IPOの抽選方式、証券会社で当たりやすさはどう違う?
画像出典: ぱくたそ (PAKUTASO)
IPOの抽選は証券会社ごとに方式が異なり、1口座1票の完全平等抽選、落選回数がポイントとして蓄積される方式、申込株数が多いほど確率が上がる口数比例抽選、口座開設時期や預かり資産で優先度が変わる優遇枠に分かれます。資金量や申込を続けられる期間によって有利な方式が変わるため、同じ条件で申し込み続けるより、性質の違う方式を複数組み合わせるのが基本の考え方です。
IPO(新規公開株、企業が証券取引所に上場して株を一般に売り出すこと)の抽選は、申し込めば誰でも同じ確率になる仕組みではありません。同じ銘柄に同じ100株で申し込んでも、どの証券会社から申し込んだかで当選確率の決まり方そのものが違います。
正直なところ、方式を知らずに申し込み続けると、自分の資金量や申込スタイルに一番不利な方式ばかりを使っている、ということが起こります。まずは方式が何種類あるのかを押さえてから、口座の組み合わせを考えれば十分です。
そもそもIPO株はどう配られるのか?
IPO株は、上場を取り仕切る「主幹事証券」がまず大きな割当を受け取ります。主幹事証券には全割当数の7〜9割程度が配分されることが多く、主幹事を務める機会の多い証券会社ほど、個人投資家に回る当選枠も多くなる傾向があります。
つまり当選確率は「抽選のやり方」と「そもそも何株持っている会社か」の二段構えで決まります。前者は方式の違い、後者は引受実績の違いです。大和証券は主幹事実績が業界上位(1〜2位を争う水準)とされており、こうした総合証券は方式が厳しめでも扱う株数そのものが多くなります。
違いは大きく4つのタイプに分かれます。以下はその4つを順に見ていきます。
完全平等抽選とは?資金が少なくても確率が同じ方式
完全平等抽選は、申込1口座につき1票だけが与えられ、申込株数や取引実績に関係なく同じ確率で抽選される方式です。コンピューターの無作為抽選や自然乱数で当選者を決めます。
マネックス証券は、割当られたIPO株のほぼ100%をネット抽選に回し、1口座1票の無作為抽選で配分すると説明しています。申込株数が100株でも5万株でも当選確率は変わりません。2024年のIPO取扱数は54銘柄でした。
松井証券は配分予定数量の70%以上を完全平等抽選(自然乱数使用)で決めています。こちらは事前入金が不要で、当選してから入金すればよい方式です。抽選・購入手数料も無料とされています。手元資金が少なくても申込回数だけは確保できるのが、この方式の実務上の強みです。
三菱UFJ eスマート証券(旧auカブコム証券)も1人1票の完全平等抽選を採用していますが、完全平等抽選に回る割合は10%で、事前入金が必要です。同じ「完全平等」でも、全体のどれだけがその枠に回るかで期待値は変わります。
落選が積み上がる方式とは?チャレンジポイントの仕組み
SBI証券は、配分予定数量のうち60%が抽選、30%が「IPOチャレンジポイント」枠、10%が裁量配分という構成です。
IPOチャレンジポイントは落選1回につき1ポイントが付与され、申込時にポイントを使うと、申込ポイント数の多い人から順に配分される仕組みです。つまり外れた回数が将来の優先順位に変換されます。ポイントを使い切らずに貯め続ければ、理論上はどのIPOにも当選できる仕組みとされています。
この方式は「貯める期間」を前提にしています。少ないポイントで使ってしまえば上位の申込者に抜かれて消費だけが残るため、数ヶ月で結果を出したい人や、落選が続くこと自体が負担になる人には合いません。何年単位で申し込み続けられる人向けの仕組みです。
SBI証券の2024年のIPO取扱数は76銘柄(ネット証券トップクラス)、主幹事実績は年間11社です。抽選枠60%だけを見ても扱う銘柄数が多いため、ポイント戦略をとらず通常抽選だけ使う形でも申込機会は確保できます。
口数比例抽選とは?申込株数が確率に直結する方式
楽天証券は100%抽選方式ですが、中身は「口数比例抽選」です。申込株数に応じて複数の抽選番号(乱数)が付与されるため、申込株数が多いほど当選確率が上がります。楽天証券の公式サイトには、取引実績や預かり資産の多寡に関係なく当選確率は平等との記載もあります。これは申込株数以外の要素では差がつかない、という意味です。
この方式は、資金に余裕があって1銘柄に多めの株数を申し込める人に向きます。逆に最低単元での申込を続ける人にとっては、完全平等抽選より不利になります。なお2025年12月に申込フローが改定され、それ以降は抽選倍率の公表が行われなくなったとされています。
大和証券は、個人向け販売予定数量の10%を目処に機械的抽選(完全平等)を実施する「新規公開株式抽選参加サービス」を設けており、残りは抽選によらない配分です。抽選枠は限られますが、主幹事実績が多いぶん母数となる株数が大きくなります。
優遇枠・ステージ制とは?口座開設時期で変わる方式
SMBC日興証券は2019年2月25日にステージ制を導入しています。平等抽選で落選した申込分を対象に、別枠で最大5%のIPO配分を行う2回目抽選があり、新規口座開設者や預かり資産が多い人ほどステージが上がり当たりやすくなります。
ただし条件があります。預り資産や信用取引建玉が250万円未満、または口座開設から3ヵ月以上経過した人は、この2回目抽選に参加できません。開設直後の3ヵ月は優遇されるが、そのあとは預かり資産の条件を満たさないと枠から外れる、という構造です。
各社の抽選方式を比較すると?
| 証券会社 | 抽選方式の特徴 | 完全平等抽選の比率(目安) | 事前入金 |
|---|---|---|---|
| マネックス証券 | ほぼ全量を1口座1票の完全平等抽選 | ほぼ100% | 必要 |
| 松井証券 | 完全平等抽選中心、事前入金不要 | 70%以上 | 不要(当選後入金) |
| SBI証券 | 抽選+IPOチャレンジポイント(落選1回で1pt蓄積)+裁量配分 | 60%(残り30%チャレンジポイント・10%裁量) | 必要 |
| 楽天証券 | 口数比例抽選(申込株数が多いほど当選確率上昇) | 100%抽選だが口数比例 | 必要 |
| SMBC日興証券 | 平等抽選+落選分対象のステージ制2回目抽選(最大5%枠) | 記載なし(一部+ステージ制優遇枠5%) | 必要 |
| 三菱UFJ eスマート証券(旧auカブコム証券) | 1人1票の完全平等抽選 | 10% | 必要 |
| 大和証券 | 新規公開株式抽選参加サービス(機械的抽選)+裁量配分 | 10%目処 | 必要 |
IPO株ドットネットなど複数のIPO比較サイトの集約情報をもとに作成(2026年11月時点)
上の表を資金の制約という軸で読むと、整理はこうなります。手元資金が限られていて申込回数で勝負するなら、事前入金が不要な松井証券と、ほぼ全量が1口座1票のマネックス証券が条件に合います。1銘柄に多めの株数を入れられるなら、口数比例抽選の楽天証券は株数がそのまま確率に反映されます。何年も申し込み続ける前提なら、SBI証券のチャレンジポイントは落選を資産に変えられる唯一の方式です。口座を新しく開くタイミングなら、SMBC日興証券の開設3ヵ月以内という条件を使える期間があります。
口座はどう使い分ければいいのか?
方式の性質が違うということは、1社に集中するほど「その会社の弱点」をそのまま背負うことになります。複数のタイプを組み合わせて申し込むのが当選確率を上げる基本戦略だという整理は、複数のIPO比較情報で共通して示されています。
- 資金の制約を確認する1銘柄あたりいくら拘束できるかを先に決めます。事前入金が必要な会社に同時申込すると、その合計額が同時に拘束されます。
- 完全平等型を軸に置く最低単元中心の申込なら、完全平等抽選の比率が高い会社を主軸にします。松井証券は事前入金が不要なので、資金拘束なしで枠を1つ増やせます。
- 長期戦用の口座を1つ作るSBI証券は、ポイントを使わず貯める口座として扱います。当たらない期間が蓄積になる前提なので、途中で消費しない運用を決めておきます。
- 開設直後の優遇枠を取りこぼさないSMBC日興証券の2回目抽選は開設から3ヵ月以内で、預り資産などの条件があります。開設時期と入金計画を合わせます。
- 各社の公式ページで比率を確認する抽選比率や優遇条件は時期により変更されます。申込前に各社のIPOページで現在の条件を確認します。
- その会社の完全平等抽選の比率はどれくらいか
- 事前入金が必要か、当選後入金でよいか
- 申込株数が確率に影響する方式か
- ポイントや優遇枠に参加条件・期限があるか
- その銘柄でその会社が主幹事か、幹事の一社か
方式を知っても外れ続けるのはなぜ?
完全平等抽選は「誰でも同じ確率」ですが、同じ確率が高い確率を意味するわけではありません。人気銘柄では申込者数が割当株数を大きく上回るため、方式が平等であっても個々の当選確率は低いままです。方式の選択でできるのは、確率を上げることではなく、自分の条件で不利にならない方式を選ぶことです。
また、抽選倍率が公表されない会社もあります。楽天証券は2025年12月の申込フロー改定以降、抽選倍率の公表を行わなくなったとされています。倍率が見えない場合、申込者の多寡を事前に把握して判断することはできません。
抽選比率や優遇条件の数値は、各社が常時すべてを同じ粒度で公表しているわけではありません。SMBC日興証券の完全平等抽選の比率も公表されていません。数値の比較だけで最適な1社を決めきることはできないため、方式のタイプを分散させるという考え方になります。
上場後の売却までは別の話
当選は入口で、公開価格で買った株をどうするかは別の判断です。IPOは公開価格を上回って初値が付くことも下回ることもあり、当選したこと自体が利益を意味しません。抽選方式の比較は「申し込む機会を確保する」ための話であり、銘柄の良し悪しや売買の判断とは切り離して考える必要があります。
投資は自己責任であり、元本は保証されません。IPO株も上場後に公開価格を下回る可能性があります。本記事は抽選制度のしくみを整理した教育目的の内容で、特定の銘柄や証券会社の購入・利用を推奨するものではありません。抽選比率や優遇条件は変更される場合があるため、申込前に各社の公式サイトで最新の条件を確認してください。
よくある質問
IPOの完全平等抽選と口数比例抽選はどう違いますか?
完全平等抽選は申込1口座につき1票で、申込株数や取引実績に関係なく同じ確率で抽選されます。口数比例抽選は申込株数に応じて複数の抽選番号が付与されるため、申込株数が多いほど当選確率が上がります。マネックス証券や松井証券は完全平等抽選中心、楽天証券は口数比例抽選です。
SBI証券のIPOチャレンジポイントはどういう仕組みですか?
IPOチャレンジポイントは落選1回につき1ポイントが付与される仕組みで、申込時にポイントを使用すると申込ポイント数の多い人から順に配分されます。SBI証券の配分予定数量のうち30%がこのポイント枠です。ポイントを使い切らず貯め続ければ、理論上はどのIPOにも当選できる仕組みとされています。
IPOの申込に事前入金が不要な証券会社はありますか?
松井証券は事前入金が不要で、当選後に入金すればよい方式です。配分予定数量の70%以上を完全平等抽選(自然乱数使用)で決定し、抽選・購入手数料は無料とされています。マネックス証券、SBI証券、楽天証券などは事前入金が必要です。
IPOの当選確率を上げるには複数の証券会社に口座が必要ですか?
証券会社ごとに抽選方式が異なるため、完全平等抽選型・チャレンジポイント型・優遇枠型・主幹事実績の多い総合証券を組み合わせて複数口座で申し込むのが基本戦略だと、複数のIPO比較情報で共通して示されています。ただし事前入金が必要な会社に同時申込すると、その合計額の資金が同時に拘束されます。
※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。