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90分の集中サイクルとは?続かない時の立て直し方

2026年9月7日|いろは堂まなび編集部
室内で男性1人が机に向かい教科書と電卓を使って勉強している様子

画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)

この記事の要点
人の脳は90分前後で覚醒→集中→疲労→回復の波を1周するとされ、この波に合わせて学習セッションを区切ると集中が保ちやすくなります。まず1回のセッションを90分・休憩15〜20分で組み、続かなければ75分+33分、25分+5分へ短くして自分の周期を探すのが実践的です。90分はあくまで目安で、周期には80〜120分程度の個人差があります。
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やる気を出して机に向かったのに、40分くらいで頭がぼんやりして、気づいたらスマホを触ってる…

集中が切れる原因を「意志が弱いから」に置くと、対策が根性論しか残りません。実際にはもうひとつ、見落とされやすい原因があります。集中の持続時間そのものが、自分の脳のリズムと噛み合っていないという可能性です。

正直なところ、「3時間まとめて勉強する」という時間割は、脳の作りから見るとかなり無理があります。人の体には1日の中で数十分〜数時間の周期で繰り返される生理的なリズム(ウルトラディアンリズム)があるとされていて、覚醒度や集中力もその波に乗って上下すると考えられているからです。

この記事で扱うのは、その波に合わせて学習セッションの長さと休憩を設計し直す手順です。時間が細切れの社会人でも、まとまった時間が取れる学生でも、同じ考え方で組めます。

ウルトラディアンリズムとは?なぜ90分なのか

ウルトラディアンリズムとは、約24時間周期の体内時計(サーカディアンリズム)に対して、1日の中でもっと短い周期——数十分から数時間——で繰り返される生理的なリズムを指す言葉です。眠気や体温だけでなく、覚醒度や集中しやすさもこの波に乗って上下すると説明されます。

起源とされるのが、睡眠研究者ナサニエル・クライトマンが1960年代初頭に提唱した「基本安静-活動周期(BRAC)」です。クライトマンは、睡眠が「浅い眠り→深い眠り→レム睡眠→浅い眠り」という約90分のサイクルを繰り返すことを発見しました。この90分の波は眠っている間だけでなく、起きている間も続いているのではないか——というのが、90分サイクルという考え方の出発点です。

覚醒中についても、脳波(EEG)で約90分周期の覚醒度の変動があるとされ、瞳孔の大きさの変動を追った研究では約75〜125分周期の安定性の波が確認されています。

「90分」は法則ではなく目安です

周期がぴったり90分だという主張は、大規模な査読研究で確定した結論ではありません。クライトマンの睡眠研究や、少数の脳波・瞳孔研究からの外挿・一般化として広まった数字です。個人差については80〜120分程度の幅があるという指摘もあります。ですから90分は「守るべき法則」ではなく、自分の周期を探すときの出発点となる仮説として扱うのが安全です。

90分を超えて勉強しない人たちがいる

90分という区切りを裏づける手がかりが、熟達研究の分野にあります。エリクソンらが1993年に発表した「熟達的練習(deliberate practice)」の研究では、音楽家・アスリート・チェスプレイヤーといった各分野のトップ実践者たちの練習の中身が調べられました。

報告されているのは、意外な事実です。彼らは90分を超える練習セッションをほとんど行っておらず、そうしたセッションは1日に3〜4回程度にとどまっていました。世界的なバイオリニストの多くが練習を90分単位で区切り、1日の総練習時間を4時間半以内に収めているという事例も紹介されています。

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トップレベルの人ほど、もっと長時間ぶっ通しで練習してるものだと思ってた

長時間の練習と高い成果は、必ずしも比例しません。ここから読み取れるのは、集中の質を保てる長さには上限があり、その上限を超えて延ばしても密度が落ちるだけ、という考え方です。1日8時間机に向かっても身につかない一方で、90分×3回のほうが結果につながることがあるのは、この密度の差で説明できます。

実際のところ、何分作業して何分休むのがいいのか

90分以外の数字も知っておくと、自分に合う長さを探しやすくなります。タイムトラッキングツールを提供するDeskTime社は、自社ツールの利用データから「生産性の高いユーザーがどんなサイクルで働いているか」を継続的に分析しています。その数字が、時期によって変化しているのが面白いところです。

時期作業時間休憩時間備考
2014年(元データ)52分17分生産性上位10%のユーザー平均
コロナ禍リモートワーク期112分26分作業を1.5倍長く、休憩を1.3倍短く
2024年(最新データ、サンプル約6,000人)75分33分オフィス・ハイブリッド勤務がより健全な比率を促すと分析

DeskTimeの公表データをもとに作成

上の表で注目したいのは、休憩時間のほうです。2014年に広まった「52分作業+17分休憩」から、最新の2024年データでは作業75分に対して休憩33分まで休憩が伸びています。作業と休憩の比率でいえば、およそ3:1から2:1に近づいた形です。

なお、これは同社のツール利用データに基づく企業発表であって、学術的な査読研究ではありません。ただ「休憩は5分で十分」という感覚が、実際に成果を出している人たちの働き方とはずれている、という手がかりにはなります。

90分とポモドーロ、どちらを選べばいい?

短いサイクルの代表がポモドーロ・テクニックです。イタリアの起業家フランチェスコ・シリロ氏が考案した時間管理術で、学生時代に「10分間集中して勉強できるか」と自分に問いかけたことがきっかけでした。試行錯誤の末にたどり着いたのが25分という長さです。名前はイタリア語でトマトを意味する「pomodoro」から来ていて、当時使っていたトマト型のキッチンタイマーが由来になっています。

基本ルールは「25分作業+5分休憩」を1セットとし、4セット終えるごとに15〜30分の長めの休憩を取る、というものです。

90分サイクルとの使い分けは、扱う教材の性質で決めるとうまくいきます。

90分サイクルが向く学習
  • 簿記の総合問題や過去問1回分など、途中で止めると流れが切れるもの
  • プログラミングの写経・実装課題(環境を立ち上げて頭に載せ直すコストが高い)
  • 長文読解、論述の練習、専門書の読み込み
ポモドーロ(25分)が向く学習
  • 単語・仕訳・用語の暗記など、細かく区切れるもの
  • そもそも机に向かうのが億劫で、着手のハードルを下げたいとき
  • 通勤前や寝る前など、そもそも30分しか確保できない枠

両方を1日の中で混ぜて構いません。時間が取れる日は90分、取れない日はポモドーロと切り替えるほうが、毎日同じ型に押し込むより続きます。

自分に合う周期はどう見つける?

90分が自分に合うかは、やってみないとわかりません。1週間かけて探る手順にします。

  1. まず90分で1回だけ試すタイマーを90分にセットして学習を始めます。終わりの時刻をあらかじめ決めておくのが大事で、「疲れたら終わる」にすると波の位置がわからなくなります。
  2. 集中が切れた時刻をメモする「今、頭が働かなくなった」と感じた瞬間の経過時間を書き留めます。45分か、70分か、最後まで持ったか。これが自分の周期の手がかりになります。
  3. 3日分の記録から自分の長さを決める3回とも50分前後で切れているなら、あなたの周期は90分より短いということです。次の週は「50分作業+15分休憩」を基本単位にします。逆に90分でまだ余力があるなら、100分まで伸ばして試します。
  4. 休憩の長さを作業時間の3分の1から始める作業75分なら休憩25〜33分、作業90分なら休憩30分前後。長すぎると感じたら削りますが、5分スタートにはしないでください。回復しきらないまま次のセッションに入ると、2回目以降の密度が落ちます。

記録は紙のメモでもスマホのメモアプリでも構いません。3日分あれば傾向は見えます。

休憩には何をすればいい?

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休憩でSNSを見てたら、戻ってきたときのほうが疲れてる気がする

休憩の中身は、長さと同じくらい結果を左右します。実践系の解説で共通して勧められているのは、受け身でない回復行動を挟むことです。具体的には次のようなものが挙げられます。

セッション間に挟む回復行動
  • 軽い運動(立ち上がって歩く、ストレッチ、階段の上り下り)
  • 水分補給
  • 20分以内の仮眠
  • 窓の外を見る、外に出る(画面から目を離す)

スマホでSNSや動画を見るのが避けられるのは、情報処理を続けている点で脳の使い方が学習と近いからです。目と注意を使い続けている以上、休んだことになりません。仮眠は20分以内という上限は守ってください。それを超えると深い睡眠に入り、起きたあとしばらく頭が働かなくなります。

使える時間が少ない日・多い日はどう組み替える?

1日に確保できる時間の総量で、サイクルの組み方は変わります。

1日1〜2時間しか取れない場合(働きながら学ぶ人など)

90分を1回、これで十分です。むしろ90分を「1日の本番」として最優先で確保し、それ以外の細切れ時間は暗記など軽い作業に回します。平日に90分が取れないなら、平日はポモドーロ2セット、休日に90分×2回という組み方でも成立します。

1日4時間以上取れる場合(長期休暇中の学生、学習に専念できる時期など)

ここで気をつけたいのが、時間があるぶん「1日8時間」といった計画を立ててしまうことです。前述のトップ実践者たちが1日3〜4セッションにとどめていた事実を思い出してください。90分×3〜4回=4時間半〜6時間が、密度を保てる現実的な上限と考えるほうが結果につながります。余った時間は復習や整理、あるいは休息に使ったほうが、翌日のセッションの質が上がります。

この方法が向かないケースもあります

90分を確保できる環境がそもそもない人——小さな子どもがいる、業務中の細切れ時間しか使えない——が無理に90分を目指すと、「今日も確保できなかった」という失敗の記録だけが積み上がります。その場合はポモドーロを基本にして、90分は月に数回の「取れた日のボーナス」と位置づけてください。また、資格試験の直前期など、演習1回分の所要時間が決まっている場面では、周期よりも試験の時間割に合わせるほうが優先されます。

今日から始めるなら

難しく考える必要はありません。次に机に向かうとき、タイマーを90分にセットして、終わったら20分ちゃんと離れる。それだけで自分の波の位置がわかります。

集中が切れるのは意志の問題ではなく、時間割の設計の問題かもしれない——そう考え直せるだけで、勉強への向き合い方はずいぶん軽くなります。

よくある質問

集中力の90分サイクルとは何ですか?

人の体には1日の中で数十分〜数時間の周期で繰り返される生理的リズム(ウルトラディアンリズム)があり、覚醒度や集中力も約90分の波で上下するという考え方です。起源は睡眠研究者ナサニエル・クライトマンが1960年代初頭に提唱した「基本安静-活動周期(BRAC)」で、睡眠中の約90分サイクルが覚醒中も続いているという仮説に基づいています。ただし正確に90分と確定した大規模な査読研究はなく、80〜120分程度の個人差があるとされます。

学習は何分やって何分休むのが効率的ですか?

タイムトラッキングツールDeskTime社が公表した2024年のデータ(生産性上位10%、サンプル約6,000人)では、最も生産性の高い働き方は75分作業+33分休憩でした。2014年の同社データでは52分作業+17分休憩、コロナ禍のリモートワーク期には112分作業+26分休憩と変化しています。学習に当てはめる場合は、休憩を作業時間の3分の1程度確保するのが目安になります。

90分サイクルとポモドーロ・テクニックはどちらがいいですか?

扱う教材の性質で選び分けます。過去問1回分や実装課題のように途中で止めると流れが切れるものは90分サイクル、単語や仕訳の暗記のように細かく区切れるものや、そもそも30分しか確保できない枠ではポモドーロ(25分作業+5分休憩、4セットごとに15〜30分の長い休憩)が向きます。1日の中で両方を使い分けても問題ありません。

休憩中は何をすればいいですか?

軽い運動(歩く、ストレッチ)、水分補給、20分以内の仮眠、画面から目を離すといった受け身でない回復行動が推奨されています。スマホでSNSや動画を見るのは情報処理を続けている点で学習に近い脳の使い方になるため、回復になりにくいとされます。仮眠は20分を超えると深い睡眠に入り、起きたあと頭が働きにくくなるため上限を守ってください。

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