最低賃金1,177円、社会保険に入るのは週何時間から?
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2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円(前年度比+56円)で、発効日は都道府県ごとに10月〜12月2日へ分かれます。勤務時間を変えなくても時給アップ分だけ年収が押し上げられるため、扶養内で働く人は新しい時給で年収を計算し直すのが先です。2026年10月からは「106万円」という金額基準が撤廃され、社会保険に入るかどうかは実質「週20時間以上かどうか」で決まります。
同じ勤務時間でも、時給が上がれば年収は上がります。2026年度の最低賃金は全国加重平均で1,177円、前年度から56円の引き上げです(2026年9月3日に全都道府県の答申が出そろい、引上げ率4.9%)。
1時間あたり数十円の話ですが、週20時間・年52週で考えると年に数万円単位で効いてきます。正直なところ、扶養の範囲で働いている人ほど、この「自動的な底上げ」に気づかないまま年末を迎えがちです。
10月から12月は、まだシフトを動かせる時間が残っています。まずは新しい時給で計算し直すところから始めれば大丈夫です。
最低賃金はいつからいくら上がる?
まず押さえたいのは、引き上げは10月1日に全国一斉ではないということです。10月発効が37都道府県、11月発効が7府県、12月発効が3県と分かれています。しかも10月発効のうち10月1日ちょうどは15都道府県だけで、残りは10月2日〜30日にばらついています。もっとも遅いのは沖縄県で、2026年12月2日の発効予定です。
金額も地域差があります。主要な都道府県の額と発効予定日は次のとおりです。
| 都道府県 | 最低賃金(時給) | 発効予定日 |
|---|---|---|
| 東京都 | 1,280円 | 2026年10月1日 |
| 神奈川県 | 1,225円 | 2026年10月1日 |
| 大阪府 | 1,231円 | 2026年10月1日 |
| 愛知県 | 1,195円 | 2026年10月1日 |
| 千葉県 | 1,195円 | 答申時点(発効日は各情報源で要確認) |
| 福岡県 | 1,114円 | 2026年10月4日 |
| 宮崎県 | 1,085円 | 全国最低水準(発効日は要確認) |
| 全国加重平均 | 1,177円(前年度比+56円) | 都道府県ごとに10月〜12月2日の間で順次 |
ulsta.jpの公表データをもとに作成(主要都道府県の抜粋。発効日はすべて予定で、異議申出の状況等により変更の可能性があります)
上の表は抜粋なので、自分の住む都道府県の確定額と発効日は厚生労働省の地域別最低賃金の全国一覧で確認してください。なお最低賃金は「その地域で働く人に適用される下限」なので、勤務先の時給がもともと最低賃金より高い場合は、上がり幅が違ったり据え置きだったりします。給与明細か勤務先の通知で、自分の新しい時給を確かめるのが確実です。
106万円の壁がなくなると何が変わる?
2026年10月を目途に、社会保険(厚生年金・健康保険)へ加入する短時間労働者の要件から「賃金要件(月収8.8万円以上、年収106万円相当)」が撤廃されます。2025年6月13日に成立した年金制度改正法によるものです。
撤廃後に残る加入要件は次の3つに整理されます。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が2か月を超える見込み
- 学生ではない
つまり年収がいくらかに関係なく、この3つを満たせば加入義務が発生します。企業規模の要件も段階的に撤廃されるため、勤務先の規模で対象外だった人も順に対象へ入っていきます。厚生労働省は、この改正で新たに約200万人が厚生年金の加入対象になると見込んでいます。
そもそも賃金要件が形骸化していた、という事情もあります。2025年度の時点で全都道府県の最低賃金が1,016円を超えており、週20時間働けば自動的に月8.8万円(年収106万円相当)を上回るからです。2026年10月の引き上げで、この傾向はさらに強まります。
読者にとっての意味はシンプルで、気にする対象が「106万円という金額」から「週20時間という勤務時間」へ移るということです。週19時間45分と週20時間では、年収が同じでも扱いが変わります。契約書の所定労働時間がどうなっているか、ここが分かれ目になります。
130万円の壁はどうなる?
106万円の壁が消えても、130万円の壁は残ります。これは健康保険の被扶養者かどうかを判定する基準で、年収130万円を超えると配偶者の扶養から外れ、国民健康保険・国民年金への切り替えが必要になります。
ただし運用は少しずつ緩んでいます。押さえておきたい変更が2つあります。
- 事業主証明による円滑化(2025年10月1日に恒久化)人手不足による残業などで一時的に年収130万円を超えても、事業主が「一時的な収入増である」と証明すれば、連続で最長2年まで扶養にとどまれます。2023年10月20日から運用されてきた措置が、期限のない制度になりました。
- 契約ベースでの判定(2026年4月〜)判定の見方が「実際の年収実績」から「労働条件通知書等に記載された年収見込み」へ変わります。契約上の年収見込みが130万円未満なら、一時的な残業増で実収入が超えても、すぐに扶養から外れるわけではありません。
この2つは併存する仕組みです。前者は契約の枠を超えた一時的な増収への対応、後者は契約内容そのもので判定するというルールで、位置づけが違います。どちらにしても130万円という基準線自体はなくなりません。契約時間を増やして恒常的に超えるなら、扶養から外れる判断になります。
社会保険に加入すると手取りは一度減りますが、厚生年金に入ることで将来の年金額が増え、傷病手当金など健康保険の給付も受けられるようになります。「壁を超えない」だけが正解ではありません。逆に、働ける時間が限られていて収入増が小さいのに保険料負担だけ発生する働き方になると、手取りが目減りしたまま戻りにくくなります。どちらが自分の世帯に合うかは、増やせる時間の幅しだいです。
今の働き方だと年収はいくらになる?
ここが一番の実務です。新しい時給で計算し直すと、思っていた数字とずれることがあります。
計算式はシンプルです。
- 新しい時給 × 週の勤務時間 × 年間の勤務週数
- 年52週で計算すると多めに出るので、休んだ週があれば週数を引く
- 通勤手当や繁忙期の残業代は別途足す
実際に当てはめてみます。時給1,320円で週19時間、年52週働くと、1,320×19×52=130万4,160円です。週20時間未満に抑えているのに、130万円を超えてしまっています。「週20時間を切っているから大丈夫」という感覚だけで判断すると、こういうずれが起きます。
東京都の場合はもっとはっきりします。2026年10月からの1,280円で週20時間×52週を計算すると、1,280×20×52=約133万円。最低賃金ちょうどの時給・週20時間ちょうどでも、130万円を超える水準に届きます(編集部試算)。
大事なのは、これが「自分の時給・自分の週数・自分の残業実態」でどうなるかです。年の途中で時給が変わる点も効いてきます。たとえば10月に時給が上がる地域なら、1月〜9月は旧時給、10月以降は新時給で、別々に計算して足すほうが実態に近い数字になります。
10月から12月に何をすればいい?
年内にできる見直しを、順番に並べます。
- 発効日と新しい時給を確認する自分の都道府県の発効日を厚生労働省の一覧で確認し、勤務先から新しい時給の通知が出ているかを見ます。10月1日とは限らないので、ここを先に固めます。
- 1月から9月までの実績を集計する給与明細を並べて、すでに受け取った分の合計を出します。ここは確定した数字なので、動かせません。
- 10月から12月の見込みを新時給で計算する新しい時給 × 週の勤務時間 × 残りの勤務週数で出します。12月は年末で勤務が増えやすいので、増えそうなら多めに見ておきます。
- 合計して2つのラインと照らす②+③の合計を、130万円(扶養認定)と照らします。あわせて契約書の所定労働時間が週20時間以上かどうかも確認します。
- 超えそうなら11〜12月で調整する、または勤務先に相談する契約時間そのものを見直すのか、一時的な超過として事業主証明で処理してもらうのか。方針が違うので、早めに勤務先へ確認します。
11月・12月に入ってからシフトを大きく削ろうとすると、職場にも迷惑がかかりますし、自分の収入も急に落ちます。10月の時点で試算しておけば、週に1時間減らす程度の小さな調整で収まることも多いはずです。
なお所得税のほうの「103万円の壁」は、2026年1月からの基礎控除等の引き上げで、実質的な課税最低限が123万円程度まで緩和される見込みです。社会保険の130万円ラインとは別の話なので、混ぜて考えないほうが整理しやすくなります。
世帯で話しておきたいこと
扶養の範囲で働くかどうかは、本人だけの問題ではありません。配偶者の勤務先に家族手当・扶養手当がある場合、その支給条件が「配偶者の年収◯◯円未満」と決まっていることがあります。手当の条件は勤務先ごとに違うので、就業規則や給与担当に確認しておくと判断材料が増えます。
そのうえで、世帯として話す論点は2つです。ひとつは、時間を増やして社会保険に入り、将来の年金を厚くする方向。もうひとつは、週20時間未満と130万円未満を守って今の手取りを維持する方向です。どちらにも理屈があります。
正解はご家庭の事情によります。ただ、どちらを選ぶにしても新しい時給で計算した数字を持っているかどうかで、話の質が変わります。10月は、その数字を作るのにちょうどいい時期です。
なお発効日はすべて「予定」であり、異議申出の状況等によって変わる可能性があります。106万円の壁の撤廃についても、正確な施行日は厚生労働省の公式発表で最終確認するのが安全です。
よくある質問
2026年度の最低賃金はいくら上がりますか?
2026年度(令和8年度)の最低賃金は全国加重平均で1,177円となり、前年度の1,121円から56円の引き上げです。引上げ率は4.9%で、2026年9月3日に47都道府県すべての審議会答申がそろいました。実際の金額は都道府県ごとに異なり、東京都1,280円、大阪府1,231円、神奈川県1,225円、宮崎県1,085円などとなっています。
最低賃金の引き上げは全国で10月1日からですか?
いいえ、発効日は都道府県ごとに異なります。10月発効が37都道府県、11月発効が7府県、12月発効が3県で、10月1日ちょうどに発効するのは15都道府県のみです。残りは10月2日〜30日に分かれ、最も遅いのは沖縄県の2026年12月2日発効予定です。発効日はすべて予定で、異議申出の状況等により変更される可能性があります。
106万円の壁がなくなると、扶養内で働く人は何を気にすればよいですか?
2026年10月を目途に社会保険の加入要件から賃金要件(月収8.8万円以上、年収106万円相当)が撤廃されるため、判断の軸は「週の所定労働時間が20時間以上かどうか」に移ります。週20時間以上・雇用期間2か月超の見込み・学生でないという3条件を満たせば、年収の多寡に関わらず社会保険への加入義務が発生します。
残業で一時的に年収130万円を超えたら、すぐ扶養から外れますか?
人手不足による残業等で一時的に超えた場合は、事業主が「一時的な収入増」と証明すれば連続最長2年まで扶養にとどまれます。この事業主証明による円滑化措置は2025年10月1日付で恒久化されました。また2026年4月からは、実際の年収実績ではなく労働条件通知書等に記載された年収見込み(契約ベース)で判定する新ルールが始まります。
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