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フリーランスの保険、新労災特別加入など3つの柱

2026年7月21日|いろは堂副業編集部
オフィスでパソコン作業をする男性

画像出典: パブリックドメイン(Wikimedia Commons)

この記事の要点
フリーランスが自分で用意する保険は「労災保険の特別加入」「賠償責任保険」「所得補償保険・就業不能保険」の3つに整理できます。労災は2024年11月の制度改正で全業種のフリーランスが特別加入できるようになり、保険料は選んだ給付基礎日額の365日分に0.3%を掛けた額です。賠償責任保険は団体の会員特典に含まれる形でも用意でき、休業時の収入減には所得補償・就業不能保険が対応します。
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会社を辞めて独立したけど、ケガや病気で働けなくなったらどうなるんだろう…。保険って何に入ればいいの?

会社員のときは、給与から自動で天引きされる形で守られていました。仕事中のケガなら労災保険、病気で長く休めば健康保険の傷病手当金。手続きの記憶がほとんどないのは、会社が代わりに整えてくれていたからです。

独立すると、その「自動で守られる仕組み」がいったん外れます。ただし、代わりになる制度がないわけではありません。フリーランスが自分で選べる備えは、大きく3つに分かれています。この3つを知ってから、必要なものだけ選べば十分です。

フリーランスに保険は必要?会社員との違いは何か

まず前提を合わせます。会社員が持っている公的なセーフティネットは、主に労災保険(仕事中のケガ・病気)、健康保険の傷病手当金(私生活での病気で働けない期間の所得補填)、雇用保険(失業時)の3つです。保険料は労使折半で、加入手続きも会社が行います。

フリーランス(個人事業主)になると、このうち労災保険は「任意の特別加入」に変わり、傷病手当金は国民健康保険には原則ありません。つまり病気やケガで働けない期間の収入がまるごと途絶えるリスクは、会社員より大きくなります。だからこそ、自衛としての保険が勧められています。

そのうえで、失われた保障を補う形で選ぶのが次の3つです。

フリーランスが自分で選ぶ3つの備え
  • 労災保険の特別加入 — 仕事中・通勤中のケガや病気に備える(公的制度)
  • 賠償責任保険 — 納品物の不具合や情報漏洩で損害賠償を求められたときに備える(民間保険)
  • 所得補償保険・就業不能保険 — 働けない期間の収入減に備える(民間保険)

順番に、しくみと入り方を見ていきます。

労災保険の特別加入とは?全業種が対象になった

労災保険は本来、雇われて働く人のための制度です。ただし実態として労働者に近い働き方をする人向けに、任意で入れる「特別加入」という枠が用意されています。

ここが2024年11月に大きく変わりました。労働者災害補償保険法施行規則の改正で、第2種特別加入(一人親方等)の対象に「特定フリーランス事業」が新設され、企業から業務委託を受けるフリーランスが業種を問わず特別加入できるようになりました。以前は建設業など特定の職種に限られていた入口が、全業種に開いた形です。

対象職種に制限はありません。ITエンジニア、Webデザイナー、カメラマン、ライター、コンサルタント、講師など、幅広い業種が含まれます。

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在宅で原稿を書いてるだけでも、労災って関係あるのかな。

在宅中心の仕事でも、労災の想定範囲に入る場面はあります。取材や打ち合わせで移動する日、撮影現場に入る日、常駐先へ通う日 — 業務や通勤の途中で起きた事故は補償の対象として想定されています。デスクワーク中心でも、外に出る日が月に数日あるなら検討する価値はあります。

保険料はいくら?計算のしかた

保険料は、自分で選ぶ「給付基礎日額」で決まります。給付基礎日額とは、補償額の計算のもとになる1日あたりの金額のことです。3,500円〜25,000円の16段階から希望額を選び、都道府県労働局長の承認を受けて決まります。

計算式はシンプルです。

年間保険料の計算式
  • 給付基礎日額 × 365日 × 0.3%(特定フリーランス事業の保険料率)
  • 例:日額10,000円を選んだ場合 → 10,000円 × 365日 × 0.3% = 年10,950円
  • 例:日額5,000円を選んだ場合 → 5,000円 × 365日 × 0.3% = 年5,475円

日額を高く設定するほど、いざというときの給付も保険料も上がります。上の計算式に自分の希望額を当てはめれば、年間いくらかはその場で出せます。

加入手続きの流れ

ひとつ注意点があります。労災保険の特別加入は、個人が直接申し込むことができません。厚生労働省が公表する「特別加入団体」を通して申し込む決まりです。手続きの流れはこうなります。

  1. 特別加入団体を探す厚生労働省が公表している特別加入団体の一覧から、自分の事業に対応する団体を選びます。フリーランス向けには「フリーランス労災保険組合」のような専用の加入窓口も用意されています。
  2. 団体に加入を申し込む団体の入会手続きを行います。団体によっては入会金・年会費が別途かかるため、労災の保険料と合わせた総額で確認しておきます。
  3. 給付基礎日額を選ぶ3,500円〜25,000円の16段階から希望額を申請します。上の計算式で年間保険料を試算してから決めると迷いません。
  4. 団体経由で申請・承認団体がまとめて労働局へ申請し、承認されると加入が成立します。承認は都道府県労働局長が行います。

賠償責任保険はどんなときに使う?

次は、自分がケガをする側ではなく、相手に損害を与えてしまう側のリスクです。仕事をしていると、意図せず誰かに損害を与える可能性がついて回ります。

賠償責任保険が補償するのは、業務遂行中に生じた偶然な事故に起因する法律上の損害賠償責任です。具体的には対物・対人の事故、情報漏洩、納品物の瑕疵(欠陥)、著作権侵害、納期遅延などが対象に挙げられます。損害賠償金だけでなく、争訟費用(訴訟・調停・和解・仲裁にかかる費用)もカバーされる設計が一般的です。

補償対象として挙げられている例
  • 自転車で配達中に起こした事故
  • 育児・家事代行の業務中に起きた事故
  • 納品したシステムの瑕疵によって発注者に生じた損害

ここで参考になるのが、フリーランス協会の会員特典です。年会費10,000円の一般会員には、最大1億円の賠償責任保険最大70万円の報酬トラブル弁護士費用保険が自動付帯します。個別に保険商品を選ぶ前に、こうした団体の会員特典で必要十分かどうかを確認しておくと、比較の基準ができます。

向いていないケースもあります

賠償責任保険は「事故が起きたときの金銭的な後始末」を引き受ける保険であって、トラブルそのものを防ぐものではありません。取引先とのやりとりでよくある揉め事 — 修正範囲の食い違いや報酬の未払い — は、契約書での取り決めや業務の進め方で減らすほうが先です。保険に入ったから安心、と契約の詰めを省略すると本末転倒になります。

働けない期間の収入はどう備える?所得補償保険と就業不能保険

3つ目が、収入そのものが止まったときの備えです。会社員なら健康保険の傷病手当金がありますが、フリーランスにはこれに当たる公的な休業補償制度がありません。入院した月の請求書がゼロになる、という事態が現実に起こり得ます。

ここで選択肢になるのが、所得補償保険と就業不能保険です。名前が似ていますが、提供元も設計思想も違います。

所得補償保険就業不能保険
主な取扱会社損害保険会社生命保険会社
得意なリスク比較的短期の就業不能にも対応しやすい長期の療養リスクに強い
保険料の傾向やや高めになりやすいコストパフォーマンスが良い傾向

どちらが正解というものではなく、「短期の穴を埋めたいのか、長期療養に備えたいのか」で選び分けるのが実務的です。数か月の入院で貯金が尽きる状態なら短期寄り、当面の生活費は確保できていて長期のリスクが怖いなら長期寄り、という判断になります。

精神疾患は対象外のことが多い

多くの所得補償保険は、精神疾患を保障の対象外としています。長時間労働や納期のプレッシャーが続く働き方をしているなら、ここは見落とせません。精神疾患による就業不能まで備えたい場合は、「精神疾患対応」と明記された就業不能保険を選ぶ必要があります。パンフレットの表紙ではなく、保障対象外が書かれたページを必ず確認してください。

3つのうち、どれから入ればいい?

全部いっぺんに入る必要はありません。判断の順番はこう考えると整理できます。

  1. まず労災保険の特別加入を検討する公的制度で、保険料の計算式が明確で、日額を低めに設定すれば負担も抑えられます。外出や現場作業がある働き方なら優先度は高くなります。
  2. 次に賠償責任保険を確認する納品物が相手の事業に組み込まれる仕事(システム開発、Web制作など)や、他人の場所・物に関わる仕事は必要性が上がります。団体の会員特典に含まれていないか先に確認します。
  3. 最後に所得補償・就業不能保険を検討する「働けない期間が何か月続いたら生活が破綻するか」を自分の貯蓄額から逆算し、その期間を埋める設計にします。ここが最も金額が大きくなりやすいので、必要な保障期間を見極めてから選びます。
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全部の保険を今日中に決めなきゃ、って思ってたけど、順番があるなら考えられそう。

いきなり契約する必要もありません。まずは厚生労働省が公表する特別加入団体の一覧を開いて、自分の業種に対応する窓口があるかを見るところからで十分です。年間保険料は上の計算式で自分で出せるので、金額を知ってから決められます。

備えが整うと、案件はどう増やせる?

保険はリスクを抑えるための道具ですが、効果はそこで終わりません。賠償責任保険に入っていることは、発注側から見れば「この人に任せても大丈夫」という材料になります。企業案件では契約時に賠償責任保険の有無を確認されることもあり、そこで答えられる状態は仕事を受けられる範囲を広げます。

独立してから最初の1案件までの導線は、次の順で組むと詰まりにくくなります。

  1. 受けられる仕事を1行で言えるようにする「Webライター」ではなく「SaaSの導入事例記事を書けるライター」のように、対象と成果物を絞ります。絞ったほうが声はかかりやすくなります。
  2. 見せられる成果物を3点そろえる過去の実務が出せないなら、想定クライアント向けのサンプルを自作して構いません。判断されるのは実績の有無より、出せる品質です。
  3. 元の勤務先・知人へ先に声をかける最初の1件は、実力を知っている相手から来ることが多いです。募集を探すより、面識のある相手に「こういう仕事を受けています」と伝えるほうが早く決まります。
  4. 並行してエージェント・クラウドソーシングに登録する1つの窓口に絞らず複数を開けておきます。単価は後から交渉できるので、まずは取引実績を作ることを優先します。
  5. 受注前に条件を書面にする成果物の範囲、納期、修正回数と追加費用、著作権の帰属を契約書に明記します。ここを詰めておくと、あとの消耗が大きく減ります。

案件が続く状態になれば、単価交渉も継続契約も現実的な話になります。会社員時代の年収を超える人がいるのは、稼働時間ではなく受けられる仕事の幅と単価を自分で決められるからです。保険を整えることは、その幅を広げる手順のひとつでもあります。

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守りを固めてから、受けられる仕事を増やしにいけばいいのか。

独立後の不安は、実際のところ「何が起きるか分からない」ことより「起きたときにどうなるか分からない」ことから来ています。3つの備えの守備範囲を知っておけば、その分だけ不安の輪郭ははっきりします。

働き方の土台が整ったら、国民健康保険・年金の切り替え共済・iDeCoによる備えと合わせて、全体像を一度書き出してみてください。抜けているところが見えてきます。

よくある質問

フリーランスは労災保険に入れますか?

入れます。2024年11月1日の労働者災害補償保険法施行規則の改正により、第2種特別加入(一人親方等)の対象に「特定フリーランス事業」が新設され、企業から業務委託を受ける全業種のフリーランスが労災保険の特別加入対象になりました。対象職種に制限はなく、ITエンジニア、Webデザイナー、カメラマン、ライター、コンサルタント、講師などが含まれます。

労災保険の特別加入の保険料はいくらですか?

保険料は「給付基礎日額の365日分の0.3%」で計算します。給付基礎日額は3,500円〜25,000円の16段階から選び、都道府県労働局長の承認を受けて決まります。たとえば日額10,000円を選ぶと、年間保険料は10,000円×365日×0.3%で10,950円になります。

労災保険の特別加入は個人で申し込めますか?

個人で直接申し込むことはできません。厚生労働省が公表している「特別加入団体」を通じて申し込む必要があります。フリーランス向けには「フリーランス労災保険組合」のような専用の加入窓口も用意されています。団体によって入会金や年会費が別にかかる場合があるため、労災の保険料と合わせた総額で確認してください。

所得補償保険と就業不能保険の違いは何ですか?

所得補償保険は主に損害保険会社が、就業不能保険は主に生命保険会社が取り扱う商品カテゴリです。傾向として、就業不能保険は長期療養リスクに強くコストパフォーマンスが良い一方、所得補償保険は比較的短期のリスクにも対応しやすい代わりに保険料はやや高めになりやすいとされます。また多くの所得補償保険は精神疾患を保障対象外としているため、精神疾患まで備えたい場合は「精神疾患対応」と明記された就業不能保険を選ぶ必要があります。

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