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フリーランス新法の取引条件明示、書面がない時どうする

2026年9月17日|いろは堂副業編集部
屋内の白い机で、1人がノートパソコンの横でノートにペンで書き込んでいる俯瞰写真

画像出典: 写真: Shixart1985(CC BY 2.0 / Wikimedia Commons)

この記事の要点
フリーランス新法(2024年11月1日施行)は、発注事業者が個人に業務委託をした場合、業務の内容・報酬の額・支払期日など9項目を直ちに書面または電磁的方法で明示することを義務づけています。口頭やり取りだけは認められておらず、明示がなければ自分から明示を請求でき、解決しない場合はフリーランス・トラブル110番(無料・匿名可)や公正取引委員会の相談窓口に相談できます。
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チャットで「じゃあお願いします」と言われただけで作業が始まった。契約書、もらえないままなんだけど大丈夫かな…

副業やフリーランスの現場では、契約書のやり取りを挟まずに仕事が動き出すことが珍しくありません。金額は聞いたけれど支払日は曖昧、修正が何回まで含まれるのかも決めていない。そのまま納品して、入金が遅れてから青くなる——という順番をたどる人は多いです。

ただ、2024年11月1日から、この「なんとなく口約束」は法律上そのままでは許されなくなっています。個人に仕事を出す側には、条件を書いて渡す義務があります。まずは何が義務なのかを知り、そのうえで自分から一文送るところまでを整理していきます。

フリーランス新法とは?誰が守る側で、誰が守られる側か

正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。フリーランス・事業者間取引適正化等法、略してフリーランス新法と呼ばれます。2024年11月1日に施行されました。

守られる側は「特定受託事業者」と呼ばれる人たちで、従業員を使用しない個人、または従業員のいない一人法人を指します。会社員が副業として個人で業務委託を受けている場合も、この立場に当てはまります。開業届を出しているかどうかで線が引かれるわけではありません。

義務を負うのは、その個人に仕事を出した「業務委託事業者」=発注側の事業者です。つまりこの法律は、あなたに何かを課すものではなく、発注元に対して「条件をちゃんと書いて渡しなさい」と命じる形で作られています。

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相手が大企業じゃなくても対象なの?

個人に業務委託をした時点で義務は発生します。発注元が小さな会社でも、個人事業主同士のやり取りでも、仕事を出す側が事業として委託しているなら明示義務の対象です。「うちは小規模だから」は理由になりません。

運用の担当も分かれています。取引条件の明示や報酬の支払期日といった取引の適正化に関する部分は公正取引委員会と中小企業庁、ハラスメント対策など就業環境の整備に関する部分は厚生労働省が担当します。相談先を選ぶときにこの区分けが効いてくるので、頭の隅に置いておくと迷いません。

取引条件の明示義務で、発注元は何を書く必要がある?

法第3条は、業務委託をした場合に直ちに、次の9項目を明示するよう発注事業者に義務づけています。書面でも、メールなどの電磁的方法でも構いませんが、口頭だけで済ませることは認められていません。

1. 当事者の名称発注事業者と、受注する側(あなた)の名称
2. 委託した日業務委託をした日
3. 給付・役務の内容何を作るか、どんな役務を提供するか
4. 給付・役務提供の期日納品日・提供日
5. 給付・役務提供の場所どこで納品・提供するか
6. 報酬の額と支払期日いくらを、いつ支払うか
7. 検査完了日検査を行う場合、その検査が完了する日
8. 現金以外の支払方法現金以外で支払う場合の方法に関する事項
9. 未定項目の扱い内容を定められない項目がある場合、正当な理由がある旨とその内容

公正取引委員会の公表データをもとに作成

上の9項目のうち、実務で抜けやすいのは6番と7番です。金額だけ伝えて支払期日が書かれていない、検査(先方の確認作業)があるのにその完了日が決まっていない、というパターンはよく起こります。金額が書いてあるからOK、ではありません。「いつ支払われるか」までがセットで義務の範囲です。

9番も知っておくと強いです。着手時点でどうしても決められない項目はあります。その場合でも「決まっていないから書かない」ではなく、決められない正当な理由とその内容を明示したうえで、内容が定まったあとに改めて明示するという扱いになります。空欄のまま放置してよい項目は無い、という理解で合っています。

報酬の支払期日には別の上限もある

明示義務とセットで押さえたいのが支払期日のルールです。報酬の支払期日は、給付を受領した日から起算して60日以内の、できるだけ短い期間内に定めることが義務づけられています。

つまり「納品から90日後に支払い」という条件を提示されたら、それは明示があっても中身の方が法の求める範囲から外れている、ということになります。明示された書面を受け取ったら、支払期日が受領日から60日を超えていないかをその場で数えてみてください。

チャットやメールでの連絡は「明示」として有効?

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正式な契約書じゃなくて、Slackのメッセージでも大丈夫なんだ?

電磁的方法として認められる範囲は、想像より広く取られています。公正取引委員会のQ&Aでは、電子メール、Slackなどのチャットツール、SMS、SNSやアプリのメッセージ機能での送信が例として挙げられています。条件を記載したウェブページのURLをメッセージに載せる方法も含まれます。

ただし条件があります。受け取った側が、その内容を出力・保存できる状態になっていることが必要とされています。ここが現実的に一番こわいところで、チャットの無料プランでは過去ログが一定期間で見えなくなることがあり、プロジェクト終了後にワークスペースから外されれば当然さかのぼれません。

条件が届いたら、その日のうちにやること
  • 条件が書かれたメッセージのスクリーンショットを撮る
  • 本文をコピーして、自分のメモやドキュメントに日付つきで貼る
  • 案件名のフォルダを作り、見積書・請求書と同じ場所に置く
  • 支払期日が受領日から60日以内かをその場で確認する

保存の方法としてスクリーンショットが推奨されているのは、こうしたログ消失を想定してのことです。手間としては1分で終わります。あとから「言った・言わない」に巻き込まれた時、この1分が効きます。

なお、電磁的方法で明示された内容が閲覧できなくなった場合には、フリーランス側から書面の交付を請求でき、発注事業者はこれに応じる義務があります(Q&A Q43)。ログが消えてしまった案件についても、あとから紙やPDFでの交付を求める道は残っています。

明示がないとき、自分から何をどう請求する?

発注元が義務を果たしていない状態なので、是正を求める根拠はこちらにあります。取り立てのような話ではなく、相手が忘れている手続きを進めてもらうお願いです。角を立てずに済むことがほとんどです。

  1. 手元の材料を集める依頼のメッセージ、金額のやり取り、納期の会話をひとまとめにします。すでに決まっていることと、決まっていないことを分けて書き出してください。
  2. 不足項目を特定する9項目と照らして、抜けているものに印をつけます。多くの場合、支払期日・検査完了日・給付の内容の細かさのどれかです。
  3. メールまたはチャットで明示を請求する「フリーランス法で明示が義務づけられている項目のうち、支払期日が未確認のため、書面またはメールでご提示いただけますでしょうか」と、項目名を挙げて依頼します。法律名を出すことは責めることではなく、相手の事務担当が社内で動きやすくなる材料になります。
  4. 返答をそのまま保存する返ってきた内容をスクリーンショットと本文コピーで残します。ここまで来れば、明示は完了しています。
  5. 反応がない・拒まれたら相談窓口へ1〜2回催促しても進まない場合は、自分ひとりで押し合いを続けず、次章の窓口に持ち込みます。
正直なところ、言い出しにくい場面もあります

継続案件の途中だと「関係が悪くなるのでは」と感じますよね。実際には、条件を書面化したがらない発注元ほど、報酬や修正回数でもめる確率が上がります。請求して気まずくなる相手なら、その案件は遅かれ早かれ負担になる、という見方もできます。逆に、多くの発注元は義務を知らなかっただけで、頼めば普通に出してくれます。まずは一度送ってみて、反応で判断するのが現実的です。

交渉で解決しないときの相談先はどこ?

ここから先は、無料で使える公的なルートがあります。いきなり通報するイメージを持つ必要はなく、どう伝えればよいかを相談する段階から使えます。

フリーランス・トラブル110番(厚労省委託・弁護士に無料相談)

第二東京弁護士会が運営し、厚生労働省が委託している窓口です。契約や仕事上のトラブルについて弁護士に無料で相談でき、秘密厳守・匿名での相談も可能です。対面とWebのどちらでも相談でき、和解あっせんの手続きも無料で利用できます。

フリーランス法違反が疑われる場合に、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省へ申出をする際のアドバイスも受けられます。「これは違反に当たるのか」「どの窓口に持っていくべきか」から聞ける場所なので、最初の一歩としては使いやすいはずです。窓口は freelance110.mhlw.go.jp です。

公正取引委員会の相談窓口(電話相談)

フリーランス・事業者間取引適正化等法の考え方についての相談窓口が用意されています。対応は電話相談のみで、本部(関東地域)は03-3581-5479です。来局を希望する場合は、事前に担当官と電話で日時を調整する必要があります。

地域ごとに事務所・支所の専用番号があり、たとえば北海道は011-231-6300、大阪府は06-6941-2206です。全国の事務所・支所を利用できます。

違反の疑いを届け出る制度

法違反の疑いがある場合には、公正取引委員会・中小企業庁に対して「違反被疑事実の申出」の制度があります。発注事業者の側から自ら申し出る「自発的申出」の仕組みもあります。

なお、ハラスメントへの対応など就業環境の整備に関する相談は厚生労働省の管轄で、都道府県労働局が窓口になります。取引条件の話か、就業環境の話かで行き先が変わる、と覚えておけば迷いません。

今日から仕組みにしておきたいこと

明示義務があるとはいえ、毎回トラブルになってから動くのは消耗します。受注の入口に小さな手順を置いておくと、請求そのものが必要なくなります。

受注のたびに通す3つの動作
  • 依頼を受けたら、自分から「条件の確認です」と9項目ベースの短い返信を送る
  • 相手からの明示が届いたら、その日のうちにスクリーンショットと本文を保存する
  • 支払期日が受領日から60日以内か、検査完了日が書かれているかを毎回チェックする

1つ目がとくに効きます。相手の明示を待つのではなく、こちらから「このように理解しています」と条件を並べて送り、確認の返信をもらう形にすると、やり取りそのものが記録になります。相手にとっても、ゼロから書面を作るより返信するほうが早く、断られにくいです。

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催促というより、確認の連絡として送ればいいのか

受注時のテンプレートを一度作ってしまえば、案件ごとに数字を差し替えるだけで済みます。書面が出てこない相手にも、出てくる相手にも同じ文面で通せるので、関係を気にせず運用できます。

最後に一点だけ補足します。この記事で扱った内容は2024年11月1日施行の法律と、公正取引委員会が公開しているQ&Aに基づいています。運用の詳細やQ&Aは更新されることがあるため、実際に窓口へ相談する前には公正取引委員会のパンフレットなど一次情報で最新の記載を確認してください。

よくある質問

フリーランス新法の取引条件明示は、副業の会社員にも適用されますか?

適用されます。フリーランス新法が守る「特定受託事業者」は従業員を使用しない個人または一人法人を指し、会社員が個人として業務委託を受けている場合も含まれます。開業届の有無は要件ではありません。

契約書がなく、メールやチャットだけの条件提示でも法律上は有効ですか?

有効です。フリーランス新法は書面または電磁的方法のいずれかでの明示を認めており、電子メール、Slackなどのチャットツール、SMS、SNSやアプリのメッセージ機能も電磁的方法の例に挙げられています。ただし受け取った側が内容を出力・保存できる状態である必要があるため、スクリーンショット等での保存が推奨されます。

発注元が明示してくれない場合、まず何をすればいいですか?

発注事業者には明示義務があるため、まず自分から書面または電磁的方法での明示を請求できます。不足している項目(支払期日や検査完了日など)を具体的に挙げて依頼し、返答は保存しておきます。それでも応じてもらえない場合は、フリーランス・トラブル110番や公正取引委員会の相談窓口に相談します。

報酬の支払期日はいつまでに設定される必要がありますか?

給付を受領した日から起算して60日以内の、できるだけ短い期間内に定めることが義務づけられています。受領日から60日を超える支払期日を提示された場合は、条件そのものが法の求める範囲から外れていることになります。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。