複業の顧問契約書に書く6項目とは?
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複業での顧問契約は通常「業務委託契約」として結ぶため、雇用契約と違って労働基準法の労働時間通算(労基法38条1項)は適用されません。その代わり稼働時間は自己申告・自己管理が前提になります。契約書には業務範囲・提供時間(曜日と時間帯)・報酬・秘密保持・知的財産権の帰属・競業避止を明記し、期間は1年+自動更新の有無を定めるのが一般的です。
顧問契約を複数結ぶときにまず整理しておきたいのが、その契約が「雇用」なのか「業務委託」なのかという点です。ここが曖昧なまま2社目に進むと、労働時間の扱いも契約書の作り方も判断がずれていきます。
正直なところ、顧問という言葉は法律上の決まった契約類型ではありません。だから「顧問だからこう」という共通ルールはなく、契約書に何を書いたかがそのまま関係のすべてになります。逆に言えば、書き方さえ押さえれば2社目以降はかなり楽になります。
複業の顧問契約は労働時間が通算される?
ここが最初につまずきやすいところなので、先に前提をそろえます。
労働基準法38条1項では、事業主が違っても労働時間は通算されると定められています。A社で8時間働き、B社でアルバイトとして3時間働けば、合計11時間として扱われるということです。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定、令和2年9月・令和4年7月改定)も、この通算を前提に本業側・副業側の取り扱いを整理しています。
ただしこの通算は、どちらも雇用契約であることが前提です。フリーランス・独立・顧問・コンサルタントとして業務委託契約で受ける場合、労働基準法そのものが適用されないため、複数契約の稼働時間は法律上は通算されません。
法律の縛りがないというだけで、体力と品質の限界は変わりません。厚労省ガイドラインの解説でも、業務委託であっても本人が自主的に長時間化しないよう配慮することが望ましいとされています。労基法が守ってくれない分、自分で線を引く必要がある、と読み替えるのが実務的です。
自分の契約がどちらかを見分けるには
判断の目安は、指揮命令を受けるかどうかです。出退勤の時間を指定され、業務の進め方を細かく指示され、断る自由がない働き方なら、名称が顧問でも雇用に近づきます。逆に、成果や役務の提供を約束して進め方は自分で決めるなら業務委託です。複業で複数の顧問契約を結ぶケースは、通常この業務委託として整理されます。
保険や社会保険の扱いはどうなる?
雇用と業務委託の区別は、保険の面でも効いてきます。業務委託の顧問契約は雇用契約ではないため、労働基準法とあわせて労働者を前提とした労働保険(労災保険・雇用保険)の枠組みからも外れるのが原則です。本業が会社員であれば、社会保険や雇用保険は本業の雇用関係にひも付いたまま続きます。顧問契約を1社増やしたから本業側の保険が変わる、という関係ではありません。
逆に言えば、顧問先での作業中のけがや事故は、本業の労災でも顧問先の労災でも当然にはカバーされません。ここは契約書に書いてあるかどうかの話ではなく、契約形態から決まる前提です。稼働時間が増えるほど自分側の備え(民間の傷害保険や所得補償保険など)の要否を考える場面が出てきます。加入すべきかどうかは働き方と収入の構成で変わるため、迷う場合は社会保険労務士など専門家に自分のケースを確認してください。
最初の1社はどうやって獲得する?
顧問契約は「募集を見つけて応募する」より、すでにある接点から生まれることが多い契約形態です。企業側は、外部に長期で相談する相手を探しているからです。
- 提供できる領域を1行にする「なんでも相談に乗ります」では契約になりません。「BtoB SaaSの初期の採用設計」「小売企業のEC立ち上げ」のように、相談したい場面が浮かぶ粒度まで絞ります。
- 過去の関係先へ声をかける前職の取引先、退職した元同僚が移った先など、あなたの仕事ぶりを知っている相手が最短です。実績の説明が不要な分、話が具体的な条件から始まります。
- お試しのスポット相談から入るいきなり月額の顧問ではなく、単発の相談やレビューを1〜2回受けます。企業側も「毎月払う価値があるか」を確かめたいので、この段階を挟むと合意しやすくなります。
- 継続の形に切り替える提案をするスポットで手応えがあった段階で、月あたりの稼働と報酬を提示します。ここで初めて契約書の話に進みます。
- 2社目は1社目の運用が安定してから初月は想定より時間がかかるのが普通です。1社目の実際の稼働時間が読めるようになってから次を足します。
スポット相談と月額顧問は、値付けの根拠が別物として説明できます。スポットは「その場の課題への回答」、月額顧問は「いつでも聞ける状態と、継続的に文脈を把握していること」への対価です。切り替えの提案時にこの違いを言葉にしておくと、単価を引きずらずに済みます。
顧問契約書には何を書けばいい?
顧問という契約類型は法律で決まっていない分、書くべき項目は実務の蓄積から整理されています。一般的に盛り込まれる条項と、複業で特に確認したい点は次のとおりです。
| 条項 | 複業で特に確認したい点 |
|---|---|
| 顧問業務の範囲 | 相談対応までか、資料作成や実務代行まで含むか。範囲外の依頼が来たときの扱いも書く |
| 顧問業務の提供時間 | 曜日・時間帯を指定して明記する(例: 毎週◯曜の◯時〜◯時)。上限月◯時間という書き方も併用できる |
| 顧問報酬 | 月額固定か時間精算か、支払期日、上限時間を超えた場合の追加精算の有無 |
| 秘密保持 | 他社の顧問も務める前提を伝えたうえで、情報の遮断をどう担保するか |
| 知的財産権の帰属 | 提供した資料・仕組みの権利がどちらに帰属するか。汎用ノウハウは自分に残す整理にできるか |
| 競業避止義務 | 禁止される範囲(業種・地域・期間)が広すぎないか。広いと他の契約が結べなくなる |
| 契約期間 | 1年とし、自動更新の有無を定めるのが一般的。解約予告期間(◯か月前通知)も確認する |
HiPro Bizの公表情報をもとに作成
顧問契約書の一般的な必須項目は、契約の目的・顧問業務の範囲・顧問業務の提供時間・顧問報酬・費用負担・誠実義務(依頼主の利益を損なわないよう誠実に業務を行う約束)と競業避止義務とされています。上の表は、このうち複業で判断が分かれやすい項目に、副業として顧問を務める場合に加えて明記したい秘密保持、知的財産権の帰属、契約期間を足したものです。契約の目的・費用負担・誠実義務は表には並べていませんが、契約書からは落とさないでください。
複業で一番効いてくるのが、提供時間の明記と競業避止の範囲の2つです。提供時間が「必要に応じて」のままだと、月末に依頼が集中しても断る根拠がありません。競業避止が「同業他社との一切の契約を禁ずる」のような広い書き方だと、2社目そのものが結べなくなります。契約前に、業種・地域・期間のどれかで範囲が区切られているかを必ず確認してください。
ひな形はどこから持ってくる?
顧問契約書や副業・兼業向けの業務委託契約書の無料ひな形は、法律関連サイトで複数公開されています。テンプレートバンクやMySignなどが代表的です。ただし、ひな形はあくまで出発点です。提供時間・報酬・競業避止の3か所は自分の状況に合わせて必ず書き換える前提で使ってください。ここを空欄や汎用文のまま署名すると、後から条件を動かしにくくなります。
- 業務範囲に「その他付随する業務」だけの丸投げ表現がないか
- 提供時間の曜日・時間帯または月間上限が入っているか
- 上限を超えた稼働の精算方法が書いてあるか
- 報酬の支払期日が具体的な日付で書かれているか
- 競業避止の範囲が業種・地域・期間で区切られているか
- 知的財産権の帰属と、汎用ノウハウの扱い
- 解約時の予告期間と、途中解約時の報酬精算
複数契約の稼働時間はどう管理する?
業務委託の顧問契約には法定労働時間の縛りがない分、稼働の記録は自己申告・自己管理が前提になります。契約先ごとに実績を報告する場面も出てくるため、記録の仕組みは契約開始と同時に用意しておくのが安全です。
- 契約ごとに月間の上限時間を決める契約書に書いた提供時間をそのまま自分の上限として扱います。書いていない場合も、自分の中で数字を決めておきます。
- 稼働を発生した日に記録する日付・契約先・内容・時間の4項目で十分です。スプレッドシートでも計測アプリでも構いませんが、後からまとめて思い出す方式にすると必ず抜けます。
- 週の途中で消化率を見る月末に超過が判明しても手が打てません。第2週の終わりに各社の消化率を確認し、超えそうなら翌週の相談枠を調整します。
- 月末に契約先ごとの実績を出す報告義務がある契約では提出用に、なくても次の更新交渉の材料になります。実際の稼働が上限を恒常的に超えているなら、報酬改定を持ちかける根拠です。
- 休みの枠を先に確保する週1回の休日確保や契約の間にインターバルを置く考え方は、雇用契約の副業・兼業の文脈で健康配慮として示されているもので、業務委託でも応用できます。予定を埋めてから休むのではなく、休みを置いてから埋めます。
続かない一番の原因は、項目が多すぎることです。契約先と時間さえ残っていれば、更新交渉にも確定申告にも使えます。内容の記述は一言で構いません。記録を減らして続けるほうが、詳細に書いて3週間で止まるより実用的です。
本業の就業規則で副業が許可制になっている場合、顧問契約は「同業他社への関与」とみなされて承認が下りないことがあります。また、本業の職務で得た非公開情報を活かす形の顧問業務は、秘密保持義務に触れる危険があります。契約の巧拙以前の問題なので、2社目を検討する前に自社の規定と情報の線引きを確認してください。
報酬と確定申告はどう扱う?
顧問報酬は業務委託の対価なので、会社からもらう給与とは別の区分で扱います。具体的には事業所得(継続して事業として行う仕事の所得)または雑所得(給与にも事業所得にも当てはまらない所得)のいずれかになります。会社員が本業の給与とは別に顧問報酬を受け取る場合、確定申告が必要かどうかは所得の区分や金額によって変わるため、契約を結ぶ前に国税庁の案内や税務署・税理士で自分のケースを確認しておくと安心です。契約が2社3社と増えるほど、収入の把握と申告の準備は早いうちに整えておく価値があります。
実務で効いてくるのは、契約先ごとに報酬と入金日を分けて記録しておくことです。複数契約になると入金タイミングがばらけるため、どの月のどの契約分が未入金かが把握しにくくなります。稼働時間の記録表に報酬額と入金予定日の列を足しておけば、督促が必要な場面でもすぐに事実を出せます。
2社目・3社目を増やすときの判断基準
先に、増やせたときに何が変わるかを見ておきます。月額固定の顧問契約は、契約数がそのまま毎月の収入の本数になります。1社と結べている人が同じ条件でもう1社結べれば、その分の月額がまるごと積み上がる計算です。しかも2社目は、1社目で作った契約書のひな形も、稼働記録の仕組みも、報酬の説明のしかたもそのまま使い回せます。ゼロから立ち上げた1社目より、2社目3社目のほうが手間はずっと軽くなります。
契約先が複数になること自体にも効き目があります。1社に依存していると、その会社の予算縮小や担当者の異動でいきなり収入がゼロになりますが、3社に分散していれば1社が終わっても残り2社は続きます。複数の業界の内側を同時に見られるので、A社で見た打ち手をB社に持ち込めるようにもなります。相談できる引き出しが増えると、次の契約の単価交渉でも話せる材料が増えます。
そのうえで、増やす前に確認したいのが次の3点です。
- 現在の契約の実稼働が3か月分記録されていて、月ごとのブレの幅が読めている
- 既存契約の競業避止条項に、新しい契約先が抵触しないと確認できた
- 新契約の想定稼働を足しても、決めた週の休みが残る
この3つが揃っていないうちに契約を足すと、たいてい既存の契約側の品質が落ちます。顧問契約は継続が前提の関係なので、一度落ちた信頼を回復するコストのほうが、1社ぶんの報酬より高くつきます。逆に言えば、この3つを満たしていれば2社目に進む根拠はそろっています。
まずは今の契約書を開いて、提供時間と競業避止の2か所がどう書かれているかを確認するところから始めてみてください。ここが読めれば、次の一手は自然に決まります。
よくある質問
複業で複数の顧問契約を結ぶと、労働時間は合算されますか?
顧問契約が業務委託契約であれば、労働基準法が適用されないため複数契約の稼働時間は法律上通算されません。労働基準法38条1項による労働時間の通算は、複数の事業場で雇用契約を結んでいる場合が前提です。ただし過重労働を避けるため、本人が自主的に稼働時間を管理することが望ましいとされています。
顧問契約書に最低限入れるべき条項は何ですか?
契約の目的、顧問業務の範囲、顧問業務の提供時間、顧問報酬、費用負担、誠実義務(依頼主の利益を損なわないよう誠実に業務を行う約束)・競業避止義務が一般的な必須項目です。副業として顧問を務める場合は、これに加えて業務内容、報酬の金額と支払い方法、秘密保持、知的財産権の帰属を明記することが重要です。
業務委託の顧問契約でも労災保険は使えますか?
業務委託の顧問契約は雇用契約ではないため、労働者を前提とした労働保険(労災保険・雇用保険)の枠組みは原則として適用されません。本業が会社員であれば社会保険や雇用保険は本業の雇用関係に基づいて継続しますが、顧問先での業務中の事故が当然にカバーされるわけではありません。自分の働き方に応じた備えの要否は、社会保険労務士など専門家に確認してください。
顧問業務の稼働時間はどう決めて契約書に書けばいいですか?
顧問業務を提供する曜日・時間帯を具体的に明記する方法が有効です(例: 毎週特定の曜日の特定時間帯)。これにより稼働時間についての認識の食い違いを防げます。月間の上限時間を定め、上限を超えた場合の追加精算方法を併記しておくと、複数契約でも管理しやすくなります。
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