フリーランス法の取引条件明示、支払期日は何日以内?
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フリーランス法(2024年11月1日施行)は、業務委託をする企業に対し、業務の内容・報酬の額・支払期日など10項目の取引条件を書面または電磁的方法で直ちに明示することを義務づけています。報酬の支払期日は給付を受領した日から起算して60日以内に定める必要があり、公正取引委員会は2026年9月2日、この明示と支払期日をめぐって日本郵便株式会社に勧告を行いました。手元の発注書に抜けがあれば、再明示を求めるところから始められます。
口頭とチャットだけで仕事が進み、金額と納期は決まっているのに、支払期日は誰も言葉にしていない。副業でも本業でも、業務委託で働いていると珍しくない状態です。
書面のないまま支払期日が決まっていない取引は、法律が正面から禁じている形です。2024年11月1日に施行されたフリーランス法は、発注する企業側に取引条件を書面やメールで明示する義務を課しています。守られていないなら、こちらから直してもらってかまいません。
フリーランス法の取引条件明示とは?
正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)です。この法律の第3条が、企業がフリーランスに業務委託をするとき、取引条件を書面または電磁的方法(メール等)で「直ちに」明示するよう義務づけています。
ここでいうフリーランス(特定受託事業者)とは、従業員を使用しない個人事業者や一人法人のことです。会社員が副業として業務委託契約で個人として仕事を受けている場合も、対象になり得ます。本業かどうかではなく、その取引の形で判断されます。
もう一つ押さえておきたいのが、契約書を交わしていれば義務を満たしたことになるわけではないという点です。必要な事項が全部そろって初めて明示したことになります。逆に、書面の名前が「契約書」である必要もなく、メールに箇条書きで書かれていても様式としては問題ありません。
明示しなければならない事項は?
フリーランス法第3条で示すべきとされている事項は、次の10項目です。
| No | 記載事項 |
|---|---|
| 1 | 業務の内容 |
| 2 | 報酬の額 |
| 3 | 支払期日 |
| 4 | 発注事業者の名称 |
| 5 | フリーランスの名称 |
| 6 | 業務委託をした日 |
| 7 | 給付を受領する日(または役務提供を受ける日) |
| 8 | 給付を受領する場所(または役務提供を受ける場所) |
| 9 | (検査を行う場合)検査完了日 |
| 10 | (金銭以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項 |
J-Net21(中小企業ビジネス支援サイト)の公表データをもとに作成
実務で抜けやすいのは3番の支払期日と、7・8番の「いつ・どこで納品物を受け取るか」です。金額と納期は口頭でも決まるのに、支払期日だけは「経理の締めで」と曖昧なまま流れてしまう。心当たりがあるなら、そこが確認の起点になります。
報酬の支払期日は何日以内に定める?
フリーランス法第4条は、報酬の支払期日について、給付を受領した日(役務提供を受けた日)から起算して60日以内、かつできる限り短い期間で定めることを求めています。そして実務では、この60日以内で決めた支払期日を、第3条の書面(発注書など)に記載する形になります。
「60日以内」は納品してから支払いまでの上限です。月末締め翌月末払いのような一般的なサイクルならこの範囲に収まりますが、検収(納品物が発注内容どおりかを発注側が確認し、受け取りを確定させる手続き)が長引いて支払いがずるずる後ろへ動くと、上限を超えることがあります。
- 支払期日が「◯月◯日」または「月末締め翌月末払い」のように特定できる形で書かれているか
- その期日が、納品日から数えて60日以内に収まるか
- 業務の内容と報酬の額が、あとから解釈が割れない粒度で書かれているか
- これらがメール等、あとから見返せる形で残っているか
日本郵便への勧告では何が問題になった?
公正取引委員会は2026年9月2日、日本郵便株式会社に対してフリーランス法に基づく勧告を行ったと発表しました。日本郵便も同日、勧告を受けたことを公表しています。
認定された違反は二つです。一つは、2024年11月1日から2025年6月30日までの間、フリーランス167人に業務委託をした際、取引条件の明示事項の全部または一部を、書面または電磁的方法で「直ちに」明示していなかったこと。もう一つは、フリーランス140人に対して報酬の支払期日を定めておらず、給付を受領した日から起算して60日以内に報酬を支払っていなかったことです。
先ほどの10項目と60日の話が、そのまま行政の判断材料になっていることがわかります。つまり「書面がない」「支払期日が決まっていない」は、運用上の緩さではなく違反として扱われる領域です。なお、対象となった167人・140人がどんな働き方の人だったかは、公表資料からはわかりません。
規模が大きいほど現場ごとに運用が分かれ、書面化が追いつかないことがあります。取引先の規模は、条件が整っていることの保証にはなりません。
発注書の不備を見つけたらどう伝える?
順番に進めると、次の5段階になります。いきなり申告に飛ばず、まず相手に直してもらう段階を踏むのが現実的です。
- 自分が対象か確認する従業員を使用しない個人事業者・一人法人であれば対象です。会社員の副業でも、業務委託契約で個人として役務を提供しているなら該当し得ます。
- 手元の記録を並べる契約書・発注書・メール・チャットを集め、先ほどの10項目がどこかに書面または電磁的記録として残っているかを一つずつ照合します。抜けがあれば、発注側の第3条違反の疑いが出てきます。
- 不足分の再明示を依頼する「先日お受けした◯◯の件について、支払期日と納品場所が書面で見当たらないため、メールでご明示いただけますか」のように、抜けている項目を名指しして依頼します。あわせて支払期日が受領日から60日以内になっているかも確認します。
- 改善されなければ窓口に申し出る対応がない、改善が見られない場合は、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の「フリーランス法違反被疑事実についての申出窓口」にインターネットの申告フォームから申し出ることができます。
- 報復的な扱いは禁止されていることを知っておく申出をしたことを理由に発注を止める、数量を減らすといった不利益な取扱いは、法律上禁止されています。
Step3の言い方で悩むなら、相手を責める言葉を一切入れないのがコツです。「法律違反ですよね」ではなく「書面で確認させてください」と書くだけで、事務手続きの依頼として処理してもらえます。実際、社内に3条書面の様式がすでにあり、その案件だけ出し忘れているケースもあります。
言っても直らないとき、行政は何をする?
フリーランス法違反に対する行政の対応は段階的です。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 助言・指導 | 発注事業者に改善を促す行政指導 |
| 勧告 | 違反事実を認定し是正を勧告。原則、企業名・違反内容・勧告内容が公表される(日本郵便は本段階) |
| 命令 | 勧告に従わない場合に発出。企業名が公表される |
| 罰則 | 命令違反・検査拒否等に対し50万円以下の罰金 |
@SOHOの公表データをもとに作成
上の段階を見ると、いきなり罰則が科されるわけではなく、まず改善を促すところから始まることがわかります。申し出は相手を処罰するための手段というより、条件を書面にしてもらうための外部の後押しに近いものです。
申出をしても、行政がどう対応するか、どれくらいの期間がかかるかは個別の判断になります。すでに未払いが発生している場合、条件の明示と支払いの回収は別の問題として動くことも考えておいてください。関係を続けたい取引先であれば、まずStep3の再明示の依頼で足りることも多く、そこで終わるならそれが一番早い解決です。
これから受ける案件で同じことを防ぐには?
一番効くのは、受注の返事と同時にこちらから条件を書いてしまうことです。「お受けします」のメールに、業務の内容・報酬の額・納品日・納品方法・支払期日を箇条書きで並べ、「認識に相違があればご指摘ください」と添える。これだけで、明示事項の大半が電磁的記録として残ります。
支払期日については、「納品日から60日以内」ではなく「月末締め翌月末払い」のように、カレンダーで一日が特定できる書き方をお願いするのが確実です。上限の範囲に入っているかを毎回数えなくて済みます。
条件の書面化は、もめたときの備えである以上に、認識のずれを最初に潰す作業です。修正回数や納品形式まで書いておけば、後から増える作業も減ります。
ここから先は、上振れの話もできます。業務の内容と報酬の額が一行ずつ書面に残っていれば、次の依頼で作業が増えたとき「前回の範囲はここまででした」と示せるので、追加分の報酬を交渉する材料になります。支払期日が特定の日付で決まれば入金時期が読めるようになり、受ける案件の数や時期を自分で組み立てられます。条件を書面にすることは、守りの手続きであると同時に、報酬と働き方を自分から動かせるようにする一歩です。
なお、2026年1月1日には「中小受託取引適正化法(取適法)」の施行が予定されています。これは旧・下請代金支払遅延等防止法(下請法)を改正した別の制度で、フリーランス法とは異なるものです。企業側の取引適正化への対応が並行して進んでいる、という背景として知っておくと役立ちます。
よくある質問
会社員が副業で業務委託を受けている場合もフリーランス法の対象になりますか?
対象になり得ます。フリーランス法が守る「特定受託事業者」は従業員を使用しない個人事業者や一人法人を指すため、本業か副業かではなく、業務委託契約で個人として役務を提供しているかどうかで判断されます。
契約書を交わしていれば取引条件の明示義務は満たされますか?
満たされるとは限りません。業務の内容・報酬の額・支払期日など法律が定める事項がすべて明示されていなければ、契約書があっても明示義務を果たしたことにはなりません。一方で書面の名称は自由で、メールに箇条書きで記載する形でも認められます。
報酬の支払期日は納品からいつまでに設定する必要がありますか?
フリーランス法第4条により、給付を受領した日(役務提供を受けた日)から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間で定める必要があります。決めた支払期日は発注書などの取引条件を明示する書面に記載する形になります。
発注元が取引条件を書面で出してくれない場合はどこに相談できますか?
公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の「フリーランス法違反被疑事実についての申出窓口」に、インターネットの申告フォームから申し出ることができます。申出をしたことを理由に発注停止や数量削減などの不利益な取扱いを受けることは、法律上禁止されています。
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