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最低賃金1,177円、フリーランスの単価改定はどう伝える

2026年9月30日|いろは堂副業編集部
屋内の木製デスクを上から撮影、ノートパソコン・電卓・置き時計・文房具が並ぶ様子

画像出典: ぱくたそ

この記事の要点
2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,177円(前年度比+56円、引き上げ率は4.9%程度)で、2026年10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに順次発効します。業務委託の報酬に最低賃金が直接適用されることはありませんが、時給換算で受けている仕事は据え置くと相対的な目減りになるため、発効日を起点に単価を見直す時期です。交渉は契約更新の1〜1.5ヶ月前に、継続したい意思と値上げ根拠をセットで伝えるのが実務の目安です。
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事務代行を時給1,300円で2年受けてる。最低賃金が上がったって聞いたけど、私の報酬には関係ないよね?

業務委託の報酬に最低賃金が適用されることはありません。最低賃金法は雇用契約(パート・アルバイトなど)に適用される制度で、フリーランスや副業の業務委託契約には法的な拘束力が及びません。ここは正確に押さえておきたいところです。

ただ、関係ないとも言い切れません。時給換算で仕事を受けている人にとって、最低賃金は「時間を売るといくらになるか」の床の高さです。床が56円上がったのに自分の単価が去年と同じなら、スキルへの対価は相対的に縮んだことになります。

正直なところ、単価の話は言い出しにくいものです。だからこそ、制度が動くタイミングは使えます。自分の感情ではなく外部の事実を理由にできるからです。

2026年度の最低賃金はいくらに、いつから上がる?

2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で時給1,177円になりました。前年度の1,121円から+56円、引き上げ率は4.9%程度です。中央最低賃金審議会が示した目安は1,176円・+55円でしたが、各地の答申が出そろった段階で1円上振れしています。

47都道府県すべてで引き上げ額は54円〜65円の範囲に収まり、そのうち33府県は中央審議会の目安額を上回る答申になりました。最高額は東京都の1,280円、最低額は宮崎県ほかの1,085円で、地域間の差は195円です。

都道府県改定後時給発効日
東京都1,280円2026年10月1日
神奈川県1,225円2026年10月1日
大阪府1,231円2026年10月1日
愛知県1,195円2026年10月1日

厚生労働省の公表データをもとに作成

上の表にある4都府県はいずれも10月1日発効です。ただ、発効日は全国一律ではありません。2026年10月1日から12月2日にかけて、都道府県ごとに順次施行されます。

発効予定日は異議申出の手続きなどで変わる場合があります。自分の住む地域の額と日付を確定させたいときは、厚生労働省の都道府県別一覧を見るのが確実です。

業務委託の報酬に最低賃金は関係ある?

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最低賃金より安い時給で受けてたら、それは違法なの?

業務委託契約の報酬に最低賃金法が適用される法的根拠はありません。最低賃金は労働者を雇う側に課される義務で、対等な事業者同士の取引である業務委託には及びません。時給換算で最低賃金を下回る単価の案件があっても、それ自体が最低賃金法違反になるわけではないのです。

では何のために気にするのか。相場観の床として機能するからです。オンライン秘書、事務代行、データ入力、簡易なデザイン作業など、時間に近い形で報酬が決まる仕事では、発注側も「アルバイトを雇ったらいくらか」を頭のどこかで比べています。その比較対象が56円上がるということは、あなたの単価の値打ちがその分だけ相対的に下がるということです。

ここで整理しておきたいのは、複業の単価は最低賃金で決めるものではないという点です。専門スキルの対価は市場相場とスキル価値で決まります。最低賃金は「ここを下回ると説明がつかない」という下限の目印であり、目標値ではありません。上の改定率4.9%は、据え置きを見直すきっかけの数字として使うのが妥当な位置づけです。

この考え方が当てはまらないケース

成果物単位で受けている仕事(1記事いくら、1本いくら)は、時間と報酬の対応がゆるいため最低賃金を根拠にしにくいです。この場合は納品物の相場や制作にかかる実時間から組み立てるほうが筋が通ります。また、契約期間中の一方的な単価変更はできません。交渉できるのは更新・満了のタイミングです。

自分の受注単価を時給換算で棚卸しする手順

交渉の前に、いまの単価が時給いくらになっているかを出します。感覚ではなく数字にしないと、相手にも自分にも説明ができません。

  1. 1ヶ月の実作業時間を数える案件ごとに、作業した時間を記録します。打ち合わせ・修正対応・確認メールの時間も含めます。ここを入れ忘れると時給が実態より高く出ます。
  2. 受け取った報酬を作業時間で割る月額3万円の案件に25時間かけていれば、時給換算は1,200円です。源泉徴収されている場合は、手取りではなく契約上の報酬額で計算します。
  3. 自分の地域の改定後の最低賃金と並べる東京都なら1,280円、愛知県なら1,195円。時給換算がこの額を下回る、あるいはほぼ同額なら、見直しの対象です。
  4. 案件ごとに時給の順位をつける同じ労力でも案件によって時給は倍近く変わります。低い案件から手を付けるほうが、全体への効果が大きく、断られたときの痛みも小さいです。
交渉を持ちかける前に用意するもの
  • 現在の時給換算額(案件ごと)と、その計算に使った作業時間の記録
  • 契約開始時から増えた業務範囲のリスト(「当初は入力だけ、今は月次の集計表も作成」など)
  • 成果として言える事実(対応件数、納期遵守、担当者の確認工数が減ったなど)
  • 自分の地域の改定後の最低賃金額と発効日
  • 同種の仕事の市場相場(クラウドソーシングの募集単価をいくつか見て幅を把握する)

単価改定が通ると、収入はどれくらい変わる?

据え置きの話ばかりだと気が重くなるので、上向きに動いたときの絵も出しておきます。単価の見直しは「目減りを止める」だけの作業ではありません。

月額3万円・25時間(時給換算1,200円)の案件を、月額32,500円(時給1,300円)に改定できたとします。増えるのは月2,500円、年間で30,000円です。作業時間は1分も増えていません。同じ条件の案件を3本持っていれば、年間では90,000円の差になります。

効き方がもっと大きいのは、案件を入れ替えたときです。時給1,200円の案件(25時間)を手放して、同じ25時間を時給1,800円の案件に充てられれば、その枠の月収は3万円から45,000円になります。時給の高い案件を1本つかむことは、既存案件を何本も値上げするのと同じか、それ以上の効果を持ちます。

だから順番としては、まず既存案件の時給を上げて土台を作り、空いた余力で相場の高い案件を1本試す、という流れが現実的です。値上げが通れば収入が増え、通らなくても「この単価では受けない」という自分の基準が1つ手に入ります。どちらに転んでも次に進めます。

単価改定はいつ、どう伝えればいい?

タイミングには実務上の目安があります。契約満了・更新の2ヶ月前までに実績の棚卸しと相場のリサーチを終え、1〜1.5ヶ月前に相談のメールを送るという流れです。相手にも予算調整や社内の承認手続きがあるため、直前の申し出は「今期は無理」で終わりやすくなります。

10月1日発効の地域なら、年末年始や年度末の更新に向けて今が準備の時期にあたります。11月・12月発効の地域は、発効日を待たずに準備を始めておくと同じスケジュール感で動けます。

伝え方で外してはいけないのは次の4点です。

  1. 継続したい意思を先に書く値上げの話は、切り出し方によっては「降りる前置き」に読まれます。冒頭で「今後も継続して関わりたい」と明示します。
  2. 値上げの根拠を事実で示す業務範囲が広がった、対応量が増えた、といった具体的な事実を挙げます。ここで最低賃金改定を添えると、感情ではなく制度変更に基づく話になります。
  3. 金額は相場を踏まえて提示する法外な額を出すと交渉そのものが止まります。相場をリサーチした上での額であることを伝えます。
  4. 相手が調整できる余白を残す「可能な範囲でご検討いただければ」といった柔らかい言い回しを添えます。一発回答を求めない姿勢が、話を継続させます。

そのまま使えるメール文例

以下は月額3万円・時給換算1,200円の事務代行を、1,300円相当(月額32,500円)へ見直したい場合の例です。金額と業務内容は自分の案件に置き換えてください。

件名: 契約更新に関するご相談(◯◯の業務について)

◯◯様
いつもお世話になっております。◯◯です。
◯月末で契約更新の時期を迎えるにあたり、来期も継続して業務に関わらせていただきたく、報酬について一点ご相談させてください。

ご依頼当初は月次のデータ入力が中心でしたが、現在は集計表の作成と定例の共有資料まで担当しており、作業量が当初の想定より増えている状況です。あわせて、2026年10月から地域別最低賃金が改定され、当地では時給◯◯円となりました。時間単位でお受けしている業務の水準として、来期は月額32,500円でご相談できないかと考えております。

予算のご事情もあると思いますので、可能な範囲でご検討いただけますと幸いです。業務範囲の調整で対応できる部分があれば、そちらもあわせてご相談させてください。
よろしくお願いいたします。

最後の一段落が効きます。金額を動かせないなら業務範囲で調整する、という選択肢を自分から差し出しておくと、相手は断りではなく別案で返しやすくなります。

交渉で不利な扱いを受けたときの拠り所

単価の相談をした結果、一方的に不当な条件を押し付けられることもあります。そのときの拠り所になるのがフリーランス・事業者間取引適正化等法(正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)です。2024年11月1日に施行され、現在も適用されています。

この法律では、発注する事業者に取引条件を書面などで明示する義務があり、報酬の減額・受領拒否・返品・買いたたき(通常より著しく低い報酬を不当に定めること)などが禁止行為とされています。単価交渉の場面で発注側が一方的に不当に低い報酬を強いる行為は、法的に問題となりえます。

報酬の支払期日についても、物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に定める義務があります。違反があった場合、公正取引委員会などが報告徴収・立入検査・指導助言・勧告・命令・公表を行い、命令違反などには50万円以下の罰金が定められています。

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交渉って個人の押し合いだと思ってたけど、ルールがあるんだ

制度の存在を知っているかどうかで、交渉のときの足の踏み方は変わります。持ち出して脅す道具ではありませんが、「この条件はおかしい」と感じたときに、それが感覚の問題ではないと確認できる基準があるのは心強いところです。

まだ1件も受けていない人は、どこから始める?

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単価交渉の前に、そもそも最初の案件が取れてないんだけど……

最初の1件は、スキルを増やすより「頼む側が判断できる材料」を先に用意するほうが早く決まります。発注側が見ているのは、できることの幅ではなく「この作業をこの人に任せて大丈夫か」の1点です。次の5段階で、最初の受注までを組み立てられます。

  1. 売る作業を1つに絞るデータ入力、日程調整、経費のとりまとめ、バナー1点の制作など、1時間単位で切り出せる作業を1つ決めます。「事務全般できます」は比べる基準がないため選ばれにくくなります。
  2. 週に使える時間と下限の時給を決める「土日で5時間、時給1,200円以上」のように先に決めます。自分の地域の改定後の最低賃金が下限の目印です。ここを決めずに応募すると、安い案件から埋まっていきます。
  3. 見せられる成果物を1つ作る実績がなければ架空の題材で作ります。集計表なら、サンプルの売上データを整えたExcelを1枚。応募文に添える成果物が1つあるだけで、返信率は変わります。
  4. クラウドソーシングで小さい案件に5件応募する単発・短期の案件から入ります。応募文は「募集内容のどの作業を、いつまでに、どう進めるか」を3行で書きます。テンプレの自己紹介より、作業の段取りを書いたほうが通ります。
  5. 1件終えたら記録を残す作業時間・対応内容・相手からの評価をメモします。これが2件目の応募材料になり、そのまま将来の単価交渉の根拠にもなります。

最初の1件は単価より「完了した取引を1つ持つ」ことのほうが価値があります。ここを越えると、次からは実績を根拠に金額を書けるようになり、この記事の前半で扱った棚卸しと単価改定の話がそのまま自分の話になります。

断られたとき、次にどうする?

単価の相談は通らないこともあります。予算が固まっている、決裁者が別にいる、といった理由は珍しくありません。断られた場合の選択肢を先に決めておくと、その場で慌てずに済みます。

通らなかったときの3つの道
  • 業務範囲を絞る: 単価が変わらないなら作業を減らす。増えた分の作業を元の範囲に戻す相談をします。
  • 時期を区切って再提案する: 「次の期にあらためてご相談させてください」と伝え、次回までの実績を積みます。
  • 空いた時間を単価の高い案件に回す: 低い時給の案件を1つ手放して、相場に近い案件を探すほうが結果として収入が伸びる場合があります。

この3つ目に踏み出すためには、手放しても困らない状態が必要です。単価の見直しと並行して、1件だけでも別の取引先を作っておくと、交渉のときの立ち位置が変わります。

よくある質問

2026年度の最低賃金は全国平均でいくらですか?

2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均で時給1,177円です。前年度の1,121円から56円の引き上げで、引き上げ率は4.9%程度になります。都道府県別では東京都の1,280円が最高額、宮崎県ほかの1,085円が最低額で、地域間の差は195円です。

最低賃金の改定はいつから適用されますか?

2026年度の改定は都道府県ごとに発効日が異なり、2026年10月1日から12月2日にかけて順次施行されます。東京都・神奈川県・愛知県・大阪府などの主要都市圏は10月1日発効です。発効予定日は異議申出の手続きなどにより変更される場合があるため、厚生労働省の都道府県別一覧で確認できます。

フリーランスや副業の業務委託報酬に最低賃金は適用されますか?

適用されません。最低賃金法は雇用契約(パート・アルバイトなど)に適用される制度で、事業者間の取引である業務委託契約の報酬には法的な拘束力が及びません。ただし時給換算で仕事を受けている場合、最低賃金は発注側が比較する相場観の下限として機能するため、改定後も単価を据え置くと相対的な目減りにつながります。

単価改定の相談はいつ送るのが適切ですか?

契約満了・更新の2ヶ月前までに実績の棚卸しと市場相場のリサーチを終え、1〜1.5ヶ月前に相談のメールを送るのが実務上の目安とされています。発注側にも予算調整や社内の承認手続きがあるため、直前の申し出は次期の予算に反映されにくくなります。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。