退職理由の伝え方テンプレート、本音を88%が言わない理由
画像出典: ぱくたそ
1年以内に退職した574人への調査では、88%が本音の退職理由を会社に告げていませんでした。角を立てずに伝えるコツは、本音をそのまま置き換えるのではなく「自己都合であること」と「これから向かう先」を一続きの文にすることです。民法627条1項により期間の定めのない雇用契約は申し入れから2週間で終了しますが、10〜11月の切り出しなら年内入社・1月入社のどちらにも間に合います。
本音をそのまま伝えるかどうかで止まってしまう人は、かなり多数派です。ハッカズークが1年以内に退職したビジネスパーソン574人に聞いた調査では、88%が本音の退職理由を会社に告げていませんでした。つまり、言わないこと自体は特別でも不誠実でもありません。
ただ、黙るか全部ぶつけるかの二択になると苦しくなります。「一身上の都合です」だけで押し通すと引き継ぎ先の理解が得られにくく、人間関係や給与の不満をそのまま出せば引き止め交渉と説得が始まる。正直なところ、そのあいだに落としどころがあります。
ここでは、本音を守りながら相手が納得して送り出せる文の作り方を、そのまま口に出せる形まで落とします。
なぜ本音の退職理由は言えなくなるのか?
理由を言えない原因は、性格でも勇気でもありません。同じ調査で、20代が本音を伝えなかった理由のトップは「上司に話しても理解してもらえないと思ったから」で65%でした。伝えても状況は変わらない、という見込みが先に立つわけです。
この見込みは、あながち外れてもいません。同調査では、退職者の89%が、退職理由の問題が未解決のままだと再入社に消極的だと答えています。給与や役職を上げるという引き止めの定番カードでは、そもそも解けない不満があるということです。
だからこそ、退職を伝える場は「不満を解決してもらう場」ではなく「予定を共有する場」と割り切ったほうが、お互い消耗しません。伝える目的を説得ではなく通知に置くと、言葉選びは一気に簡単になります。
みんなが実際に会社へ伝えている退職理由は?
建前として実際に使われている理由には、はっきりした定番があります。先ほどの574人調査で会社に伝えられた理由の上位2つは、次のとおりでした。
| 「家庭の事情」 | 48% |
|---|---|
| 「別の業界にチャレンジしたい」 | 40% |
ハッカズーク「退職理由の本音と建前に関する実態調査」の公表データをもとに作成
上の2つに共通しているのは、会社側が手を出して覆せる余地がないことです。給与や配置換えで引き止められる理由ではないので、話が交渉に転がりません。角が立たない言い回しの正体は、上品さではなくこの一点です。
エン・ジャパンが2022年10月に10,432名へ行った調査でも、会社に伝えた理由のトップは「新しい職種にチャレンジするため」でした。一方、伝えなかった本当の理由の上位は「職場の人間関係が悪い」「給与が低い」。同社が2024年に5,168名へ行った調査でも、本当の理由のトップは人間関係です。言えない中身は人間関係と給与、言える形は家庭と挑戦、という構図はどの調査でも変わりません。
嘘をつく必要はない
ここで大事なのは、存在しない事情をでっち上げないことです。架空の介護や架空の内定先は、細部を聞かれた瞬間に苦しくなり、在職中の信用まで削ります。使うのは、事実のうち会社に共有してよい部分だけを選ぶという作業です。
ハラスメントや未払い賃金など、会社の対応義務が生じる問題が理由の場合は、角を立てない伝え方より記録と相談が先です。この場合は人事や社外の相談窓口に事実として伝える必要があり、穏当な言い換えはむしろ不利に働きます。
退職理由はどう組み立てればいい?テンプレート
そのまま使える型は、3つの部品でできています。順番を入れ替えないことがコツです。
- 結論(決めたこと)「退職を決めましたので、ご相談の時間をいただきたくお願いします」。迷っているように聞こえる言い方にしない。
- 自己都合であること「自分の都合でご迷惑をおかけします」。会社側に原因を置かない一文を必ず挟む。
- これから向かう先「◯◯の仕事に腰を据えて取り組みたいと考えています」。過去の不満ではなく将来の話で閉じる。
つなげると、こうなります。
- 「お時間いただきありがとうございます。退職を決めましたので、そのご相談です」
- 「自分の都合でご迷惑をおかけして申し訳ありません」
- 「◯◯に腰を据えて取り組みたい気持ちが強くなり、社外で挑戦することにしました」
- 「引き継ぎはご相談のうえ、責任を持って進めます」
3文目の「◯◯」には、本音から取り出せる前向きな側面を入れます。たとえば成長実感のなさが本音なら「一つの領域を深く担当する働き方」、給与が本音なら「成果が評価に直結する環境」。不満の裏返しは、たいてい前向きな希望に翻訳できます。
この翻訳は、20代ほど効きます。同じ574人調査では、20代が本音として挙げた「成長の実感がなかった」の割合は30代以上の8.5倍でした。若手が抱える不満は「環境と自分の向きの違い」であることが多く、将来の言葉に置き換えやすいということです。
対立を避ける言い回しの置き換え表
| 本音 | そのまま言うと起きること | 言い換え |
|---|---|---|
| 人間関係が合わない | 個人名の話になり、調整案を出される | 「働き方を変えたい気持ちが強くなりました」 |
| 給与が低い | 昇給提示の交渉が始まる | 「中長期の生活設計を見直した結果です」 |
| 成長を感じない | 育成方針の説明と説得になる | 「一つの分野を深く担当したいと考えています」 |
| 会社の将来が不安 | 会社批判と受け取られる | 「自分のキャリアの軸を決めたいと思いました」 |
引き止められたら何と返す?
引き止めは、条件提示の形で来ます。ここで条件の中身を評価し始めると、話が交渉に戻ってしまいます。返す言葉はひとつで足ります。
「条件の問題ではない」は、給与や役職の改善では解けない不満を抱えたまま辞める人が大多数という調査結果とも一致する、正直な言い方です。嘘をつかずに交渉を終わらせられます。
それでも食い下がられたら、日付の話に移します。「退職日は◯月◯日で考えています。引き継ぎの段取りをご相談させてください」。議論の対象を「是非」から「日程」にずらすのが、対立を長引かせない一番の方法です。
10月・11月に切り出すとどう逆算できる?
下期が始まり、年末調整の書類が配られる時期は、退職の相談を切り出しやすいタイミングでもあります。下期の目標設定や来期の体制を決める前なので、上司にとっても調整がしやすいからです。
逆算の起点は、入社日を年内にするか1月にするかで変わります。
- 年内入社をねらう場合10〜11月に上司へ伝え、12月の賞与支給日以降を最終出社日として調整する流れが一般的です。賞与の支給条件(支給日在籍要件の有無)は就業規則で先に確認します。
- 1月入社をねらう場合11月に伝えて12月を引き継ぎ期間に充て、年内最終出社日で締める形です。年末年始の休みを挟むぶん、実働の引き継ぎ日数が想定より短くなる点に注意します。
法的な下限も知っておくと、交渉の心理的な余裕が変わります。民法627条1項により、期間の定めのない雇用契約は労働者がいつでも解約を申し入れでき、申し入れから2週間の経過で契約は終了します。会社の承諾は要りません。就業規則に「1ヶ月前まで」と書かれていても、法的にはこの2週間のルールが優先されます。
2週間で辞められることと、2週間で辞めるべきことは別です。引き継ぎが終わらないまま去ると、前職への照会や業界内の評判という形で後から響くことがあります。円満に終えたいなら、就業規則の申告期限と引き継ぎに必要な日数の長いほうに合わせるのが実務上は無難です。
伝える順番を間違えない
- 就業規則で申告期限と賞与の支給条件を確認した
- 最初に伝える相手は直属の上司にする(同僚や他部署が先だと角が立つ)
- 立ち話ではなく、30分の面談枠を取って伝える
- 退職日の希望をひとつ決めてから臨む
- 引き継ぎ資料の目次だけでも作っておく
退職代行を使うべきか迷ったら?
先のエン・ジャパンの2024年調査では、退職代行サービスの利用経験者は3%にとどまっていました。世の中で話題になる頻度のわりに、実際に使った人は多くありません。
自分で伝えられるなら、そのほうが引き継ぎも有給消化の相談も進めやすいのは確かです。一方で、面談の場で怒鳴られる、退職届を受け取ってもらえないといった状況なら、第三者を挟む判断は妥当です。判断の分かれ目は勇気ではなく、話が通じる相手かどうかです。
本音を胸に置いたまま辞めることは、逃げでも不誠実でもありません。88%がそうしています。決めたことだけを短く伝えて、残りの時間は引き継ぎに使う。それで十分に円満です。
よくある質問
本当の退職理由を会社に伝えないのは問題ありませんか?
法律上、退職理由を正直に申告する義務はありません。ハッカズークが1年以内の退職者574人に行った調査では88%が本音の理由を会社に告げておらず、伝えないこと自体はごく一般的です。ただし架空の事情を作り込むと矛盾が生じやすいため、事実のうち共有してよい部分を選ぶ形にとどめるのが無難です。
退職理由として実際に多く使われている表現は何ですか?
ハッカズークの調査では、会社に伝えられた退職理由の上位は「家庭の事情」48%、「別の業界にチャレンジしたい」40%でした。いずれも会社側が条件提示で覆せない内容のため、引き止め交渉に発展しにくいという共通点があります。
退職は何日前までに伝える必要がありますか?
民法627条1項により、期間の定めのない雇用契約では労働者がいつでも解約を申し入れでき、申し入れから2週間の経過で契約が終了します。会社の承諾は不要で、就業規則に1ヶ月前と定められていても法的にはこのルールが優先されます。ただし円満に終えるには、就業規則の期限や引き継ぎに必要な期間に配慮するのが実務上は望ましいとされています。
引き止めで給与アップを提示されたらどう断ればよいですか?
「ありがたいお話ですが、条件の問題ではないので決意は変わりません」と伝え、その後は退職日と引き継ぎの日程に話題を移すのが有効です。ハッカズークの調査では退職者の89%が、退職理由となった問題が未解決のままだと再入社に消極的と答えており、給与や役職の改善だけでは解けない不満が背景にあることが多いためです。
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