資料作成が遅い人ほど1枚目から作り始めている
画像出典: ぱくたそ
資料作成が遅いのに伝わらない原因は、スライドを1枚目から作り始めていることにあります。先に全体の流れを決め、各スライドの「言いたいこと一文」を書き切ってから、根拠・図表・デザインの順に足していくと、手戻りが消えて伝わる資料になります。1枚に載せるメッセージは1つ、見出しと中身が食い違っていたら詰め込みすぎのサインです。
資料作成にかかった時間と、伝わり方は比例しません。むしろ時間をかけた資料ほど「情報が多くて要点が見えない」と言われがちです。
正直なところ、原因はセンスでもデザイン力でもありません。作る順番が逆になっているだけです。多くの人は1枚目のスライドを開いて、そこから文字や図を置いていきます。この作り方だと、話の骨格が決まらないまま見た目が先に固まるので、途中で「やっぱりこの順番おかしい」と気づいて全部作り直すことになります。
順番を変えるだけで、作業時間は短くなり、伝わり方は良くなります。ここでは多くの人が書くことになる「目標設定・期の振り返り資料」を例に、構成テンプレと作る順番を具体的に渡します。
なぜ時間をかけたのに伝わらないのか?
伝わらない資料には共通点があります。1枚のスライドに、言いたいことが2つ以上入っていることです。
たとえば「上期の実績」というスライドに、売上のグラフと、未達だった案件の一覧と、来期の課題が全部載っている。書いた本人は「関連する情報だからまとめた」つもりですが、読む側は最初の3秒でどれを見ればいいのか分かりません。分からないまま次のスライドへ進むので、最後まで見ても頭に何も残らない状態になります。
1枚のスライドに載せるメッセージは1つに絞る。これは資料作成で最も広く踏襲されている原則です。複数のメッセージを詰め込むと、何が言いたいかが伝わりにくくなります。
比較表や一覧のように、複数の要素を並べること自体が目的のスライドは、1枚にまとめた方が伝わります。「原則は1スライド1メッセージ、比較・一覧系だけは例外」と整理しておくと迷いません。この場合も、その表で何を言いたいのか(どれを選ぶべきか)は見出しに一文で書きます。
スライドに書くのは「事実」ではなく「主張」
もう一つのつまずきどころが、見出しの書き方です。
スライドの見出しに書くべきなのは、ファクト(事実)ではなくメッセージ(主張)です。事実を並べただけの見出しは、読み手に「で、それがどうしたの?」を残します。結論を言い切る一文にすると、その1枚で何を伝えたいのかが確定します。
| 見出しの書き方 | NG(事実の羅列) | OK(主張の一文) |
|---|---|---|
| 実績のスライド | 上期の売上実績 | 上期売上は計画未達、原因は新規開拓の着手遅れ |
| 課題のスライド | 現状の課題について | 下期は新規開拓に工数の3割を先に確保したい |
| 依頼のスライド | 今後の進め方 | 今月中に担当1名の増員をお願いしたい |
右側は、そのスライドを見なくても文章として意味が通ります。見出しだけを上から読んで話が繋がるなら、その資料は伝わります。
短くシンプルな文で書くのがコツです。長い一文は、読み終わる前に聞き手の意識が離れます。
資料を作る順番はどうすればいい?
ここからが本題です。パワポを開くのは、実は3番目です。
- ステップ1:全体の流れを紙に書くスライドを作らず、話の順番だけを箇条書きで並べます。下期の目標設定なら「上期の結果 → 未達の原因 → 下期に変えること → そのために必要な支援 → 具体的な数値目標」。この時点では文章にせず、順番が自然かだけを見ます。ここが決まらないうちにスライドを作ると、後で必ず作り直しになります。
- ステップ2:各スライドの「一文」を先に書き切る並べた流れの1項目ごとに、言いたいことを一文で書きます。これがそのままスライドの見出しになります。上から通して読んで話が繋がらなければ、順番か言い方がおかしいので、この段階で直します。ここまで紙かテキストエディタで完結します。
- ステップ3:一文を裏付ける根拠を配置するここで初めてパワポを開きます。1枚につき見出しの一文を置き、その主張を支える数字・グラフ・事例を1つだけ足します。根拠が思いつかないスライドは、主張が弱いか、そもそも不要なスライドです。削るか、言い方を変えます。
- ステップ4:最後に見た目を整えるフォント・色・配置をそろえるのは一番最後です。先に整えると、内容を直すたびにレイアウトを作り直すことになり、ここで時間の大半が溶けます。
パワポは「決まった内容を見せる道具」であって、考える道具ではありません。考えながらスライドを作ると、レイアウトの調整と内容の検討を同時にやることになり、どちらも中途半端になります。この2つを分けるだけで、作業時間は目に見えて減ります。
できた資料をどう自己チェックする?
作り終えたら、提出前に次を確認します。ここで引っかかった枚数が、そのまま「で、結局なに?」と言われる回数になります。
- 見出しの一文と、そのスライドの中身(本文・図表)が食い違っていないか
- 見出しだけを1枚目から順に読んで、話が繋がるか
- 1枚に主張が2つ以上入っていないか(比較表を除く)
- 各スライドの根拠は1つに絞れているか
- 最後のスライドに、相手にしてほしいこと(次のアクション)が書いてあるか
特に効くのが1つ目です。見出しと中身がズレていたら、そのスライドは情報が多すぎるサインです。中身を削るか、スライドを2枚に分けます。判断に迷ったら分けてください。枚数が増えることより、1枚が読めないことの方が問題です。
そして最後のスライドです。結論と次にしてほしいことは、聞き手が一目で分かる形で書きます。「以上です」で終わる資料は、聞き手に「自分は何をすればいいのか」を考えさせます。承認がほしいのか、増員がほしいのか、意見がほしいのか。一文で言い切ります。
下期の目標設定資料に当てはめると?
実際に期の目標設定で使える形にすると、こうなります。1枚目は表紙として、2枚目から本題に入る想定で、ステップ2まで(見出しの一文)を先に書き切った状態です。
| スライド | 見出しの一文(主張) |
|---|---|
| 2枚目 | 上期の売上は目標比85%、未達の主因は新規開拓の着手が3か月ずれたこと |
| 3枚目 | 既存顧客の対応工数が想定の1.5倍かかり、新規に手が回らなかった |
| 4枚目 | 下期は既存対応の一部を定型化し、新規開拓に月40時間を先に確保する |
| 5枚目 | 定型化には今月中の手順書作成が必要で、レビューをお願いしたい |
数字は自分の状況に置き換えてください。大事なのは、この4行を先に書いてしまえば、あとは各行に根拠を1つ足すだけで資料が完成することです。4行が繋がっていれば、そのまま口頭説明の台本にもなります。
手順書やマニュアルのように、主張ではなく手順そのものを渡す資料には向きません。この場合は「1スライド1ステップ」で、主張ではなく操作を書きます。また、社内で既定のフォーマットが決まっている資料は、まずそのフォーマットに従ってください。順番を守るのは、あくまで自由に構成できる資料の場合です。
初日は見出しの一文を紙に並べるだけで足ります。パワポを開かずに一文を上から読み、話が繋がるか確かめる。この10分が、後半の3時間を減らします。
よくある質問
1スライド1メッセージだと枚数が増えすぎませんか?
枚数が増えること自体は問題になりません。1枚あたりの理解にかかる時間が短くなるため、枚数が増えても全体の説明時間はむしろ短くなることが多いです。枚数が気になる場合は、スライドを削るのではなく、主張そのものが重複していないかを見直してください。同じことを言っているスライドが2枚あるなら統合できます。
スライドの見出しは何文字くらいが適切ですか?
明確な字数の基準はありませんが、短くシンプルな一文にすることが推奨されています。目安として、声に出して一息で読み切れる長さに収めると読み手に届きやすくなります。長くなる場合は主張が2つ入っている可能性が高いので、スライドを分けることを検討してください。
比較表を載せるときも1スライド1メッセージを守るべきですか?
比較表や一覧は例外として扱って構いません。複数の要素を並べること自体に意味があるためです。ただしその場合も、見出しには「その表から何が言えるか」を一文で書きます。表を置くだけで結論を読み手に委ねると、伝わらない資料になります。
時間がないときはどのステップを省略できますか?
省略していいのは最後のデザイン調整だけです。全体の流れを決める工程と、各スライドの一文を書く工程は、省略すると後で作り直しが発生するため、結果的に時間が増えます。時間がないときほど、パワポを開く前に紙で構成を決める工程を先に済ませてください。
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