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小規模企業共済とiDeCo、フリーランスの備え4制度の違い

2026年8月6日|いろは堂副業編集部
机上の書類を見ながら電卓を持つ一人の手元のクローズアップ

画像出典: Mikhail Nilov / Pexels

この記事の要点
フリーランスが退職金・厚生年金の上乗せの代わりに使える公的な制度は、小規模企業共済(掛金月1,000〜70,000円・全額所得控除)、付加年金(月400円)、国民年金基金、iDeCo(第1号は月68,000円が上限)の4つです。付加年金と国民年金基金は同時加入できず、小規模企業共済とiDeCoは併用できます。加入期間が短いと元本割れする制度もあるため、掛金額は無理のない範囲から決めるのが基本です。
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会社員をやめてから、退職金も厚生年金もないことに気づいて。老後の分って自分で何を使えばいいんだろう…

会社員のときは、給与から天引きされる厚生年金が老齢基礎年金の上に積み上がり、会社によっては退職金も出ていました。フリーランス(国民年金第1号被保険者)になると、この2階部分と退職金がまるごと自分の選択になります。

ただ、代わりになる公的な制度は用意されています。小規模企業共済・付加年金・国民年金基金・iDeCoの4つが、フリーランスが使える「上乗せ」の柱です。それぞれ役割も掛金の桁も違うので、まず何がどの位置にある制度なのかを揃えてから、自分に合う組み合わせを決めていきます。

フリーランスの年金は会社員と何が違う?

公的年金はよく建物にたとえられます。1階が全員共通の国民年金(老齢基礎年金)、2階が会社員だけの厚生年金です。会社員をやめると、この2階がそこで止まります。

さらに退職金は法律で義務づけられた制度ではなく、会社が任意で用意しているものです。フリーランスになると当然ながら支払う相手がいません。つまり「2階部分」と「退職金」の両方を、自分で積み立てる形に置き換えることになります。

ここまでが会社員との差です。ここから先で扱う4つの制度は、この空いた2階と退職金をそれぞれ別の角度から埋めるものだと考えてください。

開業から最初の1件を受けるまでに何をする?

備えの制度はどれも、毎月いくらか掛けられる収入があって初めて動き出します。会社をやめた直後は、まず事業として動ける状態を作るところが先です。ここは手続きと営業の2本立てで、順番に進めれば最初の案件まで届きます。

  1. 開業届を出す事業を始めたら、税務署へ個人事業の開業・廃業等届出書を提出します。あわせて「青色申告承認申請書」(帳簿をきちんとつける代わりに税制上の優遇を受けるための届出)も出しておくと、確定申告で「青色申告特別控除」(要件を満たすと所得から一定額を差し引ける優遇)を使えます。提出期限は国税庁の案内で確認してください。
  2. 国民健康保険・国民年金へ切り替える退職日の翌日から14日以内に、住民票のある市区町村の窓口で手続きします。健康保険は会社発行の資格喪失証明書、年金は基礎年金番号がわかるものと退職日がわかる書類を持参します。ここで第1号被保険者になって初めて、付加年金や国民年金基金の対象になります。
  3. 屋号の口座と請求書のひな形を用意する事業用の入出金を私生活と分けておくと、帳簿づけが一気に楽になります。請求書は、宛名・件名・数量・単価・消費税・振込先・支払期限が入った1枚をひな形として作っておきます。
  4. 実績になる見本をそろえる受注前に見せられるものがないと、単価の交渉ができません。前職で扱った内容そのものは出せないので、同種の題材で自作したサンプルをいくつか用意します。文章なら記事、デザインならバナー、といった単位です。
  5. クラウドソーシングと知人経由の両方に出す最初の1件は、実績が要らない小さめの案件から取りに行きます。クラウドソーシングで応募文に見本を添えて出しつつ、前職の取引先・同僚に「こういう仕事を受けています」と一言伝えておくと、単価の高い直請けはこちらから来ることが多いです。
  6. 受注前に条件を文面で確認する作業範囲・納期・修正回数・報酬額・支払日を、着手前にメールかチャットで文字にして双方が了解した状態にします。ここを口頭で流すと、修正が無制限に増える形になりがちです。

最初の1件が入って毎月の収入の見当がついたら、そこから下の備えの制度に回す金額を決めます。順番としては、収入の土台が先、積立の制度は後です。

退職金の代わりになるのは小規模企業共済?

4つのうち、いちばん「退職金」に近い性格なのが小規模企業共済です。中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、中小企業経営者や個人事業主向けの積立式の制度で、フリーランスも対象になります。

小規模企業共済の基本
  • 掛金は月額1,000円〜70,000円の範囲で、500円単位で設定・増減できる
  • 掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象(1年以内の前納分も同様)
  • 受け取りは一括か分割(分割は要件あり)を選べる
  • 一括受取りは退職所得(退職金として受け取るお金の所得区分で、税負担が軽く計算される)、分割受取りは公的年金等の雑所得(年金として受け取るお金の所得区分)として扱われ、いずれも税制上優遇される

中小機構の試算例では、掛金納付年数30年・掛金合計360万円で事由が「事業の廃業」の場合、共済金は約434.8万円になります。月1万円ずつ積み上げた結果、掛金の合計を約74.8万円上回る計算です。会社員の退職金にあたる部分を、月1万円という現実的な金額から自分で作れるということでもあります。ただしこれはあくまで一定の条件での試算であり、納付年数や解約の事由によって金額は変わります。

向いていないケースもあります

小規模企業共済は、加入期間が短いうちに任意解約すると受け取る額が掛金の合計を下回ることがあります。どの事由でどれだけ納めた場合にそうなるかは制度の支給要件で決まるため、数年以内に使う予定のお金を入れる場所ではない、と考えておくのが安全です。開業直後で収入が読めないうちは、月1,000円から始めて後から増額する使い方もできます。加入前に中小機構の公式サイトで、解約事由ごとの支給要件を必ず確認してください。

月400円で年金を増やせる付加年金とは?

付加年金は、国民年金第1号被保険者と任意加入被保険者(自営業・フリーランス、60〜65歳未満の任意加入者など)が対象の制度です。毎月の国民年金保険料に月額400円を上乗せして納めると、将来受け取る老齢基礎年金が増えます。

増額分は「200円×付加保険料を納めた月数」が毎年の年金額に加算されるしくみとして広く解説されています。金額が小さいぶん、始めるハードルは4つの中でいちばん低い制度です。ちなみに2026年度の国民年金保険料は月額17,920円で、付加年金はこれに400円を足す形になります。

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400円って安すぎない?やらない理由がある人っているの?

唯一の制約が、次に説明する国民年金基金との関係です。両方に入ることはできません。

国民年金基金と付加年金はどちらを選ぶ?

国民年金基金は、第1号被保険者(自営業者・フリーランス・学生など)が国民年金に上乗せするための公的な年金制度です。加入は口数制(1口・2口…という単位で申し込み、口数に応じて掛金と将来受け取る年金額が決まるしくみ)で、受け取る年金額や受け取り方の「型」を自分で選べます。付加年金より自由度が高く、掛ける金額も大きく設定できます。

ここが分かれ道で、付加年金と国民年金基金は同時に加入できません。国民年金基金の1口目には付加年金に相当する部分がすでに含まれているため、基金に加入すると付加年金は自動的に脱退になります。「どちらも少しずつ」という組み方はできない、と覚えておいてください。

iDeCoと小規模企業共済は併用できる?

自営業・フリーランス(第1号被保険者)のiDeCoの掛金上限は月額68,000円です。ただしこれは国民年金基金の掛金や付加保険料と合算しての上限なので、国民年金基金を大きく掛けながらiDeCoも満額、という使い方はできません。上乗せの2階部分は、全体で1つの枠を分け合うイメージです。

一方で、小規模企業共済とiDeCoは制度として併用できます。小規模企業共済の上限が年84万円、iDeCoの上限目安が年81.6万円なので、両方を使い切れば年間165万円を超える所得控除枠になり得ます。事業が伸びて所得が大きくなった年ほど、この枠を使い切れる余地が出てきます。ただしこれは満額拠出した場合の枠の話で、実際にそこまで掛けられるかは所得と生活費次第です。

制度掛金・加入単位他制度との関係
付加年金月額400円の定額国民年金基金と同時加入不可
国民年金基金口数制(型と口数を選択)付加年金と同時加入不可
小規模企業共済月1,000〜70,000円iDeCoと併用可
iDeCo(第1号)月68,000円が上限国民年金基金・付加保険料と合算での上限

中小機構・日本年金機構・全国国民年金基金の公表情報をもとに作成

  1. まず加入区分を確認する国民年金第1号被保険者になっているかを、市区町村役場での種別変更が済んでいるかで確認します。ここが済んでいないと、そもそも上乗せの制度に入れません。
  2. 月400円の付加年金を検討する国民年金基金に入る予定がないなら、金額の負担が最も軽い選択肢です。基金を選ぶ場合は、付加年金は自動的に外れます。
  3. 退職金の代わりを小規模企業共済で作る月1,000円から始められるので、収入が安定しない時期でも枠だけ確保できます。増減は500円単位で後から変えられます。
  4. 余力が出たらiDeCoを足す小規模企業共済と併用できるため、所得控除を厚くしたい段階で検討します。国民年金基金・付加保険料との合算上限に注意します。
先に押さえておきたいこと

これらはいずれも、原則として老後や廃業まで引き出せないお金です。ここに厚く回すより先に、数ヶ月分の生活費を手元に置いておくほうが、フリーランスの安定には効きます。また、掛金による節税効果は「所得があること」が前提です。所得が少ない年は控除の効果も小さくなります。加入要件や金額は改定されることがあるため、申し込み前に中小機構・日本年金機構・全国国民年金基金の公式サイトで最新の内容を確認してください。

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全部いきなり埋めなくていいんだ。順番があるってわかるだけで気が楽になった

4つの制度は、どれか1つを選んで終わりというものではありません。金額の小さい付加年金から入って、退職金相当を小規模企業共済で作り、余力に応じてiDeCoを足す——という積み上げ方ができます。まずは自分が第1号被保険者としてどの枠を使える状態にあるかを、公式サイトで確認するところからで十分です。

よくある質問

フリーランスに退職金制度はありますか?

会社が支払う退職金はありませんが、中小企業基盤整備機構が運営する小規模企業共済が、個人事業主向けの積立式の退職金制度として用意されています。掛金は月額1,000円〜70,000円の範囲で500円単位に設定でき、全額が所得控除の対象になります。

付加年金と国民年金基金は両方に加入できますか?

できません。国民年金基金の1口目には付加年金に相当する部分が含まれているため、国民年金基金に加入すると付加年金は自動的に脱退となります。どちらか一方を選ぶ形になります。

小規模企業共済とiDeCoは併用できますか?

併用できます。小規模企業共済の掛金上限は年84万円、iDeCoの掛金上限の目安は年81.6万円で、両方を使い切ると年間165万円を超える所得控除枠になり得ます。ただしiDeCoの上限は国民年金基金の掛金や付加保険料と合算しての金額です。

小規模企業共済で元本割れすることはありますか?

あります。加入期間が短いうちに任意解約した場合、受け取る額が掛金の合計を下回ることがあります。どの解約事由・納付年数でいくら支給されるかは制度の支給要件で決まるため、加入前に中小機構の公式サイトで確認してください。

※記事で使用した内容・数値は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。