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防災の日に見直す、収入ゼロに備える3つの対策

2026年9月1日|いろは堂副業編集部
木製テーブルに置かれた総務省統計局の家計調査の家計簿冊子。

画像出典: 写真: Chihaya Sta(CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons)

この記事の要点
フリーランスには会社員の傷病手当金(給与の概ね3分の2を最大1年6か月)にあたる制度がなく、働けない期間の収入はそのままゼロになります。備えの柱は、生活費6か月分の現金、月1,000円から始められて掛金が全額所得控除になる小規模企業共済、短期の休業に対応する所得補償保険の3つです。加えて売上の取引先分散が、災害時にいちばん効く保険になります。
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台風で丸一週間まともに動けなかった。あの月、入金だけがきれいに消えたんですよね……

フリーランスの収入は、手を動かした分だけ入ってきます。裏返すと、手が止まった期間はそのまま売上ゼロということです。インフルエンザで寝込んだ10日間も、停電と断水で作業できなかった数日間も、誰も補填してくれません。

正直なところ、これは「気をつける」でどうにかなる問題ではありません。止まるときは止まります。だからこそ、止まった後の数か月をどう食いつなぐかを、動けているうちに決めておく話になります。9月1日の防災の日は、そのきっかけとしてちょうどいいタイミングです。

会社員とフリーランスで、何が決定的に違うのか?

まず前提をそろえます。会社員が病気やけがで働けなくなったとき、健康保険から傷病手当金が出ます。給与の概ね3分の2にあたる金額を、最大1年6か月受け取れる仕組みです。月30万円の人なら、ざっくり月20万円が続くイメージになります。

個人事業主・フリーランスが加入する国民健康保険には、この傷病手当金が基本的にありません。ここまでは同じ「健康保険」という言葉でも、ここから先が違います。働けない期間の生活費は、原則として自分で用意しておくものという設計になっているわけです。

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えっ、国保だと1円も出ないんですか?

公的な自動補填はない、というのが出発点です。そのうえで、民間の保険・共済・自分の現金という3つの層を積むのが実務的な備え方になります。層ごとに得意な期間が違うので、順番に見ていきます。

まず現金はいくら持てばいい?

最初にやることは保険選びではなく、生活防衛資金の確認です。理由は単純で、保険金や給付金は申請してから振り込まれるまでに時間がかかるから。倒れた翌日に入金される仕組みは存在しません。その空白を埋めるのが現金です。

生活防衛資金の目安(自分の数字を入れてみる)
  • 1か月の生活費(家賃・食費・光熱・通信・保険料)=   円
  • 1か月の固定的な事業経費(ツール代・サーバー代・地代)=   円
  • 上の合計 × 6か月=目標額
  • そのうち今すぐ引き出せる預金=   円
  • 差額(=これから積む額)=   円

6か月という数字は、体調不良からの復帰と、案件を取り直して入金が戻るまでの期間を足したものです。フリーランスは納品から入金まで翌月末・翌々月末というサイクルが普通なので、仕事を再開しても、口座にお金が戻るのはさらに1〜2か月先になります。ここを3か月分で見積もると、復帰直後に足りなくなります。

いきなり6か月分は重い、という場合は、まず1か月分を「絶対に手を付けない口座」に隔離するところから始めれば十分です。事業用口座と生活用口座を分けている人なら、3つ目の口座を作って自動入金を設定するのが手っ取り早い方法になります。

そしてこの現金が積み上がってくると、守り以上の効果が出ます。買い叩かれる条件の案件を断れるようになるのは、たいてい貯金が数か月分たまった人からです。「今月の家賃が危ない」状態では、相場より安い依頼にも頷くしかありません。3か月分でも用意できれば、単価交渉のテーブルで引く選択肢を持てます。

小規模企業共済と保険、どう組み合わせる?

中小機構が運営する小規模企業共済は、フリーランスが使える制度のなかでも性格がはっきりしています。請負契約(成果物を完成させて納める契約)や準委任契約(一定期間の作業や業務の遂行そのものを引き受ける契約)で仕事を受け、事業所得として申告している個人事業主なら加入できます。フリーランスが結ぶ業務委託契約は、たいていこのどちらかにあたります。

掛金月額1,000円〜70,000円(500円刻みで増減できる)
税制上の扱い掛金は全額が所得控除の対象
いざという時積立額の範囲内で低金利の貸付制度を利用できる

中小機構 小規模企業共済の公表情報をもとに作成

備えとして注目したいのは、上の表の「いざという時」にある貸付制度です。積み立てたお金をただ寝かせるのではなく、資金が必要になったときに積立額の範囲で借りられる設計になっています。事業資金だけでなく、収入が止まった局面の資金繰りにも使える性質の制度です。

そして掛金が全額所得控除になるため、備えながら課税所得を圧縮できます。月1,000円から始められて500円刻みで動かせるので、売上が細い月は下げ、良い月は上げるという運用ができるのも、収入が波打つフリーランスと相性のいいところです。

向いていないケースもあります

小規模企業共済は「すぐ引き出せる貯金」ではありません。掛金の払い込み期間が短いうちに任意解約すると、受け取れる共済金が掛金の総額を下回ることがあります。当面の生活費すら心もとない段階の人は、共済より先に、いつでも下ろせる預金を積むほうが先です。備えの順番は現金が先、共済が後だと考えてください。

就業不能保険と所得補償保険はどう違う?

民間の保険で収入の穴を埋める選択肢は、大きく2種類あります。名前が似ていて混同されやすいのですが、カバーする期間の長さが違います。

  1. 所得補償保険短期の就業不能に対応するタイプ。数か月単位で働けない状態が想定されており、骨折や入院のような「そこそこ長引くが復帰できる」ケースに向いています。
  2. 就業不能保険長期の就業不能状態に対し、一時金や年金の形式で給付を受けるタイプ。復帰まで年単位かかる、あるいは復帰が難しい状況を想定した備えです。

フリーランスがまず検討しやすいのは、発生確率の高い所得補償保険のほうです。2週間から数か月の離脱は、キャリアのうちに何度か起きる現実的な事象だからです。一方の就業不能保険は、扶養家族がいる人ほど検討する価値が上がります。

どちらを選ぶにせよ、確認したいのは支払対象になるまでの待機期間(免責期間)と、給付が続く期間です。ここが自分の生活防衛資金でつなげる長さと噛み合っていないと、保険料を払っているのに空白が残ります。現金で3か月しのげるなら、保険は3か月以降を厚くする、という組み合わせで考えると無駄が出ません。

いちばん効く備えは、取引先の数かもしれない

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保険も共済も入る前提として、そもそも売上が1社頼みなんですよね……

単一の取引先に依存した状態は、災害時にもっとも脆くなります。自分が無事でも、取引先の側が被災すれば発注は止まるからです。職種によって依存度には差があり、たとえば軽貨物ドライバーでは4分の1が1社依存の状態にあるという調査結果もあります。

フリーランス協会が継続的に公表している「フリーランス白書」の2026年版(2026年6月公開)では、年収帯の分布として「200〜400万円未満」が最多で約3割という実態が示されています。この層で1社が止まれば、生活はそのまま直撃を受けます。

取引先を2社から3社に増やすことは、保険料ゼロで受けられる分散投資です。しかも保険と違って、平時にも売上を押し上げます。備えとしての費用対効果でいえば、ここがいちばん高いと言っていい部分です。

効き方は売上の底上げだけではありません。取引先が3社あると、そのうち1社の条件が悪くなったときに「今回は見送ります」と言えます。1社依存で下げられた単価は飲むしかありませんが、3社あれば比較して選べる。相見積もりを取られる側から、依頼を選べる側へ回るということです。実際、単価を上げていく人はたいてい、新しい取引先で高い条件を引いたあと、既存先にもその水準を提示しています。

今月できる分散の一歩
  • 直近12か月の入金を取引先ごとに合計し、比率を出す(1社が5割超なら要注意)
  • 過去に取引があって今は止まっている先に、近況連絡を1通送る
  • 納品物のうち公開できるものを1点、ポートフォリオに追加する
  • 作業できない期間が出たときの連絡テンプレを用意しておく

4つ目は地味ですが効きます。災害や急病で納期に穴が開くとき、連絡が遅れるほど信用を失います。「現状・復帰見込み・代替案」の3点を埋めるだけの短い文面を下書きに入れておくと、動けない状態でもスマホから送れます。

これから独立する人は、最初の1案件まで何をすればいい?

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まだ会社員で、これから始める側です。備える以前に、そもそもどう1件目を取ればいいのか……

備えの話は、案件がある人だけのものではありません。むしろ収入が止まる前提の設計は、独立の初日から組み込むほうが安上がりです。会社員のうちに副業として1件目を取り、そのまま本業へ移すのが、収入ゼロの期間を作らない最短ルートになります。

  1. 売るものを1つに決める「できること全部」ではなく、依頼側が1行で発注できる形にします。「Webライティング」ではなく「BtoB SaaSの導入事例記事、3,000字」のように、成果物と分量まで書けると発注のハードルが下がります。
  2. 見せられる実物を3点そろえる実績がない段階では、実案件でなくてかまいません。想定クライアントを自分で設定して作った制作物で足ります。3点あると、依頼側は品質のばらつきを判断できます。
  3. 単価と稼働可能時間を先に決める会社員のうちは平日夜と週末で月40時間前後が現実的なライン。時間単価×稼働時間が、そのまま受けられる上限になります。ここを決めずに応募すると、赤字の条件で受けてしまいます。
  4. クラウドソーシングか知人経由で1件目を取る1件目は単価より「完了実績」が目的です。相場より低くても、納品して評価をもらうところまで走らせます。2件目以降の応募文にその実績を書けるようになると、通過率が変わります。
  5. 契約書と支払条件を必ず確認する成果物を完成させて納める請負契約か、期間の作業を引き受ける準委任契約か。報酬額、納期、支払サイト(納品から入金までの日数)、修正回数の上限。この4点が書面にない依頼は、あとで揉めます。
  6. 3件目が終わったら開業届と青色申告承認申請を出す事業所得として申告する体制に切り替えます。ここまで来て初めて、小規模企業共済の加入条件(事業所得での申告)を満たします。
いきなり退職しないほうがいいケース

貯金が生活費3か月分未満、あるいは月々の固定費(家賃・ローン・学費)が収入の半分を超えている状態での独立は、1件目の入金が来る前に資金が尽きます。フリーランスの入金は納品から1〜2か月後です。会社員の給与が続いているうちに副業で数件こなし、月の売上が生活費を上回った月を2回作ってから辞める。この順番を守るだけで、独立直後の収入ゼロ期間はほぼ消えます。

そして1件目が動き出したら、前半の備えの話に戻ってください。1社目の依存度が100%の状態は、独立初期の全員が通ります。ここから2社目・3社目を足していく作業が、そのまま収入途絶への備えになります。

防災の日が9月1日である理由と、実務への落とし込み

防災の日は1960年の閣議了解で制定されました。9月1日という日付は、1923年9月1日に発生した関東大震災に由来します。相模湾を震源とするマグニチュード7.9の地震で、死者・行方不明者は10万人を超えました。

制定の背景には台風もあります。1959年9月26日の伊勢湾台風は死者・行方不明者約5,000人という戦後最大級の風水害となり、これを契機に、地震だけでなく風水害への備えも含めた日として翌1960年に定められました。8月31日から9月1日ごろは暦の上で二百十日にあたり、古くから台風が多い時期として警戒されてきた区切りでもあります。

つまりこの時期は、地震と風水害の両方を同時に思い出すために置かれた日です。フリーランスにとっての実務的な意味は、年に一度、収入が止まる前提で家計と契約を点検する日として使えることにあります。持ち出し袋の中身を入れ替えるついでに、口座残高と取引先比率も見る、というくらいの扱いで十分機能します。

  1. 今日生活費と固定経費の1か月分を計算し、目標額(×6)を紙かメモに書く
  2. 今週直近12か月の入金を取引先ごとに集計し、依存度を確認する
  3. 今月小規模企業共済の加入条件を確認し、まず月1,000〜5,000円で始めるか判断する
  4. 今期中所得補償保険の免責期間と給付期間を2〜3社で比較し、現金でしのげる期間と噛み合う設計を選ぶ

この4段を踏み終えた人が手に入れるのは、安心そのものよりも、数か月売上が落ちても平気だとわかっている状態です。そこまで来ると、単価は高いが未経験の領域、成果報酬の混じった契約、時間はかかるが自分の看板になる仕事——落ちても死なない前提でしか受けられない案件に、手を伸ばせるようになります。守りの備えが、そのまま攻めの許可証になるわけです。

全部を今日やる必要はありません。動けているうちに1段目だけでも踏んでおけば、次に手が止まったとき、判断できる材料が手元にある状態から始められます。いい感じね、と言える備えは、たいてい地味な計算から始まります。

よくある質問

フリーランスに傷病手当金はありますか?

個人事業主・フリーランスが加入する国民健康保険には、傷病手当金が基本的にありません。会社員は健康保険から給与の概ね3分の2にあたる金額を最大1年6か月受け取れますが、フリーランスは働けない期間の生活費を自分で用意しておく必要があります。

小規模企業共済にフリーランスも加入できますか?

加入できます。雇用契約ではなく、成果物の完成を約束する請負契約や、期間内の業務遂行を引き受ける準委任契約などで仕事を受け、事業所得として申告している個人事業主が対象です。掛金は月額1,000円から70,000円まで500円刻みで設定でき、全額が所得控除の対象になります。積立額の範囲内で低金利の貸付制度も利用できます。

所得補償保険と就業不能保険の違いは何ですか?

所得補償保険は短期の就業不能に対応する保険で、数か月単位で働けない状態を想定しています。就業不能保険は長期の就業不能状態に対して一時金や年金形式で給付を行うもので、復帰まで年単位かかる状況を想定した備えです。カバーする期間の長さが主な違いになります。

会社員から独立するとき、いつ辞めるのが安全ですか?

副業として数件を納品し、月の売上が生活費を上回った月を2回作ってからが目安です。フリーランスの入金は納品から1〜2か月後になるため、退職直後は売上が立っても口座は空のままの期間が生まれます。給与が続いているうちに1件目から3件目までを終え、開業届と青色申告承認申請を出しておくと、この空白を短くできます。

生活防衛資金はどのくらい用意すべきですか?

生活費と固定的な事業経費を合わせた6か月分が一つの目安です。フリーランスは納品から入金まで翌月末・翌々月末というサイクルが一般的なため、仕事を再開しても口座にお金が戻るのは1〜2か月先になります。復帰期間だけでなく、入金が回復するまでの時差も含めて見積もる必要があります。

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