年間上限360万円・成長投資枠の上限240万円のどちらの範囲にも収まります。
- 例3:生涯投資枠の埋まり方を確認する生涯投資枠1,800万円のうち、成長投資枠だけで積み上げられるのは1,200万円まで。残る600万円分はつみたて投資枠での積立が必要になります。個別株中心で進めるつもりでも、最後は積立側を使うことになる計算です。
ここまでの数値は、公式に定められた上限額(120万円・240万円・360万円・1,800万円・1,200万円)を使った計算例です。将来の運用成果を示すものではありません。
結局どちらの枠から使えばいい?
判断材料になるのは「買い方」の違いです。つみたて投資枠は積立のみで、一括購入という選択肢がそもそもありません。毎月一定額を自動で入れていく形が前提になっています。
一方の成長投資枠は積立と一括の両方が使えます。つまり買うタイミングを自分で決める余地があるのは成長投資枠だけです。タイミングを判断する材料や時間を持てるかどうかが、この枠を使うかの分かれ目になります。
もう一つの材料は、買いたい商品がどちらの棚にあるかです。個別株やREITを持ちたいなら成長投資枠しか選べません。逆に、金融庁の基準で絞られた投資信託を毎月積み立てたいなら、つみたて投資枠がそのための枠です。枠から選ぶのではなく、買いたいものと買い方から枠が決まる——順番はこちらのほうが迷いません。
- 買いたい商品は、個別株・REITを含むか(含むなら成長投資枠)
- 買い方は毎月自動か、タイミングを自分で決めるか
- 年内に入れられる金額は、120万円・240万円のどちらの上限に触れるか
枠を使うときに気をつけたいこと
非課税保有期間はどちらの枠も無期限です。期限に追われて売買を決める必要はありません。ただし、枠の広さや上限額は「いくらまで入れられるか」を決めるだけで、入れた資金が増えることを保証するものではない点は分けて考える必要があります。
相場の見通しについても同様です。指数の予想やアナリストの見方が紹介されることはありますが、それらは予想であって前提ではなく、いつ時点の見方かによっても内容が変わります。枠の使い分けは制度のルールの話で、相場観と混ぜないほうが判断がぶれません。
投資は自己責任です。元本は保証されておらず、購入した商品の価格変動により損失が生じる可能性があります。本記事は制度のしくみを整理した教育目的の内容で、特定の商品の購入を勧めるものではありません。実際の商品選びや金額の判断はご自身でお願いします。
よくある質問
つみたて投資枠と成長投資枠は同時に使えますか?
同時に使えます。新NISAは2枠の併用が可能で、年間投資枠はつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円の合計最大360万円です。
成長投資枠だけで生涯投資枠1,800万円を埋められますか?
埋められません。非課税保有限度額1,800万円のうち成長投資枠で使えるのは最大1,200万円までで、残りの600万円分はつみたて投資枠を使う必要があります。逆に、つみたて投資枠だけで1,800万円全額を使うことは可能です。
つみたて投資枠で個別株は買えますか?
買えません。つみたて投資枠の対象は、金融庁が定める基準を満たした長期・積立・分散投資向けの公募株式投資信託に限定されています(2026年4月30日時点で353本)。上場株式やREITを買えるのは成長投資枠です。
つみたて投資枠で一括購入はできますか?
できません。つみたて投資枠は積立投資のみで、金融機関によっては月々の積立上限が10万円(年120万円÷12ヶ月)に設定されています。積立と一括の両方が使えるのは成長投資枠です。
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