新カスハラ防止措置、義務化で会社に求められることは?
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改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント防止措置は2026年10月1日から、労働者を1人でも雇う全事業主の義務になります。相談体制の整備と、相談者のプライバシー保護・不利益取扱いの禁止が会社側に求められるため、就業規則や社内ポータルで自社の相談窓口を先に確認しておくと、実際に被害を受けたときに動きやすくなります。被害直後は5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)で逐語メモを残し、防犯カメラ映像が上書きされる前に保全を依頼するのが初動の要です。
理不尽な言動を受けたあと、報告するほどのことでもない気がして飲み込んでしまう。この「自分の中で処理する」が、いちばん消耗する対処法です。厚生労働省の令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査(2023年12月実施・従業員30人以上の企業対象・有効回答7,780件)では、過去3年間にカスタマーハラスメントを一度以上経験した労働者は10.8%。決して珍しい出来事ではありません。
そして2026年10月1日から、カスハラへの対応は会社の努力目標ではなく法律上の義務になります。つまり「相談していいかどうか」を自分で判断する必要は、もうありません。とはいえ、実際に窓口を探すのは受けた直後がいちばん難しい。だから先に、平常時のうちに場所だけ確かめておきます。
2026年10月から何が変わる?
改正労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)が2025年6月11日に公布され、カスタマーハラスメント防止措置を事業主の義務とする規定が2026年10月1日に施行されます。対象は労働者を1人でも雇用するすべての事業主で、企業規模も業種も問いません。中小企業や個人事業主への経過措置・猶予期間もなく、10月1日から一律にスタートします。
ここでいうカスタマーハラスメントとは、厚生労働省の定義で「顧客等が行う社会通念上許容される範囲を超えた言動により、労働者の就業環境が害されるもの」を指します。判断の軸は「相手が客かどうか」ではなく「許容される範囲を超えているか」です。取引先の担当者からの言動も、同じ枠に入ります。
厚生労働省は2026年2月26日にカスハラ防止の指針を策定しました。会社が講ずべきこととして示されている柱は4つです。
- 方針の明確化と、従業員・顧客等への周知啓発
- 相談体制の整備(安心して相談できる窓口の設置)
- 事後の迅速・適切な対応(事実確認と、被害を受けた従業員への配慮措置)
- 再発防止の取組
あわせて、相談者のプライバシー保護と、相談したことを理由とする不利益な取扱いの禁止も求められます。「報告したら評価が下がるのでは」という懸念は、制度の上では会社が防ぐべきものとして扱われるということです。
自社の相談窓口はどこで確認できる?
窓口の探し方は、社内で情報が置かれやすい場所を上から順に当たるのが早道です。10分あれば一巡できます。
- 社内ポータル・イントラを「ハラスメント」「相談窓口」で検索コンプライアンス関連のページにまとまっていることが多く、パワハラ・セクハラの窓口がカスハラも兼ねる形で整備されるケースがあります。
- 就業規則とハラスメント防止規程を開く相談窓口の担当部署と連絡先が条文に書かれていることがあります。2026年10月に向けて改定されていれば、カスハラの記載が新しく入っているはずです。
- 入社時に配られた資料・社内研修の資料を見る窓口の電話番号やメールアドレスが記載されている場合があります。
- 人事部に「窓口の連絡先を知りたい」と聞く被害の相談ではなく場所の確認として聞けるので、心理的なハードルが低くて済みます。
- 直属の上司に確認する上司に相談しにくい事情があるなら飛ばして構いません。人事部や社内窓口へ直接という順路でも問題ありません。
確認したら、窓口名と連絡先をスマホのメモに入れておいてください。実際に何かあった日は、検索する落ち着きが残っていないことのほうが多いからです。
社内に窓口がない・社内では解決しないときは?
全国の労働局・労働基準監督署に置かれている総合労働相談コーナーで、無料で相談できます。電話でも面談でも対応しており、労働者・事業主のどちらからでも相談が可能です。また厚生労働省委託事業のポータルサイト「あかるい職場応援団」(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/)では、相談窓口の案内や企業向けマニュアルを確認できます。
義務化されるのは「措置を講じること」であり、窓口の質や運用の慣れは会社によって差が出ます。社内の窓口が機能しない実感があるなら、総合労働相談コーナーのような社外の相談先を並行して持っておくほうが現実的です。どちらか一方を選ばなければいけないものではありません。
被害を受けた直後、まず何を記録すればいい?
記録の基本は5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)です。加えて、言われた言葉はできる限り要約せず逐語でメモします。「ひどいことを言われた」は後から事実確認ができませんが、発言そのものが残っていれば、会社が事実関係を確認するときの土台になります。
最低限そろえたい項目は次のとおりです。応対を終えた直後、記憶が新しいうちに埋めます。
- 発生した日時と場所(店舗名・電話・オンライン会議など手段も)
- 相手の氏名・会社名など、わかっている範囲の情報
- 相手の発言内容(覚えている限り逐語で。伏せ字にせずそのまま)
- 客観証拠の所在 — 音声ログ、防犯カメラ映像、メール、SNS投稿のURL、来店記録
- 会社としての対応履歴(誰が何を説明し、何を約束したか)
- 同席者・目撃した同僚の名前
とくに急ぐのが防犯カメラ映像です。多くのシステムは一定期間で上書き・自動消去されるため、残っているうちに保全を依頼する必要があります。初動が遅れるほど証拠が消え、二次被害のリスクも上がります。「あとで落ち着いてから」がいちばん取り返しのつかない判断になりやすい部分です。
報告メールはどう書けばいい?
感情を整えてから書こうとすると、たいてい先延ばしになります。事実だけを並べる型を使って、その日のうちに送ってしまうほうが楽です。
- 件名:【報告】9月12日 ○○様よりの電話応対について
- 日時・場所:9月12日 14:20〜15:30/代表電話にて
- 相手:株式会社○○ ○○様(ご本人の名乗りによる)
- 経緯:納期変更のご案内に対し、以下の発言がありました。
- 発言(逐語):「○○○○」「○○○○」
- 当方の対応:謝罪のうえ代替案を2件提示、結論は保留となりました。
- 証拠:通話録音あり(録音システムに保存)/該当メール転送済み
- ご相談:今後の対応方針についてご指示をいただけますでしょうか。
ポイントは、評価や感想を書かず、事実と発言だけを置くことです。「理不尽でした」「精神的につらいです」といった言葉を入れたくなりますが、判断は受け取った側に委ねたほうが話が早く進みます。つらさは、相談窓口や産業医との面談など別の場で伝えるほうが適切に扱われます。
一人で抱え込まないために、今日からできること
カスハラを一人で我慢し続けても収まらず、むしろエスカレートしていくことがあります。まずは同僚や上司へ、相談しづらい事情があれば人事部や社内窓口へ。「報告」まで至らなくても、事実を誰かと共有した時点で状況は変わります。相手が一人で対応している人だと分かると要求が強まりやすいからです。
企業側の実感値としても、過去3年間に受けたハラスメント相談の内訳はパワハラ64.2%、セクハラ39.5%、カスハラ27.9%(前掲・令和5年度実態調査)。カスハラの相談は、会社にとってすでに珍しくない案件です。
10月は下期のスタートで、部署や担当が変わる人も多い時期です。担当が変わるということは、相手との関係もリセットされるということ。引き継ぎ資料に「この取引先では過去にこういう言動があった」と一行残しておくと、次に入る人が同じところで一人にならずに済みます。自分のための記録は、そのまま次の人を守る記録にもなります。
よくある質問
カスハラ対策の義務化はいつから始まりますか?
2026年10月1日からです。改正労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)が2025年6月11日に公布され、カスタマーハラスメント防止措置を事業主の義務とする規定がこの日に施行されます。
小さな会社やアルバイト先も義務化の対象になりますか?
対象になります。労働者を1人でも雇用するすべての事業主が対象で、企業規模・業種を問いません。中小企業や個人事業主についても経過措置や猶予期間は設けられておらず、2026年10月1日から一律に適用されます。
カスハラを相談したことで、評価や待遇で不利に扱われませんか?
厚生労働省の指針では、相談者のプライバシー保護と、相談したことを理由とする不利益な取扱いの禁止が会社に求められています。2026年10月1日以降は、相談者を不利に扱わないことが事業主の講ずべき措置に含まれます。
社内に相談窓口がない場合はどこに相談できますか?
全国の労働局・労働基準監督署に設置されている「総合労働相談コーナー」で無料相談ができます。電話・面談のどちらにも対応しており、労働者・事業主のいずれからでも相談が可能です。厚生労働省委託事業のポータルサイト「あかるい職場応援団」でも相談窓口の案内を確認できます。
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