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最低賃金1,176円時代、その単価は時給換算でいくらに?

2026年8月21日|いろは堂副業編集部
白い机の上のメモ帳と黒い電卓

画像出典: Tara Winstead / Pexels

この記事の要点
2026年度の地域別最低賃金は、目安どおりなら全国加重平均1,176円(前年度比+55円・4.9%増)になります。フリーランスに最低賃金の直接適用はありませんが、報酬÷実労働時間で時給換算し、経費・税・非稼働時間を織り込んだ「必要時給」と比べれば、据え置き単価が実質いくらまで目減りしたかがはっきりします。値上げは根拠と時期をセットで伝えるのが通ります。
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3年前から同じ単価で受けてる案件があるんだけど、これって損してるのかな…

単価の据え置きは、金額が変わっていないだけで、実は静かに目減りしています。まわりの時給水準が上がっているからです。

2026年7月28日、第75回中央最低賃金審議会が令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安を答申しました。目安どおりに改定されれば全国加重平均は1,176円。前年度の1,121円から55円、率にして4.9%の上昇です。都道府県ごとの答申は8月中に順次出揃い、多くは10月1日以降に発効します。

フリーランスは労働基準法上の最低賃金が直接適用される立場ではありません。それでも「自分の受注単価を時給に直すといくらか」は、据え置きの危うさを一発で可視化できるものさしです。ここからは、その計算を実際にやってみます。

2026年度の最低賃金はどれだけ上がった?

まず数字の全体像をそろえます。中央最低賃金審議会が答申した引上げ額の目安は、次のとおりです。

ランク対象都道府県数引上げ額目安対象例
Aランク6都府県54円埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪
Bランク28道府県56円(中央審議会答申資料に記載の道府県)
Cランク13県56円(中央審議会答申資料に記載の県)

厚生労働省の公表データをもとに作成

上の表のとおり、目安は地域をA〜Cの3ランクに分けた形で示されています。この引上げ額を反映した全国加重平均が1,176円です。前年度は上昇額66円・上昇率6.3%でしたから、今年度の上げ幅はそれより小さくなっています。それでも4.9%です。

ここで注意したいのは、この数字が「目安」だという点です。最終的な金額を決めるのは各都道府県の地方最低賃金審議会で、地域の賃金実態調査などを踏まえて独自に答申し、都道府県労働局長が決定します。報道まとめによれば、宮城県が目安を4円、埼玉・千葉・愛知が各1円上回る答申を出したとされています(二次情報のため、確定額は各労働局の公表で確認してください)。

発効日も都道府県で異なります。多くは10月1日から10月中ですが、徳島・愛媛は11月1日、京都は11月16日発効という報道もあります。つまり「自分の地域がいくらで、いつから変わるか」は個別に確認する必要があるということです。

フリーランスに最低賃金は関係ないのでは?

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業務委託だから最低賃金の対象外だよね?

最低賃金法が守るのは労働者です。業務委託で仕事を受けるフリーランスは直接の適用対象ではありません。だから単価が時給換算で1,000円を割っていても、それ自体が違法になるわけではないのです。

ただ、適用されないことと、気にしなくていいことは別です。最低賃金は「その地域で人を雇うなら最低でもこれだけ払う」という社会的な下限で、毎年の改定はまわりの賃金相場の動きをそのまま映しています。世の中の下限が4.9%上がった年に、自分の単価だけ0%だったなら、相対的には下がっているわけです。

しかも会社員と違い、フリーランスの受け取る金額には経費も税も社会保険料も含まれています。時給換算で最低賃金と並んだ時点で、手元に残る額はすでに下回っている。この差を数字で見るために、次の計算をします。

受注単価を時給換算する手順は?

やることは3ステップです。特別なツールは要りません。スプレッドシート1枚で足ります。

  1. 実労働時間を記録する案件ごとに、着手から納品までにかかった時間をすべて足します。制作時間だけでなく、打ち合わせ、メール返信、修正対応、素材探し、請求書作成まで含めます。ここを制作時間だけで数えると、時給が2倍近く過大に出ます。
  2. 報酬÷実労働時間で割る源泉徴収前の報酬額を、記録した総時間で割ります。これが素の時給です。月末にまとめて計算するより、案件が終わるたびにその場でやるほうが精度が出ます。
  3. 非稼働時間を分母に足す営業・提案書作成・経理・確定申告の準備など、直接お金にならない時間も1か月分足して割り直します。これが実態に近い時給です。
実労働時間に入れ忘れやすい時間
  • 要件のすり合わせのチャット往復
  • 2回目以降の修正対応
  • 参考資料・素材のリサーチ
  • 請求書の作成と入金確認
  • 案件を取るための提案文の執筆

実際に計算してみます。3万円のWeb記事案件で、執筆に8時間、取材と打ち合わせに2時間、修正2回で2時間、事務に1時間かかったとします。合計13時間なので、時給は約2,308円。ここに、この案件を取るための提案文や、月の経理にかかった時間を按分して2時間足すと15時間になり、時給は2,000円まで落ちます。

同じ3万円でも、数え方ひとつで時給は300円以上変わります。低く出るほうが実態です。

まだ案件がない人は、どこから始める?

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そもそも1件目がまだ。時給の話より前の段階なんだけど…

受注実績がゼロの段階では、時給換算する材料そのものがありません。最初の1件は「単価を上げる」ではなく「相場を知りながら実績を1つ作る」ことが目的になります。順番はこうです。

  1. 売れる作業を1つに絞る記事執筆、資料作成、データ入力、画像加工など、いま自分が業務や趣味でやったことのある作業を1つ選びます。複数並べると案件検索も自己紹介も焦点がぼけます。
  2. サンプルを2〜3点だけ作る実績がないうちは、架空の題材で構いません。記事なら1,500字程度を2本、資料作成ならスライド5枚を1本。相手が「この人に頼んだら何が返ってくるか」を判断できる材料が要ります。
  3. クラウドソーシングに登録して検索するクラウドワークスやランサーズで、選んだ作業名と「未経験可」で検索します。最初は募集件数の多いジャンルのほうが応募機会を作りやすくなります。
  4. 1件目は所要時間を必ず記録して受けるここが後の交渉につながります。1件目から時間を測っておけば、2件目以降は前述の時給換算をそのまま当てられます。
  5. 納品後に条件を1つだけ上げて次に応募する単価か作業範囲、どちらか一方です。実績が1件あるだけで、提案文に書ける具体が変わります。
1件目で欲張らないこと
  • 高単価案件から狙う(選考通過率が低く、時間だけが減ります)
  • 複数ジャンルに同時応募する(サンプルが分散して説得力が落ちます)
  • 時間を測らずに受ける(次の単価交渉の根拠が残りません)

1件目の目的は稼ぐことではなく、自分の作業が何時間かかるかを知ることです。この数字さえ手元にあれば、以降の値付けは推測でなく計算になります。

手取りで考えると必要な時給はいくら?

素の時給が出たら、そこから引かれるものを差し引きます。フリーランスの報酬には、会社員なら会社が負担していた分が含まれているからです。

差し引くもの

まず経費。パソコン、ソフトの月額、通信費、書籍代など、仕事のために出ていくお金です。次に税金。所得税と住民税がかかります。そして社会保険料。国民健康保険と国民年金は全額自己負担で、会社員時代の折半がありません。

これらを合わせると、受け取った額のうち手元に残る割合は目安として6〜7割程度になります(所得や扶養の状況、青色申告特別控除――帳簿を一定の形式で付けて申告すると所得から一定額を差し引ける制度――を使えているかどうかで大きく変わるため、自分の確定申告の実績値で置き換えてください)。仮に7割とすると、時給2,000円の案件は手取りベースで約1,400円。1,176円という全国加重平均と、思ったより近い位置にいることがわかります。

必要時給を逆算する

次は目標から逆算します。手取りで月30万円ほしいなら、税・保険・経費を差し引く前の必要売上は約43万円(30万円÷0.7)。月に稼働できるのが20日×6時間=120時間なら、必要な時給は約3,583円です。

ここで多くの人が驚きます。手取り30万円を成立させるには、時給3,500円前後の仕事を取り続ける必要があるということだからです。1日8時間ぶんの請求ができる日はまずありません。稼働時間を実態に合わせて短く見積もるほど、必要時給は上がります。

この計算が向いていないケースもあります

ポートフォリオを作るために単価より実績を優先している段階、初めての分野で学習コストを織り込んで受けている案件、長期的な信頼を築く途中の継続案件では、一時的に時給が低く出るのは織り込み済みのはずです。数字が低いこと自体を失敗と受け取る必要はありません。大事なのは、いつまでその状態を続けるかを自分で決めているかです。半年、1年と期限を切っておけば、その計算は判断材料として機能します。

値上げはどう切り出せばいい?

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値上げって言い出しにくい…切られたらどうしよう

値上げの相談が通るかどうかは、金額の大きさより根拠と時期の伝え方で決まる部分が大きいです。突然「来月から2割上げます」と言われると相手も動けませんが、理由と猶予がセットなら社内で稟議に回せます。

  1. 幅を決める今回の目安である4.9%を出発点にします。据え置きが2年続いているなら、その分を上乗せして1割前後を検討する余地があります。必要時給との差が大きいなら、一度で埋めきらず段階を分けます。
  2. タイミングを選ぶ契約更新月、年度の切り替わり、案件が一区切りついた納品直後が伝えやすい時期です。多くの都道府県で最低賃金が発効する10月は、相手も人件費の話をしている時期なので話題として通りやすくなります。
  3. 1〜2か月前に予告する「11月分から新単価でお願いしたい」と先に伝えます。予告なしの即時適用は、相手の予算組みを壊すので反発を招きます。
  4. 作業範囲も一緒に見直す金額が動かせないなら、修正回数の上限、納品形式、対応時間帯を明文化します。実労働時間が減れば時給は上がります。

伝え方の一例です。「継続してご依頼いただきありがとうございます。ご依頼開始から2年ほど単価を据え置いておりましたが、諸経費と作業範囲の実態を見直したうえで、11月ご依頼分より1本◯円へ改定させていただきたくご相談です。ご予算のご都合があれば、修正回数など作業範囲の調整でも対応いたします」。

最後の一文があるだけで、相手は「切るか受けるか」の二択から解放されます。交渉が決裂しにくくなるのは、この逃げ道があるときです。

単価が動くと収入はどこまで変わる?

数字を1つ動かしたときの効果を見ておくと、交渉の一歩が軽くなります。

1本3万円の記事を月8本受けている場合、月の売上は24万円です。ここで4.9%の改定が通ると1本31,470円、月254,760円。増えるのは月14,760円、年に換算すると約17万7,000円です。作業量を1時間も増やさずに、年17万円が動きます。

据え置き2年分を織り込んで1割上げが通った場合はさらに大きく、1本33,000円で月264,000円。月24,000円、年288,000円の差になります。

単価を上げずに時給を上げる道もある
  • 修正回数を「2回まで」と明文化する(3時間の修正が1時間に収まれば、時給は前述の2,000円から約2,300円へ)
  • 過去案件の構成テンプレートを流用して執筆時間を短縮する
  • 連絡手段を1つに絞り、チャットの往復時間を削る

金額の交渉が難しい相手でも、作業範囲の線引きは受け入れられることがよくあります。分子が動かないなら分母を削る。どちらでも時給は上がります。

今日できることは何?

まず、直近で終わった案件を1つ選んで時給を出してみてください。全案件を遡る必要はありません。1件で十分、自分の水準の見当がつきます。まだ1件も受けていないなら、前述の「売れる作業を1つに絞る」から始めれば同じ流れに乗れます。

今週やる3つ
  • 直近1件の実労働時間を思い出せる範囲で書き出し、報酬を割って時給を出す(実績がなければサンプルを1点作る)
  • 自分の都道府県の答申額と発効日を、労働局の公表で確認する
  • 継続案件のうち、単価が1年以上動いていないものをリストにする

そして今日から、案件ごとの時間記録を始めます。次に単価の話をするとき、手元に3か月分の記録があるかどうかで、言えることの重みがまったく変わります。

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まずは1件、時給を出すところからやってみる

据え置きは、決めた覚えのないまま続いてしまうものです。数字にすれば、続けるか変えるかを自分で選べるようになります。

よくある質問

2026年度の最低賃金はいくらになりますか?

2026年7月28日の第75回中央最低賃金審議会の答申では、目安どおりに改定された場合の全国加重平均額は1,176円とされています。前年度の1,121円から55円、率にして4.9%の上昇です。ただしこれは目安であり、実際の金額は各都道府県の地方最低賃金審議会の答申を経て都道府県労働局長が決定します。

フリーランスにも最低賃金は適用されますか?

業務委託契約で働くフリーランスは労働基準法上の労働者ではないため、最低賃金法の直接の適用対象ではありません。ただし報酬を実労働時間で割った時給換算値を最低賃金と比べることは、自分の単価水準が適正かを判断する目安として広く使われています。

受注単価の時給換算はどう計算しますか?

報酬額を、その案件にかかった実労働時間の合計で割ります。実労働時間には制作作業だけでなく、打ち合わせ、メール対応、修正対応、リサーチ、請求書作成の時間も含めます。さらに営業や経理など直接報酬にならない時間を月単位で按分して分母に足すと、実態に近い時給が出ます。

まだ受注実績がない場合、最初の1件はどう取りますか?

扱う作業を1つに絞り、架空の題材でサンプルを2〜3点作ったうえで、クラウドソーシングサービスで作業名と「未経験可」を組み合わせて検索し応募します。1件目から所要時間を記録しておくと、2件目以降の単価を時給換算にもとづいて決められます。

単価を4.9%上げると収入はどれだけ増えますか?

1本3万円の案件を月8本受けている場合、売上は月24万円です。4.9%の改定が通ると1本31,470円・月254,760円になり、月14,760円、年間で約17万7,000円の増加になります。作業量を増やさずに単価だけを動かした場合の計算です。

値上げはいつ伝えるのが適切ですか?

契約更新月や年度の切り替わり、案件が一区切りついた納品直後が伝えやすいタイミングです。適用の1〜2か月前に予告すると、相手が予算を組み直す余地が生まれます。多くの都道府県で最低賃金が10月1日以降に発効するため、その前後は人件費の話題として切り出しやすくなります。

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