フリーランス新法、発注者に課される7つの義務と相談先
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フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は2024年11月1日に施行され、発注事業者には取引条件の書面等での明示、受領日から60日以内の報酬支払い、6か月以上の契約を解除する際の30日前予告など、要件に応じた義務が課されています。買いたたきや不当な減額など7つの禁止行為も定められ、違反すれば助言・指導・勧告・命令の措置がとられ、命令違反には50万円以下の罰金があります。困ったときは厚生労働省委託の無料窓口「フリーランス・トラブル110番」(0120-532-110)に弁護士へ相談できます。
個人で仕事を受けていると、条件の話を切り出すこと自体が気まずくなりがちです。次も声をかけてもらえるだろうかと考えると、確認したいことも飲み込んでしまう。正直なところ、交渉の上手さで守られる範囲が決まってしまうのは、しんどい話です。
ところが2024年11月1日から、この「言いにくさ」の多くは法律の側が引き受けてくれるようになりました。条件を書面等で示すことも、報酬を期日までに払うことも、こちらがお願いすることではなく、発注する側の義務になったからです。義務の中身を知っていれば、交渉ではなく確認として話せます。
フリーランス新法とは?何がどう変わった法律か
正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。長いので、フリーランス新法、あるいはフリーランス・事業者間取引適正化等法と呼ばれることが多い法律です。2023年4月28日に成立し、2024年11月1日に施行されました。
対象になるのは、業務委託をする「発注事業者」と、従業員を使用しない個人・法人である「フリーランス(法律上は特定受託事業者と呼びます)」との間の取引です。事業者どうしの取引が対象なので、一般の消費者から直接依頼を受けた仕事や、自分が消費者に商品を売る取引は範囲の外になります。
ここでひとつ、下請法(下請代金支払遅延等防止法)を思い浮かべた人もいるかもしれません。似た趣旨の法律ですが、決定的な違いがあります。下請法は発注側の資本金が一定以上でないと適用されませんが、フリーランス新法には資本金による線引きがありません。従業員を使用している発注者であれば、規模が小さくても広く義務がかかります。取引先が中小企業だから守ってもらえない、という状況が減ったということです。
発注者に課された義務は具体的に何か?
義務は7つあります。ただし全部が全ての取引にかかるわけではなく、発注者が従業員を使用しているか、契約期間がどれくらいかによって、かかる義務が変わります。ここが少しややこしいので、まず適用の条件ごとに整理します。
| 義務の内容 | 適用される条件 |
|---|---|
| 取引条件の明示 | 業務委託をする全ての発注事業者 |
| ハラスメント対策(相談窓口の設置等) | 全ての業務委託契約 |
| 報酬の60日以内の支払い | 従業員を使用する発注事業者 |
| 募集情報の的確表示 | 従業員を使用する発注事業者 |
| 7つの禁止行為をしないこと | 従業員を使用する発注事業者との契約期間1か月以上 |
| 育児・介護等との両立への配慮 | 契約期間6か月以上(6か月未満は努力義務) |
| 中途解除等の30日前予告 | 契約期間6か月以上 |
公正取引委員会ほかの公表資料をもとに作成
上の表のとおり、取引条件の明示とハラスメント対策は、相手の規模や契約の長さに関係なくかかります。個人の発注者から短期で受けた仕事であっても、条件を示してもらうことは求めていい、ということです。
取引条件の明示義務(全ての発注者が対象)
業務委託をしたら「直ちに」、書面または電磁的方法で取引条件を示す義務があります。電磁的方法というのは、メール、チャット、クラウド契約システムなどのことです。紙の契約書を交わさないと成立しない、という話ではありません。
示すべき項目は9つあります。発注者・受注者の氏名、業務委託をした日、業務の内容、納期、給付を受ける場所、検査を完了する期日、報酬の額、支払期日などです。つまり「金額は後で相談しましょう」で作業を始めさせることは、法律の想定していない進め方です。
- 業務の内容と、どこまでやれば完了とみなされるか
- 納期と、検査が完了する期日
- 報酬の額(税込か税別かも)
- 支払期日(いつ振り込まれるか)
- これらがメール等の記録に残る形になっているか
報酬の期日払い(従業員を使用する発注者が対象)
納品物を受け取った日から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に支払期日を定め、その日までに支払う義務があります。「60日ならいいのか」と読めてしまいますが、条文が求めているのは上限としての60日であって、できるだけ短くすることが前提です。
発注者が他社から受けた仕事を再委託しているケースには別の基準があり、元の委託の支払期日から30日以内とされています。元請けの入金待ちだから、という理由で無期限に待たされる構造を断つための決まりです。
7つの禁止行為(契約期間1か月以上が対象)
従業員を使用する発注者が、1か月以上の契約で次の行為をすることは禁じられています。名前だけだと分かりにくいので、実際に起きる場面と並べます。
| 受領拒否 | 納品したものを、こちらに落ち度がないのに受け取らない |
|---|---|
| 報酬の不当な減額 | 合意した金額を後から一方的に削る |
| 不当返品 | いったん受け取ったものを理由なく返す |
| 買いたたき | 相場と比べて著しく低い額を一方的に決める |
| 購入・利用強制 | 指定の商品やサービスを買わせる |
| 不当な経済上の利益の提供要請 | 金銭や役務を無償で提供させる |
| 不当な給付内容の変更・やり直し | 費用を負担せずに作り直させる |
公正取引委員会の公表資料をもとに作成
修正のやり直しが延々と続いて疲弊する、という悩みは個人で受注していると珍しくありません。追加の指示が当初の業務内容を超えていて、しかも費用が出ないのであれば、それは最後の行にあたる可能性があります。
中途解除の事前予告(契約期間6か月以上が対象)
6か月以上の契約を途中で解除する場合、あるいは更新しない場合は、少なくとも30日前までに書面または電磁的方法で予告する義務があります。さらに、こちらが理由の開示を求めたら、発注者は理由を開示しなければなりません。
継続案件が一本抜けると生活に直撃します。30日という猶予は、次を探す時間として使えるものです。
守られなかったらどうなる?罰則の仕組み
違反があった場合、行政は段階を踏んで対応します。助言 → 指導 → 勧告 → 命令という順です。命令にも従わない場合には、企業名などが公表されます。
さらに、命令に違反した場合や、検査を拒否・妨害した場合には50万円以下の罰金が定められています。両罰規定があるため、従業員が違反した場合に法人も責任を問われる形です。金額そのものより、行政の調査対象になり社名が公表されうるという点が、発注側にとっての実質的な圧力になります。
この法律を所管しているのは、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の3つです。相手企業に直接ぶつけなくても、外部に持ち込む道がある、と理解しておけば十分です。
報酬が支払われない。どこに相談すればいい?
いちばん現実的で、費用がかからない入口が「フリーランス・トラブル110番」です。厚生労働省が第二東京弁護士会に委託して運営している窓口で、2020年11月から続いています。
- 電話:0120-532-110(通話料無料)
- 受付:9:30〜16:30(土日祝日を除く)
- 相談内容:契約トラブル、報酬の未払い、ハラスメントなど
- 費用:弁護士への相談は無料
- 和解あっせん手続き(当事者間の話し合いを仲介する手続き)も無料で利用できる
「揉めごとにしたいわけではないけれど、どう言えばいいかわからない」という段階で使える窓口です。訴訟の前段階として和解あっせんが用意されているのも、個人にとっては現実的な選択肢になります。
法律の条文や適用範囲そのものを確認したいときは、公正取引委員会が運営するフリーランス法の特設サイトに、解説と相談窓口の情報がまとまっています。
今日からできる、揉めないための準備
法律があっても、記録が何もないと主張は通りにくくなります。逆に言えば、記録さえ残していれば、交渉が苦手でも立場は保てます。
- 受注のやりとりをメール等に残す電話や口頭で決めたことは、その日のうちに「本日お話しした内容の確認です」とメールで送る。これだけで電磁的方法による記録になります。
- 9項目がそろっているか確かめる業務内容・納期・検査完了期日・報酬額・支払期日。抜けがあれば「支払期日だけご教示ください」と項目名で聞く。義務なので、催促ではなく確認です。
- 支払期日を受領日から数えておく納品日をカレンダーに記録し、60日を超える設定になっていないかを見る。超えていれば、その時点で指摘できます。
- 追加指示は都度その場で扱う当初の業務内容を超える修正が来たら「範囲外なので費用と納期を再調整させてください」と一度で返す。ためると言い出しにくくなります。
- 行き詰まったら外部の窓口へ自分で押し返すのが難しいと感じた段階で、フリーランス・トラブル110番に相談する。無料なので、決断する前の情報収集として使えます。
フリーランス新法は事業者間の取引が対象なので、一般の消費者から直接受けた依頼は範囲の外です。また、義務の一部は発注者が従業員を使用しているかどうか、契約期間が1か月・6か月以上かどうかで適用が分かれます。個人の発注者から受けた3か月の仕事では、条件明示とハラスメント対策はかかっても、60日以内の支払い義務はかかりません。
もうひとつ。法律が守ってくれるのは手続きの公正さであって、単価そのものではありません。買いたたきの禁止はありますが、水準の低い契約を自分で結んでしまった場合まで巻き戻せるものではないので、条件の確認は最初にしておくのが結局いちばん早い道です。
条件を聞くことも、期日を確かめることも、相手に無理を言う行為ではなくなりました。知っているというだけで、切り出すときの言葉は変わります。まずは次に受ける1件で、支払期日を書面に残すところから始めてみてください。
よくある質問
フリーランス新法はいつから施行されていますか?
フリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は2023年4月28日に成立し、2024年11月1日に施行されました。施行日以降の業務委託が対象になります。
報酬はいつまでに支払われる決まりですか?
従業員を使用する発注事業者は、フリーランスから給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、その期日までに報酬を支払う義務があります。発注者が他社から受けた仕事を再委託している場合は、元の委託の支払期日から30日以内が基準です。
契約を突然打ち切られた場合、法律上はどう扱われますか?
契約期間が6か月以上の場合、発注事業者は契約を解除するときや更新しないときに、少なくとも30日前までに書面または電磁的方法で予告する義務があります。フリーランス側が理由の開示を求めた場合、発注者は理由を開示しなければなりません。
報酬が支払われないとき、無料で相談できる窓口はありますか?
厚生労働省が第二東京弁護士会に委託して運営する「フリーランス・トラブル110番」(電話0120-532-110、受付9:30〜16:30・土日祝日を除く)で、弁護士に無料で相談できます。当事者間の話し合いを仲介する和解あっせん手続きも無料で利用できます。
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