IPO抽選の申し込み、当選までの5つの手順
画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
IPOは「仮条件の決定→ブックビルディング(需要申告)→抽選→当選時の購入意思表示→上場・初値」の5段階で進みます。抽選方式は証券会社ごとに異なり、1人1票の完全平等抽選を採用する会社もあれば、購入申込を抽選前に済ませる会社もあります。当選は利益確定を意味せず、2025年に国内上場した65社のうち10社は初値が公開価格を下回りました。
IPO(新規公開株)の手続きは、株を市場で買うときの「注文して約定」とは形がまったく違います。申し込んだ瞬間に買えるのではなく、希望を申告して、抽選を待って、当たってから改めて買うと意思表示する——という多段階の流れになっているためです。
正直なところ、初めての人がつまずくのは難しさではなく順番です。どの段階で何が確定して、どこに締切があるのかさえ掴めれば、あとは画面の案内に沿って進むだけになります。ここでは公開されている手続きの事実に沿って、5つの段階を順番に見ていきます。
IPOの申し込みは全体でどう進む?
まず全体像です。IPO(Initial Public Offering=企業が株式を証券取引所に上場して、広く投資家が売買できるようにすること)の申し込みは、次の順番で進みます。
- 仮条件の決定上場予定企業と主幹事証券会社(その上場案件の中心となる証券会社で、価格の決定や株の配分を主導します)が、公開価格の目安となる価格帯(仮条件)を決めて公表します。
- ブックビルディング(需要申告)に参加投資家が、仮条件の範囲内で「何株を、いくらで買いたいか」を申告します。ここが実質的な「申し込み」です。
- 公開価格の決定と抽選申告の結果を踏まえて公開価格(発行価格)が決まります。発行株式数より申込株式数が多い場合は抽選になります。
- 購入意思表示当選、または補欠当選(当選者に辞退が出た場合に繰り上がる候補のこと)となった人が、期限内に「購入する」か「辞退する」かを表明します。
- 上場・初値取引所に上場し、最初に売買が成立した価格=初値が付きます。
この5段階のうち、投資家が能動的に手を動かすのは2つ目(ブックビルディング)と4つ目(購入意思表示)です。どちらにも締切があり、どちらかを逃すと権利は消えます。
ブックビルディングでは何を入力するの?
ブックビルディングは、投資家が仮条件の範囲内で希望する株数と希望価格を申告する手続きです。この申告結果を踏まえて、上場予定企業と主幹事証券会社が最終的な公開価格(発行価格)を決めます。つまり投資家の申告そのものが、価格決定の材料になっているという構造です。
入力するのは基本的に次の3点です。
- 申告する株数(100株単位が基本)
- 希望価格(仮条件の範囲内。多くの証券会社に「上限価格でよい」を選ぶ入力欄があります)
- 買付余力の確保(会社によって申告時点で資金拘束があるかが異なります)
価格の指定に迷ったときの考え方はシンプルです。仮条件の上限より低い価格で申告すると、公開価格がそれより上で決まった場合に抽選の対象から外れます。そのため実務上は上限価格で申告するのが一般的です。ただしこれは「上限なら得だから」ではなく、単に抽選に参加する条件を満たすための操作である点は押さえておいてください。
抽選の当たりやすさは証券会社で変わる?
変わります。ここがIPOで最も見落とされやすいところです。抽選方式は証券会社によって異なり、大きく「資金力や取引実績に応じた優遇枠がある通常抽選」と「1人1票の完全平等抽選」に分かれます。
公表されている例を挙げると、マネックス証券は抽選に回す株式の100%を1人1票の完全平等抽選で配分しており、資金力・取引実績は一切関係ないとしています。SMBC日興証券も抽選権利が1人1票制です。DMM株は「100%完全平等抽選」、楽天証券はコンピューターによる完全抽選方式を採用しています。完全平等抽選を採用する証券会社では、一部の例外を除き、申込株数にかかわらず当選は100株単位になります。
| 資金量が多いと有利か | 通常抽選(優遇枠あり)の会社では影響しうる/完全平等抽選の会社では影響しない |
|---|---|
| 複数株を申し込む意味 | 完全平等抽選では当選は原則100株単位のため、株数を増やしても当選数は増えない |
| 口座を分ける意味 | 1人1票制のため、参加できる証券会社の数が申込口数に直結する |
上の表のうち、申込画面での判断に直結するのは2行目です。完全平等抽選の会社で500株を申し込んでも、当選するときの株数は原則100株で、株数を増やしたぶん当選数が増えるわけではありません。当選の口数を増やしたいなら、同じ口座で株数を積むのではなく、参加する証券会社を増やすほうが理にかなっています。
もうひとつ、証券会社には役割の違いもあります。主幹事証券は公開価格の決定とブックビルディングを主導し、配分される株数も多くなります。引受幹事証券・委託幹事証券は販売が中心の役割です。複数の証券会社、特に主幹事からブックビルディングに参加することで、当選のチャンスは広がります。
当選したら次は何をすればいい?
当選しただけでは購入は成立しません。多くの証券会社では、当選(補欠当選を含む)のあとに投資家自身が「購入する」か「辞退する」かを期限内に表明する必要があります。ここを放置すると、当選していても購入されずに終わります。
たとえばSBI証券は「抽選→当選(補欠当選を含む)→期限内にWEBサイトで購入または辞退の意思表示(受付は1回のみ)」という流れで、当選後に辞退してもペナルティはないとしています。
一方で、手続きの順番そのものが違う会社もあります。楽天証券は他社と異なり購入申込を抽選の前に行う方式で、抽選後のキャンセルができません。「当たってから考える」が通用しない設計ということです。
「意思表示の期限はいつか」「辞退にペナルティはあるか」「購入申込は抽選の前か後か」は会社ごとに異なります。他の人の体験談やIPO全般の解説をそのまま自分の口座に当てはめると、締切を逃したり、辞退できない申込をしてしまったりします。参加する前に、その証券会社のIPOルールのページを一度読んでおいてください。
当選=利益になるとは限らないって本当?
本当です。IPOは「当選すれば公開価格より高い初値で売れる」というイメージで語られがちですが、初値が公開価格を下回る、いわゆる公開価格割れ(初値割れ)は毎年一定数発生しています。直近の実績は次のとおりです。
| 2025年の新規上場社数 | 65社 |
|---|---|
| 初値が公開価格を上回った社数 | 53社(81%) |
| 初値が公開価格を下回った社数 | 10社 |
| 参考:2024年の公開価格割れ | 19社 |
IPO-WINの公表データをもとに作成(2025年通年)
割合にすると、2025年は約15%(10/65社)で公開価格割れが起きた計算になります。公開価格割れの社数は2024年の19社から減ってはいますが、ゼロにはなりません。当選した銘柄がその15%側に入る可能性は、申し込む前から織り込んでおく必要があります。2025年については、公開規模が大きめのファンド出口案件や吸収金額が大きい銘柄、地味な業種で初値が伸びにくい傾向が見られ、銘柄によって明暗が分かれた年だったとされています。
なお、これらはあくまで過去の実績です。年ごとの数字は市場環境によって動くもので、将来の初値の傾向を保証するものではありません。「去年は81%が上回った」を「今回も上回るはず」と読み替えないことが、IPOで最も大事な線引きです。
初めての1銘柄を試すまでの動き方
ここまでを、実際の行動に落とすとこうなります。
- 参加する証券口座のIPOルールを読む抽選方式(完全平等か優遇枠ありか)、購入申込のタイミング、辞退時の扱いを確認します。
- 仮条件の発表を待つブックビルディング期間は数日しかないため、開始日と終了日をカレンダーに入れておきます。
- ブックビルディングに参加する株数と価格を入力します。買付余力が必要な会社では、期間中に資金を入れておきます。
- 抽選結果を必ず確認する当選・補欠当選の通知を見落とすと、意思表示の期限が過ぎます。
- 当選したら期限内に購入か辞退を選ぶ公開価格と事業内容を見て、納得できなければ辞退という選択も手続き上は用意されています(会社によります)。
ブックビルディング期間中の資金拘束が生活資金に食い込む場合、参加そのものが負担になります。また「当たれば儲かる仕組み」として期待値だけで取り組むと、公開価格割れに当たったときに損切りの判断ができません。企業の事業内容や公開価格の妥当性を自分で確認するつもりがない段階では、無理に急いで参加する必要はありません。
IPOの手続きは複雑に見えますが、覚えるべきは「申告する日」と「意思表示する日」の2つだけです。まずは自分の証券口座のIPOページを開いて、抽選方式と申込の流れがどう書かれているかを読むところから始めてみてください。知ってから参加するかを決めれば十分です。
※本記事は投資の教育・情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や取引を推奨するものではありません。投資は自己責任であり、元本は保証されません。数値や制度の内容は記載時点のもので、最新の情報は各証券会社・取引所の公式情報をご確認ください。
よくある質問
IPOのブックビルディングとは何ですか?
ブックビルディング(需要申告)は、投資家が仮条件の範囲内で希望株数と希望価格を申告する手続きです。この申告結果を踏まえて、上場予定企業と主幹事証券会社(その案件で価格決定と株の配分を主導する証券会社)が最終的な公開価格(発行価格)を決定します。申告した株数の合計が発行株式数を上回った場合は抽選になります。
IPOは資金が多いほど当選しやすいのですか?
証券会社の抽選方式によります。資金力や取引実績に応じた優遇枠を設けている会社では影響しますが、完全平等抽選を採用する会社では影響しません。マネックス証券は抽選に回す株式の100%を1人1票の完全平等抽選で配分し、資金力・取引実績は一切関係ないとしています。SMBC日興証券も抽選権利が1人1票制です。
IPOに当選したあと、辞退することはできますか?
証券会社によって扱いが異なります。SBI証券は当選後に期限内で「購入」または「辞退」の意思表示を行う方式で、辞退してもペナルティはないとしています。一方、楽天証券は購入申込を抽選前に行う方式のため、抽選後のキャンセルはできません。参加前に各社のルールを確認する必要があります。
IPOで当選すれば必ず利益が出ますか?
出るとは限りません。初値が公開価格を下回る「公開価格割れ」は毎年発生しています。2025年に国内取引所へ新規上場した65社のうち、初値が公開価格を上回ったのは53社(81%)で、10社は公開価格を下回りました。当選は購入する権利を得たことを意味するだけで、利益を保証するものではありません。
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