就業規則の副業規定、確認すべき3つの条文
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就業規則で確認すべきは「副業・兼業」の条文が許可制か届出制か、申告が必要な項目、そして健康管理・労働時間の規定の3か所です。厚生労働省のモデル就業規則は2018年の改正で一律禁止の規定が削除され、現在は届出制が推奨形になっています。会社が制限できるのは、本業への支障・秘密漏洩・競業・信用毀損の4つに該当する場合に限られるという整理が公的資料で示されています。
副業に興味が出てきたとき、最初にぶつかるのがここです。ネットには「副業禁止は無効」「バレたらクビ」と正反対の話が並んでいて、どちらを信じればいいのか判断がつきません。
正直なところ、答えは他人のブログではなく自分の会社の就業規則の中にしかありません。そして見るべき場所は、思っているよりずっと限られています。全部読む必要はなく、3か所だけ確認すれば可否と手続きの型はつかめます。
ここでは、その3か所の探し方と、許可制だった場合に申請を通すための書き方、上司に切り出すときの具体的な言い方までを順番に見ていきます。
そもそも今、副業は禁止できるのか?
まず前提をそろえておきます。多くの会社の就業規則は、厚生労働省が公開している「モデル就業規則」をベースに作られています。このモデル就業規則には、かつて「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という一律禁止の規定がありました。
この規定は、働き方改革実行計画にもとづき2018年の改正で削除されています。最新版(令和7年12月版)の第68条は「副業・兼業」という条文になっていて、労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる、という形に変わりました。
ただしここが大事なところで、モデル就業規則はあくまで国が示す見本であり、自分の会社の規則がそうなっているとは限りません。改正前の古い文面のまま更新されていない会社も、独自に許可制を採用している会社もあります。だから結局、自社の条文を自分の目で見る必要があります。
会社が副業を制限できる4つのケース
とはいえ、会社が自由に禁止できるわけでもありません。厚生労働省の資料では、裁判例をふまえて、企業が副業・兼業を禁止または制限できるのは次の4つに該当する場合とされています。
- 労務提供上の支障がある(本業に支障が出る、長時間労働で健康に影響するおそれがある)
- 企業秘密が漏洩するおそれがある
- 競業により企業の利益を害する場合
- 会社の名誉・信用を損なう、信頼関係を破壊する行為がある場合
逆に言えば、これらに該当しない限り、合理的な理由なく副業を制限することはできないという整理です。この4項目は、あとで申請を通すときの説明の設計図にもなります。「自分の副業はこの4つのどれにも当たりません」と示せる形に組み立てればいいわけです。
就業規則のどこを見ればいい?確認すべき3か所
就業規則は数十ページある会社も珍しくありませんが、副業に関して見るべきなのは次の3か所です。社内ポータルやイントラの「規程集」、あるいは総務・人事に請求すれば閲覧できます(就業規則は労働者に周知する義務があるものです)。
- 「副業」「兼業」「二重就職」の条文目次か本文をこのキーワードで検索します。会社によって「兼業」「二重就職」「他社役員就任」など呼び方が違うので、複数の語で探すのがコツです。ここで許可制(会社の承認が必要)なのか、届出制(出せば足りる)なのかを確認します。文末が「〜の許可を受けなければならない」なら許可制、「〜届け出るものとする」なら届出制です。
- 申告すべき内容の規定届出や申請の際に何を書かせるかが定められている場合があります。厚労省の資料では、副業先の事業内容・業務内容・契約期間・所定労働日数と時間・所定外労働の有無と見込み時間、といった項目が整理されています。ここを先に読んでおくと、申請書を出し直す手間が減ります。
- 健康管理・労働時間に関する規定副業の可否は、実務上ここで判断されることがよくあります。労働時間の通算や健康確保の観点から会社は状況を把握する必要があるためです。長時間労働にならない設計であることを示せるかどうかが、承認のわかれ目になります。
この3か所を読んだ時点で、「うちは届出だけでいい」「許可がいるが基準は4項目に沿っている」「そもそも条文が古いまま」のどれなのかが判別できます。条文が見つからない場合、それは禁止の根拠もないということです。その場合は勝手に判断せず、人事に「副業に関する規定はありますか」と事実確認をする形で聞くのが安全です。
許可制だった場合、申請はどう通す?
申請が通りにくくなる最大の原因は、書き方が漠然としていることです。「副業をしたいです」だけでは、判断する側は制限4項目に当たるかどうかを判定できません。判定できない申請は、安全側に倒して保留されます。
だから申請書は、相手が判定に必要とする情報を先回りして埋めた状態で出します。厚生労働省のガイドラインには労働者による副業・兼業の届出様式例が示されているので、自社に様式がない場合はそれを参考に項目を組み立てられます。
申請書に書く項目
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 副業先の事業内容 | 個人事業(法人と契約する場合は社名・事業内容) |
| 従事する業務内容 | Web記事の執筆(他社向けの受託。自社事業領域とは無関係) |
| 契約期間 | 2026年◯月〜(単発案件ごとの業務委託) |
| 所定労働日数・時間 | 土日のみ/週あたり合計6時間程度 |
| 所定外労働の有無・見込み | なし(納期は自分で調整可能な契約のため) |
厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で示されている届出事項をもとに作成
ポイントは、業務内容の欄に「自社の事業領域とは無関係」であることを一言添えることです。競業と秘密漏洩という2つの懸念を、読んだ瞬間に打ち消せます。同じく労働時間の欄では、平日夜に無理を詰め込む設計ではないことが伝わる書き方にします。
それでも通りにくい副業の型
同業他社の仕事、自社の顧客と直接取引する仕事、自社の非公開情報に触れる領域の仕事は、制限4項目の「競業」「秘密漏洩」に正面から当たるため、説明の工夫では覆りにくい部分です。また、深夜のシフト勤務など本業の翌日に影響が出る時間設計も、健康確保の観点から止められやすくなります。
この場合は、無理に押し通すより領域か時間帯をずらすほうが早いです。同じスキルでも、対象業界を変えるだけで競業の論点が消えることは珍しくありません。
上司にはどう伝えるのが自然?
申請書の前に上司との会話がある会社がほとんどです。ここで多いつまずきは、「収入を増やしたい」という動機をそのまま出してしまうことです。事実として正しくても、聞いた側には「本業の待遇に不満がある」「転職の前段階では」という別の話に聞こえてしまいます。
伝える順序を変えるだけで、受け取られ方は変わります。
- 先に本業への影響がないことを置く「本業の稼働に影響が出ない範囲で」と最初に言い切ります。上司が最初に気にするのはここなので、先回りして消しておきます。
- 次に内容を具体的に言う「週末に、◯◯という業務の受託を個人で始めたいと考えています」。曖昧な言い方をすると、勝手に最悪のケースを想像されます。
- 制度の話として持っていく「就業規則の第◯条を確認したところ届出(許可)が必要とありましたので、手続きを進めたいのですが、どなたに出すのが正しいでしょうか」。可否を上司個人の判断に委ねるのではなく、社内手続きの確認として聞く形にします。
- スキルの文脈を添える「本業でも使う◯◯の実践量を増やしたい意図もあります」。事実であればこれを足します。会社にとっての不利益がない、むしろ関係があるという位置づけになります。
そして黙って始めるという選択肢は取らないほうが賢明です。届出義務がある会社で無申告のまま進めると、副業自体は問題なかったのに手続き違反だけが残ってしまいます。あとから申告するより、始める前に出しておくほうが圧倒的に軽く済みます。
確認から申請までを一日で終わらせる進め方
調べ始めると情報が多くて止まりがちですが、実際にやることは多くありません。
- 社内ポータルで就業規則を開き、「副業」「兼業」「二重就職」で検索する
- 許可制か届出制か、条文の語尾を確認してメモする(条番号も控える)
- 申告項目の規定を読み、書く内容を先に埋めておく
- 健康管理・労働時間の条文を確認し、自分の稼働設計が抵触しないか照らす
- 社内様式があれば入手する。なければ厚労省の届出様式例を参考に項目を作る
- 上司へは「本業に影響が出ない範囲で」から切り出し、手続きの確認として聞く
副業を始められるかどうかは、気持ちの問題ではなく条文と手続きの問題です。禁止されているかもしれないと想像したまま止まっているより、条番号をひとつ確認するほうが前に進みます。そこで届出制だとわかれば、あとは書いて出すだけです。
どの副業を選ぶかは、規定を確認したあとで考えても間に合います。まずは自分の会社のルールの形を知るところから始めてみてください。
よくある質問
就業規則に副業についての記載がまったくない場合、副業してもいいの?
就業規則に副業を禁止・制限する条文がない場合、副業を制限する社内の根拠もないことになります。ただし規程集が分冊になっていて別の規程に定めがあることもあるため、人事や総務に「副業に関する規定はありますか」と事実確認をしてから始めるのが安全です。
会社は副業を禁止できるの?
厚生労働省の資料では、裁判例をふまえ、企業が副業・兼業を禁止・制限できるのは、①労務提供上の支障がある、②企業秘密が漏洩するおそれがある、③競業により企業の利益を害する、④会社の名誉・信用を損なう、のいずれかに該当する場合と整理されています。これらに該当しない限り、合理的な理由なく制限することはできないとされています。
厚生労働省のモデル就業規則では副業はどう扱われている?
モデル就業規則(令和7年12月版)の第68条は「副業・兼業」の条文で、労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができると規定しています。かつてあった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という一律禁止規定は、働き方改革実行計画にもとづき2018年の改正で削除されました。
副業の届出には何を書けばいい?
厚生労働省の資料では、副業先の事業内容、従事する業務内容、契約期間、所定労働日数と所定労働時間、所定外労働の有無と見込み時間が届出事項として整理されています。ガイドラインには届出様式例も示されており、社内に様式がない場合の参考にできます。
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